「がん」はなぜできるのか の商品レビュー
2018年刊行時点でのがん研究、特にがんゲノム医療の基礎についてまとめられた本。国立がん研究センター編なだけあり、これほど安心して読めるがん研究入門書はなかなか無いのではないでしょうか。 第1章、第2章、第8章ではがんゲノム研究と、その成果である治療薬について語られています。がん...
2018年刊行時点でのがん研究、特にがんゲノム医療の基礎についてまとめられた本。国立がん研究センター編なだけあり、これほど安心して読めるがん研究入門書はなかなか無いのではないでしょうか。 第1章、第2章、第8章ではがんゲノム研究と、その成果である治療薬について語られています。がん細胞の遺伝的多様性を軸に語られる最新の研究成果は知的好奇心を大いにくすぐられます。同ブルーバックスの「DNAの98%は謎」という本がわたしが好きなのですが、その本をゲノム基礎研究についての本だとするならば、本書は「がん」を題材に応用研究を述べた本とも読めそうです。「がん」は人類の死因の多くを占め、社会的関心も高いですから、その応用スピードは目覚しいものです。不謹慎かもしれませんが、遺伝子や細胞の仕組みを考えていく上で、これほど面白い題材もなかなかありません。 第3章~第7章は、テーマに沿って様々なトピックが語られています。やや個別の事例に寄った各論的な話も多いので、興味のあるところだけ読むのも手かと思いました。
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ガンのでき方、仕組み、そして逃れる知恵、そしてそれを追いかける医療。遺伝子科学、分子化学、デジタルの進展から「がん」のメカニズムとその複雑さ、そして可変性。医療界の方々に頭が下がります。〇〇の機能が発現しないように抗体とか高分子の○○とか、それを見つけて作って送り込んでしまう医療もすごいし、それを掻い潜るガンも凄い。まるでウイルスみたいに遺伝子が変異して生き残ろうとする。細胞間の生存競争。変化したガンが生き残る。厄介。でも、今後の医療の進展に期待が持てる、そして非常に分かりやすい作品でした。
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https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000057484
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遺伝子変異により無限に分裂できる細胞が生まれ、肥大化することで、臓器の機能不全や出血、体力消耗につながり死に至る。これががんらしい。 通信で言うパリティチェックみたいのを想像した。正常な場合、遺伝子変異を訂正する細胞が抑止してるんだけど、そいつすらも侵食されて機能できなくなること...
遺伝子変異により無限に分裂できる細胞が生まれ、肥大化することで、臓器の機能不全や出血、体力消耗につながり死に至る。これががんらしい。 通信で言うパリティチェックみたいのを想像した。正常な場合、遺伝子変異を訂正する細胞が抑止してるんだけど、そいつすらも侵食されて機能できなくなることで、手がつけられない状態になる。 遺伝子変異の要因として炎症が考えられるため、炎症を避けるための「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」で、がんリスクはほぼ半減できるらしい。
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第1章 がんとは何か? 悪性腫瘍とはコントロールされない細胞の増殖であり、自律性増殖、浸潤と転移、悪液質を引きおこすなどの特徴がある。癌腫(上皮性)、肉腫(間質性)、その他血液がんなどに大別される。がんは昔から知られており、近代以後は発がん性の発見(19世紀)、がん遺伝子の発見(20世紀)など研究が進んだ。リン酸化によるシグナル伝達の変異ががんを引きおこすこと、逆にがんを抑制する遺伝子も存在することが判明した。現在は遺伝子レベルのがん化を抑制する分子標的薬が開発され、主力になっている。 第2章 どうして生じるのか? 遺伝子変異の蓄積や、染色体異常によりがんが生じる。がん遺伝子の活性化やがん抑制遺伝子の不活性化など、異常の起こる遺伝子の機能も影響する。カビ毒やタール等の化学物質への曝露、放射線への曝露、細菌やウイルス感染などの外因的要素や、遺伝的素因など内因的な素因がある。がん細胞自体も変化してゆき、多様性を獲得することで、難治性がんに進行してゆく。変異遺伝子の種類によってがんの性質も変わってくるらしい。 