すごい物理学講義 の商品レビュー
未知の世界、見えない世界に記号を与えて、その関係性を示す学究という点で、哲学と物理学は似ている。ミステリー小説は物語に完結性があり、動機や事件の因果が推理、証明されていくが、哲学や物理学は、一冊の本では終わらない。いや、本を読みまくった所で部分的にしか仮説としてしか証明され得ない...
未知の世界、見えない世界に記号を与えて、その関係性を示す学究という点で、哲学と物理学は似ている。ミステリー小説は物語に完結性があり、動機や事件の因果が推理、証明されていくが、哲学や物理学は、一冊の本では終わらない。いや、本を読みまくった所で部分的にしか仮説としてしか証明され得ない、人類史規模のミステリーである。最近、そういう考えで、謎解きのように一冊一冊読み、ほんの少しずつ解像度が上がるような読書が楽しみになってきている。 本書も、難解な物理学をある程度は一般に読み易く講義する内容。真に分かる人は物理学者だけみたいな領域もあるだろうし、物理学者にも分からない領域があるだろうから、分からなくても大丈夫。そんな風に読んでも、十分ロマンを感じられる壮大な内容だ。 デモクリトスあたりから話は始まる。ピタゴラスの遺産である数学と、アレクサンドリアの天文学、デモクリトスに端を発する世界のイメージに対し、そのバトンをニュートンに繋ぐ。 ー ニュートンは、自らが導き出した結果の限界に自覚的だった。たとえそれが、力学と万有引力の法則の発見という、科学史に類を見ない目覚ましい結果であったとしても。ニュートンの理論はきわめて有効に機能し、きわめて有益な結果をもたらした。およそ二世紀のあいだ、誰ひとりニュートンの理論に疑いを抱かなかった。ファラデーが登場するまで、ニュートンから考察を委ねられた「読者」たちは、離れた物体に作用する力をどのように理解すべきか、皆目見当がつかずにいた。ファラデーの解答は、やがてアインシュタインの手により、ほかならぬニュートンの重力に適用されることになる。 そうやって徐々に徐々に物理学の歴史を解説しながら、アインシュタインの相対性理論や、量子力学へと話が広がっていく。 ー アインシュタインが理解したのは、「絶対的同時性」は存在しないということである。つまり、宇宙のどこを探しても、「今」という瞬間に起きた出来事は見つけられない。なぜなら、わたしたちの「今」は「ここ」にしか存在しないから。宇宙における出来事の総体を、無数の現在が順序良く積み重なった結果として描写することはできない。出来事と、時間と、空間は、より入り組んだ構造をしている。 私が気に入ったのは、膨張宇宙論でアインシュタインとローマ教皇を説得したルメートルの話だ。名前だけで迫力負けしてしまいそうだが、大したものだ。これこそ権威への挑戦という感じで身震いする。 ー すでに述べたとおり、アインシュタインは当初、宇宙の膨張というアイデアに強い疑いを抱いていた。宇宙は不動であると信じて育ってきた彼にとって、それ以外の宇宙像をすんなりと受け入れることは容易ではなかった。このとおり、巨人もまた先入観に足を取られ、過ちを犯すことがある。ルメートルはアインシユタインと面会し、予断を捨てるように彼を説得した。アインシュタインは、なかなか納得しなかった。ついに彼は、ルメートルにこう言い放った。「きみの計算は正しいが、きみの物理学は憎たらしい」。そんな彼も、ほどなくして、正しいのはルメートルであると認めざるをえなくなった。アインシュタインと教皇の過ちを指摘し、双方に間違いを認めさせ、いずれのケースでも正しい道筋を提示するとは、並大抵の仕事ではない。
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大学時代に量子力学を学び、その後も曲がりなりに技術職をやっていたこともあって、気軽に読めるんじゃないかと思ってました。でも内容の濃さと、知らないことの多さに驚き。概念を理解するのに苦労した部分もありましたが、一冊を通じて大いに興味を掻き立てられる内容でした。「物理学の本、他にも読...
大学時代に量子力学を学び、その後も曲がりなりに技術職をやっていたこともあって、気軽に読めるんじゃないかと思ってました。でも内容の濃さと、知らないことの多さに驚き。概念を理解するのに苦労した部分もありましたが、一冊を通じて大いに興味を掻き立てられる内容でした。「物理学の本、他にも読んでみようかな」と思えるオススメの一冊です。
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時間の概念の転換を想像するのはなかなかしんどい。 今そこに時間があるからなのか。 エネルギーが動こうとするから時間が生まれる。 そういう解釈でいいのかしらね。 そもそもエネルギーが動こうとするという言い方でいいのかもわからない。 すべては情報をやり取りしたいのよ。 そこで生きる私...
