福袋 の商品レビュー
初出 2011〜16年「小説現代」 ご贔屓朝井まかての初短編集。いずれも江戸の庶民の暮らしと心意気を描く連載ではない8作 寄席文字を開発した持ち主の精進を語る筆。 唐辛子売りの贔屓がついた大部屋の歌舞伎役者。 健気に働いて湯屋を守ろうとする娘。 反発していた同い年の兄嫁に意...
初出 2011〜16年「小説現代」 ご贔屓朝井まかての初短編集。いずれも江戸の庶民の暮らしと心意気を描く連載ではない8作 寄席文字を開発した持ち主の精進を語る筆。 唐辛子売りの贔屓がついた大部屋の歌舞伎役者。 健気に働いて湯屋を守ろうとする娘。 反発していた同い年の兄嫁に意外な形で窮地を救われた古着屋の娘。 大食漢の出戻りの姉に大食い大会で賞金稼ぎをさせるが、本業の乾物屋を潰してしまう弟。 深川の芸者に枕絵を依頼された羽織裏専門の女絵師。 籤で神田祭の役を引き当て、行列の出し物まで差配することになった大家。 その日暮らしの貧乏長屋から安売り小物の商売を起こした男。 一番好きなのは神田祭の大家さん。小心者でぶつぶつ文句は言うが、やるべきことはちゃんとやる。町内の面白おかしい仮装行列を汗だくで差配し、ピンチを切り抜けて公方様から褒詞を賜った。不埒な店子も切り捨てない、まるで落語に出てくるような大家さん。
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「長編八冊分の人生を、一冊に」という煽り文句に偽りなし!どの短編も、しっかりしていて面白い!朝井まかてさんって短編も書くんだなー!短編の1つのタイトルが福袋なんだけど、面白い話がたくさん詰まっていてわくわくできて、この本自体が福袋みたいだった。
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扉絵から、なんとも言えない面白さがにじみ出ている。 8話からなる短編なのだが、どうして、1話ずつが、又面白い。 最初の「ぞっこん」等、何にぞっこんなのか?と、思いながら読み進むと、「吾輩は猫である」、、、と、同様なことに、人間でないものが、主人公である。 護摩焚きで、もう最後...
扉絵から、なんとも言えない面白さがにじみ出ている。 8話からなる短編なのだが、どうして、1話ずつが、又面白い。 最初の「ぞっこん」等、何にぞっこんなのか?と、思いながら読み進むと、「吾輩は猫である」、、、と、同様なことに、人間でないものが、主人公である。 護摩焚きで、もう最後のお役目が、済んでしまうのかと、、、思っていたら、またもや、生命を吹き返す話になってしまうのである。 「千両役者」役者でも、階級がある。 千両役者には、鼻から望んでいないのだが、大部屋の花六に、ついた贔屓筋は、しがない唐辛子売りの旦那。 代役で、舞台で立ち往生をした花六は、座元に今度しくじりをしたら、後が無いと言われてしまう。 ご禁制の時代に、豪華な布地、帯、簪が、花六へ持ち込まれるが、これで、話題を沸騰させる千両役者になるか、咎人へなるのか、、、、 「晴れ湯」神田松田町の松乃湯の風呂屋の娘 10歳のお晴は、三助をして、家業を助けている。 父親は、後継ぎのくせに、何がら年じゅう遊んでいたのだが、母親が、倒れて、ボヤ始末に、てんやわんや。 ソロソロ、おっかさんの「お晴にお弁当を作ってやりたい」から、亭主に「お前さん 働きまっし」という。 何とも言えない表現の上手さに、又最後の、「旦那 そこ邪魔です」の奉公人から言われている姿が、滑稽に、めにうかぶような話である。 「莫連あやめ」着物の柄行や、帯の締め方で、景気や、身上が、わかった仕舞う。 古着屋の娘あやめの 兄嫁お琴は、何事にもそつのないので、あやめにしたら、何もできない自分に憤りを感じている。 友達のおそのちゃんと一緒に居る時に、おそのちゃんがいじめにあうのだが、反発出来ないでいたふがいなさ。 お園が仕立て直した着物を着て、莫連風を着こなすと、流行してしまったのだが、またもや、いじめられた者から、口汚くののしられるのだが、、、、登場したのは、いつも優しいおその。 その正体は、、、、 胸のすく話で、にたりとしてしまう話である。 「福袋」出戻りの姉が、どうして、三行半を貰ったのか?それは大飯くらいであったから、、、、 その食べっぷりは、テレビで、大飯を上手な箸運びで、おいしそうに食べる人に重ね合わせてしまった。 食べる事しか能は無いのか、、、と、思ってしまったが、毒見役として、奉公が決まる。 出戻った姉を迷惑のように思っていた弟であったが、姉の奉公が、決まったのちは、何もかもが、欲で、なくなってしまうのである。 「暮れ花火」女の絵師が、昔描いた枕絵が、どう、回って来たのかわからないが深川の芸妓「辰巳芸者」の美代次に女の羽織裏に、その絵を描いて欲しいと、、、 しかし、その絵の中の男女の中の女は自分の絵であったが、その男に会っても、啖呵を女絵師のおようは、言い放つ。 おようを雪のちらつく長屋の門口で待つ年下の修吉が、こよりに火をつけ、線花火と、、、手渡す。 