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ギリシャ語の時間 の商品レビュー

3.9

27件のお客様レビュー

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2023/12/27

3年ほど前、韓国文学にハマるきっかけになった一冊。主要登場人物のこれまでの人生やエピソードひとつひとつの場面が映像のように目に浮かび、(ギリシャ語はもちろん)韓国語の知識などまったくないのに、ふたりの切実な“声”が聞こえてくるようで、心が震えた。翻訳の斎藤美奈子さんによるあとがき...

3年ほど前、韓国文学にハマるきっかけになった一冊。主要登場人物のこれまでの人生やエピソードひとつひとつの場面が映像のように目に浮かび、(ギリシャ語はもちろん)韓国語の知識などまったくないのに、ふたりの切実な“声”が聞こえてくるようで、心が震えた。翻訳の斎藤美奈子さんによるあとがきも必読。読書会課題本のため再読。

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2023/06/29

暮らしのそばにはない古典ギリシャ語を、光を失いつつある人が教え、言葉を失っている人が学ぶ。 世界から隔たって、孤絶しているような2人の感じていることが静かに語られて、その言葉にうっとりする。ハン・ガンさんの言葉が美しくて、いつかハングルで読めるようになりたい…。 内側へ内側へと閉...

暮らしのそばにはない古典ギリシャ語を、光を失いつつある人が教え、言葉を失っている人が学ぶ。 世界から隔たって、孤絶しているような2人の感じていることが静かに語られて、その言葉にうっとりする。ハン・ガンさんの言葉が美しくて、いつかハングルで読めるようになりたい…。 内側へ内側へと閉塞していくような2人が、少しだけ緩むような、閉じこめようとしていたものがこぼれるような、終わらない終わり。先は見えないのに、なんだか曙の明るさを感じて、ほっとするような。

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2023/05/28

『ギリシャ語の時間』はまだ終わっていない。 この本の結末は、開かれている。 たとえ主人公たちが抱えている問題が、物語の中で完全に解決されていなくとも、この物語自体が彼、彼女らの人生の断片だと考えればそれは当然のこと。 彼らが今後どうなっていくのか、それを考えることは作者を含め...

『ギリシャ語の時間』はまだ終わっていない。 この本の結末は、開かれている。 たとえ主人公たちが抱えている問題が、物語の中で完全に解決されていなくとも、この物語自体が彼、彼女らの人生の断片だと考えればそれは当然のこと。 彼らが今後どうなっていくのか、それを考えることは作者を含め、我々読者の手に委ねられているのではないだろうか。

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2021/10/13

文学ラジオ第1回紹介本「お互いの時間の最先端で人は出会う」 孤独が描かれていて人と人が本当の意味で出会う小説だと思います。番組パーソナリティのダイチとミエもお互いをよく知らないまま出会い、番組をすることになったので本書には〈人と人が出会う〉という点で何か重なるところを感じています...

文学ラジオ第1回紹介本「お互いの時間の最先端で人は出会う」 孤独が描かれていて人と人が本当の意味で出会う小説だと思います。番組パーソナリティのダイチとミエもお互いをよく知らないまま出会い、番組をすることになったので本書には〈人と人が出会う〉という点で何か重なるところを感じています。不幸なエピソード満載だけど美しい文章で淡々と描かれる二人の人生の交差を読むと、静かに心が揺れ動くと思います。→ https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/1-ef2fn3

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2021/10/11

“中でも彼女がいちばん好きなのは숲(森)という言葉だった。昔の塔のような形をした、造形的な文字である。いちばん下の「ㅍ」が塔の土台、「ㅜ」が塔、「ㅅ」が塔の尖端。ㅅ一ㅜーㅍと発音するときは、まず唇がすぼみ、次に風がゆっくりと、用心深く漏れてくるような気がして、彼女はその感じが好き...