時間の概念の転換を想像するのはなかなかしんどい。 今そこに時間があるからなのか。 エネルギーが動こうとするから時間が生まれる。 そういう解釈でいいのかしらね。 そもそもエネルギーが動こうとするという言い方でいいのかもわからない。 すべては情報をやり取りしたいのよ。 そこで生きる私たちもまた、エネルギーが情報を欲したから生きているのか。
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カルロ・ロヴェッリ!『時間は存在しない』も『世界は「関係」でできている』も読みたい本としてチェックしてはいました。でも書名の凄さ…とイタリア人物理学者…という著者への馴染みのなさになかなかページを開くまでには至っていませんでした。(よく考えたらフェルミっていうスーパースターがいる...
カルロ・ロヴェッリ!『時間は存在しない』も『世界は「関係」でできている』も読みたい本としてチェックしてはいました。でも書名の凄さ…とイタリア人物理学者…という著者への馴染みのなさになかなかページを開くまでには至っていませんでした。(よく考えたらフェルミっていうスーパースターがいるので偏見でしかないのですが…)全然、関係ないのですが先日パウロコ二ェッティ『帰れない山』という小説を読んでイタリアの文学に触れ、この本こんなに面白いのは訳者の力もあるかな?と関口英子の訳書調べたらカルロ・ロヴェッリの『すごい物理学入門』が出てきて、これは読むしかない!と手にしたのが本書でした…はい、「入門」と「講義」は違う本なので間違いです。でも間違いでも読んでよかった!こんな読みやすく(っていうことは栗原俊英訳の力もすごいってことですね…)こんなにわかりやすく、こんなにワクワクする物理学の物語は初めて(?)です。本書はデモクリトスの無限の有限の話から熱く始まります。ここが先ずユニーク。デモクリトスの物語であると同時に著者の物理観も伝わってきます。それがアイザック(・ニュートン)、マイケル(・ファラデー)の古典物理学からのアルベルト(・アインシュタイン)の一般相対性理論、ニールス(・ボーア)、ヴェルナー(・ハイゼンベルグ)、ポール(・ディラック)の量子力学の二大ジャンプへ。この物語がイキイキしているのはスーパースターたちがファーストネームで記されていることも一因か。それがマトヴェイ(・プロスタイン)、ジョン(・ホイラー)、(ここらへんはマニアック?)を経て相対論と量子論の融合する量子重力理論に近づいてきます。最近、「超弦理論」についての本は読んだことはありますが、それに対抗するのが著者の提案する「ループ量子重力」。「弦」か「ループ」か、この探索も現在進行形の物語です。やっぱり宇宙ってすごいな、物理学ってすごいな、な本ですが、一番すごいのはそこを理解しようとする人間なのかもしれません、だから本書は物理の物語であると同時に人間の物語でもあるのです。本文はともかく『すごい物理学講義』って書名、安直な訳だと思ったのですが、いや『すごい』でいいのかもしれません。この本の中で章のタイトルになっていたりもするのですが『時間は存在しない』、すぐ読まなくちゃ!
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アインシュタインが本当に世界的に有名人でもてはやされていたことがわかった。相対性理論はたった一人の人間の頭脳で構築されたとあるが、ピタゴラスからニュートン、から現在に至るまで俯瞰して科学の進展を平易に(自分の考えも含め)紹介してくれているロヴェッリ先生に感謝。宇宙のことが本当に、...
アインシュタインが本当に世界的に有名人でもてはやされていたことがわかった。相対性理論はたった一人の人間の頭脳で構築されたとあるが、ピタゴラスからニュートン、から現在に至るまで俯瞰して科学の進展を平易に(自分の考えも含め)紹介してくれているロヴェッリ先生に感謝。宇宙のことが本当に、だんだんわかってきたのもこの2,30年なんだよなぁ。。
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最先端の研究に従事している物理学者による、一般向けに最近の研究がどこまで進んでいるかを教えてくれる本。コンセプトは以前読んだ大栗博司先生の『重力とは何か』とかなり似ていて、物理学の辿った歴史を交えて説明がなされる点も同様である。 ではこれらの本の差はどこにあるのかというと、一つ...
最先端の研究に従事している物理学者による、一般向けに最近の研究がどこまで進んでいるかを教えてくれる本。コンセプトは以前読んだ大栗博司先生の『重力とは何か』とかなり似ていて、物理学の辿った歴史を交えて説明がなされる点も同様である。 ではこれらの本の差はどこにあるのかというと、一つ目は大栗先生の本は新書ということもあり現代の話が主であるのに対し、こちらは話の起点が古代ギリシアまで遡ること。物質はそれ以上分けられない原子で構成されているという原子説の起源はそんなところにあるのかと驚いた。もう一つの大きな違いは、著者の方々の専門としている理論である。量子重力理論は未だ未完成で、複数の有力候補が挙げられている。それらのうち大栗先生の本では超弦理論を、こちらではループ量子重力理論を扱っている。感想としては複数の理論の間で量子論と重力理論の統合する方法の違いを感じて非常に面白かったのだが、理論の中身について触れようとすると何を書いても間違ったことしか書けないと思うので、興味のある方は(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75127)こちらを読んでみていただきたい。
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①特殊相対性理論における「時間の概念の消失」 アインシュタインは「特殊相対性理論」で、時間と空間をまとめて時空間の概念にまとめあげた。これは、宇宙まで拡張された2点間においては、「現在」「過去」「未来」という時間の概念が拡張されるという意味をもたらした。 火星と地球にいる人の間に...