修吉の気持ちをおようは、受け止めている、、、 「後の祭り」 家主、大家、家守(かもり)、、、町役人の役目も請け負っている。 その大家の徳兵衛は、神田祭りの「お祭掛」になってしまって、附祭で、巨大張りぼての人形を乗せた曳き物をどうしようかと頭悩ませる。 家賃を滞納して平吉が、色々してくれるのだが、、、すべて、冷や汗ものだったが、上手くことが運んでくれた。 しかし、祭りの褒美も、家賃も滞納のまま、平吉は、夜逃げしてしまう。 徳兵衛の妻は、おまつりの神様だったのでは、、、という始末で、あった。 「ひってん」 卯吉と寅二は、宵越しの金を持たない。行き倒れの男を助けてやったのは、櫛職人で、お礼に櫛を沢山もらうのである。 沢山の櫛を、長屋のみんなに、分けるのだが、、、その残りは、売ってお金にしたらいいという事で、売りに行くのだが、、、、 成功した卯吉は卯兵衛は、身を粉にして今の身代を築いたが、寅二は、、、その日暮らしで、生活をしているのだろうか? どちらの選択が、良かったのかと、、、、 どれもこれも、江戸の職業が、面白く、又、これまで、読んでないような職業が出て来たりして、そして、話言葉が、又うまく、読み進んでしまった。 最後の「ひってん」は、先日読んだ 「老いの世も目線を変えれば」のほんの中で、メキシコの漁師と、アメリカ人の旅行者の会話の中に出て来る話と、かぶってしまった。
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短編集8編 江戸者の見栄や人情をいろんな状況で立場の違う人々を主人公にして,どうですと極上の味付けで差し出してある.語り口も軽妙でキレがあって寄席で噺を聞いているような味わいがあって,おもわず笑って少しホロリとする塩梅が見事!
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お江戸の庶民の短編集。初めの1篇だけは主人公は人間ではないけれど(笑)どれも味わい深く楽しめた。私の大好きな江戸市井の人々の悲喜こもごもの小説をこれからもドンドン書いていただきたいと切に願う。
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素晴らしいです。もう名人の域です。まかてさんの初短編ですが、言う事無しです。 「ぞっこん」「晴れ湯」の最後にホロっと涙してしまう人情もの。「莫連あやめ」のような思わず笑ってしまう活劇?もの。「暮れ花火」のような艶やかな愛欲もの。駄作無し、手を変え品を変えこれでもかと傑作が連発され...
素晴らしいです。もう名人の域です。まかてさんの初短編ですが、言う事無しです。 「ぞっこん」「晴れ湯」の最後にホロっと涙してしまう人情もの。「莫連あやめ」のような思わず笑ってしまう活劇?もの。「暮れ花火」のような艶やかな愛欲もの。駄作無し、手を変え品を変えこれでもかと傑作が連発され、もうお腹いっぱいです。ビートルズの「ラバーソウル」のようにどれも名品です。読まないと損しますよ。 私は特に「ぞっこん」と「暮れ花火」が好きです。
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朝井さんの新刊! 8作の短編。短編かぁと長編好きな私はガッカリしたものの読み始めたら、なんと濃い短編か。 どのお話もしっかりと読ませてくれ贅沢なこと!どれも良かったけど「莫蓮あやめ」、「暮れ花火」、「晴れ湯」がなおのこもよかった。
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まかてさん新作!8編からなる短編集。短いながらも面白さが凝縮されていて、読み応え充分。中でも家業の湯屋が大好きで自ら三助になる娘、お晴がかわいくてほほえましい「晴れ湯」が一番よかった。全然働かないお父っつぁんとの会話がなんとも愉快。ダメ親父ではあるけれど、でも憎めない。そして泣か...
まかてさん新作!8編からなる短編集。短いながらも面白さが凝縮されていて、読み応え充分。中でも家業の湯屋が大好きで自ら三助になる娘、お晴がかわいくてほほえましい「晴れ湯」が一番よかった。全然働かないお父っつぁんとの会話がなんとも愉快。ダメ親父ではあるけれど、でも憎めない。そして泣かせるラスト。いいなあ。お喰らいの出戻り姉と弟のドタバタ「福袋」、この姉、ただの大喰らいじゃない。鋭い嗅覚と人並みはずれた味わう能力で見事に出世する。弟よ、姉の言うことにもっと耳を傾けていれば、、。他6編も文句なしの逸品揃い。拍手!
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抜群に相性のいい作家の朝井まかてさん「福袋」、2017.6発行、短編(独立)8篇です。ぞっこん、千両役者、晴れ湯、莫連あやめ、福袋、暮れ花火、後の祭、ひってん(何もないこと、貧乏なこと)の8話。私には、晴れ湯、莫連あやめ、福袋、暮れ花火が秀逸でした。
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