悪玉伝 の商品レビュー
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江戸時代最大の贈賄事件という史実「辰巳屋騒動」を舞台にした小説、この事件のことはこの本を読むまで全く知らなかった。 なので、主人公吉兵衛は苦難の数々を乗り越えて、最後には唐金屋と江戸幕閣を向こうに回して訴訟も商売も大勝利!…みたいなストーリー展開だと信じ切っていた。 だから、正直後味が悪かった。凄惨な牢屋のシーンも唐金屋一味の陰湿なやり口も、逆転劇でスカっとすると思うから辛抱して読めたのになぁ。 大岡越前も落ち目だし、暴れん坊将軍も贔屓の引き倒しやし、ラストがほのぼのしてるという他の人の感想も俺にとっては「こんなん夫婦愛か?」やし…なんだか歯がゆい小説。 それでも、読んでる間はグイグイ引き込まれたあたり、朝井まかての小説匠技だろうな。好みではないストーリーだが小説としては上出来。こういうの一番やっかい(笑
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大坂の商家の相続争いが発展し、江戸で裁かれるに及ぶという大ごとになってしまった、“辰巳屋一件”が題材。 12年程前に、松井今朝子さんの「辰巳屋疑獄」を読みましたが、そちらとはまた違った切り口での展開でした。 この本では吉兵衛寄りな感じに描かれていることもあって、吉兵衛に同情的な...
大坂の商家の相続争いが発展し、江戸で裁かれるに及ぶという大ごとになってしまった、“辰巳屋一件”が題材。 12年程前に、松井今朝子さんの「辰巳屋疑獄」を読みましたが、そちらとはまた違った切り口での展開でした。 この本では吉兵衛寄りな感じに描かれていることもあって、吉兵衛に同情的な気持ちを持ってしまい、彼がどん底まで落ちていく様が読んでいて辛かったです。 江戸の大岡越前守忠相サイドからも描かれていますが、大坂商人と、江戸の武家との価値観の違いが興味深く思いました。
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浅学な私ゆえ辰巳屋騒動など知る由もなく上方の商家のボンボンの相続争いの冒頭はクッソ詰まらない物語にしか映らなかった。 そんなことで出鼻をくじかれるものの巧みなペン捌きに徐々に引き込まれ真の面白さに気付くのは吉兵衛が投獄されるあたりからか。 吉宗、大岡越前らビッグネームの登場ととも...
浅学な私ゆえ辰巳屋騒動など知る由もなく上方の商家のボンボンの相続争いの冒頭はクッソ詰まらない物語にしか映らなかった。 そんなことで出鼻をくじかれるものの巧みなペン捌きに徐々に引き込まれ真の面白さに気付くのは吉兵衛が投獄されるあたりからか。 吉宗、大岡越前らビッグネームの登場とともになぜこれほどの公儀世間を巻き込む大騒動になるのかのミステリー要素も加わり囚われの身の吉兵衛の一挙手一投足から目が離せなくなる。 女流が描く一世一代の男意気は痛快そのものなのだがラストはやっばり恋女房の手のひらで転がされ…まかて姐さん天晴れである
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司馬遼太郎賞 第22回受賞作! 江戸時代最大級の贈収賄事件「辰巳屋騒動事件」を描いた大作が堂々の受賞!