①特殊相対性理論における「時間の概念の消失」 アインシュタインは「特殊相対性理論」で、時間と空間をまとめて時空間の概念にまとめあげた。これは、宇宙まで拡張された2点間においては、「現在」「過去」「未来」という時間の概念が拡張されるという意味をもたらした。 火星と地球にいる人の間には、15分間のタイムラグがある。火星にいる人が地球へのビデオメッセージにおいて、「今この瞬間、何をしてますか?」と問いかけた時、それは地球にいる人がメッセージを受け取った瞬間ではなく、15分前の出来事を述べている。火星では、この瞬間までにすでに起きた出来事と、これから起きるはずのない出来事のほかに、私達にとって過去でも未来でもない15分が存在している。 わたしにとってのこの瞬間から見た過去と未来の間には、中間的な領域が、言い換えれば、「拡張された現在」が存在しており、この領域は過去にも未来にも属していない。この中間的な領域の持続時間は、遠くに離れるほど長くなるが、これは火星や月レベルに離れる必要がある。 このように考えると、宇宙規模のスケールで時間を考えた時には、宇宙に絶対的同時性は存在せず、宇宙における出来事の総体を、無数の現在が順序よく積み重なった結果として描写できないということである。 ②一般相対性理論 ニュートンの時代から発見されていた「重力」について、アインシュタインは、媒介となる物質が存在しないのに、2つの物体が何故引き付け合うのかを疑問に思った。のちにこれが「場」の発見につながる。 今までの学説だと、世界は「空間+粒子+電磁場+重力場」から出来ているとされていたが、アインシュタインは空間と電磁場と重力場を一つの「場」に統合し、世界は場と粒子のみで出来ていると述べた。 空間は何もない無の存在ではなく、実体として存在し、震えたり曲がったり歪んだりする。ある場所に存在する物質の量が多ければ多いほど、その場所の時空間の歪みは大きくなる。ここから、場の歪みの影響を受け、光が屈折することと、時間も屈曲することが判明した。 ③量子重力理論がわれわれに教えてくれること 以下は、量子の特徴が我々に教えてくれた世界の成り立ちである。 粒性…あらゆる現象のうちに存在する情報の総量に限界を設けたこと。極小のスケールである「プランク定数」を導いたことで、「無限」という深淵に光をもたらした。 不確実性…事物の運動は絶えず偶然に左右される。厳密な規則に従っているように見える事柄も、統計的な結果に過ぎない。 関係性…あらゆる物質は、ほかの対象と比較したときのみ存在する。ある系における全事象は、別の系との関係のもとに発生する。 この中で特に重要なのは、粒性によって導かれた、「世界は有限である」という考えである。今までの量子論には、ある過程が生じる確率や道筋を計算しようとすると、取りうる値が無限になり計算が不可能になるという問題を孕んでいた。ここに光明をもたらしたのが、「ありとあらゆる原子は粒子である」という発想である。 物理的な空間も、場である以上は量子からできている。したがって、「空間もまた粒である」という予測を立てることができる。つまり、空間は連続的な存在ではなく、「空間の原子」によって形成されており、空間にも、それ以上分割できない下限があるのではないか、という発想が、「世界は無限ではない」という考えを生み出した。 (ただし、空間の原子の網がそこかしこに張り巡らされていると理解するべきではない。空間の原子は確定的な存在ではなく確率の雲の中にあり、空間は、個々の重力の量子の相互作用(関係性)から生み出されるものである。) そして無限が消え去ることによって、原子の軌道やブラックホールの構造についての推論が可能になったのだ。
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直感的にスゴイということだけは分かるのだが、内容を理解しているのかと問われれば、俯くしかない。 それでも凄い本なんだろうなだと感じる。
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原著の直訳だと「現実は目に映る姿と異なる」であることを踏まえて。 古典の世界観から、ニュートン、ファラデーを超えて量子重力理論を一般向けに解説する。 もちろん、この一冊ではおおまかな流れを解説することしかできないが、現時点での世界への理解の一旦を感じることはできる。 13章の一部...
原著の直訳だと「現実は目に映る姿と異なる」であることを踏まえて。 古典の世界観から、ニュートン、ファラデーを超えて量子重力理論を一般向けに解説する。 もちろん、この一冊ではおおまかな流れを解説することしかできないが、現時点での世界への理解の一旦を感じることはできる。 13章の一部、「わたしたちが知っていることや、知っていると信じていることは、正確性を欠いたり間違っている可能性がある。」「だから科学は、自分は真理を知っているという人間を信用しない」「不確かさのなかで生きるのは難しい。自身の限界の自覚から生じる不確かさを受け入れるくらいなら、たとえ明白に根拠を欠いていたとしても、確かさのほうを選ぼうと考える人たちもいる」 いま、この時代だからこそ、この章の意味をよく噛み締めたい。
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空間や時間が存在しないことをループ量子論に基づいて論じた本。 全く物理の本を読んだことがない人には難しい。
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