世界文学を読みほどく 増補新版 の商品レビュー
池澤夏樹の講義録。 この世界はどういうところで、自分たちはどこで生きているのか。 「小説は自分たちが生きているこの世界を表現するための道具の一つである」という考えの下、変わらないことと変わったことを見る。 結論として、マルクス・ガブリエルにも通じる、現代の世界観(あるいは一貫した...
池澤夏樹の講義録。 この世界はどういうところで、自分たちはどこで生きているのか。 「小説は自分たちが生きているこの世界を表現するための道具の一つである」という考えの下、変わらないことと変わったことを見る。 結論として、マルクス・ガブリエルにも通じる、現代の世界観(あるいは一貫した世界観の不在)を導き出す。小説による世界の洞察。 ・物「語る」:筋のある一連の話をする。時間軸、未来に引き延ばした因果関係。 ・スタンダールの非常に幸福な、読者と作者と登場人物の関係。 ・トルストイの説教。神の視点。運命の出会いの利用頻度。 ・メルヴィルの「ディレクトリ」。世界を書き尽くす。 ・「登場人物」と「場」。書くことと書かないこと。
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読んだことのない本の書評なのに面白くて、分厚い割にすらすらと読めた。途中で脱線していく語り口がいかにも講義という感じで面白い。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
講義を受講するつもりで楽しく読みました。恐ろしいことに10作+池澤夏樹さんの『静かな大地』を1作も読んだことはありませんでしたが、大まかにあらすじや書かれた時代背景などを入れて挑みました。と言っても実際に講義でもあらすじに関する説明もあるので、そのまま読んでしまっても問題ないかと。 10作中5作品が北南米の作品というのもどこか象徴的。音楽も映画もそうですが、カルチャー全般を牽引するのは文学でも、ということなのでしょうか。 興味深かったのが、南部に関する話。特に『アブサロム、アブサロム!』と『ハックルベリ・フィンの冒険』。 それから、アメリカという国にはなぜいまだにあれほど銃がたくさんあって、自分の判断、自分たちの判断で人を殺すことが抵抗なく行われるのか。それは、彼らには、法律と倫理、治安、セキュリティーを自前で賄わなければいけなかったという歴史があるからです。つまり世の中の決まり、世間様、お天道様というふうな考え方がない。 ヨーロッパ人はそんなこと考えもしません。無理に決まっているのは、長い歴史から見てわかっているこら。そこにいきなり走ってしまうあたりが、アメリカという国の、新しさであり、面白さであり、活力であり、問題点なのです。 第九回 フォークナー『アブサロム、アブサロム!』より では当時、黒人は奴隷にしてもいいし売ってもいい、という考え方を支えていたのはどんなひとびとだったか。白人が主となる社会、といえばそうですけれど、実はそれはその中でも特に、貧しい白人=プアホワイトだったのです。 自分たちは白人であるけれども、貧しい白人であって、何かと不満の多い苦労の多い生活をしている。だから、白人でないくせに裕福に幸せになっている奴が許せない。 第十回 トウェイン『ハックルベリ・フィンの冒険』より あるいは今の時代になってくると、「もう」それだけでは駄目である。いくつかの視点を持ったうえで、ニュースの信頼性を、個々に、勝手に、勘で判断しなければいけない。 第十四回 総括より 今も根深い人種差別問題、BLMや大統領選挙やフェイクニュースにも通ずるようなトピックかもしれません。実際、トランプに票を入れるのってどんな人なのかっていうところを考えると、的を得ている部分もあるように思えました。個人の格差が、差別するために作られた人種によって左右される、という点においても。 また話は変わりますが、最近観た『市民ケーン』や『Mank/マンク』のせいで、フォークナーの作中内のトマス・サトペンを想起させます。愛を知らない生きかたがだぶるというか、まるでその生き様が、人を象る場のようなものが、フレームごと継承されているみたいでした。 気づきの多い一冊で、最初は堅い感じかと思いましたが全くそんなことはなく楽しい読書の時間というよりかは講義でした。 それで結局、真犯人が別にいることが明らかになる。あっ、言っちゃった(笑)。 第五回 ドストエフスキー 『カラマーゾフの兄弟』より お茶目か。
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有名な小説を深く掘り下げて解説してくれている本。謎解きそのもので、楽しく、また読みやすく、厚い本だけど、一気に読み終えました。
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読み終えてまず、「この読書体験はなんだったんだろう」という、判然としない感覚がある。 本書では時代・国・言葉・人々の世界観の変化を小説がどのように表現してきたのかを解説され、色んな角度から対象を見た時に一つの作品が形成される、言わばキュビズム的な構成になっている。 判然としな...
読み終えてまず、「この読書体験はなんだったんだろう」という、判然としない感覚がある。 本書では時代・国・言葉・人々の世界観の変化を小説がどのように表現してきたのかを解説され、色んな角度から対象を見た時に一つの作品が形成される、言わばキュビズム的な構成になっている。 判然としない感覚は、奇しくもキュビズムの絵画に接した時の感覚に非常に近い。 何らかの大きなストーリーに自分を当てはめて生きることが出来ず、自分の中の小さな世界を生きることしか出来ない我々は、何に向かっていけばいいのか? 文学を学んだつもりが、不気味な哲学を突きつけられた。いい意味で。 話は変われど、池澤夏樹さんの脱線話が本当に面白いし勉強になる。小中学校で記憶に残ってる先生のほとんどが脱線話を延々とする人で、「脱線力」ってのは大事だなと思う。この「脱線力」はある意味で、「教養」とも言えるだろう。
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世界文学の名作10作品をどう読むかという解説。 それぞれの作品が文学史上においてどのような意義を持っているか、という視点が印象的だった。 特に、ガルシアマルケスの百年の孤独の解説。 その面白さを言い表すのが難しい作品だと思っていたが、 民話、フラクタル、などの切り口から一つの作品...
世界文学の名作10作品をどう読むかという解説。 それぞれの作品が文学史上においてどのような意義を持っているか、という視点が印象的だった。 特に、ガルシアマルケスの百年の孤独の解説。 その面白さを言い表すのが難しい作品だと思っていたが、 民話、フラクタル、などの切り口から一つの作品の読み解き方を提示してくれた。読んだことのない作品は読みたくなり、読んだことのある作品はもう一度読みたくなること間違いなし。
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分厚くて読むの大変そうだなーっと思っていたけど、いざ実際に読んでみると意外とあっさり読むことが出来たw1つの小説論として勉強になる。
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