蓮の数式 の商品レビュー
悪意と悲劇の満漢全席で、正にTHIS IS 遠田潤子な物語だが、題材を色々盛り込み過ぎで何だかどれも消化不良な印象。人物描写が丁寧な遠田作品にしては展開が早すぎて乱雑にすら思えるが、登場人物全員どこかしら歪んでいるので、そもそも共感を前提とした物語ではないのかもしれない。しかし、...
悪意と悲劇の満漢全席で、正にTHIS IS 遠田潤子な物語だが、題材を色々盛り込み過ぎで何だかどれも消化不良な印象。人物描写が丁寧な遠田作品にしては展開が早すぎて乱雑にすら思えるが、登場人物全員どこかしら歪んでいるので、そもそも共感を前提とした物語ではないのかもしれない。しかし、ラスト二頁に込められたメッセージは痛烈で、欲望の捌け口だった大西麗の虚無感や、子供らしさを奪われた新藤恵梨の届かぬ叫びを通し、読者に対しても鋭利な刃を突き付けてくる。度を越した善意は悪意を凌駕するエゴに成り得るから恐ろしい。
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婚家から虐げられ孤立する女が出会ったのは、自らの生い立ちと算数障害に苦しむ男。愛を忘れた女と愛を知らない男が向かう先には、何が待っているのか――。
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大人買いするほどは著作が出ていないため、マイブームになっているとまでは言えないけれど、まちがいなく今いちばん惹かれる作家です。 見初められて身分違いの結婚をした千穂。玉の輿に乗ったはずが、不妊のせいで姑と夫から嫌みを通り越して虐待を受けている。そろばん塾を経営する千穂は、透とい...
大人買いするほどは著作が出ていないため、マイブームになっているとまでは言えないけれど、まちがいなく今いちばん惹かれる作家です。 見初められて身分違いの結婚をした千穂。玉の輿に乗ったはずが、不妊のせいで姑と夫から嫌みを通り越して虐待を受けている。そろばん塾を経営する千穂は、透という若い男と知り合う。算数障害の透に親身になる千穂を見て、浮気を疑う夫。一方、かつて殺人事件で妻を亡くした老人は、殺人犯の息子で死んだはずの少年・麗の面影を持つ透を見かけ、麗と透が同一人物ではないかと考える。 引き込まれ度という点では満点です。主要な登場人物に心から共感できる人柄は出てこないのに、千穂と透の逃避行の行く末がどうなるのか気になり、途中で本を閉じることができません。算数障害というものも初めて知りました。 人は、自分の測りでしかものを見ていない。幸せか不幸せかも本人しかわからないこと。障害に対する無理解に気づかず、いかに自分の尺度でおせっかいを焼いていることか。心に闇を抱える人の役に立てるはずだとの思い込みが、時にその人を苦しめているのだと痛感します。また、報道は必ずしも真実ではないということ。本当にわかってくれている人がわずかでもいればいいんだろうか。辛すぎて、厳しすぎて、読後は呆然。それゆえ、引き込まれ度は満点だけど、好き度の点では悲しすぎてマイナス。 蓮の花がポンポンと音と立てて咲くシーンだけが美しく目に浮かぶ。
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主人公の名前や悩み、職業まで自分に似てるところが多くて、書店でちょっと立ち尽くしてしまった…。 長編ですが、はらはらするストーリー展開、明らかになっていく謎、そしてちょくちょく挟まれる濡れ場のおかげで、中だるみなく読めます。 ほんとよくセックスする…この男…。 最近読書から遠...
