ゲッベルスと私 の商品レビュー
著者はブルンヒルデ・ポムゼル ナチ宣伝相ゲッペルス秘書の一人 戦後の取り調べで「何も知らなかった。私に罪はない。」と主張。 この認識は、まさにハンナ・アーレントの「悪の凡庸さ」。 当事者意識のない歴史の反省は時間とともに忘れ去られる。 そしてまた同じ過ちを繰り返す。
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とても考えさせられました。ヒトラーの右腕としてナチ体制を牽引したゲッベルスの元秘書ポムゼルさんの独白。すべてを正直に語っていないと評されていますが、それが人間というもの。「なにも知らなかった。私に罪はない」という主張も、賛同とはいわずとも共感しました。「人間はその時点では深く考え...
とても考えさせられました。ヒトラーの右腕としてナチ体制を牽引したゲッベルスの元秘書ポムゼルさんの独白。すべてを正直に語っていないと評されていますが、それが人間というもの。「なにも知らなかった。私に罪はない」という主張も、賛同とはいわずとも共感しました。「人間はその時点では深く考えない。無関心で目先のことしか考えない。」そのとおりだと思いました。念頭にあるのは自分の利益ばかりで、それ以外のことにはご都合主義をとってしまう。人間は、少なくとも個人はそんなに強くありません。では、どうすれば・・・?ひとつの解として、こうした歴史に学んで同じ轍を踏まないようにする、ということがあると思いました。人間の、自分たちの在り方について考える機会を与えてくれる、貴重な一冊です
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政治、差別、社会への無関心がどのような結末になるかを教えてくれました。 流されて言われた事をやるだけだととんでもないことになる可能性がありますね。
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先日の『祖父はアーモン・ゲート』に続き。 本書と同名のドキュメンタリー映画(2016)も製作されており、その情報はTwitterに流れてきた関係で知った。 繰り返される「あの頃は無頓着だった」「知らなかった」発言。彼女のことを傍観者と取る人もいるかもしれない。 でも誰が彼女を咎...
先日の『祖父はアーモン・ゲート』に続き。 本書と同名のドキュメンタリー映画(2016)も製作されており、その情報はTwitterに流れてきた関係で知った。 繰り返される「あの頃は無頓着だった」「知らなかった」発言。彼女のことを傍観者と取る人もいるかもしれない。 でも誰が彼女を咎められる?自分では何の思想も持っていない。祖国が世界から孤立する中で関心があるのは自分や家族の生活だけ。後は周囲の流れに沿ってしまえば忽ちこうなる。咎めるのではなくそう認めなきゃいけない。 「私たち自身がみな、巨大な強制収容所の中にいたのよ」 第一次世界大戦で国中が疲弊していてもポムゼルさん一家みたいに余裕のある人達はいた。今から見れば随分ささくれ立った家風だが、子供達に「お金がない」と言って聞かせる教育にはまだ同調できた。 そして暗黒面を殆ど目にしないまま、深い意味も持たずに入党。それでも国営放送局時代がどこよりも眩しかった。ありえない程の優遇もしかり、本物の働く喜びを目一杯満喫している。 これじゃ自分の世界しか見えないはず。周りの死イコール前線に派遣された職場のジャーナリスト達というのがそれをよく表している。 副題に秘書とあるが厳密には速記タイピスト。そして実際は宣伝省の事務員みたいな業務で事件性の高い重要案件に携わる、或いはその関係の書類を見ることすら出来なかったという。おまけにゲッベルスとは数える程しか言葉を交わしていない。それでも彼の人間性は充分な程伝わってきた。(極め付けは演説の場面…) インタビューが終わっても、何も言わずその場を後にすることしか出来なかった。ショックだとか心を掻き乱されたとか感覚が一切残らず、只々放心状態。こういう人間から乗っ取られていくのだろうな。 どこへ向かっているのか自問する日々が訪れると今は予感している。
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ポムゼルの語りをほぼ喋ったままを書いているのか、ちょっとまどろっこしいのだが、それがかえって生々しい。 宣伝局で俳優を見たとか、家具が素敵だったとか、無邪気に語っていたりする。そして「何も知らなかった」「仕方なかった」という言葉が何度も何度も出てくる。 70年前の記憶にしてはと...
