1,800円以上の注文で送料無料

株式会社の終焉 の商品レビュー

3.3

10件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    3

  3. 3つ

    4

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    1

レビューを投稿

2024/04/25

 21世紀の原理は「よりゆっくり、より近く、より寛容に」であると著者は主張する。それは資本主義の原理「より速く、より遠く、より合理的に」を棄却し新しいベースとなる考え方に乗り換えることを意味する。  二十代前半の私にはこれの原理は非常に示唆的である。経済という観点から反近代的原理...

 21世紀の原理は「よりゆっくり、より近く、より寛容に」であると著者は主張する。それは資本主義の原理「より速く、より遠く、より合理的に」を棄却し新しいベースとなる考え方に乗り換えることを意味する。  二十代前半の私にはこれの原理は非常に示唆的である。経済という観点から反近代的原理を導き出すことはとても参考になった。人件費を削って自己資本利益率をあげた結果、進歩は行き詰る。進歩の行き詰まりの結果、デフレや人口減少に至る。そこで主張されるのが中世的な原理である。実際に、トヨタは新型株式を発行し目先の利益を求める投資家を切っているし、三菱東京UFJ銀行も「子国際市場特別参加者(プライマリーリーダー)」を財務省に返上し、日銀のマイナス金利政策に反旗を翻している。法人概念について知るために読み始めたが、このように非常に示唆的な内容だった。

Posted byブクログ

2022/07/01

株高、マイナス利子率は何を意味しているのか?: 政府のROE8%超要請 人件費削減に正当性はあるのか なぜ日本企業の売上高利益率は欧米企業と比べて低いのか なぜ消費者物価は上昇しないのか 株式会社とは何か: 企業組織の4つの特質とハイリスク・ハイリターン コペルニクス革命とウェス...

株高、マイナス利子率は何を意味しているのか?: 政府のROE8%超要請 人件費削減に正当性はあるのか なぜ日本企業の売上高利益率は欧米企業と比べて低いのか なぜ消費者物価は上昇しないのか 株式会社とは何か: 企業組織の4つの特質とハイリスク・ハイリターン コペルニクス革命とウェストファリア体制 21世紀に株式会社の未来はあるのか: 成長、それ自体が収縮を生む ショック・ドクトリンと無産階級の増大 技術の奇蹟の信徒と技術進歩教の誕生 科学の時代の延長線上の技術の時代 21世紀の会社のあり方とは

Posted byブクログ

2020/03/21

株式会社という存在を通じて21世紀社会のあるべき姿を論じています。20世紀型の成長進歩の考え方から脱することができないことが現代の経済危機の本質であることを指摘、「進歩は近代が生み出した最大のイデオロギー」という著者の言葉が印象的でした。

Posted byブクログ

2018/11/10

資本が過剰に累積した日本では、これ以上の潜在成長率の底上げは困難で、永劫の成長を目的とする株式会社という仕組みがすでに立ち行かなくなっている、とするのが著者の視点と理解しました。 一方、グローバルな競争にさらされている日本企業は海外の市場での売り上げが既に過半を超えている会社が...

資本が過剰に累積した日本では、これ以上の潜在成長率の底上げは困難で、永劫の成長を目的とする株式会社という仕組みがすでに立ち行かなくなっている、とするのが著者の視点と理解しました。 一方、グローバルな競争にさらされている日本企業は海外の市場での売り上げが既に過半を超えている会社が相当数あることから、縮小していく国内事業に割り当てる資源を、海外事業により一層振り向けることとなる、という視点もあります。 こうした企業は、持ち株会社をより資本市場の厚い国(米国、英国、香港など)に移し、日本国内事業を子会社化して事業の縮小を図っていくのではないでしょうか? 著者の前著「資本主義の終焉と歴史の危機」も読ませて頂きましたが、グローバリズムは一国の中に周辺と中心を発生させ、格差拡大を助長するという点は確かにあります。世界経済におけるシェアが縮小していく日本と日本企業が、グローバルな市場での存在感を維持するためにはどうやって付加価値を高めていくか、その一方、国内事業の統合と最適化をどう図っていくのかという課題が、本書の提起する問題とともに思い起こされました。

