殺人者の記憶法 の商品レビュー
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2025年の最後に読んだ本。 本の厚さの割に文字量が少なくすぐに読み終えた。 どんな結末を迎えるのかハラハラしながら読み進めたら想定外の終わり方にびっくりしてしまった。 主人公は本当は身内を慈しんだり、自分に執着する他者を欲していたのかしら。 だんだん真っ白になっていくのが物悲しい。
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以前、映画を観たときも感じたが、なんとも摩訶不思議な読み心地。 認知症の元殺人鬼の語りで物語は進んでいく。これがなかなかにブラックユーモアがきいていていい。 例えばこんな感じ。 「俺の住んでいる群とその近隣の群で、三人の女性が立て続けに殺されたという(中略)アルツハイマーだと診断された直後に三人目の犠牲者が出たから、俺としてはこう自問するのも当然だった。 ひょっとして、俺か?」p16〜17 「ひょっとして、俺か?」じゃないよあんた!とは思うがまぁ、当然殺人鬼だって歳はとるし認知症にもかかる訳で、そしたらやはり、「俺か?」という疑念が生じるのも然るべしなのかもしれませんね。 途中、般若心経がちょこちょこはさまれるが、記憶があやふやで「私」が崩壊していくという主題はまさしく仏教の基礎「空、無常、無我」に相当するもので、個人的にこの辺りの仏教用語に興味津々な私にとって、こうしたモチーフは垂涎もの。「お、きたきたっ!」と心が踊りました。 他にもニーチェやら詩やらいろいろ引用されるので、そっちが好きな人はまたそっちでニタニタ楽しんでるんやろうなぁという気がする。 作者のサービス精神に感謝。 さて、ここで忘れてはならないのが、この小説が「韓国文学」であるという点だろう。しかも、ところどころに朝鮮戦争だとか四月革命だとか、時代をにおわせる記述がはさまれる。となると、この話を読むにあたっては当然、韓国近現代史を念頭に置いておかねばならず、そしてこれに照らし合わせて読み進めると、主人公が殺人を犯していた時期はちょうど朝鮮戦争直後から民主化までの独裁軍事政権時代に相当することが見えてくる。 民主化以降、直接的な暴力はなかなか目につかなくなった現代においても、そうと気付かぬうちに人々はその生を脅かされ、追い詰められている。(それをチョン・イヒョンは『優しい暴力の時代』と形容した) この小説は、そうした現代社会への風刺であると私は読んだ。 風刺どまりでその先が見えなかったため⭐︎4つに。でも、すごい小説でした。
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あとがきまで含めても160ページほどと短めで、一気に読めた。 物語は、主人公がアルツハイマーと診断されるところから始まり、最初から最後まで彼の日記という形式で綴られている。 認知症患者が徐々に記憶を失っていく過程が日記の中に生々しく描かれており、まるで自分もその忘却の恐怖を追体験しているようだった。 そもそもの設定が秀逸で、冒頭から一瞬で引き込まれた。 そして何より、記憶が失われていくということが、こんなにも恐ろしいことなのかと衝撃を受けた。 今まで認知症について深く考えたことがなかったからこそ、余計に心を揺さぶられたんだと思う。 自分が自分であること、それを形作っているのは「記憶」だ。 その記憶が日々薄れていき、自分の過去も現在も未来も、すべての記憶に「正しい」と思える確信が持てなくなる。 自分を自分として信じられなくなるということ。 この作品は、そんな「記憶」という存在の重さを、改めて考えさせてくれた。 将来もし自分が認知症になったらと思うと、ただ恐怖を感じる。 けれどそれ以上に、近い将来、自分の親がそうなるかもしれない現実にも思いが及ぶ。 現代人の寿命が長くなった今、誰もがその可能性を抱えて生きている。 もし身近な人が少しずつ記憶を失っていくのを目の当たりにしたら、私はその傍で何ができるのだろう。 そしてもし自分が同じ立場になったなら、主人公のように必死でメモを残そうとするのだろうか。
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殺人犯が認知症になる話という設定からわくわくした。当たり前なことなんだけれど、感情の起伏のない殺人者に共感できるところは少なく、少し淡白な読後感だった。
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アルツハイマーの連続殺人犯による手記、という設定。 書いているときは正常な状態のように感じるが、最後まで読んでいくと一体何が正しいのかわからなくなる。
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かつて連続殺人犯だったキム・ビョンスは、二十年以上人を殺していない。娘ウニとの静かな生活を送る彼だったが、認知症に蝕まれ、日々の生活もままならなくなってくる。そんな中で出会った男が自分と同じ連続殺人犯であると気づいた彼は、娘を守るために戦うことにする。静かな読み心地の、だけど緊迫...