第3章 がんがしぶとく生き残る術 がん細胞は健常人にも自然発生しており、免疫により排除されているが、悪性化細胞は免疫をかいくぐって無力化する性質を持っている。がん細胞自身が抗原性を失う変異を起こす、免疫抑制サイトカインを分泌する、免疫抑制機能を持つ細胞を利用する。また免疫チェックポイント分子を用いてT細胞を無力化するなどの戦略があり、これを利用した抗がん剤も開発されている。 第4章 がんと老化の複雑な関係 高齢になるとがんの発症率が上がるが、ストレスによる細胞老化がその一因である。老化細胞により起こる慢性炎症ががんの原因になる。 第5章 再発と転移 がんの再発は、がん細胞群の中にあるがん幹細胞が原因である。がん幹細胞は種のように休眠しており、抗がん剤治療にも影響されにくい。これを除去することで再発を予防できる可能性がある。がん細胞の転移は急速に進行する。がん細胞は細胞環境に依存して増殖する足場依存性を失っているにも関わらず増殖してしまう。また転移しやすい場所がある。 第6章 がんを見つける、見極める 良質ながん治療を行うためには早期発見が重要であるが、がん検診はコストがかかる。腫瘍マーカーも利用できるが早期発見にはあまり有用ではない。血中のmiRNAを利用する方法が有望であり開発されている。 第7章 予防できるのか? 発がん予防の鍵は生活習慣の改善にある。禁煙・節酒・食生活・身体活動・適正体重の維持が現時点で重要だと考えられている。がん予防効果のある薬剤も既存薬を中心に検討されている。 第8章 ゲノムが拓く新しいがん医療 抗がん剤は伝統的な細胞障害性抗がん剤と、近年の遺伝子的知見に基づく分子標的薬に大別される。分子標的薬の問題は副作用と治療抵抗性の発現である。遺伝子解析により抗がん剤が開発されることで、がんの分類も原因遺伝子に基づいて行われる可能性がある。更に分子標的薬の標的分子が発現する前にブロックする核酸医薬も開発中である。また治療抵抗性の発現も乗り越えるべき課題である。がんゲノム医療の拡大が期待されている。
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「がん」という病の不思議さ、それはひとえにその多様性に尽きる。なぜ様々な臓器に発生しそれぞれ性質が異なるのか。なぜ人によって同一治療の有効性に差があるのか。本書はがんの性質の不思議さをその本態と成因を詳述し、現代医療における最新治療との関連においてその謎を解き明かそうとする。 ...
「がん」という病の不思議さ、それはひとえにその多様性に尽きる。なぜ様々な臓器に発生しそれぞれ性質が異なるのか。なぜ人によって同一治療の有効性に差があるのか。本書はがんの性質の不思議さをその本態と成因を詳述し、現代医療における最新治療との関連においてその謎を解き明かそうとする。 本書によればがんの多様性は、がん細胞が単一ではなく非常に多くの種類の変異が蓄積されることによって発生することに起因するという。その原因の一つである遺伝子変異を例に挙げれば、その変異によりがんの発生と進展に直接関与する「ドライバー遺伝子」はこれまでに15個特定されているが、これらのうち同種のがんにおいて最も多く共通して現れるものでもせいぜい50%弱の頻度でしか発現しておらず、多くのものは10%以下にしか見られないという。つまりゲノムの変異自体は少数でもその組み合わせが症例によって大きく異なるのであり、従って治療にもその組み合わせごとに応じた個別性が要求されることになるというわけだ。 また、がんは宿主の免疫系による攻撃を受けているが、変異の蓄積がゲノムの多様性をもたらすため、免疫系のチェックをかいくぐり環境に適応するゲノム変異がどうしても残存していくのだという(がんゲノム進化)。これにがん細胞のもつ増殖能、転移能を考え合わせれば、がん治療の困難さが否応なく理解される。 余談。読んだ時期がノーベル賞の季節にたまたま重なったため印象に残ったのだが、本書中でフィビゲルなるデンマークの科学者に触れるくだりがいくつかある。彼は寄生虫ががんを引き起こすという「寄生虫発がん説」の提唱により1926年にノーベル賞を受賞しているのだが、後世にそれが誤りだったことが判明したという。現在のノーベル賞が、相当な期間をもって多面的に検証され、十分に確立された研究成果に対してのみ慎重に授与されるようになったのも、このような経験を経たからこそなのだろう。
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・免疫チェックポイント阻害剤 ・pdi抗体 のニボルマブ→商品名 オプジーボ ・がんの原因 遺伝子変異 ・炎症からがん化するケースがある ・遺伝子に傷がつく事がきっかけで、DNAが変異する ・増殖するがん細胞は不死化 ・高齢になるとがんになる可能性が高くなる ・再発と転移が治療...