Posted byブクログ

2018/07/25

読了。難しかった。本を買ったとき、今の社会が終わって、新しい素晴らしい社会が生まれるのではと期待したが、まだ先のようである。

Posted byブクログ

2018/02/25

ちょっと難しかったかなぁ。 短期的に利益を追い求めるのではなく、ゆっくりのんびりと寛容にってことなんかな?

Posted byブクログ

2018/02/23

『株式会社の終焉』というタイトルから、これからの法人(働くうえでの組織)のあり方について論じてくれるかと思ったが、「株式会社」の歴史についてと、政府の金融政策と税制をデータに基づいてまとめた内容が中心だった。

Posted byブクログ

2017/08/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

今日は水野和夫先生の「株式会社の終焉」。なかなかの力作ですが(お前が言うなよ~って怒られそう)、全部は紹介しきれませんので、最後の方をちょちょっと詳述します。 まず1000兆円の国・地方の借金だが、ストックとしての800兆円にも及ぶ国債をこれ以上増やさないことだ。 そのためには毎年のフローとしての国債発行額をゼロにするべきであるとする。それによって国債発行残高の増加に歯止めがかかるとのことだ。 次に、2015年度には8.8兆円と歳出100兆円の8.8%を占めていた国債利払い費が、マイナス金利によって、近い将来ゼロになることが考えられることから、それによって節約できた8.8兆円を国債の償還と社会保障関連のサービスの充実に充てることだという。 そして、国債管理庁を設立して、国際資金繰りのショートが起きないようにすることが大事であるという。これは日銀が適任だと水野先生は主張する。 また銀行(メガバンク、地銀)の預金1363兆円の53.3%が貸し出しで、残りの5割弱が国債などの有価証券投資であり、預金に占める国債保有と日銀預け金(市中銀行の日銀への預金)の合計の割合は37.9%となっており、異次元の金融緩和を始めた直前の2013年(35.4%)と比べても大して変わってない。 これは預金取扱金融機関が日銀に国債を売却して受け取った分を、日銀に預けているからである。 この結果、2015年度末で、預金取扱金融機関の日銀預け金は267.1兆円と、2011年の2011年の31.5兆円と比べて235.6兆円増加している。 つまり、預金取扱金融機関1363.2兆円の預金のおよそ4割が、国債とリンクしているといっていい。 これでは預金者がいくら預金を各金融機関に1000万円ずつ分散させても、その預け先である国内金融機関がどこの国債に投資しているのであれば、それは預金者が国債のリスクを負っているとの同義だ。 会社が倒産すると、株価が基本ゼロになるので、株主はリスクを負っているといわれていた。しかし、株式は証券市場で自由に売買できるので(公開企業を前提とする)、売却することで、リスクを回避することができる。 もちろん、倒産した株主を購入した人はリスクを被る。2015年に倒産した企業の負債総額は2.04兆円だった。日本の株式会社の株主資本は598.5兆円なので、比率にすればリスクが顕在化するのは、わずか0.3%である。リーマンショックの時でもその値は2%台半ばだった。 それに対して、預金者が間接的に保有する国債は預金の4割に相当する506.5兆円と巨額で、圧倒的に預金者の方がリスクを負っていることになる。 これには次の仮定をする。 「株主のリターン>預金者のリターン」となっているので、預金者のリスクを株主のリスクより低くすべきだと考える(A1) 「預金者のリスク>株主のリスク」なので預金金利を株主のリターンよりも高くすべきと考える(A2) A1のケースの場合、国の借金を減らしていく政策をとり、かつ、日本の潜在成長率を高めていくことだ。 しかし、現在のようにROE(株主資本利益率)が8%弱のときに、預金金利を3%まで引き上げるには、潜在成長率もおよそ3%に高める必要が出てくる。これは、通常、資本コストは5%と言われているために、ROE8%から5%を引いた3%がリスクを負わない人が受け取るリターンとなるからだ。 次にA2のケースは、預金金利を株主のリターンより高くすることで、正常な関係に戻そうとするというものである。しかし、預金金利をROE(≒8%)以上にするのは、常識的に考えて無理がある。 次に、もう一つには現実を認めようとするケース(B)である。 預金者はハイリスク・ローリターンで我慢しろ、株主はハイリターン・ローリスクで当たり前だとするケースだ。 この考え方は「国民国家」の時代が終わり、「資本の帝国」の時代に変貌したと認識すれば正当化される。「国民国家」の時代には、預金者はローリスク・ローリターン、株主はハイリスク・ハイリターンが正常だったが「国民国家」の時代に正常だったことは、「資本の帝国」の時代には異常になるからだ。 「資本の帝国」とは一級市民の株主と二級市民の預金者からなる階級社会だ。国民は平等であるという近代の理念に反するという点で、「資本の帝国」は「反近代」であって、反動勢力なのだ。 とこのように、本書の一部を紹介してきたが、上記に続いて、「株式会社の終焉」について、水野先生の議論が展開されている。興味を持った方はぜひ本書を手に取って欲しい。