かつて連続殺人犯だったキム・ビョンスは、二十年以上人を殺していない。娘ウニとの静かな生活を送る彼だったが、認知症に蝕まれ、日々の生活もままならなくなってくる。そんな中で出会った男が自分と同じ連続殺人犯であると気づいた彼は、娘を守るために戦うことにする。静かな読み心地の、だけど緊迫感がたまらないサスペンスミステリです。 主人公の彼に迫りくるのは、殺人者の影と認知症。どちらも恐ろしいし嫌……。しかしキム・ビョンスがかつてどのような犯罪を行ったのか、その詳細はほぼ語られません。いったい何人殺したのか、そしてなぜ、何のために殺したのかが一切不明。なので読んでいる側とすると、キム・ビョンスがもっとも気味の悪くて恐ろしい存在になってしまいそうなのですが。消えゆく記憶に必死にしがみつき引き留めようとし、娘を守ろうとあがく彼の姿に哀愁を感じました。 しかしまさかこういう展開になろうとは。とてつもなく残酷な物語なのだけれど、どこかしら淡々として。底知れない物悲しさだけが残った気がします。
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連続殺人犯が認知症になるという設定が面白い。ラストにかけて自分の足元がグラグラしてくるような感覚になり、自分も認知症のような気になった
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読みやすかったですが、個人的にはラストはなんとなく予想がついたのでそれほど驚きはなかったのと、実際どうだったのかというのがはっきり分かる終わり方のほうが好きなのでそこは少し好みではなかったです。また他の韓国文学にも触れてみたいです。
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「恐ろしいのは悪では無い、時間だ。誰もそれに勝つことはできないからね。」 サスペンスでもあり、哲学書のようでもある今までに出会った事のない本でした。 お世話になっているなおなおさんに教えて頂いた映画化もされている本作、予想と全然違って面白かったです。 主人公のビョンスは獣医を...
「恐ろしいのは悪では無い、時間だ。誰もそれに勝つことはできないからね。」 サスペンスでもあり、哲学書のようでもある今までに出会った事のない本でした。 お世話になっているなおなおさんに教えて頂いた映画化もされている本作、予想と全然違って面白かったです。 主人公のビョンスは獣医を営みながら希望を殺人に求め人を自分の敷地内の林に埋め続けていましたが、殺人の帰りに交通事故に遭ってからその希望も失いパタリと殺人を止めてしまいました。 70歳になり、なんとアルツハイマーの診断。養女な為に微妙な関係の植物改良の研究員である娘のウニが居ますが離れて暮らしているので記憶を保つ為に日記を書いたり、レコーダーを持ち歩いて会話を録音したり工夫しています。 昔に犯した殺人の記憶はハッキリしているのに最近の事は忘れていく。 そんなある日、また接触事故を起こしたのですがその相手の車のトランクから血が滴っているのを目にするビョンス。 同族の匂いを嗅ぎ付け警戒していたのですが、なんと、ある日ウニが結婚する予定だとその男、ジュテを連れて来ます。 このままではウニも殺されるかも知れない。ウニを守る為に最後の殺人を決意するビョンス。ですが彼はアルツハイマーなので記憶が続かず…。 ビョンスが詩の教室に通っているのでニーチェ等有名な詩人が出てきます。 俺の詩を褒めてくれたので生かしておいてやった、と言う理由には笑ってしまいましたが、このいくつか出てくる詩がビョンスの独自の哲学と相まって非常に良い味を出しています。 その中に韓国の詩人の『花嫁』と言う詩が出てくるのですが、以下のような内容です。 「初夜に厠に行く花婿の服が門の取っ手に引っかかった。花婿は花嫁が淫乱なために自分の袖を引っ張ったと勘違いし花婿は逃げた。40年程後に偶然そこを通りかかると花嫁が初夜の姿のままでそこに座っていた。ぽんと叩いてみると灰になって崩れ落ちてしまった」 これをビョンスの講師や受講生は美しいと褒め讃えていたのに対して「初夜に花嫁を殺害して逃走した花婿の話だと解釈した」とビョンス。 実は私もこれに似たような解釈をしたので、やばい、魔界に居すぎて思考が危なくなってきた、とカフェの片隅で震えていたのですが(本日は優雅にカフェで読書してました。電車と同じく隅っこで縮こまってましたが)どんどんビョンスのアルツハイマーは進行して行きます。 ウニが心配でジュテの動向を探ろうと住所を調べて向かったのに途中でその目的自体を忘れて警察に保護されてしまう。ウニには突然自分の首を絞めてきたと泣かれてしまう。老人ホームに入る事も勧められる自体に。 もう駄目だとビョンスはとある行動に出るのですが… 終盤でどんでん返し! 全編、ビョンスの日記のような形で綴られていますので読んでいるこちらもビョンスと同じように混乱し、本当にアルツハイマーのせいなのかどうなのか分からなくなる自体に。 ここがよく出来ていて、そのまま余韻の残るラストへと向かうので、ちょっと呆然としてしまいました。 韓国の小説は3冊目ですが前の『僕の狂ったフェミ彼女』に続いて非常に読みやすく、小雨そぼ降る午後の、優雅な珈琲タイムにピッタリの作品でした。(もうこの辺も魔界の影響でおかしくなって来ている) 図書館で探した際に、もっと暗めの装丁を想像していたので表紙がポップでお洒落過ぎて見逃し、本棚を3回位行ったり来たりしてしまいました。 色んな意味で既成概念を覆してくれる良書でした。 私信になりますが、なおなおさん、ありがとうございます。仰る通り読みやすかったです! 1Qさんに教えていただいた『あの子はもういない』もゲットしたので楽しみです。 『彼と彼女のなんたら』(私の鳥頭もいよいよ極まってきた)は貸出中なので予約済みです。
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設定がおもしろすぎると思って読んでみた。 主人公の独白がどんどんあやしくなっていって、事実が明らかになるにつれて切なくなった。書かれていることを疑いながら読むのが新鮮でおもしろかった。
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