春雷 の商品レビュー
江戸時代の武士は支配階級であり、生まれながらの勝者のように見える。しかし現実はそう単純ではない。もともと戦闘員であった武士は、泰平の世の中で次第に官僚化し、組織の中で生きる存在へと変わっていった。そこに生まれる葛藤や悲哀は、現代と何ら変わるところがない。 本書に描かれるのは、心...
江戸時代の武士は支配階級であり、生まれながらの勝者のように見える。しかし現実はそう単純ではない。もともと戦闘員であった武士は、泰平の世の中で次第に官僚化し、組織の中で生きる存在へと変わっていった。そこに生まれる葛藤や悲哀は、現代と何ら変わるところがない。 本書に描かれるのは、心に深い疵を負いながらも、自らの務めに向き合い続ける一人の武士の姿である。それはまさに、葉室麟作品に通底する「孤高の誠実さ」である。 物語は大きな謎を抱えたまま進む。欅屋敷に住む楓とは何者なのか。なぜ前主席家老の隠居屋敷にいるのか。そして主人公・多聞隼人が羽根藩に仕官し、重責を担うに至った経緯。さらに言えば、その行動を支える内面こそ最大の謎である。 藩財政再建のために憎まれ役を引き受ける多聞隼人。その動機は何か。物語はその核心へと徐々に迫っていく。人を慈しむ心――それが抑え込まれているがゆえに、かえって深い感動を呼び起こす。 大義のために己を捨てる。不器用なまでに誠実な男・多聞隼人。そして彼に呼応する男たち。それぞれが己の役割を全うし、生涯を閉じるとき、季節は長い冬を越え、春を告げる雷を迎える。 「春雷」という題名は、その再生と終焉を同時に象徴しているのだろう。
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鬼隼人の生き様。人になんと言われようが己の信念を貫く。相手にわかってもらおうとも思わない。非常に潔くて悲しい。後々百姓が隼人に感謝してる描写は出てくるけど生きている間に正当に評価されて欲しかったのが正直なところ。 批判するだけで何も動こうとしないことへの怒りには耳が痛かった。嘆くだけでは現状はよくならず、具体的に行動してこそ意味がある。 最後、名君ではなく暗君にはもっとすかっとしたかった。失脚だけでは生ぬるい
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体裁や人目を気にして生きるのではなく 自分の信念・生き方を変えることなく突き進んでいく 人は変えられずとも、自ら変わることはできるし、その種を蒔くことはできる。 鬼隼人らに、良くも悪くも違和感が拭えぬまま読み進めていた自分も、世で言う善悪、その人の言動のみに目を向けて判断する善...
体裁や人目を気にして生きるのではなく 自分の信念・生き方を変えることなく突き進んでいく 人は変えられずとも、自ら変わることはできるし、その種を蒔くことはできる。 鬼隼人らに、良くも悪くも違和感が拭えぬまま読み進めていた自分も、世で言う善悪、その人の言動のみに目を向けて判断する善悪に惑わされていることを自覚した。 自分はどう生きたいのか 羽根藩シリーズを読むたび、様々な角度から問いかけられている気がする。
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武士とはなんだろう。志とはなんだろう。 胸に秘めた譲れないものを最期まで貫き主人公は壮絶な死を選ぶ。 読み終わった後、寂しさが吹き抜けていく。 人は皆、グレーだ。善と悪の融合物だと思う。 ただ視点を何処に置くかで生き方は変わる。 どんなに取り繕うことが上手だった...
武士とはなんだろう。志とはなんだろう。 胸に秘めた譲れないものを最期まで貫き主人公は壮絶な死を選ぶ。 読み終わった後、寂しさが吹き抜けていく。 人は皆、グレーだ。善と悪の融合物だと思う。 ただ視点を何処に置くかで生き方は変わる。 どんなに取り繕うことが上手だったとしても、全ては己の心が知っている。隼人が仕えた主君はお粗末だった。 その場所でなさねばならねことを全力で果たしたのが隼人という武士なのだろう。 仁もある、知もある、武もある。なのに何故か大きな運命に翻弄される。 それが憂いとなり、ダンディズムを感じる。そんな主人公を描くのが、葉室麟さんは得意だと思う。
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羽根藩シリーズ3作目 1作目の蜩の記の秋谷と同じく、この作品の隼人も逃げることなく死ぬことを選ぶ。最後は同じだけれど秋谷は静の人、隼人は動の人に思える。覚悟をしてからは嫌われ恨まれることも厭わない激しい人生。隼人、大庄屋の七左衛門の己の信じるところを曲げずにむかえる死に様は壮絶で...
