白墨人形 の商品レビュー
スティーヴン・キング氏の本を読むのを躊躇い、彼が絶賛したとのことで読んでみようと思った。 過去と現在が交互に出てくる作品で、早く先を読ませてくれと思う作品。おばけ、幽霊、ピエロ、怪物、得体の知れないものも怖いけど、やっぱり1番怖いのは人間だと思い知らされる作品。
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1986年、まだ少年だった僕たちは月並みな日々を送っていた。 友人達とやんちゃもしたし、喧嘩もした。 甘酸っぱい恋に憧れることもあった。 大人たちの難しい話は無視したし、友達の体に付いた痣の意味もまだ分からなかったけど、それなりに平穏な日々を送っていたはずだった、あの時までは。...
1986年、まだ少年だった僕たちは月並みな日々を送っていた。 友人達とやんちゃもしたし、喧嘩もした。 甘酸っぱい恋に憧れることもあった。 大人たちの難しい話は無視したし、友達の体に付いた痣の意味もまだ分からなかったけど、それなりに平穏な日々を送っていたはずだった、あの時までは。 事件の始まりはいつだったのか、僕が移動遊園地で凄惨な事故を目撃した時なのか、友達の兄貴が溺死した時? それともチョークの落書きで伝言を始めた時? 2016年、42歳になった僕に投げられた言葉。 誰もが間違っていたし、誰もが秘密を抱えていたあの事件の真相を明らかにする時が来たのか。 「あの事件の真犯人を知っている。」 スティーヴン・キング推薦という強力な後ろ盾を以て日本でも刊行された本作。 スタンドバイミーを彷彿とさせるようなティーンエージャーを中心とした物語。 彼らは年相応に未熟であって、それ故に事件の大きさも方向性も変わってゆく。 点と点が結ばれて隠された線を探偵役が見つけ出すようなかっこいい物語ではない。 色々な事件が起き、過去でも未来でも、殺人も起きたしそうじゃない事件も起きていた。 それらのほとんど線は2016年に回収される。 振り返れば些細なことだが当時の未熟な少年たちと大人たちの蟠りの前では有耶無耶になった。 <本物の友達じゃないから。子供のころから知っているっていうだけ。> そう、確かに彼らは親友ではなかった。 秘密を共有するには身分が違い過ぎた。 ただ近所に住んでいるだけでは明かせない事実あった。 もし彼らが強固な絆で結ばれた親友同士で合ったら事件はこんなにも複雑に残酷にはならなかったのかもしれない。 でも小学生時代の友人関係なんてそんなもんだと思う。 複雑な人間関係、身分違いの個性的な人物たちを多彩に書き分け最終ページに恐るべき秘密を隠してみせた本作。 キング氏のサスペンスな作風が好きなら一読の価値ありです。
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初めての子供たちだけでのお出かけ、楽しいはずの移動遊園地で対照的に、痛ましい事故が起こる。それをきっかけに静かな田舎町で事件が起こる。そして、全て終わったはずの30年後、不吉な兆しチョークマンが再び現れた…。 ジュブナイル冒険もののようなパートとサスペンス、時代を交差しながら読...
初めての子供たちだけでのお出かけ、楽しいはずの移動遊園地で対照的に、痛ましい事故が起こる。それをきっかけに静かな田舎町で事件が起こる。そして、全て終わったはずの30年後、不吉な兆しチョークマンが再び現れた…。 ジュブナイル冒険もののようなパートとサスペンス、時代を交差しながら読者は真相に近づいていく。後半に近づくにつれ先が気になり久しぶりに一気読みした。人はみな、自分なだけの隠し事がある。どんなに親しい人にも。巧妙に隠された真実に、思い違いをすることも。クライマックスからエンディングにかけてひっくり返された。そしてラスト…ある意味ホラーより怖かった。 図書館で見つけて「スティーブンキング協力推薦」の帯に惹かれて手に取ってよかった。
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「スタンドバイミー」と「IT」を足して2で割ったような話だなぁと読んでいたが、訳者あとがきでも同じようなことが...超常現象はありませんが、面白い! ファット・ギャブと友達になりたい。
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書評七福神が選んだ翻訳ミステリー本で「スティーブン·キングがお薦めなのに面白い」みたいな紹介のされ方にひかれ、読みました。 キング臭、という語彙の無さがバレますが久しぶりのあの世界を見てしまった気がします。
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本を読むのは好きなはずだが、実際はしんどい。なんとか苦痛から逃れたいからページをめくる。ここ最近はずっとそんな感じだったが、この本は良かった。ミステリーなんだが、作者がこうしなきゃ、こうあるべき、という頭の固さがなく、テーマにミステリーを選んだだけであって、読む者に誠実に物語を創...
