湖の男 の商品レビュー
レイキャビック警察4作目。また事件を追って過去に遡るのだが、今回は政治が絡んでいて少し難しかった。共産主義とかスパイとか興味深くはあったけど。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
政治的背景、歴史的背景を書き込む北欧ミステリー好きの自分としては、共産主義の国において、自由な発言や行動を監視されていた留学生の経験がストーリーとなる「湖の男」は、インドリダスンの作品の中でも、特に好きな一冊となった。訳者あとがきで、「為政者が都合の悪いことは伏せ、あったことをなかったことにして恣意的に民を管理することは、自国が民主的で自由な社会であると多くの人が信じている21世紀のいまのほうが、むしろやりやすいのではあるまいか。」と記していたが、全くもってその通りである。 密告と現在の言葉狩り。本質的には何も変わらない。なぜなら、その根底にあるのは暴力革命からフラントフルト学派に形を変えた主義主張だから。社会や歴史を深く考えさせられる北欧ミステリーが好きだ。
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干上がった湖から見つかった白骨。その謎とは。 重たい。いつもながらの事だがこのシリーズは重いテーマと格闘している。今回は冷戦時代とそれに翻弄された人々が主となっている。ミステリ的でもありながら歴史小説的でもある。ただ個人的には一作目や前々作ほどの衝撃はなかったという印象がある。
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水位低下した湖の湖底から現れた、頭に陥没跡があり体にソ連製の通信機を巻き付けられた骸骨。一方、海辺の家でただひとり若き日のライプツィヒ大学への留学時代を回想する初老の男。いつかこのニュースが現れるのを待っていた気がする、と。 物語は、エーレンデュルたちの捜査と、この初老の男のラ...
水位低下した湖の湖底から現れた、頭に陥没跡があり体にソ連製の通信機を巻き付けられた骸骨。一方、海辺の家でただひとり若き日のライプツィヒ大学への留学時代を回想する初老の男。いつかこのニュースが現れるのを待っていた気がする、と。 物語は、エーレンデュルたちの捜査と、この初老の男のライプティヒの大学での回想が交互に描かれる。なんとなく最初からこの冷戦時代のことと骸骨は関係があるのだろう、というのは想像がつくが、この男トーマスの回想が静かだ。そして1950年代の東西陣営の緊張の中の東ドイツとアイスランドの状況を想像する。大戦終了後、若者たちは純粋な気持ちで、幸福に暮らせる社会を作りたいという気概に満ちていた。が、青々しい学生時代のあと、その進む道はそれぞれだった、という感慨。 インドリダソンは「湿地」「緑衣の女」「声」に続いて4作目だが、この「湖の男」が一番よかった。 骸骨の上がったクレイヴァルヴァトン湖をグーグルで見ながら読む。そして弟の遭難から失踪者にこだわるエーレンデュルの私生活がまた描かれるが、それが事件捜査で、無くなったタイヤのホイール探し、とリンクさせているのが秀逸。 トーマスは1954あたりにライプツィヒ大学に留学しているようだが、トーマスの家庭は駐留するアメリカ軍に対して卑屈になるアイスランド人を激しく批判する家庭として描かれる。・・そこら辺のアイスランドの歴史を知らなかったのでググってみると、13世紀のノルウェー、14世紀からのデンマーク支配だったが、1940.6にデンマークがナチスドイツに占領されると、イギリスが先手を打って上陸、41年にはアメリカ軍が上陸した。1944.6にデンマークから独立。1949年にアイスランド議会はNATO加盟を決定した。その後アメリカ軍基地が設置され、雇用などでアイスランド経済にとって大きな恩恵とされた。・・のがわかった。こういう事を知ったこともよかった。・・でもライプティヒ大学へのアイスランド人留学はよくわからなかった。 京都産業大学のページでは、 ライプチヒ大学は、1409年に設立された歴史と伝統を持つ大学で、1951年ライプチヒ大学に初めて留学生が入学し、ドイツ語と他の科目を勉強した。1956年、外国人留学生学会(IFS)を創設し、1961年にIFSの名前をHerder Institutに変更。とある。 物語ではハンガリーやチェコなどソ連圏からの留学生たちとの交流が描かれている。 クレイヴァルヴァトン湖 https://www.google.co.jp/maps/place/%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%88%E3%83%B3%E6%B9%96/@63.9251848,-22.0228189,13z/data=!3m1!4b1!4m6!3m5!1s0x48d6113e0935446d:0x653546f8345a1509!8m2!3d63.9257301!4d-21.9715926!16zL20vMDMydG10 2004発表 アイスランド 2017.9.22初版 図書館
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エーレンデュル捜査官 翻訳本第4弾。水位の下がった湖の底から発見された、旧ソ連製盗聴器がくくりつけられた白骨死体。半世紀も昔の重く哀しい事件をエーレンデュルといつもの仲間たちが捜査する。これまでのような家族絡みとは異なり、ある意味もっと大きな、国家や組織の主義と理想に若き情熱を捧...
エーレンデュル捜査官 翻訳本第4弾。水位の下がった湖の底から発見された、旧ソ連製盗聴器がくくりつけられた白骨死体。半世紀も昔の重く哀しい事件をエーレンデュルといつもの仲間たちが捜査する。これまでのような家族絡みとは異なり、ある意味もっと大きな、国家や組織の主義と理想に若き情熱を捧げて裏切られ、その後の人生を狂わされた人たちの物語。アイスランドという小国の冷戦下の状況も全く知らなかったのでその点も興味深かった。エーレンデュル自身が抱える過去のトラウマや娘との問題も少しずつ進展しておりますます目が離せない。
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重要なのはこの物語がアイスランド人に向けて書かれた物語だということです 当たり前だ 当たり前だけど重要なことだと思う では作者はアイスランド人にどんなメッセージを届けたかったのだろうか それはアイスランドという国について考えてほしいということではなかったか 事件は東西冷戦下...
