満月の娘たち の商品レビュー
ヒグチユウコさんの表紙の絵は、まるで、せめて私たちだけでも共に繋がりあいましょうといった、確実に分かり合える者を得たい気持ちで満たされているような気もする。 いわゆる『親子問題』を扱った、安東みきえさんによるYA小説(2017年)で、梨木香歩さんはとても絶賛されているよう...
ヒグチユウコさんの表紙の絵は、まるで、せめて私たちだけでも共に繋がりあいましょうといった、確実に分かり合える者を得たい気持ちで満たされているような気もする。 いわゆる『親子問題』を扱った、安東みきえさんによるYA小説(2017年)で、梨木香歩さんはとても絶賛されているようだが、私はそこまでの神話的な印象を抱くまでには至らず、寧ろ、とても現実的なものが色濃く漂う物語に、中学1年生の女子とその母親にとって、「分かる」と肯けるものがありながらも耳の痛い話であったりするのだと感じられた、それくらいの生々しさがあった。 その根拠は、皆が生まれたときの事や名前の由来に対して、幼い頃のようにはしゃいだりしない物語の始まり方からして、少女達が既に何か満たされないものを抱えているような雰囲気を漂わせ、それは物語に登場する数々の文章からも感じられた。 例えば『ママはあたしじゃないんだから』や、『あたしの気持ちまでわかっているなんて思わないで』といった、少女の吐き出す言葉には、その時だけのものではなく、それ以前から少しずつカチンと来たことが積み重なった上で爆発したものであることが物語の展開からも分かり、よく反抗期とか言うけれども、それは一般的なものというよりは、ちゃんとした潜在的な理由が潜まれているのではないかと感じてしまう説得力があったのは、さすが安東さんだと思う。 やがて、それと同時に少女達も母について様々な一面を持つことを知っていき、そこには大人と子どもという、はっきりとした種別の異なるものとしての見方というよりは、『親が子どもをよその子と比べてはいけないように、子どももよその親と比べてはいけない』、『うつむくママは自信なさげで、いつもより小さく見えた』のように、それぞれの痛みを知ることの大切さも唱えていたのだと思われた、そこには憎しみとは対照的な愛しさも精いっぱい込められていた、多感な時期の少女の移ろいゆく様も繊細に描いていたのだと感じられた。 そんな中で最後まで関わってくるのが、幽霊屋敷と噂される建物に住んでいた、母娘の奇妙な物語であり、そこで起こることに関して、非現実的と思われるものを含ませながらも現実的な親子愛へと至らせる展開には、母と娘との関係性の執着心と慈愛心との境目が曖昧であるような錯覚を抱かせて、一歩間違えれば、どちらにも転ぶような怖さもひしひしと感じられた、そこには愛情というものの様々な形のあり方を知りながらも、それがお互いにとって幸せなのかどうかは、また別なのだということも痛感させられた、親子問題の難しさなのかもしれない。
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毎度のジャケ買いヒグチユウコさん ジャンルは児童書? 思春期の娘が母親に思う微妙な心理 段々歳とると 許せるようになったり 苦労が分かるようになったり その前段階の若い気持ち ブックオフにて取り寄せ
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幼なじみの志保と美月。幽霊屋敷探検を発端に、屋敷の持ち主のミニチュア作家・繭さんと出会い、不思議な出来事に巻き込まれていく。志保、美月、繭…。娘たちとそれぞれの母。母娘だからこその葛藤と成長。それぞれの主張とそれぞれの想い。難しい。母は娘でもあり娘はいずれ母にもなる。それでも永遠...
幼なじみの志保と美月。幽霊屋敷探検を発端に、屋敷の持ち主のミニチュア作家・繭さんと出会い、不思議な出来事に巻き込まれていく。志保、美月、繭…。娘たちとそれぞれの母。母娘だからこその葛藤と成長。それぞれの主張とそれぞれの想い。難しい。母は娘でもあり娘はいずれ母にもなる。それでも永遠に難しい。物理的に近いから余計に心理的には遠くなる。美月の母が繭に放つ言葉がとても響いた。なんだかんだあっても結局続いていくのが母娘関係。志保と美月の友情がとても良かったし、そこに絡んでくる男性陣もさりげなく良かった。新しい時代の母娘の物語。おもしろかった。
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母と娘の話 掃除は物をどかすことで、片づけられたゴミは別のところへ形を変えてずっと存在し続ける この考え方がしっくりきました 死別した人の家を片付けない繭さんの気持ちの描写が好きです
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子どもたちの友情を感じ、こういう時期って一瞬だったなぁと思い返す。 一緒に冒険することの楽しさもこの時期だけの特別なものだったと。 だけどこの物語は、母娘の関係性をゆっくりと確かめていくようなものであった。 中学一年という微妙に面倒で中途半端な時期。 反抗期真っ只中といっても過言...
