子どもたちの階級闘争 の商品レビュー
底辺託児所で働いていて政治に関心を持ったそうで、それはそうだろうな、と思った。緊縮財政のあおりをもろにうける社会的弱者、特にこどもと向き合っていればいろんな感情が起こるだろう。現場で、いろいろな感情やモチベーションが生まれる。 日本とは違って、貧富の壁だけでなく、意識高い系の移民...
底辺託児所で働いていて政治に関心を持ったそうで、それはそうだろうな、と思った。緊縮財政のあおりをもろにうける社会的弱者、特にこどもと向き合っていればいろんな感情が起こるだろう。現場で、いろいろな感情やモチベーションが生まれる。 日本とは違って、貧富の壁だけでなく、意識高い系の移民が、えげつなくアンダークラスの白人を軽蔑したりする構図も興味深い。 大人にびくっとした子供に、「びくっとすると余計にたたかれるから、堂々としていろ。難しくてもいつかできるようになる」と諭した、底辺託児所卒業生の保育士の言葉が印象的。 日本の保育士の配置基準は天使のようなこどもを育てる。自由な発想や個性を伸ばす教育ができない、というのはそのとおりだな。なんでこうなってしまったんだ?
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この本の主題は「階級」である。 本文中に書かれているが、貧富の差はいつの時代にも、どの国にもある。 しかし、貧困から抜け出す術がないとしたら、それは「階級」である。 日本でも格差は問題になっているし、それが「階級化」しつつあるようにも思う。 貧しい家庭、養育者がなんらかの問題を...
この本の主題は「階級」である。 本文中に書かれているが、貧富の差はいつの時代にも、どの国にもある。 しかし、貧困から抜け出す術がないとしたら、それは「階級」である。 日本でも格差は問題になっているし、それが「階級化」しつつあるようにも思う。 貧しい家庭、養育者がなんらかの問題を抱えている家庭に生まれた子は、十分な学習環境を与えられているとは言いがたい。 逆に言えば、「いい学歴」は本人の「才能と努力」だけで勝ち取ったものではなく、生まれた家の影響が大きいのだ。 イギリスの状況はこんなものではない。 シングルマザー、障害のある親、酒やドラッグへの依存症を抱えた親。 労働党政権のころは、貧困層への手厚い支援があった。 しかし保守党が政権を握って以降、生活保護は縮小され、保育所への支援も打ち切られていく。 そこに移民の問題が加わり、「Broken Britain」と言われるほどの分断が生じている。 筆者はこうしたなかで貧困層の子どもとその親と関わり、手を差し伸べ続けている。 彼女が言うところの「底辺」からの政治へのまなざしは、「政治は何のためにあるのか」ということをわれわれに突きつける。 これが本書のメインテーマであるが、保育園に預ける子をもつ親として、他にも考えさせられることが多かった。 その最たるものが日英の保育環境の比較である。 日本の保育士配置基準は、例えば1歳児では児6人に対して保育士1人なのに対して、イギリスでは3人にひとりである。 歩くのもおぼつかない一歳児になにかあったとき、6人も抱えて走れるのか?と筆者はいう。 言われてみればその通りである。 きわめつけは3歳児で、イギリスでは児童8人に対して保育士ひとりなのに対し、本邦では児童20人に対して保育士ひとりである。 これを聞いたイギリスの保育士は「羊飼いかよ」と言い捨てる。 筆者は筆者で、20人の3歳児をひとりで見なければならないという悪夢にうなされてしまう。 ここまでだと、単なる日本の保育士不足を嘆くだけになるが、本書ではここからさらに踏み込んで考えている。 日英の保育園、両方を体験した筆者からすると、日本などアジア圏の子どもは圧倒的にお利口で、おとなしいのだそうだ。 一例として、タンバリンの演奏が挙げられている。 日本の幼児は、先生が見せるお手本の通りにタンバリンを叩くことができる。 イギリスではこうはいかない。 先生のお手本の裏打ちをする感じで、ずらして叩く子。 そもそもタンバリンを叩かず、側面の円盤?を鳴らすあまのじゃく。 こんな具合で、まずまともな演奏にはならない。 しかし考えてみたいのは、「どちらがより『芸術』の本質に近いのか」ということだ。 それはイギリスの方なんだろうな、と思う。 先生のお手本の通りに叩きました、なんて芸術性のかけらもない。 第一、みんなが好き勝手に叩いている方が楽しそうだし、ホンモノの才能というのはそういう環境から生まれてくるのではないか。 決断力。創造性。ディベートする力。 どれも、日本人に欠けているとよく言われるものだ。 だが、「いい子であること」「お利口にすること」を過度に礼賛する環境で、こうしたものを育むことができるのだろうか。 ひとりの保育士があまりにも多くの幼児を見なければならないことが、こうした慣行を正当化することにつながっていないだろうか。 「お利口」だから手薄な保育士配置基準でいいのか、はたまた保育士不足が「いい子」を生んでいるのか。 鶏が先か、卵が先か、というような話だ。 こうした問題意識を抱く一方で、集団生活に支障をきたすようなキャラクターに育つのも困る。 はたして、自分は娘にどんな子に育ってほしいのだろうか、と考えてしまった。 だが、間違いなく言えることは、幼児教育はその国を写す鏡であり、その子の将来のみならず国民性をも規定するほどの影響力がある、ということだ。 本当にいろいろな読み方ができる、奥行きのある本だった。
