本を読むひと の商品レビュー
本を読むこと、というよりも「物語」が持つ力がいかに素晴らしいかが主軸になっているような気がした。想像の世界を知る、考えることは、現実からの逃避であり、健康な精神で生きていくために必要かもしれない。 また作中で、貧乏一家の中で唯一学校に行く子どもがいるが、なぜあの子のような子どもが...
本を読むこと、というよりも「物語」が持つ力がいかに素晴らしいかが主軸になっているような気がした。想像の世界を知る、考えることは、現実からの逃避であり、健康な精神で生きていくために必要かもしれない。 また作中で、貧乏一家の中で唯一学校に行く子どもがいるが、なぜあの子のような子どもが学校に行く習慣が身につかないのか分かった気がした。学校は確かに学びの場であるが、それは学問だけではなく、「普通」を学ぶ場でもある。つまり、自分が他人と違う点を否応にも意識せざるを得ず、自分が考えるこの差が大きいほど学校に馴染むのにも苦労する。学問の出来ではない。現実はなかなか難しい。
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【琉大OPACリンク】 https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB22719435
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街のはずれに流れ着いた流浪の民。 定職にもつかず、学校へも通わずその日暮らしをしていた人たちの元に一人の図書館司書が現れる。 本の楽しさを知るにつれて少しずつ変化してゆく人々が描かれる。
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毎週水曜日になると、本を積んだ黄色いルノーがやってくる。パリ郊外の荒れ地に暮らすジプシーの大家族と図書館員エステールの物語。 無断居住、非識字者で身分証明書を持たないジプシーたちを役所や近隣の人々は疎み追い出そうとする。 大家族には嫁姑問題、夫婦間の諍いがあり、度重なる出産や子...
毎週水曜日になると、本を積んだ黄色いルノーがやってくる。パリ郊外の荒れ地に暮らすジプシーの大家族と図書館員エステールの物語。 無断居住、非識字者で身分証明書を持たないジプシーたちを役所や近隣の人々は疎み追い出そうとする。 大家族には嫁姑問題、夫婦間の諍いがあり、度重なる出産や子どもの突然の死にも直面する。 本は子どもたちを夢中にさせた。読み聞かせが始まると目がキラキラと輝く。孫たちを見守るアンジェリーヌばあさん、彼女の息子や嫁たちも、初めて触れる本の世界に心を奪われていく。"本の力"は凄いと思った。 「本は生き方の一つ」 「誰かを想い耽ることも生き方の一つ」 アンジェリーヌばあさんが良いなぁ! 本が読めなくても人を見抜く力がある。 老いていく自分の姿や人生の終い方まできちんと家族に見せるのだから潔い。エステールがユダヤ人であり、悩みを抱えていることもわかっている。 「ジプシーじゃない娘を持つとは考えもしなかった。人に尽くすのも病気の一種だからね」 自分を大切にするようにと告げたアンジェリーヌばあさんの言葉に泣けてしまった。 訳者のあとがきで「路傍の図書室」の活動を初めて知った。インタビュー集『世界の悲惨』も読んでみたい。
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本を読むひと(新潮クレスト・ブックス) 著作者:アリスフェルネ 発行者:新潮社 タイムライン http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698 facecollabo home Booklog https://facecollabo.ji...
本を読むひと(新潮クレスト・ブックス) 著作者:アリスフェルネ 発行者:新潮社 タイムライン http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698 facecollabo home Booklog https://facecollabo.jimdofree.com/ フェミナ賞最終候補となったフランスのロングセラー作品。
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パリ郊外で暮らすジプシー一家の子どもたちところへ、図書館員のエステールが毎週水曜日、本を読むため訪れるようになるー。 このあらすじだけで大きな期待を抱いてしまったのだけれど、期待以上だった。アンジェリーヌばあさんと5人の息子とその嫁、孫たちの名前を覚えるのが大変だったけど! ...
パリ郊外で暮らすジプシー一家の子どもたちところへ、図書館員のエステールが毎週水曜日、本を読むため訪れるようになるー。 このあらすじだけで大きな期待を抱いてしまったのだけれど、期待以上だった。アンジェリーヌばあさんと5人の息子とその嫁、孫たちの名前を覚えるのが大変だったけど! ちなみに私は毎週水曜日、水ダウを楽しみにしている。(前回のカラオケ企画、めちゃくちゃおもしろかった。続き楽しみ。よっぽどジプシーの子どもたちの水曜のほうが有意義じゃ!) んで、このアンジェリーヌばあさんが最高にかっこいい。人生を丸ごと受け入れているさまが。エステールと徐々に打ち解けていくさまが。ラストの独白シーンは全神経もってかれた。圧巻だった。 良いなあ、と思ったのは、解説にもあったけれど、本を読んでいる側、すなわちエステールの心にも変化があるところ。ちなみに原題は『恩寵と貧困』である。 以前の仕事で、子どもへの読み聞かせには、子どもはもちろん、読んでいる大人にも良いことがたくさんあるということを学んだ。まさにエステールとジプシーの子どもたちだ。 改めて、どんな人にも、本が届くようにと願う。
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あたたかい物語。けど、装丁の子供たちの写真はジプシー(ロマ)ではないのでは…?というのが微妙に気になってしまった。私の勉強不足かもしれないが。マイノリティにフォーカスした作品では、当事者を使ってほしいと思う。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
高橋源一郎「飛ぶ教室」の紹介で読むことにした。フランス以外にもヨーロッパで虐げられているジプシーの家族に、図書館員エステールは子供たちのために毎週水曜日本を読みに来る、エステールは徐々にジプシー家族に受けられるようにり、教育が必要なことを説き一人を小学校に通わせるまでになる、しかし色々な事件が起きジプシーたちはその土地から強制退去させられる事になる。自由博愛の国と言っているフランスにしてもこの体たらくだ、ヨーロッパはアメリカ以上に差別国家だと思う。フランスではロングセラー小説と言うが、フランス語では美しい文章であるのかもしれないが、訳はあまり感心しない、これが村上春樹ならもっと素晴らしいかったのではないだろうか。
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「本に答えが書いてあると思うな」 先日とある経営者の方がSNSのフォロワーの質問に対してこう回答されていた。「会社を立ち上げたいが何か参考になる本はないか」という質問で、確かに即行動派の経営者らしい回答。 しかし百発百中の的を得た発言をされてきた中で、初めて100パーセント賛同...