“中でも彼女がいちばん好きなのは숲(森)という言葉だった。昔の塔のような形をした、造形的な文字である。いちばん下の「ㅍ」が塔の土台、「ㅜ」が塔、「ㅅ」が塔の尖端。ㅅ一ㅜーㅍと発音するときは、まず唇がすぼみ、次に風がゆっくりと、用心深く漏れてくるような気がして、彼女はその感じが好きだった。そして最後に、閉じられる唇。沈黙によって完成する言葉だ。音も意味も形も静かなその単語に惹かれて彼女は書いた。숲、숲と。”(p.15) “すべての事物は自らの内に自らを損なうものを持っていると論証する箇所でですね。目の炎症が目を破壊して見えなくさせ、錆が鉄を破壊して完全に粉々にしてしまうことを例にとって説明していますが、そうであれば人間の魂はなぜ、内なる愚かな、悪しき属性によって破壊されないのでしょうか?”(p.124)

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2021/09/21

静かで詩的な言葉の中に潜む二人の男女の烈しく強いそれぞれの思いに導かれ、ぐいぐいと引き込まれていった。 ハン・ガンの作品は3冊目。どの作品も全く表情が違う。もっとこの人の作品を読んでみたい。

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2021/03/04

儚いものや感覚的なものに惹かれるのは哲学的、西洋的ではなくて文学的、東洋的なのか。一刀両断すぎるかもしれないけどそんな印象を持った。 一刀両断といえば、 「一刀両断で感覚的実在を切りとってしまう仏教」 というフレーズが気になった。まずはボルヘスの「七つの海」から読んでみよう...

儚いものや感覚的なものに惹かれるのは哲学的、西洋的ではなくて文学的、東洋的なのか。一刀両断すぎるかもしれないけどそんな印象を持った。 一刀両断といえば、 「一刀両断で感覚的実在を切りとってしまう仏教」 というフレーズが気になった。まずはボルヘスの「七つの海」から読んでみよう。

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2020/11/14

言葉を発することができなくなった女性と、視力が失われていく男性は、ギリシャ語を習う教えるの関係でもありました。欠けている機能は互いに補えるし、欠けている機能があることへの配慮や思いやりから、双方向のコミュニケーション方法は多様であることの気づきが読後に得たものです。

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2020/10/07

韓国人の知り合いが何人かできたために手に取ってみた本書だが、はっきりとものを言う韓国人の印象(ひとくくりに言っても人によって違うことはもちろんわかっているが)とは違って、とても繊細な文章だった。 主人公たちのものの見方は傷ついた人にしか書けない・理解できないものだし、情景描写は情...

韓国人の知り合いが何人かできたために手に取ってみた本書だが、はっきりとものを言う韓国人の印象(ひとくくりに言っても人によって違うことはもちろんわかっているが)とは違って、とても繊細な文章だった。 主人公たちのものの見方は傷ついた人にしか書けない・理解できないものだし、情景描写は情緒があり繊細だった。 全編を通して文章がとても静かで、無音ともいえるほど。 視力を失いつつある男と言葉を失った女を象徴しているのか、世界と隔絶されてしまった印象を受ける。 ただ、私は詩的で断片的に語られる物語を読むのが苦手で、多くの表現が頭の中を素通りしていったことも事実。 でも傷ついた人同士が互いの経験を共有して救いとなる話は好きなので、二人が少しでも前に進めるようになればいいと思った。 あるいは、喪失を受け入れられるようになればいい。

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2020/07/15

雨の音、青色の夜明け、スプ(森)などの音や映像が浮かんでくる。 静寂に包まれた物語。靴の音やものが壊れる音がよく響く。 はじめての韓国文学。これは、ものすごいものに出会ってしまった。 韓国文学ってこんなにレベル高いの??これは、映画に引き続き、流行りそう…。 ソウルの古典ギリシ...

雨の音、青色の夜明け、スプ(森)などの音や映像が浮かんでくる。 静寂に包まれた物語。靴の音やものが壊れる音がよく響く。 はじめての韓国文学。これは、ものすごいものに出会ってしまった。 韓国文学ってこんなにレベル高いの??これは、映画に引き続き、流行りそう…。 ソウルの古典ギリシア語のカルチャースクールが舞台。講師である男性は、視力を失いかけている。生徒である女性は、言葉に敏感なところがあり、そのためなのかはわからないが、言葉を失う。 韓国とドイツ、見えると見えない。受動態と能動態、そして中動態。 というように、なんとなく『どちらでもない』ものを意識させられる。 定期的に開きたい本。 言葉のスピードもこころなしかゆるやかに感じられ、詩的な文章にうっとりとする。 空飛び猫たち、という文学ラジオpodcastの推薦本。

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