水声 の商品レビュー
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少し変わっていつつも平穏な家族の成り行きを時代を行きつ戻りつしながら流麗な文章で描く。家族それぞれの個性がきっちり描かれており読みやすい。主人公、都の目線で徐々に明かされる家族の秘密も興味深く、数々の伏線が回収されていく。家族とは、恋愛感情とは、死とはを考えながら読み進める。母親の死、地下鉄サリン事件の死、日航機墜落の死をきっかけに人は揺れ、秘めていた欲望を実行するのは自分の死も意識するからなのか、本能なのか。 都と弟の陵との心地よく歯がゆい関係性を興味深く読んだ。恋愛感情は同居する時間と反比例して低下していく不思議は全ての人において当てはまることではないのかも。
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ママが死んでしまったのでパパが出て行った。子供の頃からいてパパと呼んでいる人は実は叔父だった。 家族の物語。55歳になった都の思い出話。 心にはいつも死んだママがいる。 ママが死んでから同居をしないといって出て行ったパパがいる。弟の陵がいる。 パパと呼んでいるが実は叔父で子供...
ママが死んでしまったのでパパが出て行った。子供の頃からいてパパと呼んでいる人は実は叔父だった。 家族の物語。55歳になった都の思い出話。 心にはいつも死んだママがいる。 ママが死んでから同居をしないといって出て行ったパパがいる。弟の陵がいる。 パパと呼んでいるが実は叔父で子供の時からママと一緒にいるのでずっとパパと呼んでいた、家族だ。 一緒に暮らしている陵は弟で生まれた時を知っている。 ママの心はいつも満たされていて、家族の中心だったが若いのに癌で死んでしまった。 最後のピクニックでママがいった。 「もうすぐあたし、死ぬのね」 「もうそれ,飽きたから、やめて」 「せっかくその気になっているのに」 「その気になってならなくていい」 「こんなにこの家で権力をふるえるのって,初めてのことなんですもの」 「あなたはいつだって、この家の一番だったでしょう」 パパは笑った。ママも私も、陵も。 「ねえ、後悔しちゃだめよ」 「何かを、してもしなくても、後悔はするんじゃない?」 陵がぽつりと言った。 「してもしなくても、後悔しちゃだめなの」 「それって、おなじようなものじゃないの」 「違うの。後悔なんかしないで、ただ生きていればいいの」 死んでいく人間の言うことはよく聞かなきゃ。ママはそう言って、おむすびを口に運んだ。 (意味を考えては、いけない) (そこから何かがもれていってしまう、あるいは入り込んできてしまうから) おれたちって、生まれてこのかたずっと、だだっぴろくて白っぽい野に投げ出されているみたいだよね。いつか陵が言ったことがある。 「たとえば荒野のように、雨風そのほかこっちにつきささってくる攻撃的なものから無防備な場所じゃなくて、なんだかぼんやりした抽象的な感じの場所」 この白い野のことを時折思うようになった。 その光景は次第に形を変えてきたが、やはり果てのない野だった。 陵と都が住んでいた家は古くなって取り壊された、今はマンションで隣り合わせに済むようになった。 お互いに訪ねあって暮らしている。 恋人を愛することと、陵を愛することはまったく違うことだった、けれど、その違いをわたしはうまく言葉にできない。誰かに聞かれる機会もないから、言葉にする必要もない。 パパとママの関係も陵と都の関係も世間から見るといびつな家族の形をしている。 その家族はそれでも、好きだといいあったり、同じベッドでねむっている。 しかし都はいつも白く広がっている野の風景を見ている。 陵は会社に行き都はうちでイラストを描く、世間の秩序に沿って暮らしてはいるが、家族という絆とは違った結びつきの中で漂っている日々が、ママの思い出とともにたゆたうような言葉で読者を浮遊させる。 一気に読ませる不思議な魅力は相変わらず川上さんのものだ。
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人間は70%が水でできてるっていうけど、相手と一つになることを水が混じり合う様に例えていた。境目がなくなる感じとか、一つになることが当然のような感じとか。周りがどう、とかではなくて、馴染むか馴染まないか、なんだなと。まさに、水の様に流れていく文章。複雑な登場人物関係のはずなのにそれを感じさせないのがすごい
