名もなき王国 の商品レビュー
一言でいうと”嫌い”だ。 読み終わった後の第一声が「めちゃくちゃ疲れた…」だった。 心にもっと余裕があれば好意的に読めたのだろうか。 イノセンス然りエンドレスエイト然り、精神論やらで延々と終わりのない現実と虚構の話をされると、どうも物語が前進しているように感じられず、それが...
一言でいうと”嫌い”だ。 読み終わった後の第一声が「めちゃくちゃ疲れた…」だった。 心にもっと余裕があれば好意的に読めたのだろうか。 イノセンス然りエンドレスエイト然り、精神論やらで延々と終わりのない現実と虚構の話をされると、どうも物語が前進しているように感じられず、それが私は苦手みたいだ。 読んでいる最中、章ごとの関連性を見出そうとしたりしていたが、話が飛び飛びで読みづらいなと思っていた。それもそのはずである。 著者自身も、序章にて なお本書を読み終えた人々の一部が私を病んでいるとみなすかもしれないことは承知している と述べているように、こういう意見がくるだろうことは予想していた。最後まで読み切ってようやくその意味を理解した。 その意味を知って思い返すと、作中にその兆候がところどころ見受けられた。最初は誤字かと思ったがそうではなかった。 ただ、ここまで物語を作り込んで、最後にそれを容赦なく倒壊させるその度胸はすごいと思った。 また、巻末の 初出 ー 少年果 螺旋の恋 その他は書き下ろしです。 を見たとき、元は別々の作品であったものを、それぞれに関連があるように見せるようにまとめあげ一つの作品にしていたことを知り、著者の話をまとめるための腕力をとても強く感じた。 それとも初めから”名もなき王国”のためにこの2つの短編は作られたのだろうか?
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【感想】 ・最近よく見かけるようになった(昔から多いかな?)「現実」と「非現実」の境界があいまいに溶けていく作品のひとつ。 ・書くことの意味と魅力を捜しつつ書くことの虚しさ描くというようなメタっぽい風味はカモフラージュで、じつはメタではなく、存在のあやふやさを利用して存在を確かな...
【感想】 ・最近よく見かけるようになった(昔から多いかな?)「現実」と「非現実」の境界があいまいに溶けていく作品のひとつ。 ・書くことの意味と魅力を捜しつつ書くことの虚しさ描くというようなメタっぽい風味はカモフラージュで、じつはメタではなく、存在のあやふやさを利用して存在を確かなものにしようとあがく物語。 ・強いてジャンル分けすれば純文学でしょうか。実はミステリという面も(多くの作品にミステリ要素はあるものだけど)。犯人は誰だ!? 動機は何だ!? 作品全体が犯行。なので我慢してでも最後まで読まないと姿がつかめない。 ・アニメ「Sonny Boy」とどことなく近いテイストを感じる。 ・文学系同人誌を読んでるような気分になった。未熟というのではなく、奇妙な熱量を感じて。 ・第三章から読みやすくなった。第五章の「掌編集」は好みに合った。 【一行目】 これは物語という病に憑かれた人間たちの物語である。 ▼簡単なメモ 【藍花/あいか】「私」の妻。積極的で表情がコロコロ変わるタイプ。 【生き様】《彼の優秀な頭脳と稚拙な生き様を思い出して悼んだ。》p.357 【異常】《正常さを証明するという試み自体が異常の印なのだ。》p.450 【簡潔】《文章においては、人生と同様、簡潔であることは常に善である。》p.304 【劫】瞬の双子の兄。十六歳で亡くなった。急性心不全。 【澤田瞬/さわだ・しゅん】「私」の友人で三十代の作家。元編集者で店の内装をはがしたりする仕事をしていた。 【沢渡晶/さわたり・あきら】澤田瞬の伯母で、十数年前に六十一歳で亡くなった作家。幻想小説系だったようだ。イメージ的には尾崎翠の感じかなと思っていたがだいぶ違うということだった。 【沢渡晶の屋敷】老朽化して廃墟じみていた。近所の子どもたちは自由に出入りしていた。 【死】《私が消えたとしても世界は何も失いはしないということだった。》p.369 【詩歌】《そもそも詩歌などはある種の楽器と同じで、どんな音色を引き出すかは、読み手のスキルにかかっているのだ。》p.318 【存在】《わたしは存在しない。いま、このダークブルーのインク――明け方の空の色――で綴られている文字のつらなりの外には。》p.301 【松本実花/まつもと・みか】美爽の友人。編集者。 【美爽/みさ】瞬の妻。のめり込みすぎてアンバランスになってしまうタイプ。 【物語】《物語は麻薬である。私は物語を服用することでまだ正気を保っている。》p.401 【私】四十九歳の作家。売れない。
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捨て置かれた大きな病院の廃墟に住まう小説家、沢渡晶を中心として散らばる短編たちとして読んでいる間はとても素晴らしくて、それぞれの作品の緩やかな繋がりが、それに楽しみを足してくれる。 賛否両論あると思うけど、私は最後の種明かしで一気に白けてしまった。小説なんてのは所詮現実におけるエ...