・免疫チェックポイント阻害剤 ・pdi抗体 のニボルマブ→商品名 オプジーボ ・がんの原因 遺伝子変異 ・炎症からがん化するケースがある ・遺伝子に傷がつく事がきっかけで、DNAが変異する ・増殖するがん細胞は不死化 ・高齢になるとがんになる可能性が高くなる ・再発と転移が治療を困難にさせる ・再発と転移の要因は幹細胞にある ・足場依存性と足場非依存性の肺癌 正常細胞は足場を失い浮遊状態になると細胞死を起こす。転移がんは浮遊しても死なない。→足場非依存性はタンパク質のリン酸化が強い→RNA干渉法で膜タンパク質の量を減らすとがん細胞は増えることごできない。 ・遺伝は5%、がんの発症要因はタバコと食事が30%ずつ。 ・分子標的薬 →正常細胞を避けて、がんに狙い撃ちする抗がん剤 ゲフィチニブ 非小細胞肺癌 →副作用として皮膚発疹や間質性肺炎 ・ALK阻害剤クリゾチニブ →タンパク質の機能を抑える肺がん治療薬 ・ALK融合遺伝子による肺がんの場合→3種類の分子標的薬 クリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブ →特効薬であり副作用もない。 ・他にもROS1(ロスワン)融合遺伝子やRET融合遺伝子についても、分子標的薬が開発されて臨床試験が進んでいる。 ・原因となる融合遺伝子 ・原因遺伝子の分類が治療薬の選択に直結する →遺伝子を調べる事が適切な治療薬につながる。 ・拡酸(さん)医薬の効果 →まだ治療薬として承認されていない→TDM812 が最初の拡酸治療薬になることを期待 ・分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤と頼りになる治療薬の選択肢が増えている。 これに加えて拡酸医薬など新たなコンセプトの治療薬に期待。 更にゲノム医療で適切な治療薬を選択。 ・ゲフィチニブは肺癌に効果あるが、しばらくすると抵抗性がでてきて薬が効かなくなる。 ・がんゲノム医療中核拠点病院、連携病院、 これらの病院に限っては公的保険が適用される予定(早ければ2019年から)
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最新の研究成果が満載で、「がん」が何故できるのかそのメカニズムを詳しく知ることが出来た。 不安心を煽ることなく「がん」について冷静に記述する意志が随所に感じられる。まさに、「がん」の教科書とも呼べる一冊ではなかろうか。
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免疫チェックポイント阻害剤も含めて、最近のガン治療薬を取り上げ、またガンと老化との関係などベースになる知見を網羅しており、基本から先進までの多くの話題を上手く記述しています。久し振りのヒットとなるblue backs ですね!
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ブルーバックスだけあって、内容がしっかりしている(と思われる)のと読みやすさを両立させていると感じます。 なかなか予防とかは難しい病気だとは思いますが、今後の発展にすごく期待します。
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