ザ・ヘイト・ユー・ギヴ の商品レビュー
この本に出会えてよかった。 私は知らないことが本当に多い。 人種差別の問題について、知って考えるきっかけをくれる本だと思う。 この本は少し前から本棚にいたが、NHKの映像の世紀_stranger fruits を見て、今読むべきだなと思って読了。 16歳の少女スターは、目の前...
この本に出会えてよかった。 私は知らないことが本当に多い。 人種差別の問題について、知って考えるきっかけをくれる本だと思う。 この本は少し前から本棚にいたが、NHKの映像の世紀_stranger fruits を見て、今読むべきだなと思って読了。 16歳の少女スターは、目の前で幼馴染を警官に射殺されてしまう。殺されてしまったカリルの問題に対して、世間の見方は本当にそれぞれ。たくさんの常識がぶつかり合っている。その中で、心に深い傷を負いながらも、恐怖を抱えながらも、正しい行いが何か、スターは向き合っている。 また、スターが通っているのは白人の子供たちが多く在籍する学校で、クリスという白人の彼氏がいる。生まれ育った街での自分、学校での自分。あまりに違う環境を行き来するスターの葛藤が伝わってくる。 いい本だった。ぜひ読んでほしい。
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目の前で親友を白人警官に射殺された16歳の黒人の少女、スター。深い心の傷を抱えたまま、白人中心の高校で何事もなかったかのように過ごしていたが、警察が警官を正当化し、真実が曲げられて報道されるのに憤り、親友の名誉のため、勇気を出して社会の矛盾に立ち向かってゆく。 スターの成長と両親...
目の前で親友を白人警官に射殺された16歳の黒人の少女、スター。深い心の傷を抱えたまま、白人中心の高校で何事もなかったかのように過ごしていたが、警察が警官を正当化し、真実が曲げられて報道されるのに憤り、親友の名誉のため、勇気を出して社会の矛盾に立ち向かってゆく。 スターの成長と両親の強くて深い愛に感動した。
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幼なじみのカリルが目の前で白人警察に射殺された——主人公は黒人街で暮らす16歳の高校生 スター。壮絶な"日常"が彼女の目を通して語られるYA本。 2018年に映画化、2019年には課題図書(高等学校の部)に選ばれた。 親しかった人を二人もなくす辛さは計り知れ...
幼なじみのカリルが目の前で白人警察に射殺された——主人公は黒人街で暮らす16歳の高校生 スター。壮絶な"日常"が彼女の目を通して語られるYA本。 2018年に映画化、2019年には課題図書(高等学校の部)に選ばれた。 親しかった人を二人もなくす辛さは計り知れない。友達のナターシャは10歳でギャングの抗争に巻き込まれて亡くなった。それ以来私立のウィリアムソン校に通うスターだが、今度は目の前で…。 「アナウンサーはニュースでカリルの名前すら口にしなかった。黒人が黒人だというだけで殺されるなんて!」 理不尽な行為に怒りながらも、自分の見たことを話すのがこわくてたまらないスターの心情に胸が痛くなった。 スターの家族や彼女に関わる人達が愛情深く描かれている。 娘に語る父親マーベリックの言葉 「ドラッグがよそから入ってきて俺たちの町を破壊する。仕事がない。知識がない。ドラッグがないと生きていけない人や生きるためにドラッグを売る人間を大勢生み出す。俺たちが植えつけられた憎しみ、俺たちに押しつけられたシステム。それがThug Life(サグライフ)」で、題名の意味が理解できた。 スターが亡くなったカリルの母親を見て「ずっと放っておいて、今更おそい」ときつく当たった時に、母リサが言った言葉が心に残った。 「息子なの!おなかを痛めて産んだ、自分の子どもなのよ。あなたに彼女を裁く権利はないわ」 看護師でもあるリサの厳しさ、優しさが娘の決断「私は撃たれた友の声になる」ことを後押ししたのではないかと思う。 「正しい行いをしていてもうまくいかないときはあるわ。大切なのは、それでも決して正しい行いをやめないこと。 状況を変えるために声を上げる。口をつぐんじゃいけないんだ」 物語に入り込むまで時間がかかってしまったけれど、立ち上がっていくスターの姿に光が見えた。 最後のページに並んでいる人々の名前が何を意味するか、是非手に取って読んで貰いたい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