捨て置かれた大きな病院の廃墟に住まう小説家、沢渡晶を中心として散らばる短編たちとして読んでいる間はとても素晴らしくて、それぞれの作品の緩やかな繋がりが、それに楽しみを足してくれる。 賛否両論あると思うけど、私は最後の種明かしで一気に白けてしまった。小説なんてのは所詮現実におけるエンターテイメントです、って、ここに来るまで読み進めながら感じていたものを全否定された感じで、怒りすら湧く。もし、最初からそれが目的でここまで延々読者を連れ回しているのだとしたら、星は1つに変更したい!! もしこのラストを知ってて読み始めてたら「文章うまいなー、複雑な構成のメタフィクション小説だなー、へー」という感想しか湧かなかったと思う。 しかしそれと同時に、ラストが違ったらすごい傑作だったんじゃないか、という思いも捨て切れず、主人公(作者なのかもしれない)が、沢渡晶、ひいては小説そのものがもつ力への恐れ(畏怖?)みたいなものに打ち勝てなかったから、この小説のラストはああなるしかなかったのかと思ったりもする。 作者の意図も分からないし、読者としては書かれたものを読むしかないので的外れかもしれないけど、もっと自信持ってラストまで書いてよ!!と思ってしまった。
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主人公である“私”と、若手作家の集まりで知り合い意気投合した澤田瞬、彼の伯母で故人の沢渡晶の3人の作家が登場するメタフィクション。沢渡晶の作品や澤田瞬が語った話を私が小説化した作品などが次々に提示され、どれが現実なのか混沌としてくる。作者の狙いもまさにそこにあるようで、私と澤田が...
主人公である“私”と、若手作家の集まりで知り合い意気投合した澤田瞬、彼の伯母で故人の沢渡晶の3人の作家が登場するメタフィクション。沢渡晶の作品や澤田瞬が語った話を私が小説化した作品などが次々に提示され、どれが現実なのか混沌としてくる。作者の狙いもまさにそこにあるようで、私と澤田が虚構と現実について応酬する場面もある。いろいろなことを思いながら読み進めたが、ラストで明かされる真相にはぶっ飛んだ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
少しづつずれていろいろな反復が繰り返される、を小説でやる。読み返すとごっちゃになる感じがゆらゆらする。最後は宮沢賢治の現代版みたいで、これについて、ゲームのある時代だなあと思った理由は今のところ分からない。
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なかなか読み応えがあった。 複数の短編と掌編からなる複雑なつくりの小説。読んでいて、小説の話の中に入り込んでいく、というよりは、小説が現実の世界を侵食してくるような不思議な読後感だった。
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初めて、途中で読むのを断念してしまった。 いかにすごい人の作品なのか、冒頭のあらすじで、入り込めず。 言葉の一つ一つ、繊細な表現が難しい。 最後まで読まないとわからない、と感想を見ただけに、読めなかった自分が歯がゆい。
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日々活字を追っていると、時にはなはだ無味乾燥なモノを読むはめになる。なんて独りよがりな書きぶりだろうと呆れるが、読書なんて受信のみの一方的な通信なのだし、懸命な読者はいち早く見切ればいいのだ。『序』の末文に「読者にひとときの愉しみを得てもらうことだけを望んでこの作品を書いた」と著...
日々活字を追っていると、時にはなはだ無味乾燥なモノを読むはめになる。なんて独りよがりな書きぶりだろうと呆れるが、読書なんて受信のみの一方的な通信なのだし、懸命な読者はいち早く見切ればいいのだ。『序』の末文に「読者にひとときの愉しみを得てもらうことだけを望んでこの作品を書いた」と著者は記す。愉しめるか愉しめないかは、読者の感性やら力量に因るけれど、「ひととき」の拘束が長かった。ラスト8ページの謎解きって、警官の先導であっけらかんと・・・
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読み終えた後、頭がふらふらするような話。どこからが夢でどこからが現実で、何と何がつながっているのかよく分からなくなる。言葉遊びのようにも思えるし、自分の存在や死ぬことについてひたすら考えつくしているようにも思える。 2019/2/15
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小説の書き手と小説の中に出てくる人物と、その人物が想像する人物などがいりくんで展開するストーリー。謎解きのような不思議な気持ちを抱えて止まらなくなる。最後は一見平凡な終わらせ方だが、そこに至るまでの謎との整合性が取れていて見事な一冊。
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