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重厚な物語。史実に基づいて書かれているのですが、とる立場が違うと、浮かび上がる人物像も全く違ってくる。この物語で行くと吉兵衛はとても魅力的で、かつ強靭な精神を持ちなおかつ狡猾さも持ち合わせる人。ただ、何となく好きになれないまま読了しました。登場人物の誰一人にもあまり良い印象を持たなかった。どっちもどっち。誰もが皆自分大事。将軍までが出てきて、壮大な騒動。私は辰巳屋一件を知らなかったけれど、それぞれの対立が色んな顛末を生み出していく物語に終始飲まれ気味でした。吉兵衛もその他も皆、じゅうぶん悪玉だと思う。
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まかてさんの「眩」が大好きで手に取った。 史実を軸にすえた物語の展開はうまいなあと思う。 贅をつくした上方商人と牢の描写の落差がすごい。 面白く一気に読んだ。 吉宗、大岡越前、盛りだくさんだ。 ≪ 悪玉の 正体かすむ 夜の霧 ≫
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むかし 松井今日子氏の 辰巳屋疑獄 を読んだ覚えがある。 確か、手代が、話を進めて行ったように思う。 朝井まかて氏は「売られた喧嘩は、ちゃんと買わせてもらうで」と、江戸っ子の啖呵を切るような勇ましい本の帯に、つい手に取ってしまった。 いつの時代にも、収賄、贈賄、挨拶代わりに・...
むかし 松井今日子氏の 辰巳屋疑獄 を読んだ覚えがある。 確か、手代が、話を進めて行ったように思う。 朝井まかて氏は「売られた喧嘩は、ちゃんと買わせてもらうで」と、江戸っ子の啖呵を切るような勇ましい本の帯に、つい手に取ってしまった。 いつの時代にも、収賄、贈賄、挨拶代わりに・・・とか、、、 そういえば、昨日だったか、アメリカの名門大学の裏口入学問題も・・・テレビで放送していたが・・・ こんな所も贈賄が、、、、 話は逸れたが、徳川吉宗 享保時代。 質素倹約に、武士の威厳もあり、経済が、行き詰っていた時である。 その時に大阪で起きた相続問題。 どこでどう 江戸まで、その火の粉が飛んでいったのか? そして、跡取りと言っても、養子が、何もしないのに、大店の主人の座を取っていいものだろうか? しかし、大店側も、血筋と言え 今まで、放蕩してきた者が、我が物顔で、店を仕切られるのも、腹立ちがあったのだろう。 今まで、生まれてから、好きな物を食べ、きれいな着物を着て、好きな時間を過ごして、苦労無し、経済面も余裕があったのが、奈落の底へと投げ込まれてい舞う吉兵衛。 読みだしたら、止まらない。 大岡越前もお裁きは、上手であるが、経済面では、取り残されているように思う。 丸裸になった吉兵衛だが、妻のお瑠璃が、糟糠の妻と、なりえてくれるのを願う。 「亡家の基」と口走った与兵衛の言葉、、、、 家を滅ぼしてしまったと、吉兵衛は、秘かに思うのだが、、、、お瑠璃と再出発してくれることを期待する。 辰巳屋も、木津屋も、現在残っていないけれど、、、、名を変えて、生涯を過ごしたと、思いたい。
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最初から最後まで、あまり物語にのめりこめなかった。 というのも、時代小説なので理解しがたい単語がでてきたり、名前も覚えずらい名前がでてきて、誰だっけ?と分からなくなったりして。 ただ、人間の生々しさや憎悪と憎しみといったテーマは描写から生なまと感じ取れ気持ち悪くもなってしまった。
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まさに”まかて節”炸裂したような本作でした。インタビューに応じたまかてさんのhttps://kadobun.jp/interview/116/e81c1951記事を読み、結構史実に照らし合わせて肉付けされたと知り、驚きます。将軍までも巻き込んだ江戸時代最大の辰巳屋疑獄と呼ばれてい...
