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ギリシャ語の時間 の商品レビュー

3.9

27件のお客様レビュー

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2020/02/28

味わうための文学。 印象派的な。ボーッとしていると字面だけ追っていることもしばしば。でも美しい。もう一度読んで改めて味わいたい。

Posted byブクログ

2020/01/15

いや〜難しかったな。言葉がこんなにままならないものだとは。喪失がこれでもかというほどに描かれていて、だけど喪失のなかで誰かによって発せられる言葉、積もっていく言葉はとても存在感があった。

Posted byブクログ

2019/11/28

ハン・ガンの小説2冊め。 前作『菜食主義者』がなかなかに壮絶だったので、本が届いてもすぐに手にとって読めずにいました。読みだしたら今度はこれは急いで読む本ではないとゆっくり進めていたのでまた時間がかかりました。 「壊れたことのない人の歩き方を真似てここまで歩いてきた。」 「いか...

ハン・ガンの小説2冊め。 前作『菜食主義者』がなかなかに壮絶だったので、本が届いてもすぐに手にとって読めずにいました。読みだしたら今度はこれは急いで読む本ではないとゆっくり進めていたのでまた時間がかかりました。 「壊れたことのない人の歩き方を真似てここまで歩いてきた。」 「いかなる苦痛も味わったことがない人のように、彼女は机の前に座っている。」 『すべての、白いものたちの』の中の言葉ですが、ハン・ガンはつねに何かを失った人たちについて書いているように思います。今回は言葉を失った女性と、視力を失いつつある男性の物語なのでそこはとてもわかりやすい。 彼らの間にあるのが古典ギリシャ語という今はもう滅んだ言語だというのも象徴的。 斎藤真理子さんの翻訳とあいまって今回もとても美しい文章。詩のような、音もなく降る雪のような。物語の舞台は夏のようですが、寒々とした冬の雨空がよく似合います。 以下、引用。 我々の間に剣があったねーー自分の墓にはそう書いてくれとボルヘスは遺言した。 彼の左の目元から唇の端まで、白っぽい細い傷跡が曲線を描いて残っているのを女は黙って見上げる。最初の時間にそれを見たとき、涙が流れた跡を示す古地図のようだと思ったのだった。 涙が流れたところに地図を書いておけたなら。 言葉が流れ出てきた道を針で突き、血で印をつけておけたなら。 「この世は幻であり、生きることは夢なのです」ボルヘス『七つの夜』 プラトンが駆使したギリシャ語とは、いわば今にも落ちそうな、ずっしりと熟れた果実のようなものでした。彼の世代以降、古典ギリシャ語は急激に凋落していきます。言語とともにギリシャという国もまた衰亡を迎えていくわけですね。そうした点において、プラトンは言語のみならず、自分をとりまくすべてのものが日没を迎えるその只中に立ちつくしていたわけです。 そんなふうに、ここでの日々は無事に流れていきます。 ときに記憶しておくべきことがあったとしても、巨大で不透明な時間の量感に埋もれて、跡形もなく消えていきます。 無彩色のウールのコートやジャンパーの中で肩をすくめた人々が、もう、長いこと耐えてきた、そしてこれからも長いこと耐えぬいていくのであろう顔をして、私の身体をかすめて凍りついた街を急ぎ足で歩み去っていきました。 つまり、いかなる感傷にも楽観にも陥ることなく、私はここに、いるのです。 恋に落ちるのは幽霊に惑わされることに似ていると、私は初めて知りました。 その論理に従うなら、彼女の残りの人生は一つの闘いに、自分はこの世に存在してもいいのかと問う、内なる細い声に一つひとつ答えていく闘いになるはずだった。 ずっと前に沸騰していた憎悪は沸騰したままそこにとどまり、ずっと前にふくれ上がっていた苦痛にはふくれ上がったまま、もはや水疱がはじけて破れることはなかった。 プラトンの後期著作を読んだとき、泥や毛髪、かげろう、水に映った影、一瞬一瞬現れては消える動きにイデアがあるのかという問いに僕があんなに魅了されたのも同じことだったろう。その問いがただ感覚的に美しかったから、美を感じる僕の中の電極に触れたからだった。 彼もまた、美しいものは存在しないと知っていたからだ。 完全なものは永遠に存在しないという事実を。少なくともこの世では。 雪が空から落ちてくる沈黙なら、雨は空から落ちてくる終わりのない長い文章なのかもしれない。 単語たちが敷石に、コンクリートの建物の屋上に、黒い水たまりに落ちる。はね上がる。

Posted byブクログ

2019/11/05

英国ブッカー賞をアジア人で初めて受賞したハン・ガンの新作は、カルチャースクールで古典ギリシャ語を教える男性と、そこにギリシャ語を学びに来ている女性の物語。視力を徐々に失う男性と、言葉を発せない女性。そのすれ違いと邂逅の物語は、とても映画的で凛とした空気を醸し出しています。静かな名...

