蓮の数式 の商品レビュー
婚家から虐げられ孤立する女が出会ったのは、自らの生い立ちと算数障害に苦しむ若い男だった。愛を忘れた女と愛を知らない男の逃避行を描く長編作品。 一年に一度美しい花を咲かす蓮も、一年のほとんどはただの泥田。その蓮に希望を見出だすのか、それとも人生の辛苦を重ねるのか。千穂も透も感情移入...
婚家から虐げられ孤立する女が出会ったのは、自らの生い立ちと算数障害に苦しむ若い男だった。愛を忘れた女と愛を知らない男の逃避行を描く長編作品。 一年に一度美しい花を咲かす蓮も、一年のほとんどはただの泥田。その蓮に希望を見出だすのか、それとも人生の辛苦を重ねるのか。千穂も透も感情移入できる人物ではないが、何故か逃避行を支えたくなる。
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不妊治療を10年続けていても妊娠しない主人公。同居の義母からもひたすら嫌味を言われ、夫は味方になるどろこか一緒に彼女をなじり全てを束縛しようとする。 4回目の流産が判明した日、夫が交通事故を起こすが、同乗中の彼女に責任を負わせる。事故の被害者の若い男性はは他人と関わりを持ちたくな...
不妊治療を10年続けていても妊娠しない主人公。同居の義母からもひたすら嫌味を言われ、夫は味方になるどろこか一緒に彼女をなじり全てを束縛しようとする。 4回目の流産が判明した日、夫が交通事故を起こすが、同乗中の彼女に責任を負わせる。事故の被害者の若い男性はは他人と関わりを持ちたくなさそうで治療費を受け取ることさえも拒んだが、彼が算数障害であることに主人公が気づき、それがきっかけで算数を教えることになったのだが、夫に浮気の疑いをかけられ、彼と共に逃亡する。 一方で妻をある女に殺された男性は、その事件に関わりのある若い男性を偶然映り込んだテレビ中継で発見したが、その男は子供の頃に死んでいるはずだった。違和感を感じた男性はテレビで見た男を探し、それがやがて逃亡中の男女とも絡み、事の真相が明らかになっていく。 それぞれが闇の部分を抱え、それをどうにか処理しようとして、逃げる者、口を閉ざす者、真相を明らかにしようとする者などが交錯する。善意の悪が引き起こした事件だったり、悪意の悪が引き起こした事件だったり、どうにも救われない感じ。
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※このレビューにはネタバレを含みます
期待を裏切らない遠田潤子、この作品でも暗くて重い魂のブルースが延々と刻まれていく。楽しい話ではない、やるせない思いが募るばかりなのに、ページを繰る手が止まらない。 登場人物ほぼ全員が不幸を背負っているが、特に透という算数障害を持つ男が際立っている。「不幸を捨てに行くゴミ箱」…なんという役どころを作ってしまうのか。 登場人物たちの不幸が、透に収斂されていく切なさ。際立った悪役が2名いるのだが、彼らが(直接的には)透に不幸を捨てなかった稀有なキャラだという皮肉な設定も、上手いというか際立っているというか…。 遠田潤子の小説を読むと、「こういう生き方をしたくない」と思うことが多いが、この作品では、これにつきる。 他人に不幸を捨てに行くような生き方をしないでおこう。これはもう本当に。
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夫と義母に苦しめられながらも十年間不妊治療を続けてきた妻。その苦しみがやがて「事件」を引き起こし、彼女はとあるきっかけで出会っていた青年と逃避行に出ることになる、という物語。 最初から最後までどろりどろりとした展開で、主人公も青年も夫も誰もかれもが一癖あり過ぎて、簡単に感情移入...