羽根藩シリーズ3作目 1作目の蜩の記の秋谷と同じく、この作品の隼人も逃げることなく死ぬことを選ぶ。最後は同じだけれど秋谷は静の人、隼人は動の人に思える。覚悟をしてからは嫌われ恨まれることも厭わない激しい人生。隼人、大庄屋の七左衛門の己の信じるところを曲げずにむかえる死に様は壮絶です。 隼人の「悪人」と「善人」の考え方からすると、私は善人だ。
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最高に良かった。主君と家臣、武士と農民、親と子、男と女、様々な関係が描かれる中で、悲しい生き方しかできない男の姿が活写されてた。それぞれの人物がとても良く描かれてて大変感情移入をしてしまった。最後の行を読み終わったところでいろんな感情が溢れて大泣きしてしまった。誰もがみんな言葉足...
最高に良かった。主君と家臣、武士と農民、親と子、男と女、様々な関係が描かれる中で、悲しい生き方しかできない男の姿が活写されてた。それぞれの人物がとても良く描かれてて大変感情移入をしてしまった。最後の行を読み終わったところでいろんな感情が溢れて大泣きしてしまった。誰もがみんな言葉足らずに思えて、なのにその少ない言葉の中、いやむしろ言葉にされない中に沢山のことが語られてたのかな。それが物語全体に静謐な雰囲気を与えてもいる。面白かった。
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豊後の羽根藩では、財政窮乏、藩の借銀が膨大な額となり返済に苦しんでいた。名君との聞こえもある藩主兼清のもとに、備後浪人の多聞隼人が召し抱えられ、鬼隼人と称されて、苛烈な改革を断行していった。 悪とは何か。正義とは。 おのれの正しさを言い立て、他人を謗り、正すのが正義なのか。それは...
豊後の羽根藩では、財政窮乏、藩の借銀が膨大な額となり返済に苦しんでいた。名君との聞こえもある藩主兼清のもとに、備後浪人の多聞隼人が召し抱えられ、鬼隼人と称されて、苛烈な改革を断行していった。 悪とは何か。正義とは。 おのれの正しさを言い立て、他人を謗り、正すのが正義なのか。それは何も作ろうとはしない。何かをなそうとする者の足を引っ張って快とするものだ。この世に何も作りだそうとはしない。 今の政治家に聞かせてあげたい。
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前作までと違い今作の主人公は最初どのような考えを持って生きているのかよく分からなかった。 しかし最後になぜそうなったのかが分かり、その苛烈な生き様の目的を知ることが出来る。 悪人とは何か、善人とはどういう人物なのか。
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『潮鳴り』に続き、葉室作品三作目。羽根藩シリーズ。前作よりも主題は難しい。藩主を自分(隼人)の眼で見定める——。悪いことは悪いと謝ることが出来ないなら、まあ人間として駄目だわな…兼清さんよw どんなに短い一生でも何かしら意味があったと思いたい——不器用な生き方しか出来なかった"鬼隼人"に黙祷を…。星四つ。
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羽根藩シリーズの第3弾。 シリーズといっても舞台になる藩が同じなだけで、それぞれの巻に話の繋がりは(たぶん)全くなく、時系列的な関係も分からない。シリーズとして唯一の共通点は主人公が気高いこと。気高さの表し方はそれぞれ異なるものの、根底にある印象が同じだという他に類を見ない構成で...
羽根藩シリーズの第3弾。 シリーズといっても舞台になる藩が同じなだけで、それぞれの巻に話の繋がりは(たぶん)全くなく、時系列的な関係も分からない。シリーズとして唯一の共通点は主人公が気高いこと。気高さの表し方はそれぞれ異なるものの、根底にある印象が同じだという他に類を見ない構成です。今回は真の目的を果たすためには憎まれ役も厭わない男たちの話でした。 真似はできないけど格好いい。
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