グローバリズム以後 の商品レビュー
本書は朝日新聞記者によるエマニュエル・トッド氏へのインタビュー集(1998年~2016年)とういことで、それぞれのインタビュー記事自体は短く読みやすいと感じました(※日本語が読みやすく大変良かった。以前別の出版社から出たトッド氏の本を読んで翻訳のひどさにストレスが溜まったのとは好...
本書は朝日新聞記者によるエマニュエル・トッド氏へのインタビュー集(1998年~2016年)とういことで、それぞれのインタビュー記事自体は短く読みやすいと感じました(※日本語が読みやすく大変良かった。以前別の出版社から出たトッド氏の本を読んで翻訳のひどさにストレスが溜まったのとは好対照でした)。冒頭の「日本の読者へ」で書いてあるように、トッド氏はグローバル自由主義礼賛の時代が今年終わったと述べています。米国の大統領選挙でトランプが勝利した後に本書を読んだ身からすると、この主張はかなり説得力を持つなあという印象を本書の冒頭から持ちました。 本書はインタビュー記事と言うことで基本的に読みやすいのですが、トッド氏の主要な研究成果の知識を持っていないとなかなか意味が分かりづらい記述もあります。具体的にいえば、トッド氏は本書内でも各国の家族構造について折に触れて述べていますが、多様な家族構造(兄弟関係、親子関係、婚姻制度)と浸透する政治思想の関係という彼の研究成果については、他の著書(例:「世界の多様性」ただしこの本は大著なので読むのは大変ですが)、もしくはWebで多少勉強した上で本書を読むと理解がかなり深まると思います。
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読むに値するか、どうか悩ましい。 インタビューだから仕方ないが、確かな骨子がある訳ではない。 教育水準の向上、近代化、出生率、etc。 ただ、社会事象に対して、感情的になっているのは、日本やアメリカだけではないらしい。 フランスも、そうである。 それは、教育水準の向上や中間層の没...
読むに値するか、どうか悩ましい。 インタビューだから仕方ないが、確かな骨子がある訳ではない。 教育水準の向上、近代化、出生率、etc。 ただ、社会事象に対して、感情的になっているのは、日本やアメリカだけではないらしい。 フランスも、そうである。 それは、教育水準の向上や中間層の没落、知的エリートへの反発が関係しているらしい。 反グローバリズム、反ユーロらしいが、その根拠とするものは、あまり語られていない。 ただ、読む人によっては、価値観の転倒を起こすかもしれない。
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日本人にはない視点で世界情勢を分析するトッド氏。漂流する超大国アメリカとアメリカが唯一の同盟国である日本。中国やロシアとの関係も含め、舵取りが難しい。
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著者の主な主張は以下の通り。 ・今後30年間の地球を予測する際には、中東などの途上国の問題に集中してはならない。先進国にこそ本物の危機が存在する。 ・先進国が直面している危機として共通する要素は、信仰システムの崩壊(集団が共有する展望の欠落、経済は何が良い生き方なのかを定義しないため限界がある)、歴史上存在しなかった高齢化、教育革命(高等教育を受けた人の割合増加、自由競争が生活水準を押し下げ、文化的に不平等な世界に)、女性の地位向上(女性が男性よりも高い教育を受ける社会)であり、途上国で起きていることは(かつての先進国でも経験された)移行期に伴う混乱。発展段階が違う社会が共存している。 ・移民問題に代表されるように、(適応限界を超えた)急激なグローバル化に対する揺り戻しが起きているのではないか。自己偏愛的な社会になりつつある。
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今や世界レベルで飛ぶ鳥を落とす、そんな人気者の御方です。 昨年末のNHKBSの単独特集はスゴかったですよね。 時宜にかなっていたいうかそのものズバリという感じで。 トッドと聞くとわたし達の世代的には 某番組のトッド=ギネスを思い出してしまうんですが まったく無関係です。 わたし...
今や世界レベルで飛ぶ鳥を落とす、そんな人気者の御方です。 昨年末のNHKBSの単独特集はスゴかったですよね。 時宜にかなっていたいうかそのものズバリという感じで。 トッドと聞くとわたし達の世代的には 某番組のトッド=ギネスを思い出してしまうんですが まったく無関係です。 わたし達にとっては、アムロはあれで、カミーユはアレなんですよ。 カミーユには個人的に思い入れがありまつ。同い年でしたからね。 キレてバルカンは撃ちませんが、ブチ切れてバリカンを使った事はあります。
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インタビュー集なのでサクサクと読めました。 内容はトッド節が全開ではないものの、人口学などの自身の専門分野に裏打ちされた発言が、断定する形で連続して攻めてくる感じで、薄くて1〜2時間もあれば読めてしまう薄さながら、なかなか読み応えはありました。 印象に残ったのは2点、イランを中...