子どもたちの友情を感じ、こういう時期って一瞬だったなぁと思い返す。 一緒に冒険することの楽しさもこの時期だけの特別なものだったと。 だけどこの物語は、母娘の関係性をゆっくりと確かめていくようなものであった。 中学一年という微妙に面倒で中途半端な時期。 反抗期真っ只中といっても過言ではない時期。 親をウザいと感じ、親も子どもの気持ちがわからない。 微妙な関係のまま、大人になり親に悪態をついたまま、親に死なれた繭さんの気持ち。 その繭さんを奮い立たせるような美月ちゃんのママの怒鳴り声。 きっとみんながそれぞれに何かを感じたであろう。 わかってもわからなくても、何かを。 親になってわかること、子どもだから思うこと。 だけどみんな最初は子どもだった。
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母と娘。 お互いがお互いのことを心配せずにはおれない、でも嫌いなところは絶対ありそうでそれを無視できない。お互い一人の人間だけど、母は母であるがゆえに、娘の嫌いなところを矯正したくなるのかな。娘はそれを、純粋な心配だけではないことを感じ取って、嫌悪感を覚えるのかな…。
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おもしろかった.内容がちょっと子ども向けだけど良い話だった、半日で読み終わった.親と子どもの関係、生まれる前の選択、考えさせられた 志保と祥吉が恋愛に繋がるかなて、ならなかったね笑
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子どもを一番傷つけるのは母親だ、というのを聞いた時、妙に納得したのを覚えている。 娘を想って、心配して口にした言葉や、なんの気なしに放った言葉がまるで呪いのように娘を縛ることがある。 多分母も祖母の言葉に傷ついたことがあったんだろうなあっと今は思う。 もし私が母になることがあるのなら同じ轍は踏まないようにしたいものだが、やっぱり傷つけてしまうのだろうなあっと思うと怖い。 この本の内容とは逆行してしまうけど、天使が聞いてくれたなら、私はきっと断るだろう。 でもそーゆーことを考えるのはこの思春期特有のものなのかしら?とすると私はそこから未だに成長できてないのかなあっとため息。 でも魔物な親は増えてるし、自然は季節ごとに牙を剥くし、エネルギー問題も食料問題も、汚染水問題も解決する気配もないし、治安も人権もなにもかも危機に瀕してるし、 どうやったらこんな世界に生まれてきたいと思えるのだろう? それでも繭さんに熊井さんがいてくれて、祥吉に美月に志保と出会えてよかった、とそう思う。
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同じ病院で同じ日に産まれ志保と美月。その二人と保育園が一緒だった祥吉。 思春期真っただ中のあのややこしい時期の物語。 親との軋轢。反発。あるね、思春期には。 大人の繭と知り合うが、そこにも母と娘の軋轢があった。 素敵な物語でした。 志保と美月、祥吉はどんな大人になるんだろうな...
同じ病院で同じ日に産まれ志保と美月。その二人と保育園が一緒だった祥吉。 思春期真っただ中のあのややこしい時期の物語。 親との軋轢。反発。あるね、思春期には。 大人の繭と知り合うが、そこにも母と娘の軋轢があった。 素敵な物語でした。 志保と美月、祥吉はどんな大人になるんだろうなぁ。
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中学一年生の思春期の子どもが抱く親への強い反抗の気持ちと、それを辛辣に伝える台詞が、私自身も子どもを持った今、思った以上にこたえる。大人のちょっとした言動を子どもはよくみてるんだなあ。自分自身を振り返ってもそうだけど。 幽霊屋敷での探検と、自由人に見えるが実は彼女も亡くなった親との葛藤を抱える繭との交流も、最後は伏線が回収されて、話の筋も面白かった。 クライマックスでは、やっぱり子どもではなくて大人が子どもをしっかり救ってあげられて、カタルシスがあった。 美月のお母さんの下記の台詞を、私自身も忘れずに、毎日一生懸命家庭をつくっていきたいと思った。 「もしも私なら 、最後に大嫌いって言われたってどうってことないわ 。子どものついた悪態なんてなんでもない 。覚えてもいないわ ! 」 「子どもが自分のことをどう思ってるかなんて 、気にしてらんないの 。そんなひまはないのよ 。きっとあんたのおかあさんも娘の言葉に傷ついたりしてないと思うわ 。だからだいじょうぶ 。なんにも悲しむことなんてない 。」
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