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感想 子供を助ける魔法の方法。それは存在しない。きっと財源は不足し、不平等を訴える声が出てくる。だからと言って議論しないわけにはいかない。
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「レイシズムはやめましょう」「人類みな兄弟」とプラカードを掲げていくら叫んでもできることはたかが知れている。社会が本当に変わるということは地べたが変わるということだ。地べたを生きるリアルな人々が日常の中で外国人と出会い、怖れ、触れ合い、衝突し、ハグし合って共生することに慣れていくという、その経験こそが社会を前進させる。
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地べたで生きてきた人間が、インテリ層にも届く表現力と議論の力を持っているのはとても強いな。 クレバーでチャーミングな反骨心。著者はそんな印象です。 著者が連発する「底辺」というのは、外側から見た軽蔑や、あるいは自身のコンプレックスの裏返しなどではなくて、 実感と、一筋縄ではいかな...
地べたで生きてきた人間が、インテリ層にも届く表現力と議論の力を持っているのはとても強いな。 クレバーでチャーミングな反骨心。著者はそんな印象です。 著者が連発する「底辺」というのは、外側から見た軽蔑や、あるいは自身のコンプレックスの裏返しなどではなくて、 実感と、一筋縄ではいかない情なのだと思います。 みかこさんの文章は私には水が合うみたいで、いつも面白く読んでいます。
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何年も前に途中まで読みかけて放置してた本(いくらなんでも放置しすぎだ)。2008~2010年と、4年間を隔てた2015~2016年で、同じイギリスの底辺託児所に起きた変化を、短くシャープな文章で伝える。 貧困なだけでなく暴力的でレイシストでさえある大人と子どもたちが、いかにめちゃ...
何年も前に途中まで読みかけて放置してた本(いくらなんでも放置しすぎだ)。2008~2010年と、4年間を隔てた2015~2016年で、同じイギリスの底辺託児所に起きた変化を、短くシャープな文章で伝える。 貧困なだけでなく暴力的でレイシストでさえある大人と子どもたちが、いかにめちゃくちゃであり人間的であるのかが、実に味わい深く描かれているのだが、生存を維持する食糧のレベルで暮らしが切り詰められてしまうと、その子どもたちの凶暴ささえもがパワーを失ってしまう。政府の補助が打ち切られるばかりでなく、これまで保育所の運営を支えてきた気持ちあるボランティアたちが関わる余裕を失ってしまい、保育所がただの食糧配布場所に変えられる。なんとも恐るべき現実だ。 とはいえ、日本が新自由主義政策のお手本にしてきたイギリスであっても、多くの異なる文化的背景をもつ移民たちが保育士や公務員として活動し、知的文化的資源をもつボランティアたちも関わって低所得者の生活サービスのアクセス保証を実現してきたわけで、そのような基盤の厚みさえない日本で、これから先何が起きていくのかと思えば空恐ろしさしかないのだが、しかしレイシズムや分断や絶望に抵抗していくために残るのも、やっぱり理屈を超えた人と人のつながりなのだろう。
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英国の保育事情から、政治情勢を描いた良書。 日本の保育士が一人で見る数の多さも改めて理解した。日本の制度改革の必要性も分かる。
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良書。 まず何をさておいても著者は文章力がすこぶる高いと思います。 底辺託児所に来る子どもとその親の暮らしは文字通り底辺なのでしょう。 けれど著者はその描写に同情や憐憫の感情を全く忍ばせません。 かといって、冷めているわけでも距離を置いているのでもありません。 保育士としての距...