16歳の女子高校生、スターが住むガーデン・ハイツはギャングが抗争を繰り広げるゲットーと言われる町。10歳の時、スターの友達のナターシャは抗争の犠牲となって殺された。両親はスターを遠くの金持ちの白人たちが多い私立の学校に転校させた。 地元の友達の家のパーティに出かけたスターは久しぶりに幼なじみのカリルに会う。会場内から聞こえた銃声から逃れるためカリルの車で家に帰る途中、パトカーに停車させられる。カリルがスターに声をかけるため車の中に顔を入れたところ、いきなり後ろから警官に撃たれ、カリルは撃ち殺されてしまった。 その後、身の安全のため、その場に自分もいた事を隠していたスターだが、目撃者として証言したにも関わらず、警官の行為を正当化するためにカリルがどんどん危険人物扱いされていく事に追い詰められていく。 カリルは何もしていないのに勝手に黒人を怖がった白人警官によって殺された、という事実は抗議運動へと発展し、焼き討ちまで引き起こした。カリルの為、人種差別に抗議するため、ついにテレビのインタビューに応じたスターは、地元のギャングであるキングを告発する内容を話してしまい、キングたちの恨みも買ってしまった...。 アメリカの銃規制の実態が分からないのだが、持っていてもそれほど驚かれないもの、のように描かれている。そこらじゅうに銃が存在する、過去の話ではなく、今でもあるのだ。そして人種差別もある。マイノリティへの差別的な言動を正当化してしまうヘイリーのような人も多いかもしれない。だが、多様性の国アメリカでは、この作品を3ヶ月もニューヨーク・タイムズのベストセラーランキング1位にしたのだ。その健全さを羨ましいと思う。原作は2017年に発行されている。 それにしても、ラップの曲や90年代のダンスミュージックに詳しければもっと楽しめただろうな。
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もう死ななくてよかった ・・・たぶんもっとたくさん死んでるだろうけど 彼女を含め、周りが 知ることってほんの僅かだ
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去年読んだ『オール・アメリカン・ボーイズ』は、警察暴力の被害者となった黒人少年の視点を黒人の作家が、事件の現場を目撃した白人少年の視点を白人の作家が描き、それぞれが交錯するような形で黒人差別、警察暴力を暴きBLMを訴えるような作品だった。 比較すると、こちらは女の子が主人公で、親...
去年読んだ『オール・アメリカン・ボーイズ』は、警察暴力の被害者となった黒人少年の視点を黒人の作家が、事件の現場を目撃した白人少年の視点を白人の作家が描き、それぞれが交錯するような形で黒人差別、警察暴力を暴きBLMを訴えるような作品だった。 比較すると、こちらは女の子が主人公で、親友のカリルが警察に銃殺される現場に居合わせてしまう。被害者との親密度、自分も銃を向けられたという体験から、より生々しく痛みと悲しみと恐ろしさが伝わってくる。 さらに主人公が幼いときに別の親友も銃に倒れたという事実から、ガーデン・ハイツという地域におけるギャングの闘争や銃社会の脅威そのものなど、より大きな視点から、子どもたちが安心して過ごせる子ども時代や青春を奪う社会問題に触れている。 また、アンチ・レイシズムに理解を示さない白人の親友との訣別が描かれる一方、家族や親戚、アジア系の親友や白人の彼氏との絆や、コミュニティの精神や誇りも濃厚に描かれる。 デモが暴動へと発展して、コミュニティが破壊されたり、主人公自身の父親の店が放火されたりと、抗議活動が怒りの発散を目的としてしまった場合の危険性からも目を逸らさない。 本当にたくさんの出来事や差別や関係が描かれているのに、ごった煮のようには感じず、ひたむきに生きる人々の姿を通して人間の人生の重みが胸に迫ってくるような瑞々しくも強烈な作品でした。
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https://www.iwasakishoten.co.jp/book/b351474.html ギャングが徘徊し、ドラッグが蔓延するゲットー(黒人街)で生まれ育った高校生の女の子スターは、 10歳の時、友達が拳銃で撃たれるのを目撃していた。 その後、上流階級育ちの子らが通う...