Posted byブクログ

2017/06/27

★★★2017年6月レビュー★★★ 我々は歴史の転換点に立っている、と筆者はいう。かつては「株価」と「利子率」は景気の体温計ではなくなっている。急速に力を持ちはじめた「資本帝国」。 勤労からはお金を得られず、株などの資産からでなければ、お金を得られない時代。企業は人件費を...

★★★2017年6月レビュー★★★ 我々は歴史の転換点に立っている、と筆者はいう。かつては「株価」と「利子率」は景気の体温計ではなくなっている。急速に力を持ちはじめた「資本帝国」。 勤労からはお金を得られず、株などの資産からでなければ、お金を得られない時代。企業は人件費をカットし、利益を確保する。そんな時代だ。事実、90年代後半から労働分配率は下落の一途をたどっていると、数字が示している。 これは何となく実感できる。 では、これからの世の中はどうなっていくのか。 1、筆者は「成長」信仰を鋭く批判する。企業は「減益計画」を立てるべき、と。これは頷ける、企業でも人でも、永遠に成長し続けることは出来ないから。 2、もう一つ。近代資本主義の「より速く、より遠く、より合理的に」→「よりゆっくり、より近く、より寛容に」と思想を転換させるべき。この提言も頷ける。筆者も述べる、「すでに過剰な資本が存在するのだから、地球の裏側から株主を募る必要はない」株主も地域住民でいいはず・・・・・ 成長、成長、成長・・・・という某新聞社の主張には疑念を抱いていた。この本の、「減益計画」「よりゆっくり、より近く、より寛容に」という主張に基本的には同意したい。資本主義の歴史についての叙述も詳しく、歴史を知って初めて自分の立ち位置や、未来が見通せると改めて思った。

Posted byブクログ

2016/11/08

凄い本である。 かつて著者の「100年デフレ」「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」「終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか」の三部作を読んだ時には、その難解さと文明論的な考察に首を傾げながら読了した記憶がある。 しかし本書はよく理解ができる。 それは多発...

凄い本である。 かつて著者の「100年デフレ」「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」「終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか」の三部作を読んだ時には、その難解さと文明論的な考察に首を傾げながら読了した記憶がある。 しかし本書はよく理解ができる。 それは多発する世界的なリスクの進行やアベノミクスの限界などを体験した現在の世界は、著者のこれらの文明論的考察が的をえていることを示唆しているからである。時代が著者の考察に追いついてきたのかと慄然とした。 今の日本の政治や経済を語る際にも、本書は必見の書であると高く評価したい。

Posted byブクログ