夫と義母に苦しめられながらも十年間不妊治療を続けてきた妻。その苦しみがやがて「事件」を引き起こし、彼女はとあるきっかけで出会っていた青年と逃避行に出ることになる、という物語。 最初から最後までどろりどろりとした展開で、主人公も青年も夫も誰もかれもが一癖あり過ぎて、簡単に感情移入を許さない「翳」をまとっている。だから例えば酷い目に遭って逃げている主人公にだって「可哀想」とだけ思うことができない部分があって、どう考えたって未来のない行動をしていくのをただ眺めていくしかできない。その無力感を抱かせる人々の物語を、けれど作者のよどみない筆致で読まされてしまう。苦しいと、楽しいことなどないとわかっている物語を最後まで負わせる力がある。素直に凄い、と感じるばかりでした。 惹かれ合ってその先に地獄しかないとわかっていても、それでもともに歩もうとする二人。妻を自身の所有物として完全に疑わずに行動できる男。善意を振りまいて正義を疑わない女。その正義に怯えてついには自らを罪人にした女。 業が業を呼び、人と人のわかりあえなさが痛烈に描かれていて、つらくてたまらないお話。けれど、おそらく、見たくないと顔を背けている人の一面であることも間違いはないのだろう。だから、興味を持って読んでしまえるのだろう。 そう、真正面から人のいやらしさに挑んだお話だと思いました。
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この本は、先にいくつか読んだ本と少し違うパターンだった。 いつも通り不幸な男と女が出てくるので、何となく筋は読めるが、文章力でぐいぐい引き込まれる。 破滅に向かうストーリだが、情景描写も素晴らしく飽きさせなかった。そして、読了後はやっぱり疲れた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
遠田先生の描くシチュエーションには、「こんな不幸、ある?これ以上やめて」と重たい気持ちにさせられる。 けれども同時に、登場人物たちの片鱗には、深く共感してしまう自分もいる。 透の、千穂から生まれたかったという気持ちは本物だったんだろうなぁ。生まれてやり直したいと思える程の希望が、千穂との逃避行にあったのだとしたら、透の人生には何も残らなかった訳じゃないと思いたい。 登場人物たちがそうであったように、私も透という人間が放っておけなくて、最後まで読んだような気がしました。 ゴミ箱という表現をされるような透にとって、自分を人間として求めてくれたのが千穂で、彼は彼女に母親を求めていたような。 家族であっても知らない面や分かり合えない面がある中で、殺人者であるこの2人はお互いを本能で理解し合い、必要とし合っていたのだな、と思います。
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先の展開が気になって一気読み。 結末は物悲しくて気持ちもすっきりしないけれど、行き着く先で幸せになれることはない展開だったから致し方ないか。
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彼女の本は、これで3冊目。 「雪の鉄樹」「カラヴィンカ」ともに、とても面白かったので、 今回も期待大。 35歳の千穂は、不妊治療を始めて10年、 夫と、姑からの嫌みにずっと耐え続けていた。 そんな時、暗い過去を持ち、算数障害に苦しむ27歳の透に出会う。 千穂は彼...
彼女の本は、これで3冊目。 「雪の鉄樹」「カラヴィンカ」ともに、とても面白かったので、 今回も期待大。 35歳の千穂は、不妊治療を始めて10年、 夫と、姑からの嫌みにずっと耐え続けていた。 そんな時、暗い過去を持ち、算数障害に苦しむ27歳の透に出会う。 千穂は彼の力になりたいと手をさしのべるが、 疑い深い夫に、二人の関係を一方的に攻められ、 これまで押さえてきた感情を爆発させ、ある事件を起こしてしまう。 そして、千穂と透、二人の遠飛行が始まる・・・ 帯にある「熱量がすごい!」の言葉通りに、すごい展開になっていく。 これでもか!というくらいに、てんこ盛りなのは、この作家さんの良いところかも。 ミステリーでもあり、メロドラマのようでもあり、 次から次へといろんな事実が判明していくので、 読み始めたら止まらなくなってしまった。 悪意はないのに、他人を不幸にしてしまう・・・ そして自分も・・・ なんだかやりきれない思い・・・ どうか、登場人物たちが幸せになれますように・・・ と祈りつつ読み進めてしまう本です。
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雪の鉄樹からこの作家さんが気になっていたが、ブックオフには置いておらず、新品を購入。 最初から流石の筆力。ぐっと惹きつけられる。 目まぐるしく進む展開に、ページを捲る手が止められなくなる。 35歳の千穂は不妊であることから、マザコンの夫と義母から嫌味を言われ続ける毎日だった。...
雪の鉄樹からこの作家さんが気になっていたが、ブックオフには置いておらず、新品を購入。 最初から流石の筆力。ぐっと惹きつけられる。 目まぐるしく進む展開に、ページを捲る手が止められなくなる。 35歳の千穂は不妊であることから、マザコンの夫と義母から嫌味を言われ続ける毎日だった。 ある日夫が酒に酔った男を轢いてしまい、千穂に罪をなすりつけようとする。 謝罪の為、その男を探していた千穂はコンビニで偶然見つけ、そこで彼が算数障害であることに気付く。珠算教室の先生である千穂は彼の力になろうと彼の元に通う。 執拗に妻を監視する夫から、彼との関係を一方的に疑われ、これまで抑えてきた不満が爆発した千穂は、家を飛び出し、彼と共に逃亡する。 新藤賢治は蓮田を持つ農家だった。彼の妻の13回忌に、彼の妻を殺し服役していた大西理香の獄死を知る。何故最愛の妻が殺されなければならなかったのか?その真実を探し始める。 2つの話が交差した時、全ての真相が少しずつ浮かびあがる。 暗く、重く、辛く、苦しい時間が長いのだが、物語から目を離せない自分がいた。 それぞれの登場人物の、ほんの少しずつの過失が大きな事件を生み出してしまう。没頭してしまう作品だった。
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7月-6。3.0点。 大学教授に嫁いだ主人公。不妊治療10年。 義母の嫌みに堪えながら暮らすが、数字に拒否反応を示す若者と出会う。 ドロドロとした人間模様。こういうの書かせたら上手い作家。 あっという間に読める。
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