「本に答えが書いてあると思うな」 先日とある経営者の方がSNSのフォロワーの質問に対してこう回答されていた。「会社を立ち上げたいが何か参考になる本はないか」という質問で、確かに即行動派の経営者らしい回答。 しかし百発百中の的を得た発言をされてきた中で、初めて100パーセント賛同できないでいることに自分でも驚いている。 本に“ばかり”頼るのは感心できないのかもしれないが、答えはなくともヒントは必ずある。その本が(時には大きな)第一歩を生み出してくれるということも、自分は固く信じている。ちょうど読み聞かせを皮切りに人生が開けた、本書の子供や大人たちのように。 無断で私有地に棲みつくジプシーのアンジェリーヌばあさんとその5人の息子、4人の嫁、8人の孫のもとに図書館員のエステールが訪れる。目的は本を読むことの喜びを子供たちに伝えるため。 「フランスのジプシー」と聞くと『ノートルダムの鐘』のエスメラルダを連想する。情熱を秘めた誇り高き花と(勝手に)形容しているが、彼らも彼らで誇り高くフランスの地に生きている。(特に女性陣) ただ花と言うより野草を連想してしまったが、こちらは「外人」(ジプシーを除くフランス人)から何を言われようとも屈しない雑草魂を秘めていると思った。 「人に自分の心を委ねたりしないというプライドだけが、彼女らの唯一所持するものだった」 エステールによる読み聞かせの虜になるのは子供たちが最初だが、しだいに大人たちも関心を寄せるようになる。アンジェリーヌばあさんもその一人。 自分が思うに本書は、ばあさんの物語でもあると思う。大所帯を静かに見守る家長の顔から生前の夫との思い出と、彼女の一生涯を軸に話は回っていた。ばあさんの人生において本が初登場したのは、恐らくエステールと出会った時だろう。にも拘らず、初対面の本に明るい未来への希望を抱いていたのだろうな。 「ばあさんを夢想に走らせたのは本だった。(中略)本というのは、ただ言葉やお話の書いてある紙っぺら以上のものであり、要するに生き方の一つであるということ」 前述の経営者さんは自分が憧れている人に直接会いに行くことを続けて推奨されている。彼らにとってはエステールがその人に当たるのかもしれない。しかし物語という異世界に没入し、しまいには(今まで無関心だった)学校に思いを馳せるようにまでなったのは他ならぬ子供たちであり、それこそが本が持つ力のはず。 この先道が開けなくとも、それでも彼ら、自分は、本を読むだろう。
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都会のはずれの古い菜園に無断で住むジプシー(Girans)の一家を、司書のエステール・デュヴォーは毎週水曜日に訪問し、一家の長であるアンジェリーヌの孫たちに本を読み聴かせる。最初はよそもの(Gadje)に警戒していた子供たちもいつか、真剣な顔で神経を集中させ手の届かない世界にいる...
都会のはずれの古い菜園に無断で住むジプシー(Girans)の一家を、司書のエステール・デュヴォーは毎週水曜日に訪問し、一家の長であるアンジェリーヌの孫たちに本を読み聴かせる。最初はよそもの(Gadje)に警戒していた子供たちもいつか、真剣な顔で神経を集中させ手の届かない世界にいる感じになり、雨がポツポツと降り出しても誰も動かず、本を最後まで読み終わると、子供たちは、ありがとう、と大声で言いながら帰っていくようになる。 なぜこんなことをするのか?というアンジェリーヌの問いに、人生には本が必要だし、生きているだけでは十分じゃないと思うから、と答えるエステールだが、彼女の真の動機は語られず、家族との生活の様子も知ることは出来ない。エステールは、権利もアイデンティティも定住地もない社会から排除されたこの貧困なジプシーの一家に寄り添い溶け込みアンジェリーヌに家族の一人と認められるようになる。原題の「恩寵と困窮」の恩寵(神の恵み)とは、エステールとジプシー一家の出逢いと交流そのものにあるのだろうと感じられた物語でした。
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