なかなか暮れない夏の夕暮れ の商品レビュー
「すごいな」と思ったのが、登場人物が読んでいる本を、 この本の読者にも読ませる事で、 一気に登場人物との距離を縮める事が出来た点。 読書をしながら実際に追体験出来るって言ったら、確かに 「読書」しかないなあと。 そして物語の中で読まれている本も面白く、続きが 気になってしまっ...
「すごいな」と思ったのが、登場人物が読んでいる本を、 この本の読者にも読ませる事で、 一気に登場人物との距離を縮める事が出来た点。 読書をしながら実際に追体験出来るって言ったら、確かに 「読書」しかないなあと。 そして物語の中で読まれている本も面白く、続きが 気になってしまった。 大人として生きるということ、人を大切にすること、 諦める事。 大人だからこそ難しくなっていく事を、「自分なら どうだろうか」と考えながらも、読みやすくすいすいと 読み進めていく事が出来た。
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久しぶりに読んだ江國香織作品。 毎日お風呂に入りながらちょっとずつ読んだのだけど、主人公の稔同様、読む度に本の世界に引き込まれてしまいました。 大竹が妻に離婚を迫られてる時に 「愛してるなら判を押してあげればいいじゃん」 ってなんの迷いもなく言った稔は アホだけどいい男だなあとおもった。
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実は読みきるまでにとても時間がかかった。 読み始めた頃、物語が私まで届いてきてなかったんだと思う。 どの江國作品も好きだし、とはいえ、江國香織も、私も、若かった時分とは変化があって、江國作品との距離感に多かれ少なかれ違和感もあった(今にして思えば、そうだったのかなと思う) 自分が...
実は読みきるまでにとても時間がかかった。 読み始めた頃、物語が私まで届いてきてなかったんだと思う。 どの江國作品も好きだし、とはいえ、江國香織も、私も、若かった時分とは変化があって、江國作品との距離感に多かれ少なかれ違和感もあった(今にして思えば、そうだったのかなと思う) 自分が年をとってきて、夏の気怠い、ほの苦い、つまり、戻ってこない幼い時を思わせるようなあの感じをとても大切にしていることを思い出した今だから、するすると体に入ってきた作品だ。 日常なので、帰着点がなく、どこへ向かうかも、よくわからず、それでも、憧れやら焦燥やらがあり、さらには、確実な諦めがある。気づきがあっても喜びとは違い、お金があったりなかったり、結婚したり、離婚したり、仕事があったり、援助してもらったり、いろいろ自分とは違うわけなんだけれども、共感して、切なくなる。 あー、夏の読書が楽しみだ(笑) そろそろ、長編新刊も出るようで、いい時期に読み切った。
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ひとことで言うと、本当に暮れない。淡々と時が暮れない。例によって平仮名、片仮名、漢字の使い分けが絶妙である。話中の小説も途中で放り出された感じも悪くない。性表現も具体的で好感を持った。
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30過ぎてからだろうか、江國さんの作品がますます好きになった。これもほろよいのイチゴ味を飲みながらすらすら読めました。 祖父母や両親の財産で生活している50を過ぎた男性・稔が主人公。財産管理をしているだけで仕事をしていない。独身で娘がいて、そして無類の読書好き。 彼が読んでい...
30過ぎてからだろうか、江國さんの作品がますます好きになった。これもほろよいのイチゴ味を飲みながらすらすら読めました。 祖父母や両親の財産で生活している50を過ぎた男性・稔が主人公。財産管理をしているだけで仕事をしていない。独身で娘がいて、そして無類の読書好き。 彼が読んでいる本の世界も楽しめて一石二鳥のストーリーになっている。むしろそっちの話がミステリーなので、続きが気になって読み進めてしまった。これも江國さんの仕掛けかな。 稔が本の世界に入り込む様子、邪魔が入る様子、本ばかり読んでいる稔(や娘の波十)に腹を立てる元恋人の渚など、ふふふ…と楽しめた。 なにが言いたいのかと言われると困るけど、たぶん人生はこんな風に若いときと自分自身の感覚はあまり変わらないってことと、自由を生きることは孤独だし、普通を選ぶとそれはそれで不満もあるしってことだなぁと思った。 稔とその姉の雀にとってはセックスがまったく重要じゃなくて、二人が姉弟だからまだ孤独じゃなくてよかったね〜と思った。 稔と雀のなかなか暮れない、緩やかな時間が心地よかったです。
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本の中に物語があるタイプの話、ついつい読み飛ばしてしまう。 波十と雀の関係が好ましい。 起承転結ではなく、彼らの生活の一部を切り取って日記を見ているような本。読み手としても感情を強く揺さぶられるわけではないのが、今の自分には相応しい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
*「人生」と「読書」が織りなす幸福なとき。本ばかり読んでいる稔、姉の雀、元恋人の渚、娘の波十、友だちの大竹と淳子……切実で愛しい小さな冒険の日々と頁をめくる官能を描き切る、待望の長篇小説。* 稔が読後にぽわんと夏に出会ったり、山道にいたり、列車に乗っていたりと心が半分小説の中にとどまっている様に、至極共感。そう、読後って時々そうなる… 物語そのものと言うよりも、物語の不思議な世界観にぽわんとなってしまう本。
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空気感が好きすぎて、一年以上かけてゆっくり、ゆっくり、読み進めた。再開するたびにこの本の中に住んでる人に会いに来たような気持ちになって。江國香織さんは空気の粒々をすくい上げる小説家。またどっぷり、他の作品も読みたい。
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50代の稔は独身だが以前の恋人との間に実の娘もいてたまに会ってるし、部下の女の子の子供も血が繋がっていなくても認知して(経済的に)面倒見てるし、高校時代の同級生淳子と再会後一緒に飲んだり大人の関係を持ったりと、事情がいろいろ。彼は読書好きで今読んでいる物語と現実との間を行ったり来...
50代の稔は独身だが以前の恋人との間に実の娘もいてたまに会ってるし、部下の女の子の子供も血が繋がっていなくても認知して(経済的に)面倒見てるし、高校時代の同級生淳子と再会後一緒に飲んだり大人の関係を持ったりと、事情がいろいろ。彼は読書好きで今読んでいる物語と現実との間を行ったり来たりしながら暑い夏の日日を暮らしている。稔の親友大竹。稔の姉の雀。稔の実の娘波十(はと)、稔の店の店員の茜…など、彼と彼をとりまく人々のごく普通の、だけどどこか普通でないような特別なある夏の日々の群像ストーリー。 なかなか暮れない-というタイトルが、なるほど、これではなかなか暮れないわねぇ…と妙に納得してしまうほどに、なんやかんやいろいろと内容が濃いです。でも、読むのにちょっと疲れるかも?
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久しぶりに読んだ作者の本。構成が面白い、本の中に全く違ったトーンの本がもう一つある。ただ、本の中にあるミステリーが陳腐な気がして、稔がなぜ寸暇惜しんで読むのかがわからなかった。まぁ、稔が読書ばかりして、生きていられる人という設定だからだろうけど。 でもお金があっても、不幸せな人生もあるけど、稔の生活に憧れを覚えた。金持ちのギラギラ感がないからだろうか。雀、渚、淳子、大竹、さやか、ちか、稔との関係性はあるけれど、それぞれの生き様があって、日々が淡々と過ぎていく、なので終わりのない話。帯に頁をめくる官能を描き切るとあるが、??。そんな本かなぁと思った。
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