サラバ!(下) の商品レビュー
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帰国子女であり、家族に迷惑をかけてきた自覚のある姉という立場であり。あらすじを読んでみて、これは圷家の物語であると同時に「私」の物語でもある、という予感がしていました。そう感じてしまう物語は初めてではなかったけれど、フラッシュバックするものが圧倒的に多くて読み終わった今、頭が少しぼーっとしています。 スクールカースト的思考のこととか。幼少期を海外で過ごして日本に戻って、学校に入ったとき、すぐにスクールカーストの仕組みのようなものを感じ取ったおぼえがあって。それまでの自分とそれからの自分が明らかに違うことは今でも思います。「人は人、自分は自分」海外で過ごした人間がよく言うある意味で垢の付いた言葉だけど、本当にそんな風に過ごしていた、過ごすしかなかったのと比べて、あまりに周りを意識し過ぎるようになっていました。子供なりに抑制を効かせていたはずなのに、いつの間にか何かに巻き込まれたような感じになっていました。歩がいつの間にか転げ落ちていた過程に似たものをおぼえます。歩と違って学生時代に多少なりと失敗があったので、致命的に勘違いする前に頭を打ちつけられましたが。歩の幼少期から大学生あたりにかけての自分と周りの人を相対的に見る描写からは、本当に色々なことが思い出されます。 それから、「いつまで、そうやってるつもりなの?」とか。冷静に物事を見る、ということが大事な場面はあると考えています。もちろん。その一方で、見るだけではその者は永遠に傍観者にしかなりえなくて、傍観者は「いなくても同じ」に近しいものです。だけど歩はあらゆる場面で煮え切りません。優しさのようなものが邪魔をしていることも少なくありません。だけど優しさは時には言い訳や甘えになっていることを気付かないといけないのでしょう。傍観者であることを楽に感じて動けなくなる自分を叱咤しないといけないこともあるのでしょう。 それどころか、自分が相手に対して重大な負い目があったとしても、矢面に立つことが必要なこともある、ということ。美しくなった貴子が弱くなった歩の前に立つ姿には本当に心を打たれました。彼女がアクションを起こし始めたとき、思わず「やめておきなさい、自分の立場をわきまえた方が良い」と念じてしまいました。私自身の心の中で家族に対して恥じていることが過ぎってのことです。わざわざ傷をえぐらなくても、かさぶたが固まるのを待てばいいのに、と。だけど、言わなければならない言葉というのはどうやらあるようです。それも、発する者が確固たる自信と責任を持っているときには、それ以外の文脈における関係性を凌駕する力を持ちうるようで。痛い思いをしたくない、という気持ちだけでは本当に何も出来ないものです。 そこで大切になるのが自分の幹。軸。信念。信じるもの。それは下手すると他を跳ね除けるような暴力的なものかもしれません。それでも自分は自分を生きるしかないのですから、自分の幹を持つしかありません。私の場合、幼児洗礼でキリスト教徒になったのが、良かったように思われます。貴子と同じように疑いながら、、、と言ってしまっては最早何教なのか、という具合ですが、それでも、何かに迷ったときに問いを投げかけられる相手がいる、というのは精神衛生上良いような気がします。 いや、やはりそのような細々とした話をするよりも。「あなたはあなたのこれまでの人生全てで出来ているの」「自分の人生を信じなさい、それが生きるということ」というようなあまりにもエモーショナルだけど心の芯に刺さるメッセージ。輝かしい忘れたくない思い出も忌々しくて葬りたい思い出も、沢山あって、それも複数の海外生活によるあまりに綺麗な舞台転換があるせいか、消し去りたいものも含めてどれも鮮やかで、日常的に息が詰まりそうになることが少なくありません。色々なものをひっくるめて肯定するのはとても難しいことです。だけど、どこかでそうしないといけないのかもしれないな、と最後にぽつんと思いました。
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そうなんだー、こうやってこの小説は生まれたんだ、、、最後に納得。 大作すぎて、語りきれない。 ひとつ学んだこと。 そうか、小説って、何度読んでも、その時の自分に必要な所が残るようになってるんだ、、、 なんか、当たり前のことなのに、あまり考えたことがなかった。 私が今一番必要なところが残る。 他は、印象が薄れるってこと。 私に残ったこと。 エジプト。 自分の信じるモノを人に決めさせてはいけない。 ヨガ。 姉の世界中の旅行。 それにしても、異常行動ばかりだった姉が、歩と、母と談笑したり助けになったりするようになるってすごいよな。 その姉のことが、羨ましいとさえ思ってしまうのだ・・ 私は私の信じるモノを、キチンとは持ってない。 どうすればいいのだろう。考えてるばかりではだめか。 行動しなくてはだめか。 どう行動すればいいのか。 数学みたいにはいかない。 計算ずくにはならない。 自分にてらしあわせて、いろんなことを考える。いろんな感情と温かみが、私には必要なんだよな。 そういったことを考えて感じた方が良いのだよな、などと思う。
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信仰。 それは、意識することではない。 息をするように意識しないでもできるようになったら本当の信仰なのだろう。 人が生きているとこ自体が既に信仰なのかもしれない。 その信仰している何かに縋って祈っているのではない。 祈ることに縋っているのだ。 『サラバ』に縋っていたのだ。
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あなたは あなたの信じるものをみつけて...。 だれかに 決めさせてはいけない。 胸が痛い本だったな。 消化不良。 も少し若くて、そう 歩くらいに若くて 先の未来を描ける余力があるくらいなら いい作品に出逢えた、がんばろう、と思えたかも。 前半は ちょっとダレダレ気味だったけ...