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水、と、鳥。崩壊と変化を、モチーフにのせて描いている。崩壊は「死」も含む、ただ変化しているようで、根本は変化していないのかも。 肌を重ねる様子を、太刀魚に譬えて描くだろうか…言葉がきれいで驚いた。
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家族についての、物語。 家族とは、何だろうか。 たとえば、結婚している男女、血のつながり…。 でも、そうではなくて、呼び名はどうであれ、一緒に暮らしているなら、それは家族なんだと思う。 誰と一緒に暮らしたいか、誰と家族になりたいかは、それぞれの選択だ。 ママは、武治さんではなくパパを選び、ママ曰く、パパとはそれ以上の関係ではないらしいけれど、兄妹としてではなく、パパママとして家族になった。 ママはとても魅力的で、この家族の物語の中心に、ママがいる。 解説で江國香織は、1986年の章は音楽のようだ、と言うけれど、まさにその通りで、この小説全体も、現在と過去を行き来し、まるでフーガのようなのだ。 同じ主題が、何度も変奏されて繰り返される。 ママとパパ、都と陵。愛人のいたおじいちゃま、ママと武治さんの関係。奈穂子は誰の子どもなのか。 そしてふと振り返って、題名について考えてみた。 水声。水が流れる音。 なぜこの題名なのか。最初は分からなかった。多分、今でも分からない。 でも、すべてがママに向かって流れているような気がしたのだ。海へ向かって水が流れていくように。 むかし陵が使っていた部屋を南京錠で閉めたって、止めることはできない。 止める必要さえ感じないような、何か圧倒的なもの。 でもそれは、強く狂おしいものではなくて、もっと緩やかで穏やかな気持ちだ。 何かを決めつけたり、非常識だと非難したり、そういうものから解放されたところに、とてもシンプルな「好き」という気持ちがあるような気がする。
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私には、難しかったです でも、無理だと思った本は、読むのをやめてしまいますが、読みつづけたことには、何か、この作者の作風に、惹かれているからだと思います 本の雰囲気は、好きなのですが、本の伝えたかったことは、2割ほどしか、感じとれなかったと思います
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姉弟の話。母が亡くなり、父が別の家に移っても、幼少期から過ごした家を離れずに2人で暮らしている。家族を異性として好きになる人がいることは知っているけど、自分の感情として理解することはできない。でも、本人達がお互いそれでいいなら悪いことではないとも感じるし曖昧なところ。周りの人に裁...
姉弟の話。母が亡くなり、父が別の家に移っても、幼少期から過ごした家を離れずに2人で暮らしている。家族を異性として好きになる人がいることは知っているけど、自分の感情として理解することはできない。でも、本人達がお互いそれでいいなら悪いことではないとも感じるし曖昧なところ。周りの人に裁かれている、という一文が最もしっくりきた。
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晩夏の少し夕暮れから夜にかけて外は蝉がワンワン鳴いているような環境で読みたい 「好き」ってなんだろう
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生暖かい沼へ静かに沈んでいくような感覚 女のこと 肉体のこと 見えないけどたしかに存在している部分 でもそれらを皮膚感覚で察していくような 愛おしさはどうしようもなく湧き起こる それが幸せでもあり怖くもあり 川上弘美はいつどれを読んでもその世界観に沈めてくれるから好きだ
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あいかわらずの美しい日本語で描きだされる不思議な家族愛。 でも、これは女の人の物語だったなあ。読みすすめるうちに疎外感を覚えるほどに。 あと、江國香織さんのあとがきが素晴らしかった。 時折こういうあとがきがあるから、文庫版も買いたくなるんだよね。
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