英国ブッカー賞をアジア人で初めて受賞したハン・ガンの新作は、カルチャースクールで古典ギリシャ語を教える男性と、そこにギリシャ語を学びに来ている女性の物語。視力を徐々に失う男性と、言葉を発せない女性。そのすれ違いと邂逅の物語は、とても映画的で凛とした空気を醸し出しています。静かな名作。

Posted byブクログ

2019/09/22

なんと重いテーマに挑んでいるんだ…というのが一番の感想です。古代から使われ続ける言葉というものが、その使い手であるはずの「私」を超えてしまった現代において、自分が存在するはずの世界との結節点を見出せなくなった女性(古井由吉の『杳子』を思い出しました)。そして、視力を失いつつある中...

なんと重いテーマに挑んでいるんだ…というのが一番の感想です。古代から使われ続ける言葉というものが、その使い手であるはずの「私」を超えてしまった現代において、自分が存在するはずの世界との結節点を見出せなくなった女性(古井由吉の『杳子』を思い出しました)。そして、視力を失いつつある中で、やはり世界との結節点を失いつつある男性。それぞれの自意識が内にこもったまま膨らんで膨らんで、読んでいて息苦しくなりました。最後はパーンといってしまうかと思いきや、意外とそうでもなく、針の穴から少しずつ息苦しさが抜けていきそうな余韻で終わります。言葉が持つ難しい命題を言葉で表現しようとする、作者の繊細さと懸命さを強く感じました。

Posted byブクログ

2019/09/13

少しづつ視力を失っていく古典ギリシャ語の講師の男と言葉をしゃべることが出来なくなった女。カルチャー・センターの教室で二人は出会う。そして、男の世界の話と女の世界の話が彼らの来し方を教えてくれる。二人の世界は出会うのだろうか。女の口から言葉が漏れるのだろうか。ギリシャ哲学の話もでた...

少しづつ視力を失っていく古典ギリシャ語の講師の男と言葉をしゃべることが出来なくなった女。カルチャー・センターの教室で二人は出会う。そして、男の世界の話と女の世界の話が彼らの来し方を教えてくれる。二人の世界は出会うのだろうか。女の口から言葉が漏れるのだろうか。ギリシャ哲学の話もでたり、男のドイツでの出来事や女の子供のことも語られる。言葉の地位を再び確かめたくなるような小説だった。

Posted byブクログ

2019/09/05

言葉を話せなくなった女性と 目が見えなくなる男性。 傷つき、何かが欠落した孤独な人々、 そんな魂が出会うことを愛おしく思うのです。

Posted byブクログ

2020/02/25

読んでいる間、知的な空間を浮遊している不思議な感覚にとらわれる。あとから知ったが、作者は詩人でもあるとのこと。それも納得感がある。朝鮮語はわからないけど、読みやすくて静謐な雰囲気を感じさせる素敵な翻訳。

Posted byブクログ

2018/12/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ひっそりとした小説だ。沈黙、声、雪、薄闇、夜、顔、暗闇、闇の中の対話、黒点、深海の森。これが章題のすべて。ソウルのカルチャースクールのギリシャ語講師と受講生の僕と彼女には名前がない。章ごとに視点を入れ替えながら語られるのは二人の過去。読者はカウンセラーのように二人に寄り添っていくことになる。あなた、おまえ、君の二人称の章が時折り挟まり、わずかな会話にはカギかっこもなく情景に溶け込んでいく。視力を失いつつある男と声を忘れた女があるできごとをきっかけに触れ合い、彼・彼女として語られる終章間際では、いよいよ詩に近づく。

Posted byブクログ

2018/11/27

世界観は好きですがどうにも難しい 何度も読み返し先に進む感じが、今の気分と違って読めない 図書館で借りたので返却日も気になりつつ、、、、。

Posted byブクログ