良書。 まず何をさておいても著者は文章力がすこぶる高いと思います。 底辺託児所に来る子どもとその親の暮らしは文字通り底辺なのでしょう。 けれど著者はその描写に同情や憐憫の感情を全く忍ばせません。 かといって、冷めているわけでも距離を置いているのでもありません。 保育士としての距離感は保ちつつも、言葉では言い表せないほど子どもたちを愛し、こんな状況を作り出した原因でもある社会と政治を厳しい視点で監視し、分析し続けていることが感じられます。 底辺託児所に来る子どもたちは、劣悪な環境で育っている事が多いため、暴力をふるったり暴言を吐いたり、一筋縄ではいきません。 そんな子どもたちをある時は「ガキども」と描写しつつも、諦めず、見捨てず、向き合い続ける著者の姿勢には頭が上がらない思いになりますし、湿度のないカラリとしたユーモアを交えて描写される子ども達の姿は、著者の言う通り「愛すべき個性的な悪魔達」。 写真は1枚もないけれど、行間に子ども達の姿が浮かび、時折涙ぐんでしまうこともありました。 アンダークラスの人びとを通して保育士という視点から見たイギリス政治についての考察は、ただ持論を展開し押し付けるものではなく、読み手のこちらにも問いかけているようで、政治、差別、育児などについて深く考えさせられました。 また、今後の生活においても考え続けるきっかけを与えてくれたと思います。 話題となった「ぼくはイエローで…」も良かったけれど、個人的にはこちらの方が満足感が高かったです。 以下、印象に残った文章を抜粋。 「階級を昇って行くことが、上層の人びとの悪癖を模倣することであれば、それは高みではなく、低みに向かって昇って行くことだ。」 「いろいろな色を取りそろえる意味は、やはりあるのだ。(中略)社会が本当に変わるということは地べたが変わるということだ。地べたを生きるリアルな人々が日常の中で外国人と出会い、怖れ、触れ合い、衝突し、ハグし合って共生することに慣れていくという、その経験こそが社会を前進させる」 「きっとデビーはこれでいいのだ。自分がそう思っていることを他人に知ってもらう必要がないほど、これでいいのである」 2021年15冊目。
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本書の「日常の中で外国人と出会い、怖れ、触れ合い、衝突し、ハグし合って共生することに慣れていくという、その経験こそが社会を前進させる。それは最初の単位、取るに足らないコミュニティの一つから淡々と始める変革だ。この道に近道はない」との記述あり。 著者の働く底辺託児所、緊縮託児所は、...
本書の「日常の中で外国人と出会い、怖れ、触れ合い、衝突し、ハグし合って共生することに慣れていくという、その経験こそが社会を前進させる。それは最初の単位、取るに足らないコミュニティの一つから淡々と始める変革だ。この道に近道はない」との記述あり。 著者の働く底辺託児所、緊縮託児所は、そのコミュニティのひとつ。 「人類みな兄弟」の足に地が着いた取り組みが日本で出来るのは、いつになるのか?混乱を招くことを恐れず、外国人を欧米の様に受け入れる日は、いつになるのだろうか?日本は、やはり特殊な国なのだろうか?そんなことが許されないのに。
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事実は小説より奇なり。みたいな本 障がいや病気や犯罪を、深刻に薄暗く描くのはきまってそれらを身近に体験していない人に多い。 身近に体験してると、それは只々当たり前の日常で、ブレイディ氏のように面白おかしくも書けて、薄暗い気分にもならない。 だけどそこにはリアルな人生が書かれて...
事実は小説より奇なり。みたいな本 障がいや病気や犯罪を、深刻に薄暗く描くのはきまってそれらを身近に体験していない人に多い。 身近に体験してると、それは只々当たり前の日常で、ブレイディ氏のように面白おかしくも書けて、薄暗い気分にもならない。 だけどそこにはリアルな人生が書かれていることを知れる。 こんな世界や、こんな人生、生き方をしてる人間もいるということをたくさんの人に知ってもらえる良書だと思う。 ブレイディさんの著書は、私達と同じ目線から感じたことを素直に書かれているので、小難しくなく、それでいて大切な事実はを知ることができるので大好きです。 いち保育士だとご本人は言われてますが、その辺のジャーナリストよりよっぽど訴えかける力の強い方だと思います。
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