ポムゼルの語りをほぼ喋ったままを書いているのか、ちょっとまどろっこしいのだが、それがかえって生々しい。 宣伝局で俳優を見たとか、家具が素敵だったとか、無邪気に語っていたりする。そして「何も知らなかった」「仕方なかった」という言葉が何度も何度も出てくる。 70年前の記憶にしてはとても鮮明だと思うが、執筆者の記述によると、思い違いや故意にあるいは無意識に語られていない部分もあったりするらしい。 昨今の世界情勢との類似点を挙げたのち現代人への警告として、歴史的な反省と情報テクノロジーの発達を考えれば、ポムゼルの時代のように「知らなかった」では済まされないぞというメッセージが強く込められていた。
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2021/10/12 読了 読んでいて悲しくなってしまった。 そしてそれと共に、現代社会に対して恐怖を覚えた。 以下はあくまで私の主観である。 この告白をした人はただ純粋に上司の命令に従い、勤務を全うしていただけだった。 例えば、あなたは今の仕事が誰かを多少不幸にする必要...
2021/10/12 読了 読んでいて悲しくなってしまった。 そしてそれと共に、現代社会に対して恐怖を覚えた。 以下はあくまで私の主観である。 この告白をした人はただ純粋に上司の命令に従い、勤務を全うしていただけだった。 例えば、あなたは今の仕事が誰かを多少不幸にする必要のある仕事だとして、すぐにその仕事を辞められるだろうか?明日からの生活はどうなる? そういった不安から働き続けていた。 さらに、この経験と自身の折り合いをつけるために70年間ほどかかった。語ったのは70年後だから。そんな彼女の人生がただ悲しかった… 今、現代は当時と同様に「断絶」が始まっていると感じる。 当時のドイツでは「ユダヤ人」が断絶対象であったが、今は「移民」や「難民」になっていないか? 自分が不幸なことを第三者のせいにすれば、自己肯定感を損なわずに生きていられる。だがそれは争いの始まりだ。 難しいが、人々が今の自分に満足をし、自分の不幸を他人のせいにしないで辛くても前向きに生きる、それが平和な世界への一歩ではないだろうか。
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面白かった。凡庸な悪とか、虚飾だとか矛盾だとかナチが台頭した土壌だとかそういうのはいい。ポムゼルおばあちゃんは100歳超えて70年も昔のことを当時の感覚のまま話してくれてて、それがすごいと思う。この70年の間に、ナチがしたこと、自分が関わったゲッベルスがどんな人間だったか、おそら...
面白かった。凡庸な悪とか、虚飾だとか矛盾だとかナチが台頭した土壌だとかそういうのはいい。ポムゼルおばあちゃんは100歳超えて70年も昔のことを当時の感覚のまま話してくれてて、それがすごいと思う。この70年の間に、ナチがしたこと、自分が関わったゲッベルスがどんな人間だったか、おそらく自分が携わった仕事に最終的解決に関する内容があったであろうこと、それを当事者として嫌というほど思い知らされてると思う。それなのに当時の感覚を思い出して話せてるところが稀有だと思う。当時の私達は狂ってた、ひどかった、って言わないところが潔い。矛盾がある?あえて触れてない点がある?当たり前だろ人間なんだよ。少しの嘘があるにしろ、これが当時のドイツ人の感覚としては多数派だったんだろなと思った。ここから現代の情勢を顧みて教訓を、とかって最後の著者の意見は蛇足も蛇足だし普遍的な内容ではないと思った。ポムゼルの証言にこそ普遍性がある。そこが興味深かった。
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ナチスナンバー2の力を持っていたといわれる、国家宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書を務めたブルンヒルデ・ポムゼルさんのインタビュー本で、映画化されているものの書き起こし。熱烈な支持者でもなく、ユダヤ人の友人や恋人さえいた彼女。淡々と職務に従事し反抗や疑いを持つことさえあり得なかった...