本を読むのは好きなはずだが、実際はしんどい。なんとか苦痛から逃れたいからページをめくる。ここ最近はずっとそんな感じだったが、この本は良かった。ミステリーなんだが、作者がこうしなきゃ、こうあるべき、という頭の固さがなく、テーマにミステリーを選んだだけであって、読む者に誠実に物語を創作できている。そういう作品って、人物表記もへんてこな箇所がない。必要のない背伸びをしない、作者の誠実さと勇気のおかげで、非常に楽しく読めた。
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1986年イギリスの小さな町に住む4人の少年エディ、ギャブ、ミッキー、ホッポと1人の少女ニッキー。彼らはいつも一緒に遊ぶ仲間。 それほど裕福でもない家族が集まった小さな町で、少しずつ事件が起きる。 移動遊園地で遊具に乗っていた金髪の少女を襲った不幸な事故。少し影のある新任のハロー...
1986年イギリスの小さな町に住む4人の少年エディ、ギャブ、ミッキー、ホッポと1人の少女ニッキー。彼らはいつも一緒に遊ぶ仲間。 それほど裕福でもない家族が集まった小さな町で、少しずつ事件が起きる。 移動遊園地で遊具に乗っていた金髪の少女を襲った不幸な事故。少し影のある新任のハローラン先生、乱暴者のミッキーの兄の溺死、中絶手術を行うエディの母親に対してニッキーの父親の牧師が行う反対運動の過激化、、、そして金髪の少女のバラバラ死体を森で発見するエディたち。 2018年、すっかり中年の域入ったエディのところにメッセージが。決着がついたようで、謎のままに終わった少年時代の記憶を辿りながら、エディは真相に迫ろうとする。 イギリスに住む女性が書いた作品。 そして、スティーブン・キングが「わたしの書くものが好きなら、この本も好きになるはず」とツイートしたというのも肯ける。「スタンド・バイ・ミー(原題 “The Body”)」と「IT」を足したような味わいだ。 登場人物たちの家庭は、どの家庭もそれほど裕福とは言えず、何かバランスを描いた不安定さがある。 少年たちの境遇が彼らの将来に暗い陰を落としているが、それでもまだそれを知らない少年時代を楽しんでいる。そこは「スタンド・バイ・ミー」だ。 そして、その陰が現実になったことを確認するかのように、30年後の2018年の彼らの話が交互に語られる。その構成は「IT」だ。 こういう貧困にあって、半ば将来を諦めつつも明るく振る舞う少年時代を描くのはキングの得意なところだが、それをイギリス人の女性が書いたというのが凄い。
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「聖人になるには、汚れ一つない人生を送らねばならないのか。それとも罪深い生き方をしていても、奇跡を2・3起こしさえすればいいのだろうか。」「悔い改めさえすればすべて許される。そこがどうしても公平には思えない。だいいち神そのものが人生と同じように公平ではない」「一つ罪を犯したからと...
「聖人になるには、汚れ一つない人生を送らねばならないのか。それとも罪深い生き方をしていても、奇跡を2・3起こしさえすればいいのだろうか。」「悔い改めさえすればすべて許される。そこがどうしても公平には思えない。だいいち神そのものが人生と同じように公平ではない」「一つ罪を犯したからといって、それまでの善い行いもすべて帳消しになるのだろうか。どんな善行をもってしても贖いない大きな罪もあるのあろうか」
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現在と少年時代を行き来しながら進む物語は、まるで『スタンド・バイ・ミー』と『IT』を併せたような雰囲気で面白い!ホラーテイストのあるミステリーとして、そして帯にある通りスティーブン・キング好きには堪らない一冊でした。
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キングが「私の書くものが好きなら、この本を気に入るはずだ」と言ったと帯にあり読んでみました。他の方のレビューにもありましたが読んでいると『IT』を思い出させる雰囲気、恐怖を直接書くのではなく恐怖を感じる空気というか緊張感を書けるというのがキングに通じると思いました。42歳になった...
キングが「私の書くものが好きなら、この本を気に入るはずだ」と言ったと帯にあり読んでみました。他の方のレビューにもありましたが読んでいると『IT』を思い出させる雰囲気、恐怖を直接書くのではなく恐怖を感じる空気というか緊張感を書けるというのがキングに通じると思いました。42歳になった主人公が12歳の時に経験した一連の事件を振り返るのですが現在と30年前の章が入れ替わりながら進むという構成も巧み。主な登場人物のほぼ全員がなにがしかの嘘や誤魔化し悪癖又は病や罪を抱えているという救いの無い世界でやりきれなさはあるものの、作品に散りばめられたいろいろの謎は小さなものまでかなりきちんと解説してくれたので読後にモヤモヤすることは無かったです。とはいえ、重要人物の一人であるある人物が、キング作品にも見られる「マジカル・ニグロ」のような役割(黒人ではないけれどマイノリティの属性)の設定だったのは気になりました。アメリカ人のキングの作風に通じるところがありつつ、イギリス人らしい斜に構えたシニカルさもあって、読みごたえがありました。
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