観光立国の正体 の商品レビュー
「地元のボスゾンビ」、「スキルの低いボランティアガイドはストーカーと一緒」、「おもてなしは一方的な押し付け」などなどキツめの言葉が並んでいますが、センセーショナルな言葉に惑わされずに、落ち着いて読むべき1冊。観光に携わる人だけでなく、観光地に住む人たち、地方住みの人たちも読んでほ...
「地元のボスゾンビ」、「スキルの低いボランティアガイドはストーカーと一緒」、「おもてなしは一方的な押し付け」などなどキツめの言葉が並んでいますが、センセーショナルな言葉に惑わされずに、落ち着いて読むべき1冊。観光に携わる人だけでなく、観光地に住む人たち、地方住みの人たちも読んでほしい。結局、宣伝云々の前に、自分たちの土地にどんな独自の魅力があるか、それを誇りにいかに地元民が幸せに暮らすかを掘り下げないと、一時的な成功の後は続かないことがよくわかりました。
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本書が述べたいことは、大きく2点。 ①各地域はマーケットインの発想で観光施策を立案、実行せよ。決してプロダクトアウトでは考えるな。 ②その際の実行部隊は、①を実行することができる新しい観光推進団体が良い。地域の古参のメンバーが跋扈する組織では難しい。 山田氏は、スイス在住でスイ...
本書が述べたいことは、大きく2点。 ①各地域はマーケットインの発想で観光施策を立案、実行せよ。決してプロダクトアウトでは考えるな。 ②その際の実行部隊は、①を実行することができる新しい観光推進団体が良い。地域の古参のメンバーが跋扈する組織では難しい。 山田氏は、スイス在住でスイスの観光施策に詳しく、地域ボトムアップ型の施策を進められている現状を紹介しつつ、そうした方法を日本にも根付かせていくため、各地で実践している。スイスでは、地理的な制約が大きいこと、歴史的な背景が根深いことから、地域ボトムアップ型がうまくいってるとのこと。日本でも可能だと考え、現在各地で観光アドバイザーをしている。藻谷さんは少々口が悪い部分もありますが、総論的にはとても参考になる。どこの国のどこの階層の人間にターゲットを絞って施策を行うのか、そしてそれを継続的にデータを取りながら行っていくことが必要であるが、現在の地方を取り巻く観光施策は「大手旅行会社、交通各社が取り巻く観光協会が中心」になってしまい、補助金を垂れ流すだけになりがちであることに警鐘を鳴らしている。たしかに、自分の会社でも毎年のようにプロモーションやイベントは大手広告代理店、周遊プランの提案は大手旅行会社となっており、どこまで地元が主体的に考え、PDCAサイクルを回しているのか疑問に思うことは多い。 現在観光施策を担当でやっている自治体職員は「自分のやっていることが良いのか?」と気づきをもらえると思うので、ぜひ一読してもらえればと思う。 最後に、星1つつけなかったのは、観光はまちづくりに優位することはあってはならないと思うからである。その点が、あまりしっかりと言及されていなかったので、星4つに。たしかに、地域経済を循環させる意味でも観光分野は地方にとっては最大の関心事であるが、無理に観光施策を進めることでまちがぎくしゃくしてしまっては意味がない。であるから、まちづくりをしつつ、そこに観光のエッセンスを入れるようにして地域の魅力を高めていくような地域経営がこれから求められているだろう。もちらん、お二方は「当たり前だ」とお思いでしょう。
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