ナチスナンバー2の力を持っていたといわれる、国家宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書を務めたブルンヒルデ・ポムゼルさんのインタビュー本で、映画化されているものの書き起こし。熱烈な支持者でもなく、ユダヤ人の友人や恋人さえいた彼女。淡々と職務に従事し反抗や疑いを持つことさえあり得なかったと証言している。当時はみんなそうだった、自分のことで精一杯だし重要なことは何一つ知らされていなかったと。「自分は浅はかで愚かだった。何も見ていないし見ようとしなかった。非難されても仕方がないが、しかし私に罪はない」と言い切る。 確かに彼女が大虐殺や侵攻の意思決定をしたわけではないが、知る立場にはあっただろう。そして時代の状況からして反対の声を上げることができたとも思えないし、あげたところでどうにもならなかっただろう。今、いくつかの国で、独裁に近い権限を持つ大統領が誕生している。また、移民排斥や格差の問題が拡大している。イギリスはEUを離脱し、欧州の連帯は崩れようとしている。これを知っていながら、遠い国の出来事であるとか、ナチスが台頭したようなことにはならないだろうという根拠のない態度は、ポムゼルさんと同じようなことではないかと危機感を感じる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ユダヤ人を友人として支えている比呂は、きっとたくさんいたのかもしれない。そのせいで、身を危険に晒した人もいた。そういうことを、あとで私は知った。今の人たちはよくこう言うわ。もしも自分があの時代にいたら、迫害されていたユダヤ人を助けるために何かをしたはずだと。彼らの言うこともわかるわ。誠実さから出た言葉なのだと思う。でも、彼らもきっと同じことをしていた。ナチスが権力を握ったあとでは、国中がまるでふぁらすのd-無に閉じ込められたようだった。私たち自身がみな、巨大な強制収容所の中にいたのよ。ヒトラーが権力を手にした後では、全てがもう遅かった。おして人々はみな、それぞれ乗り越えなければならいものごとを抱えており、ユダヤ人の迫害だけを考えているわけにはいかなかった。他にもたくさんの問題があった。戦地に送られた親族の運命も心配しなければならなかった。だからといって全てが許されるわけではないけれど。ナチス自体を別にすれば、そして全く誤った予測をもとにそれぞれの任務を遂行した指導者たちを別にすれば、あれら全てを可能にした原因は国民の無関心にあった。そうなったのは、誰か個人のしえではないと思う。あのころと似た無関心は今の世の中にも存在する。テレビをつければ、シリアで恐ろしい出来事が起きているのはわかる。たくさんの人々が海でおぼれているのが報道される。でも、そのあとテレビではバラエティショーが放映される。シリアのニュースを見たからといって、人々は生活を変えない。生きるとはそんなものだと私は思う。全てが渾然一体になっているのが、生きるということなのだと。あの時代の一部の人々を現代人が非難できるとしたら、せいぜいこんなことかしら。彼らは理想を追い過ぎた。そして、ドイツが良い方向に向かっていると、あまりにも愚直に信じてしまったドイツ人はそれまで、とてもつつましく生きてきた国民だったから。そうして多くの人々は権力を手にした一部の人間がきっと全てを良い方に向けてくれると信じてしまった。それは、祖国への純粋な愛と深遠ゆえだった。P
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自分が見たくないものを見ない、自分とは関わりのないことには興味を示さない、自分の生活が、身の回りが平和であればよいという無関心がナチスを生み出したということを逆説的に伝えてくれる歴史的証言。ああなるとはわからなかった、知らなかったというのは簡単である。 ポムゼルさんは、戦後、ソ連...
自分が見たくないものを見ない、自分とは関わりのないことには興味を示さない、自分の生活が、身の回りが平和であればよいという無関心がナチスを生み出したということを逆説的に伝えてくれる歴史的証言。ああなるとはわからなかった、知らなかったというのは簡単である。 ポムゼルさんは、戦後、ソ連の強制収容所での暮らしを余儀なくされている。そもそも国を失っている。恋人さえ、失っている。そういう意味では被害者であることには違いないのだけれども、やはり釈然としないものがある。 解説にもある通り、日本を含めた全世界が、ポピュリズムの台頭と分断ーそれは実はエリート自身が招いているとする説もあり、新鮮だった。ーの中にある。日々の生活や将来の不安に目がいって、もっと大切な普遍的な価値、平和とか平等と言いかえてもよい、がないがしろにされていないだろうか。 現代を生きる私たちに、またあの時代を繰り返してしまうのか、と静かに問いかける本でした。
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