時が見下ろす町 の商品レビュー
+++ 町のシンボル、大きな時計が目印の時世堂(じせいどう)百貨店の隣に立つ一軒の家。その家で、和江は抗癌剤治療に苦しむ四十年連れ添った夫を介護している。ある日、夫の勧めで、気分転換に写生教室に出かけることになり、孫娘のさつきに留守番を頼むことに。その日だけのつもりだったのだが、...
+++ 町のシンボル、大きな時計が目印の時世堂(じせいどう)百貨店の隣に立つ一軒の家。その家で、和江は抗癌剤治療に苦しむ四十年連れ添った夫を介護している。ある日、夫の勧めで、気分転換に写生教室に出かけることになり、孫娘のさつきに留守番を頼むことに。その日だけのつもりだったのだが、なぜかさつきはそのまま居座ってしまい……。和江の家が建つ前は時世堂の物置き、その前は製鞄工場、さらにその前は中古タイヤの倉庫……。様々に変わりゆく風景の中で、唯一変わらなかった百貨店。その前で、繰り広げられてきた時に哀しく、時に愛しい事件とは? +++ 第一章 白い修道士 第二章 暗い融合 第三章 歪んだ走姿(フォーム) 第四章 苦い確率 第五章 撫子の予言 第六章 翳った指先 第七章 刃の行方 第八章 交点の香り +++ 一見ミステリとは思えないストーリー展開なのだが、いつの間にかするりとミステリの世界に滑り込んでいる印象である。時世堂百貨店がある町で起こる出来事を集めた短編集なのだが、狭い町のあちこちでこんなことが起こっていることを想像すると、それだけでかなり怖い。それは、殺人事件などの大きなものばかりではなく、時に人の心の中に仕舞いこまれた思いまで抉り出すことにもなるのだが、逆にそれを食い止めようとする愛にあふれた行動につながることもある。怖くもあり、胸がじんわりあたたかくもなる一冊である。
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大きな時計が目印の百貨店「時世堂」。その周辺で時代を超えて、起こった数々の謎を綴った連作短編集。時間軸が行ったり来たりするのが、唯一、分かりにくかったが、一遍一遍に描かれる謎が想像を超えるものであることに、相変わらず作者の巧さを感じずにはいられない。そして、それを上回るラストのま...
大きな時計が目印の百貨店「時世堂」。その周辺で時代を超えて、起こった数々の謎を綴った連作短編集。時間軸が行ったり来たりするのが、唯一、分かりにくかったが、一遍一遍に描かれる謎が想像を超えるものであることに、相変わらず作者の巧さを感じずにはいられない。そして、それを上回るラストのまとめ方。作品の初出は2013年から2年に渡って、掲載されたものをまとめたらしいが、こんなに見事に繋がるのだと、ただただ感心してしまった。
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後半ダレたけど 楽しい連作だ。全部繋がってる感じ。繋がってるというよりも、繋げたってことかな。第一話と最終話が良いな。あと陸上の話が犯人逮捕と陸上部員存続というダブル動機が新鮮。頭がいいんだろうなぁ、作者さんは。
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一つの町、一つの場所の異なる時代で、人々が織りなす物語の謎を解き明かす連作ミステリ。どの物語もその一話で独立して読めるものなのですが。実はいろんなところで繋がっているのが楽しいところ。読み終えた後、もう一度最初からすべての物語の繋がりをおさらいしたくなってしまいます。 お気に入り...
一つの町、一つの場所の異なる時代で、人々が織りなす物語の謎を解き明かす連作ミステリ。どの物語もその一話で独立して読めるものなのですが。実はいろんなところで繋がっているのが楽しいところ。読み終えた後、もう一度最初からすべての物語の繋がりをおさらいしたくなってしまいます。 お気に入りは「刃の行方」。一番どきどきしてしまった作品かも。でもあの人はああだし、これはいったい……? と思っていたら。そういうことか! じんわりとくるラストも印象的でした。
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【収録作品】白い修道士/暗い融合/歪んだ走姿/苦い確率/撫子の予言/翳った指先/刃の行方/交点の香り ある土地の変遷に関係者の人生を絡めた連作。 一つ一つの話には首をひねるものもあったが、全体としてみると面白い試みだと思う。
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百貨店を中心にした町で起こる短編集。短編が得意な作者だけに色々と駆使して最後にどんでん返し的なストーリーになって楽しませている。が、今回はちょっと現実的ではない話もあったように思う。時代背景があまりはっきりしていないので時系列がよくわからず読み返して、ああそういうことかと納得する...
百貨店を中心にした町で起こる短編集。短編が得意な作者だけに色々と駆使して最後にどんでん返し的なストーリーになって楽しませている。が、今回はちょっと現実的ではない話もあったように思う。時代背景があまりはっきりしていないので時系列がよくわからず読み返して、ああそういうことかと納得することたびたび。
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短編集。白い修道士の祖父母、昔二人そろって警察に逮捕されたことが…という出会いが、最後に繋がっていて面白い。暗い融合の痴漢事件の真実がぞわっとした。
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町のシンボル、大きな時計が目印の時世堂百貨店。 様々に変わりゆく風景の中で、唯一変わらなかった百貨店。 大きな時計が見下ろす町で繰り広げられてきた時に哀しく、時に愛しい事件・・・ちょーっと、捻り過ぎというか、無理があるというか、という気はするけど、なかなかおもしろかったのでまぁい...
町のシンボル、大きな時計が目印の時世堂百貨店。 様々に変わりゆく風景の中で、唯一変わらなかった百貨店。 大きな時計が見下ろす町で繰り広げられてきた時に哀しく、時に愛しい事件・・・ちょーっと、捻り過ぎというか、無理があるというか、という気はするけど、なかなかおもしろかったのでまぁいいやw
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
長岡弘樹さんの新刊は、連作短編集に分類されるのだろうが、舞台が同じ町で、共通する人物が一部いることを除けば、各編の繋がりはない。 第一章「白い修道士」。背景には、ある社会問題がある。その日本名を聞けば、誰もがピンとくるだろう。変わり者の孫は、見抜いていた。将来大物になるかもしれない。第二章「暗い融合」。痴漢の容疑をかけられた男性。ところが、事件の構図は、予想外だった。下手すりゃ人生を棒に振っていたのだから、いい迷惑だ…。 第三章「歪んだ姿走」。急遽、県警代表として駅伝に出場する警察官。優勝は固いはずが…。フィクションとはいえ、こういう不正の形は初めてで、驚いた。第四章「苦い確率」。ギャンブルに必勝法などないが、勝率を上げる方法とは何か。ちっとも懲りていない彼の、病は根深そうだ…。 第五章「撫子の予言」。普段はいちいち気にしない、あれ。うーむ、そういうマニアが存在することは、聞いたことがあるようなないような。意外性はあったけども。第六章「翳った指先」。タイトルにヒントがある。カツアゲされていた少年の、恐るべき観察眼。これが父子の転機になることを願う。 第七章「刃の行方」。犯罪者は他にも出てきたが、おいおい殺しかよ…。ところが、企みがあった。これ、人によっては逆効果じゃないだろうか…。最後の第八章「交点の香り」。まさか、そんな巡り合わせがあるとは。似たような例は聞くが、これは可能なのか? 2人とも、これに懲りるだろうか。 ややひねりすぎな感もあるが、今回もさすが短編の名手だった。
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