平家物語 犬王の巻 の商品レビュー
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好きな脚本家、監督の手によって映像化されるとのことで、待ちきれず原作を手に取りました。 一気に読んでしまった、自分の脳内に語り部が宿ったかのように、リズムよく物語が進んでいく。 設定がとてもよい、犬王と友名(のちの友一、友有)の生い立ちや出会いは事柄起こるべくして起こったといえる。すべてに意味がある筋書きに、ものすごい構成力を感じる…。 犬王が美を得て、それ「魚名」がいっきに吟い上げていく後半はほんとうに面白かった。そして権力者足利家によってその言葉が封じられていくさまに、いまの日本の姿が重なった。芸能(芸術)や伝聞の類がいまの時代まで語り継ぐことのできなかった派生の歴史は幾数かしれず、消えていったほんとうの真実への供養になるといい。 (野木さんがこの作品に選ばれた orもしくは選んだ?理由がなんとなくわかる気がする。)
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古川日出男にしては入り組み方はそれほどでも。でも設定はさすがな感じ。 犬王が穢れを落としていく過程と、友魚がかえっていく過程をたどっていく。
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ヴォリュームこそまったく違うが、初期の大傑作「アラビアの夜の種族」を彷彿させる構造の組み方に、独り背筋がゾクと泡立つぐらい静かに興奮してしまった。 ディテールについて特に重ねる言葉も思いつかないが、とにかく古川日出男氏のこの匂いが好きな人には堪らない作品となっている。 松本大洋氏...
ヴォリュームこそまったく違うが、初期の大傑作「アラビアの夜の種族」を彷彿させる構造の組み方に、独り背筋がゾクと泡立つぐらい静かに興奮してしまった。 ディテールについて特に重ねる言葉も思いつかないが、とにかく古川日出男氏のこの匂いが好きな人には堪らない作品となっている。 松本大洋氏による装画も、インパクト充分かつ物語とバッチリ整合している。
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古川日出男の文体はテンポがあまり崩れないので落ち着いて入って行ける。能楽や歴史の基本知識があればとても楽しく読めるけれど、なかったら「シテ」といわれましても…という感じかも。史実と伝説の隙間を縫っていく物語はあわいがあって面白い。
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読了。久しぶりに読んだ古川日出男はやっぱりカッコ良かった。『DJは全てだ』と教えてくれたのは「聖家族」だったか。日本の古典文学という財産を、ヒップホップ的な思考で読み換えて、新たな文学を駆動させる。犬王が駆けていく。そのスピード感、語り口、びりびりと痺れるカッコ良さ。古川日出男は...
読了。久しぶりに読んだ古川日出男はやっぱりカッコ良かった。『DJは全てだ』と教えてくれたのは「聖家族」だったか。日本の古典文学という財産を、ヒップホップ的な思考で読み換えて、新たな文学を駆動させる。犬王が駆けていく。そのスピード感、語り口、びりびりと痺れるカッコ良さ。古川日出男は変わらず「凄い」小説を書き続けている。松本大洋のイラストもね、河出さん良い仕事ですわ。最高!
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ちなみに平家物語の話ではない。 平家物語を語る琵琶法師とその友人の能の舞手の話。 一章一章が短く、古典モチーフだけどさくさく読める。 最後の方は舞台で演じてるのを読むようなリズム感。 演劇とかダンスとかにしたのを見たい。
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●古川版『平家物語』を読み通したのは、本作のためと言っても過言ではございません。 こちらはあっというまに読めました。 生まれながらに呪われてる奇怪な体、って百鬼丸かな?? 語り手たちのひとつの後日譚ということでよろしいでしょうか。 がんばって『平家』を読んだ方はこちらもどうぞ。 ●なお高速で読めたのは、(中編のせいもあるけど)ひとつひとつのセンテンスが基本的に短かったせいだと思うんですよねー…。リズムに乗せられたようです。
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平家物語が好きだ 琵琶で語られるのもCDで聴いたことがあるがすごい! これは正史から外された物語 松本大洋の表紙も後で納得させられる ≪ 怨霊も 狭間を行き来 美と醜の ≫
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この方の文章は、相変わらず時代を駆け巡る一艘の舟のように自由。平家物語は正史から喪われた物語であり、鎮魂の物語だから、その名を冠するこの作品も、犬王という確かに実在したが忘れ去られた能役者の生き様を描いた、その意味では、真っ当に「平家物語」なのだ。
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