天龍院亜希子の日記 の商品レビュー
するっと読める。固有名詞の使い方が上手い。みんな自分の仕事はくだらないと思ってる、だけど毎日を行き交う人々にもそれぞれ仕事はあるわけで、くだらないと思いつつそれでも仕事に向かうわたしたちを優しく肯定してくれるような本だった。
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先月発刊された安壇美緒さんの作品、第30回小説すばる新人賞受賞作『天龍院亜希子の日記』。 雑誌「ダヴィンチ」だったかでインタビュー記事が載っていて、早稲田大学第二文学部卒業の32歳。作品のタイトルはかなりシブいんですが、内容はタイトルのそれとかなりギャップがある現代作品です。 ...
先月発刊された安壇美緒さんの作品、第30回小説すばる新人賞受賞作『天龍院亜希子の日記』。 雑誌「ダヴィンチ」だったかでインタビュー記事が載っていて、早稲田大学第二文学部卒業の32歳。作品のタイトルはかなりシブいんですが、内容はタイトルのそれとかなりギャップがある現代作品です。 ブラックな人材派遣会社に中途社員として働く田町 譲。同じタイミングで中途で入った同僚の千葉ふみかとともに、忙しい毎日を送っている。そんな中、小学校の同級生・天龍院亜希子が綴った日記をネット上で見つける。ちょうどその頃、田町 譲の憧れていたプロ野球選手が薬物所持で逮捕をされるニュースが社会を席巻。 役に立たない上司と育児と出産で休みがちな先輩、そして結婚したいのかどうか分からない彼女。様々な悩みを抱えている中で、天龍院亜希子の日記と憧れていたプロ野球選手との思い出に支えられて毎日を一生懸命生きている青年の物語です。 綴られているのはよくある(?)日常で、自分自身がまさに今かなり激務に巻き込まれているためかもしれませんが、大いに感情移入してしまい一気に読みました。 みんなが自分勝手に生きているようで実はそうではなく、自分の知らないところで支えられていて、そして同じく自分が意識していない中で誰かを支えている。そして自分の知らないところで誰かが自分を応援してくれている。そんなことに気付かされましたし、そう思ったらここ最近の忙しさにも耐えていけそうです。 構えず、気負わず、さくっと読める文体とページ数なので、気になった方はぜひ!
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※このレビューにはネタバレを含みます
人のことを信じるのか、信じないのか、という問いには意味なんてないのかもしれない。日常を生きる上でそんなことは関係ないのかもしれない。 でも、情緒がある私たちは、ときどき生真面目に人のことを信じたくなる。 「相手に伝わらなくても人を信じきることで、自分が知り得ない誰かからの善意を信じることができる。何の証拠がなくっても、もしかしたらこの世の誰かがどこかでひそかに自分を応援してくれてるかもしれないって呆れた希望を持つことができる」 twitterの一人語りに意味を与えてくれる言葉だ。物語を読み、自分と誰かの物語を紡ぐことに希望を与えてくれる世界観だ。ゴールデンスランバーの読後感に近い。
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