https://www.iwasakishoten.co.jp/book/b351474.html ギャングが徘徊し、ドラッグが蔓延するゲットー(黒人街)で生まれ育った高校生の女の子スターは、 10歳の時、友達が拳銃で撃たれるのを目撃していた。 その後、上流階級育ちの子らが通う高校に通っていたスターだったが、ある夜、幼馴染のカリルが警官に撃たれるところを目撃してしまう。 しかし警察は、無抵抗のカリルを撃った白人警官の行為を正当化するため、カリルを極悪人に仕立て上げようとする……。 「私は立ち上がる。撃たれた友の声になる。」 カリルの声になることを誓ったスターは、カリルの汚名をそそぐ為、 証人として法廷に立つことを決意する。 実際のアメリカでの事件や社会問題を強く想起させる、社会派ヤングアダルト小説。 【受賞歴】 ★第65回課題図書(高等学校の部、2019年) ★SLA選定図書 ★2017年ボストングローブ・ホーンブック賞 フィクション部門受賞 ★2017年全米図書賞ロングリスト *** 最初本を手に取って読んでいたが、文字面からはどうしても情景を思い描くことができず、途中で映画を見た。映像の訴える力は圧倒的だ。改めて原作を読んでみたい。同時に今まで身の回りで起きてきた不条理な出来事を想起した。そして、現在進行形で起きている身近な事象についても。歴史や文化の差はあっても、日本で若い人らの声を汲んだYA小説は、もう書かれているだろうか。
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2020年は Black Lives Matter のムーヴメントの起きた年(つまりそれはこれまでもそうだったけれど相変わらずひどい事件が度々起こった上に、公平じゃない理不尽な処理がされることに注目が集まったということ)でしたが、そのタイミングで読むのに相応しい作品でした。子供の...
2020年は Black Lives Matter のムーヴメントの起きた年(つまりそれはこれまでもそうだったけれど相変わらずひどい事件が度々起こった上に、公平じゃない理不尽な処理がされることに注目が集まったということ)でしたが、そのタイミングで読むのに相応しい作品でした。子供の頃にテレビで「大草原の小さな家」を毎週楽しみに見て、原作本も全部読んで、アメリカの人たちは何かすれ違いやトラブルや誤解や衝突が起こったときに、とにかくお互いの考えや思いを率直に伝えあって途中で否定したり揚げ足取ったりしないで賛成できないことであってもきちんと一通り聞いて、うわー凄い!っと驚き感嘆したことを鮮やかに思い出しました。対して我が日本は「言わぬが花」や「阿吽の呼吸」や、最近ではすっかり嫌な感じでメジャーになった「ソンタク」したりして、本当のところは分かったのかどうか分からないのに分かったようなふりして解決したようなことにして、だから波風もあまり立たずに済むのかもしれないけれど、なんとなくうやむやふわふわもやもやっとさせたまま白黒(!)つけないままにするのがいいんだ、みたいな感じなので、「青少年読書感想文全国コンクール(高等学校の部)」の課題図書になったと知り、どういう感想文が出てきて、主催者側の主旨に合って認められた感想文はどういうので、選考にはもれたものでもこれはというのがあったのじゃないか、とか、でも本当に面白い感想はこういうコンクールなんかには参加しない子が全部読めた場合のものだよねきっと、とか、思いました。性教育の面からしても高校生が読むのにちょうどいいかも。出てくる音楽やドラマのネタが知らない方が多かったのが残念でしたが、それでも満足して読了。ぎくしゃくしながらも理解し合える人ばかりではなく、時間をかけてもお互い歩み寄ろうという気持ちがあってもどうしても無理な場合もあるという現実もきちんと淡々としっかり描いて居て好感をもちました。フィクションだけれど、現実の社会を分かりやすく映し出すためのお話で、きれいごとだけで済ませないきちんとした作品だと思いました。それでも全体としてはよくできた娯楽作品なのが素晴らしく、特に最後の方で主人公の少女スター(とその兄と姉妹)と白人のボーイフレンドクリスとの間で交わされる黒人から見た白人社会の不思議と、白人から見た黒人社会の不思議について率直に言い合うところが面白かったです。大変読みごたえがありました。良作。
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タイトルのインパクト(あなたがくれた憎しみ)に惹かれて手にとった、BLM時代のYA小説。「ゲットー」と呼ばれる黒人の町に暮らしながら、白人が多い中流地域の学校に通い、2つの世界の間で引き裂かれたように感じている16歳の少女スターは、幼馴染の少年が目の前で警官に射殺されるのを目撃し...