重要なのはこの物語がアイスランド人に向けて書かれた物語だということです 当たり前だ 当たり前だけど重要なことだと思う では作者はアイスランド人にどんなメッセージを届けたかったのだろうか それはアイスランドという国について考えてほしいということではなかったか 事件は東西冷戦下の東ドイツに渡った社会主義者のアイスランド人留学生たちの生活、心情に端を発する 米ソの睨み合いの中で地理的にも重要拠点であったアイスランドの歴史、成り立ちにも触れながら物語は進む この生真面目な捜査官エーレンデュルのシリーズを読むとき、安易にアイスランドらしいという表現を使ってこの陰鬱な雰囲気を持つシリーズを説明しようとするが、果たしてアイスランドらしいということを本当に理解してるんだろうかと考えてしまう アイスランドという国が非常に稀有な風土、文化、政治体制を持っていることは間違いない 例えば極夜であったり、火山であったり、森林がほとんどないことであったり 軍事同盟であるNATOの加盟国でありながら軍隊を持っていなかったり どういう国なん?陰鬱って合ってるん? 例えば北海道と四国を合わせた面積に33万人しかいないということなので、この国だけを市場とした小説は商業的に成立しないだろうなって考えたとき、込められたメッセージってアイスランド人だけが対象違うんじゃない?とか 小さな小さな国のことがスタートだったのになんだか思考は四方八方に広がって全然まとまらない アイスランドって結局どんな国なん? 実はこれを世界中の人々に考えてもらうことがアーナルデュル・インドリダソンの狙いなんじゃないかと、そんなことを思いました
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21世紀のアイスランドとWW2直後のアイスランドが交錯する。欧の国のどこも少なからずナチの影響があるけど、その後の欧はソ連にも振り回されたんだなと実感。 「人は皆その時の状況で最善を尽くす」世が世ならこの言葉を言った人も二重スパイになんてならなかったろう。
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西側社会を賛同する集会禁止、相互監視、秘密警察、投獄、恐ろしい東ドイツ時代と、現代が、湖から発見された骸骨の身元をめぐり、時代を超えて接近し始める。 ベルリンの壁崩壊後も共産主義の爪痕が、自由を求めた当時の若者たちに、深々と残るのが痛ましい。 医療や健康保険制度や教育など、貧富の...
西側社会を賛同する集会禁止、相互監視、秘密警察、投獄、恐ろしい東ドイツ時代と、現代が、湖から発見された骸骨の身元をめぐり、時代を超えて接近し始める。 ベルリンの壁崩壊後も共産主義の爪痕が、自由を求めた当時の若者たちに、深々と残るのが痛ましい。 医療や健康保険制度や教育など、貧富の差なく平等に受けられるのは社会主義の利点だが、一党制は恐ろしい。自由を求めるのがこんなに罪なのか。社会主義、共産主義の政府の考えに戦慄する。 フィクションだがそう遠くなかった歴史考えさせられる。 不自由な時代を生きた、夢を持つ当事者たちのジレンマが切ない。 エーレンデュルの失踪者たちへの執着が事件解決に結びつく時、運命的な大きな波を感じた。
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シリーズ邦訳4作目(本国では6作目)。構成は事件発覚と捜査状況を追う現在のタイムラインと、事件の発端となった過去を振り返る時代の異なるタイムラインが交差して進む形に戻っていました。このシリーズとしては前作よりもこの構成の方が馴染みがあり読みやすいです。これまでは小国であるアイスラ...
シリーズ邦訳4作目(本国では6作目)。構成は事件発覚と捜査状況を追う現在のタイムラインと、事件の発端となった過去を振り返る時代の異なるタイムラインが交差して進む形に戻っていました。このシリーズとしては前作よりもこの構成の方が馴染みがあり読みやすいです。これまでは小国であるアイスランドならではの規模と人間関係の範囲で起こることを書いた作品でしたが、今回は冷戦時代の東西情勢におけるアイスランドの立ち位置など、時代と世界の政治勢力地図という具合に背景が広がりを持っており、その分、ひとりひとりの個人が時代と政治情勢に翻弄される様はやりきれなかったです。エーレンデュルと他の家族との不毛な関係は相変わらずですが初めて息子が登場、エーレンデュルと相対するときは悪態をついてばかりのエヴァ⁼リンドが、離れて暮らしていた間ずっと母親に反抗しエーレンデュルのことを想い心情的に頼り気にかけていたと聞かされます。前作で出会ったヴァルゲルデュルも今後のシリーズを通じて出てきそうだし、アメリカかぶれで頭でっかちの若者というイメージだったシグルデュル⁼オーリにも、共産主義者だったという父親との確執があるような記述もあり、今後の人間関係がどうなっていくのか、楽しみです。
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ミステリ。シリーズ4作目。 歴史小説っぽい。 もの凄く重厚な人間ドラマ。 一人の人間の人生が明らかになっていくにつれ、事件の真相に近づいていく。 シリーズを通して、主要登場人物たちの人生も描いている模様。 このシリーズ、気軽には読めないが、じっくり読むととても面白い。
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