まさに”まかて節”炸裂したような本作でした。インタビューに応じたまかてさんのhttps://kadobun.jp/interview/116/e81c1951記事を読み、結構史実に照らし合わせて肉付けされたと知り、驚きます。将軍までも巻き込んだ江戸時代最大の辰巳屋疑獄と呼ばれている事件でした。 武士社会を相手取り、大阪商人のおおらかさと財を見せつけ迫っていく醍醐味はさすがでした。中ごろまでは悠長にどうせ無罪になるさと高をくくって読んでいたのですが、入牢され、次第に吉兵衛の立場が拙くなり追い詰められていくと、今回はどんでん返しがないのかと不安になり始め、目が離せなくなりました。 幼い頃テレビで眺めていた大岡忠相の別な面も描かれ面白い。銀本位と金本位制の争いに敗れ左遷され、婿養子でもあり痔疾を抱えていたことなど。付け届は商人の町、大阪にとっては当たり前で、武家が牛耳る江戸では賄賂とみなされていたらしい。でもね、忠助のやった事って忖度! 忖度ならば許されるのかしら(笑) 吉兵衛さん、カッコイイ! 金を惜しまずふんだんにばらまき大阪商人の意地を見せつけてくれはりました。 身請けした妻は子と変わらないぐらいの年頃のお瑠璃 さん。最初は自儘なお瑠璃を好きでしたが、吉兵衛の立場がのっぴきならなくなると、何がしらかひと肌脱いで欲しかった気もします。しかし、吉兵衛にお金で身請けされたのですから肘鉄砲を食らわしてお相子。最終的には花好きの趣味で700両をゲットし、身ぐるみ剥された吉兵衛には何よりの金子だったでしょうから・・・。 本作は第22回「司馬遼太郎賞」を受賞しています。
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なんかねえ、ゴーンさんもこんなかんじなんかなあ、ってイメージしちゃったよ。吉兵衛の顔があの顔で妄想された。辰巳屋騒動、史実なんですね。なにも知らなかったのでわかる限り史実も調べつつ読んだですが、こんな事件があったんだねえ。まあいわゆる大阪の大店の跡目争いがもつれにもつれて、江戸の...
なんかねえ、ゴーンさんもこんなかんじなんかなあ、ってイメージしちゃったよ。吉兵衛の顔があの顔で妄想された。辰巳屋騒動、史実なんですね。なにも知らなかったのでわかる限り史実も調べつつ読んだですが、こんな事件があったんだねえ。まあいわゆる大阪の大店の跡目争いがもつれにもつれて、江戸の評定所に持ち込まれた疑獄事件、かの大岡越前裁きの記録にも残っているということで、ほかにも小説の種になったり浄瑠璃になったりしてるみたいですが。朝井さんも、「悪玉伝」とは銘打ちつつも、辰巳屋吉兵衛の生き様に心を寄せて描いておられるので、悪くないのに巻き込まれた、、という印象になってしまうけれど、複雑な時代背景のヒントもたくさんちりばめらているので、考えさせられるポイントが盛りだくさんです。 泉州/大坂 大坂/江戸 西の銀/東の金 町人社会/武家社会 文化/規律 。。。なんかこういう、混ざりにくく相反しがちなものごと、そういう難しさの、うまくいかない部分が絡みに絡み合って、こんな事件が起こったんだぞ、っていうのは、この吉宗公の時代を深く切り取れる視点なんだとおもう。装丁にもなりたびたび牡丹が物語に現れますが、終盤、忠相(大岡越前)の邸宅で妻が手ずから作った“牡丹餅”が気の置けない友ども(青木昆陽&加藤重徳)にふるまわれるのも、暗に(つきつめれば心づくしと賄賂の線引きなどどこにあるのか?)という皮肉をこめての、あえての「牡丹」のキーワードに絡めてある場面じゃないかと。妻の松江いいですよね、個人的にこの物語のなかで、いちばん半生に肩入れできた存在。ラストの夫婦のやりとりの場面、大好きだわ。さっと開いた透かし障子から見える錦繍、これぞ蔭ながら家と夫を支えてきたこの時代の武家の女の張り。拍手と柝が脳内に鳴り響いた粋な場面。 唐金屋の秘密の部分などは創作なんだろうけれど、こういう、唐金屋も吉兵衛もそうだけど、こどもの心のまま大人になったような好奇心と向こう見ずと身勝手さと運の良さを持った悪玉と紙一重の傑物がときどき世に生み出されることで、経済ってのは発展してきたのかもしれないねえ、と。後味が濃い1冊。オススメです。
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