あなたは あなたの信じるものをみつけて...。 だれかに 決めさせてはいけない。 胸が痛い本だったな。 消化不良。 も少し若くて、そう 歩くらいに若くて 先の未来を描ける余力があるくらいなら いい作品に出逢えた、がんばろう、と思えたかも。 前半は ちょっとダレダレ気味だったけれど 後半の一冊半は 一日で 一気読み。 私の集中力も まだあることを確認できたw
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いつか必ず、もう一度読み返そうと誓った。 今の自分には、この作品の全てを受け止めきれるだけの度量がないみたい。残念ながら。 順風満帆な二十代を歩んでいた歩くん、フリーのライター(自分はシナリオ方面だけど)で前髪が薄いという共感の二大巨頭を引っ提げて、ニヤニヤしながら読んだ。 多...
いつか必ず、もう一度読み返そうと誓った。 今の自分には、この作品の全てを受け止めきれるだけの度量がないみたい。残念ながら。 順風満帆な二十代を歩んでいた歩くん、フリーのライター(自分はシナリオ方面だけど)で前髪が薄いという共感の二大巨頭を引っ提げて、ニヤニヤしながら読んだ。 多分だけど、これを読み始めた今の自分は「見つけるべきもの」が明確に見つかってはいないけど、なんとなくそれを前向きに探している途中なんだと思う。だから歩が道に迷っていく様を見ても「辛い」ではなく「頑張れ」と思って読み進められたし、最後の方ではとても温かで清々しい気持ちになれた。人間賛歌ならぬ、人間賛話。 今からでも遅くはないはずだ…海外に、いろんな国に行ってみたい!
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いやーーーー読み終わった。 長い長い物語だった。 歩の37年間の物語。 ほんといろんなことあったなー。 信じるってどういうことなんだろね。 私も自分の幹があまりないと思う。 ただただ日々の日常に流されてる。 それもいいことなんだろけど。 でも生きてるって素晴らしいね。 時間と...
いやーーーー読み終わった。 長い長い物語だった。 歩の37年間の物語。 ほんといろんなことあったなー。 信じるってどういうことなんだろね。 私も自分の幹があまりないと思う。 ただただ日々の日常に流されてる。 それもいいことなんだろけど。 でも生きてるって素晴らしいね。 時間という化け物。 時間が化け物か。 あんまり考えたことはなかった。 時間は取り戻せないしな。 でも今になってじゃないとできなかったこともあると思うし、時間が解決することもあるよね。 自分の今まで生きてきた27年間を振り返ったよ。 自叙伝書いてみようかなとか... 小説ってすごいなーって思った。 こんなに響いた小説は久々。 絶対読んだ方がいい。 生きてる間に読めてよかった。 信じるものを探して旅に出たりはしないけど、 面白い小説だったな。
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西加奈子 「 サラバ 」 サラバの意味を 価値観や生き方と解釈した。自分の価値観を自分で決め、他人の異なる価値観を(マイノリティーであっても)認めよ、ということだろうか? 「この物語に信じるものを見つけられなければ、他の物語を読んでほしい〜何を信じるかは 自分に委ねられて...
西加奈子 「 サラバ 」 サラバの意味を 価値観や生き方と解釈した。自分の価値観を自分で決め、他人の異なる価値観を(マイノリティーであっても)認めよ、ということだろうか? 「この物語に信じるものを見つけられなければ、他の物語を読んでほしい〜何を信じるかは 自分に委ねられている」
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主人公圷(アクツ)歩の37歳までの人生を書いた自叙伝的小説。読み終わってしまった~。上中下とかなりの読み応えだと思っていたのに、読み進めるとその世界観にどっぷり浸かりました。今年一番のおすすめ本となりました。
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主人公と同じ帰国子女です(イランやエジプトではありませんが)。数年海外に住んだだけでもそれが幼少期だと大人になっても第2の故郷のように感じます。正直記憶は断片的なんですが…。なんかその国に愛着が湧くんです。 主人公の言う化け物を探すようなことを自分もやっている気がします。海外在住時代の幼なじみ、小中高の友達、大学のサークルの仲間…久しぶりにあって当時のことを話すことで、そのとき確かに自分はその人たちとその場所にいたということを実感できます。 でも、自分が信じられるもの…言葉で表すのはすごく難しいです。考えてみます。
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30代の男のクズを救えるのは西さんしかいない、っていう若林さんのコメントをテレビで観て、絶対読もうと思ってた小説。 愛らしい顔と世渡り上手な性格で20代まで絶好調な主人公、一方で不器用で突拍子も無い行動で家族からも敬遠されている姉。 話の後半では、主人公の歯車が大きく狂いはじめ、...
30代の男のクズを救えるのは西さんしかいない、っていう若林さんのコメントをテレビで観て、絶対読もうと思ってた小説。 愛らしい顔と世渡り上手な性格で20代まで絶好調な主人公、一方で不器用で突拍子も無い行動で家族からも敬遠されている姉。 話の後半では、主人公の歯車が大きく狂いはじめ、辿り着いた先は子供の頃に過ごしたカイロ。 主人公も姉も両親も何かを探して旅をしている。みんなそれぞれの方法で、不器用に遠回りもしながら、それでも何かを掴むことができてて、ボリュームがある小説だった。
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