主人公の名前や悩み、職業まで自分に似てるところが多くて、書店でちょっと立ち尽くしてしまった…。 長編ですが、はらはらするストーリー展開、明らかになっていく謎、そしてちょくちょく挟まれる濡れ場のおかげで、中だるみなく読めます。 ほんとよくセックスする…この男…。 最近読書から遠ざかってたんですが、やっぱ本読むの楽しいな!って思えたきっかけの本です。
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なかなか残酷なお話でした。 透の生い立ちが残酷。弓場の過去も残酷。千穂の生きる世界も残酷。あっさり人を殺してしまうあたりも残酷。 みんなの気持ちがどこかわかるようでわからない感じでした。 千穂の義母が一番残酷で気持ち悪かった。 2018.4.7
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夫と義母に虐げられながら自分を殺して生きる千穂。夫が起こした交通事故の身代わりとなり、被害者の透と接触したことから、千穂の運命は大きく変わり始める…。 久々に冒頭から引き込まれ一気に読んだ。 婚家にいても逃避行へ出ても、透をはじめとした登場人物たちの生い立ちが明かされたり、殺人が繰り返されたりと、昏く付きまとう空気に、一体どこに終点があるのかと思いながら読んだが、終章の存在にやや救われ、読後感はそれほど重くならずに済んだ。
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三ヶ月足らずでこの人の作品を5冊読みました。 こんなに続けて同じ作家の本を読むのはかなり久し振り。 今回もまるで読者を突き放すかのような憂いを持った登場人物たち。 算数障害を持つ透とそろばん講師の千穂。 この二人、お互いの寂しさの埋め方が吉田修一の『悪人』の二人の関係を彷彿とさせ...
三ヶ月足らずでこの人の作品を5冊読みました。 こんなに続けて同じ作家の本を読むのはかなり久し振り。 今回もまるで読者を突き放すかのような憂いを持った登場人物たち。 算数障害を持つ透とそろばん講師の千穂。 この二人、お互いの寂しさの埋め方が吉田修一の『悪人』の二人の関係を彷彿とさせる。 今回の遠田作品は他と比べると少し異色な感じがして、 何だか他の作家さんの本を読んでいる様。 遠田節は健在なのですが。 ここまで来たら遠田作品、制覇するしかないな。
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※このレビューにはネタバレを含みます
親による虐待や、ろくでなしの男に追われるという要素から「アンチェルの蝶」を連想させられました。ただ、登場人物のほとんどに共感できなかった点で、これまでに読んだ遠田作品に比べると心象が悪く感じます。 確かに、高山徹(=大西麗)や安西千穂の過去には哀れみを感じますが、殺人に対する罪悪感のない徹と彼に尽くす千穂、そして実の娘をないがしろにする賢治の身勝手さに対する苛立ちが、それを上回ってしまうのです。 さらに私が本作を受け入れづらいと感じた決定打があったとすれば、千穂の懐妊を徹が知った時の「あんたの自己満足のために子供を産むな」というセリフ。本作の登場人物のほとんどに嫌悪感を覚える要因はこれかな、と。 悲惨な過去や経歴があるとはいえ、自己満足を優先して他者(特に子供)をないがしろにする登場人物たちのそうした姿と、(これは勘違いかもですが)作品内にうっすらと漂う「彼らにも同情すべき点がある」という空気・雰囲気に、拒絶反応が生じていたのかもしれません。 文章に関しては、冒頭から終章までじっくりと、一文字も漏らさず読みたいと思わせるクオリティの高い作品だと思うのですが……読後感の良くなさが、嫌な感じで後を引いてしまいました。
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自分的に、この作風が若干食傷気味になってきてしまってるんかな?確かに、毎回同じものばかり書かれても飽きてくるし、作者的にも違ったものを書きたいという思いもあるだろうし、そういう意味では、望みどおりのものが出てくることなんかないだろうし、それはそれでつまらん。リーダビリティの高さは...
自分的に、この作風が若干食傷気味になってきてしまってるんかな?確かに、毎回同じものばかり書かれても飽きてくるし、作者的にも違ったものを書きたいという思いもあるだろうし、そういう意味では、望みどおりのものが出てくることなんかないだろうし、それはそれでつまらん。リーダビリティの高さは相変わらず圧倒的ながら、今までに読んだ数作と、同じレベルで本作を好きになれなかったのは、おそらく主人公への反感かな。抱えている闇が深いとはいえ、相当な凶悪犯罪者やからね、これ。別に飽くが主人公だから気に入らんなんてことを言ってるんじゃなく、それに対する周囲の穏やかな眼差しが理解出来ん。まあ、病んでる人たちを上手く描くって意味では、本作も、作者の力量が十二分に発揮されたものには違いないけど。
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法で裁かれない悪がこの世にはどれほど存在するのだろう。 殺したいほど憎い相手をそのまま殺しちゃうのは許されないけど、誰の目にも触れられないまま殺されていった心はどうしたらいいんだろう。 被害者面して死んでいった人間は、天国と地獄のどちらへいくのだろう。
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