タイトルのインパクト(あなたがくれた憎しみ)に惹かれて手にとった、BLM時代のYA小説。「ゲットー」と呼ばれる黒人の町に暮らしながら、白人が多い中流地域の学校に通い、2つの世界の間で引き裂かれたように感じている16歳の少女スターは、幼馴染の少年が目の前で警官に射殺されるのを目撃したことから、一歩前に踏み出そうとする。 重大な事件を機に主人公が大きく成長するというプロットは、ある意味YAの王道だけれど、この少女にとって、幼馴染の暴力的な死を見るのが初めてでないという点は重要だ。犯罪と暴力に満ちた町で育つ子どもたちは、「ふつうの」子どもたちのように、無垢なままではいられない。殺された幼馴染の少年も麻薬の売人になっていた。黒人コミュニティの内的問題ととらえられがちなこうした社会的病理の根幹には、植え付けられてきた憎しみがある。それを自らひきうけ、ほどいていこうとする若者の姿に、著者が込めたメッセージがある。 主人公の家族もみな魅力的だ。元ギャングの食料品店主の父親に、看護師の母親。その父親が鼻つまみ者の女との間にもうけた異母兄のセブンは、2つの家族を守ろうと必死になっている。父親が投獄されていた間、父親代わりを務めていた叔父は警官で彼もまた2つの世界の間で引き裂かれている。どうしようもないけれど見捨てられない、コミュニティ全体が愛憎をはらむ大きな家族のようである感覚を伝えてくれるのは小説ならではだろう。 ただ、主人公が親友にフライドチキンに関するジョークを言われて傷つく背景などは日本の読者には理解しづらいし、「神経質に考えすぎだ」と受け取められがちだ。BLMへの理解を広げたいという思いがあればこそ翻訳も急がれたのだろうから、やはり日本の読者向けの解説は欲しかった気がするのだが。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
黒人が、警察官に射殺される、という事件が度々アメリカで起こり、注目を集めています。 黒人が暴徒化することもあり、歴史的に差別待遇を受けてきた(そしていまだに根強く残っている)ことの影響を強く感じます。 この作品も、白人警官に黒人の少年が射殺された、その事件現場に居合わせた黒人少女の物語です。 映画化もされたので、多くの方がこの作品ついて見聞きしたことがあるかもしれません。 ドラッグを売りさばくギャングが支配する治安の悪い地域であることや、撃たれた少年がドラッグの売買にかかわっていたことなどから、当初世間は警官の行動を正当なものと受け止めますが、主人公(スター)が目撃証言をしたことで、黒人社会から不満の声が上がります。 今なお残る、黒人への偏見と、差別。 小説(フィクション)でありながら、その実態を知ることができる、読み応えのある作品だと感じます。 中学生以上であれば、読み切ることができると思いますし、社会問題について考えるだけでなく、YA文学として読むこともできる作品です。 同様の事件がおこる背景には、人種問題だけでなく、銃社会であることや、社会的な貧困など様々な問題が関連しているのだと思いますし、(残念なことですが)また似たような事件も起こってしまうのだろうと思います。 日本人の多くは、黒人問題や不当な「射殺」という事件には直接的には関係のない「部外者」かもしれませんが、日本にも人種(国籍を含む出自の差)による差別は今なおくすぶり続けています。 差別をしていた/されていたという過去の歴史を変えることはできませんが、「今」を生きている個人一人ひとりを尊重することができる社会を築くことができるよう、いまいちど考え方を見直すことが必要なのだと思います。
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