私はあなたの記憶のなかに の商品レビュー
+++ 角田ワールド全開!心震える待望の小説集 《「さがさないで。私はあなたの記憶のなかに消えます。夜行列車の窓の向こうに、墓地の桜の木の彼方に、夏の海のきらめく波間に、レストランの格子窓の向こうに。おはよう、そしてさようなら。」――姿を消した妻をさがして僕は記憶をさかのぼる旅に...
+++ 角田ワールド全開!心震える待望の小説集 《「さがさないで。私はあなたの記憶のなかに消えます。夜行列車の窓の向こうに、墓地の桜の木の彼方に、夏の海のきらめく波間に、レストランの格子窓の向こうに。おはよう、そしてさようなら。」――姿を消した妻をさがして僕は記憶をさかのぼる旅に出た。》(表題作)のほか、《初子さんは扉のような人だった。小学生だった私に、扉の向こうの世界を教えてくれた。》(「父とガムと彼女」)、《K和田くんは消しゴムのような男の子だった。他人の弱さに共振して自分をすり減らす。》(「猫男」)、《イワナさんは母の恋人だった。私は、母にふられた彼と遊んであげることにした。》(「水曜日の恋人」)、《大学生・人妻・夫・元恋人。さまざまな男女の過去と現在が織りなす携帯メールの物語。》(「地上発、宇宙経由」)など八つの名短篇を初集成。 少女、大学生、青年、夫婦の目を通して、愛と記憶、過去と現在が交錯する多彩で技巧をこらした物語が始まる。角田光代の魅力があふれる魅惑の短篇小説集。 +++ 身近にありそうで、でも実際にはなさそうで、それでいて何とはなしに身に覚えのある感情を揺さぶられるような印象の物語たちである。実際に体験したわけではないのに、その場にいたことがあるような親しさを感じることがある。それは、人物にだったり、場所にだったり、あるいはその情景にだったりするのだが、振り返ってみても自分の人生の中にそんな場面はなかったはずなのである。そんな風にいつの間にか惹き込まれている一冊だった。
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ああ、こういう世界観だったなぁー、というのは、短編だからこそ振り返られる。でも、やっぱり長編が読みたいです。 2018/5/11読了
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ずいぶん古い短編の再録本だった。「神様のタクシー」だけは既読。 表題作が一番好きかな。銀河鉄道の夜みたい。結局、妻はどこに行ってしまったのかな。 「空のクロール」は、最後の最後に、いいぞもっとやれ╭( ・ㅂ・)و̑ ってなった。いじめの話は苦しいね。
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表題を含む短編作品。それぞれの主人公が心の奥底にある自分自身で解決できていない出来事があり、悩み苦しみもがいてその答えを導き出している。スッキリとした終わり方ではないけれど、それはそれで良いのかも、という感じで納得しました。
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彼に助けられ、救われ、立ち直り、傷を癒し、現実に戻り、再び前を歩けるように元気も与えてくれたのに、その彼に嫌悪さえ抱きながら背を向ける。なかったことにしようとする無意識にスポットをあえて充てる。何の悪意ももたず平然とやり過ごしてきた過去を、誰にでもある心のひっかりをゆっくりと、だ...
彼に助けられ、救われ、立ち直り、傷を癒し、現実に戻り、再び前を歩けるように元気も与えてくれたのに、その彼に嫌悪さえ抱きながら背を向ける。なかったことにしようとする無意識にスポットをあえて充てる。何の悪意ももたず平然とやり過ごしてきた過去を、誰にでもある心のひっかりをゆっくりと、だけど確実に思い起こさせてくれる短編集。拾遺集的な感じも漂わせるが、どれも力があり、はっとさせられる。今とはまた違った味わいがあった。
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父親が絶賛していて借りた。 角田さんは八日目の蝉以来かな? どれもざわざわする短編集。 大人の絵本を読んでいるような、答えのない答えを探すような気分で胸がざわざわする… 読んでいるとつい昼寝してしまい、夢だったのかなんだったのかあまり記憶に残らないけどなんか引っかかるような話ばか...
父親が絶賛していて借りた。 角田さんは八日目の蝉以来かな? どれもざわざわする短編集。 大人の絵本を読んでいるような、答えのない答えを探すような気分で胸がざわざわする… 読んでいるとつい昼寝してしまい、夢だったのかなんだったのかあまり記憶に残らないけどなんか引っかかるような話ばかり… 父の好きな本はだいたい趣味が合うのだけれど珍しく私は眠くなる作品だった。 2018.5.13
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爽やかなのか、ドロドロ(?)なのか判断に迷う。 日常と言えば日常、そうでないと言えばそうでない、みたいなある種の多面性とかそういうものかな?
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短編集。安定の面白さ。 中でも印象に残ったのは”地上発、宇宙経由” 間違いメールから広がる世界。 ”空のクロール”のいじめのえげつなさ。 これを想像で描けてしまう小説家ってやっぱりすごい。
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全体的にヒヤっと荒んだ印象が残る短編集。「おかえりなさい」は『最後の恋』で既読でした。どの短編も、もう少し素直に真面目に生きていれば幸せになれそうなのに、自分からつまらない人生に踏み込んでいるような残念な読後感です。でも表題作は胸を打ちました。物淋しさの中に真実が隠れているような、苦しくも美しい短編でした。奥様、無事に見つかりますように。
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表題作を除いてどれもどこかのアンソロジーに収録されてるので読んだことあるはずなんだけど、、わりと前すぎてどれも新鮮に感じた 特に好きだったのは父とガムと彼女、神様のタクシー、地上発宇宙経由の三本。角田さんの短編の良さが味わえる一冊。
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