軌道 の商品レビュー
福知山線事故の遺族、JR西日本との闘いを追ったノンフィクション。 人的責任ではなく、企業本体の闇に光をあて 改善していく長い長い闘い。 ヒューマンエラーで片付けてはいけないという事が、良くわかる。
Posted by
2005年JR西日本福知山線脱線事故で、妻と妹を失った浅野さんをモデルに、事故を起こした運転士よりもその会社体質正すことに費やした10年間。重大事故の対応として江戸の大火の昔から変わらずの個人責任追及主義、無関係者からの誹謗中傷を読んで憂鬱になった。
Posted by
ある日突然自分の肉親を失わなければならないような事故に遭遇した際、どのようにその事実と向き合い、その事実をどう自分の中で咀嚼して行けばいいのかということは、実際にそのような事実を目の前にした者に突きつけられる大きな難題であろう。 ましてや、その事故を起こした加害側がひときわ大きな...
ある日突然自分の肉親を失わなければならないような事故に遭遇した際、どのようにその事実と向き合い、その事実をどう自分の中で咀嚼して行けばいいのかということは、実際にそのような事実を目の前にした者に突きつけられる大きな難題であろう。 ましてや、その事故を起こした加害側がひときわ大きな組織体である場合は、どのようにそんな組織と向き合っていけばいいのか、肉親を失った悲しみも手伝って感情的になりがちな状況で、正常な判断などなかなかできるものではないということは想像に難くない。 それでも、「何が鎮魂になるのか」ということをひたすら自身に問い続けることによって、巨大な組織とどう向き合ってきたのかという事実、そしてその巨大な組織に改革を実行させたという苦闘がここには記されている。
Posted by
安全を守るために、ヒューマンエラーを企業が認め、それを社内に浸透させる難しさ。 遺族だが感情を一旦横におき、事実解明・今後への対応に全力をあげる被害者と、我関せず主義の加害企業の中から、共同調査を始めた社長。 非常に読み応えあり。
Posted by
2005年4月25日に発生した、あの福知山線の事故。 あれはやはりJR西日本という企業が生み出した事故 なのでしょう。 通常、事故といえば個人の過失やシステムの故障、 車両などの整備の欠陥に行き着きますが、あの事故 に関しては違いました。 間違いなく組織が起こした事故であるこ...
2005年4月25日に発生した、あの福知山線の事故。 あれはやはりJR西日本という企業が生み出した事故 なのでしょう。 通常、事故といえば個人の過失やシステムの故障、 車両などの整備の欠陥に行き着きますが、あの事故 に関しては違いました。 間違いなく組織が起こした事故であることがこの本 から理解できます。 その責任をJR西日本に認めさせ、改善させるまでの 闘いがこの本に記されています。 誰もが当事者になりうる事故です。背筋を伸ばして 読むべき一冊です。
Posted by
電車の中で若い人が、「昔関西で大きい自己があったらしいよ」という話しをしているときにふと、これはそんな前だったかと思い、思い返して書物を手に取った。当時、一歩違えば乗り合わせていた偶然に震撼した記憶がある。その実態の一つ一つを社会問題として、自分の心に刻める本。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
この事故の遺族の働きにより大企業が大変革を遂げた。 人の犠牲が無ければ安全度が上がっていかないのはとても悲しいが。 ヒューマンエラーはつきもの。それをどのようにしたら減らしていけるのか、 自動運転等の技術開発もされている現代社会の大きな課題だとも感じた。 TV東京系の番組で会社社長が取り上げているのをよく見るが、どこまで本当なのだろうかとも考えさせられた。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
2018年「「Yahoo!ニュース | 本屋大賞 ノンフィクション本大賞」ノミネート作品今年を含め今までのベストに入るルポタージュの傑作組織論、危機管理、社会学等いろいろな視点で読み取れる「軌道」の複数の意味が感慨深い旧国鉄の労使問題については管理者の立場としては井手の視点に立ってしまう
Posted by
大変不勉強なんですが、福知山線脱線事故というと「日勤教育」と井出天皇のイメージしかなく、その後に遺族とJR西にこんな事実があったことを全く知りませんでした。 本書は遺族の一人、浅野弥三一にスポットを当て、彼の視点での事故顛末を追っている。科学技術の使命、遺族の責務、問題の社会化視...
大変不勉強なんですが、福知山線脱線事故というと「日勤教育」と井出天皇のイメージしかなく、その後に遺族とJR西にこんな事実があったことを全く知りませんでした。 本書は遺族の一人、浅野弥三一にスポットを当て、彼の視点での事故顛末を追っている。科学技術の使命、遺族の責務、問題の社会化視点、確率論の異議(ファクトを読み解く視点)、安全と経営の両立、という凡そ遺族とは思えない冷静な立場で巨大組織に挑む姿は神々しささえ感じました。特にそんなもの無いだろうと思われる「遺族の責務」に固執し続ける姿勢には心打たれるものがあります。 主人公に負けず劣らず、筆者の展開力・構成力・筆力も感嘆ものです。ノンフィクションの素晴らしさを堪能できます。 元神戸新聞記者は素晴らしいノンフィクション作家を誕生させる孵卵器のようですね。
Posted by
2005年4月発生したJR西日本福知山線の車両脱線事故。107名の犠牲者を出す戦後最悪クラスの列車事故の原因は、JR西日本の組織風土にあるのではないか。 その検証のために、一個人として巨大なJR西日本に立ち向かい、気が遠くなるような対話を経て、徐々にJR西日本に自らの組織の問題...
2005年4月発生したJR西日本福知山線の車両脱線事故。107名の犠牲者を出す戦後最悪クラスの列車事故の原因は、JR西日本の組織風土にあるのではないか。 その検証のために、一個人として巨大なJR西日本に立ち向かい、気が遠くなるような対話を経て、徐々にJR西日本に自らの組織の問題を直視させた遺族がいた。妻と妹を亡くし娘が負傷した都市計画コンサルタントの淺野氏という男性がその人である。本書は彼に長年寄り添ったライターが、彼の10年あまりに及ぶ長い闘いを描いたノンフィクションである。 本書では、JR西日本が組織風土が問題の一因であるということを直視するまで、あくまで運転手という一個人の適性やヒューマンエラーが原因であるということが示される。そこから、いかにヒューマンエラーを起こさせないような組織風土、起きてもリカバリー可能な鉄道運行システムをどう構築するかという認識の変換が発生するわけで、JR西日本という極めてディフェンシブな大企業を動かした背景に一遺族の行動があるということに驚かされると同時に、淺野氏の「事故に対する怒りと原因究明を切り分ける」という常人にはなかなか真似ができない思想が突破口となったことがよく理解できる。 一つの企業が自らが見たくない現実を直視し、そこから変化を遂げるということはどういうことなのか。グロテスクなまでの組織防衛の生々しさも含めて、本書は大組織で働く人に対して、様々な思いを抱かせてくれると思う。
Posted by