インタビュー集なのでサクサクと読めました。 内容はトッド節が全開ではないものの、人口学などの自身の専門分野に裏打ちされた発言が、断定する形で連続して攻めてくる感じで、薄くて1〜2時間もあれば読めてしまう薄さながら、なかなか読み応えはありました。 印象に残ったのは2点、イランを中心とした中東の問題について、信仰の消滅という切り口がよかったのと、我々は「信仰の最後のもの」として「利益率でものを考える世界にいる」こと。 色々勉強になりました。
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ロシアは日本には大事だと思う。中国とはもっとうまくやれそうな気はするが。それにしても、フランスで起こっていることと日本で今起きていることのなんと似ていることか。スケープゴートがイスラムか、中韓なのかの違いだけで。
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グローバル化が進んだ現代に権力を握っているのは、自由貿易という経済思想。ハイパー個人主義が問題。 グローバル化とは、識字化が世界に行き渡り、教育レベルが均一化した時に達成する。 結局本のタイトルの日本の運命の答えは述べていない。日本の核武装化について提案しても、インタビュアーが朝日新聞の記者だから、真っ向から否定し議論にならない。 外れの本だった。
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フランスの学者 エマニュエル・トッド氏のインタビューをまとめた本。 ちょっと違う独特な世界観が新鮮。 以下、読書メモ: 夢の時代の終わり 米国 エリートへの反乱 最低限の安全を脅かさることへの抵抗 EUは崩壊へ 移民への対応 世界は接近するが一致はしない 暴力・分断...
フランスの学者 エマニュエル・トッド氏のインタビューをまとめた本。 ちょっと違う独特な世界観が新鮮。 以下、読書メモ: 夢の時代の終わり 米国 エリートへの反乱 最低限の安全を脅かさることへの抵抗 EUは崩壊へ 移民への対応 世界は接近するが一致はしない 暴力・分断・ニヒリズム ニヒリズムとは、あらゆる価値の否定、死の美化、破壊の意思を指す。 先進国の考察 信仰システムの崩壊=共同体的な展望の欠如 高齢化 女性の地位の向上=教育革命 不平等を受け入れる日本 指導層はテロを利用している グローバル化と民主主義の危機 国家の再浮上 多数を占める中高年が若者にかかわる政策を多数決で決めてしまうのは民主主義にかなっているのか ユーロは悲しみの製造機になっている。なくなったほうがいい。 民主主義の機能不全 自由貿易は新興国(中国)の景気を刺激するだけ ハイパー個人主義 アメリカ「金融帝国」の終焉 サミュエルハンチントンの文明の衝突は国際社会の対立はイスラム教文明とキリスト教文明の境界で激化すると。それに対してトッドはイスラム文明の近代化が遅れてきた過渡期の問題にすぎないと説く。 近代化=教育レベルの向上=識字率の向上=本を読むことにより精神の構造を変える 欧州、北米、極東に保護主義圏を。それぞれで内需拡大し、地域経済を立て直し、各極を基礎に置いたグローバル化を構築すべき。 日本が核武装することで核兵器の偏在をなくし安定する。 終わらない「対テロ」戦争 米国が世界秩序混乱の原因 劇場型ミクロ軍事主義 日本は米国以外の同盟国を持つべき。 イラク危機は米国と欧州の対立、フセイン大統領は脇役。
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ちょうど、平行して読み漁っている水野和夫氏の著書とも通じる部分がある。(当然、異なる部分もあるが) その中で、やはりエマニュエル・トッド氏の主張を特徴付け、説得力を持たせるのは、氏のバックグラウンドである、文化人類学や人口学の観点からの指摘であろう。 出生率の低下を根拠にイランが...
ちょうど、平行して読み漁っている水野和夫氏の著書とも通じる部分がある。(当然、異なる部分もあるが) その中で、やはりエマニュエル・トッド氏の主張を特徴付け、説得力を持たせるのは、氏のバックグラウンドである、文化人類学や人口学の観点からの指摘であろう。 出生率の低下を根拠にイランが近代化の過程であると指摘し、家族制度を根拠に日本やドイツには不平等を受け入れる社会的背景という。さらには、民主主義の発展に不可欠な、国民の識字率や高等教育の発展などがさらに進むと、教育格差として不平等の定着につながるとの指摘も、改めて慧眼であると感じた。 そして、リーマンショックなどの金融危機以降、世界がグローバル化の問題に直面するなか、改めて国家の役割が注目されていることは、水野氏、トッド氏の指摘の通りであり、採るべき政策は自由貿易信奉による格差の拡大を是正することであることも両者の一致する見解である。 しかしながら、現実の政府はP189でトッド氏が2001年に指摘した通り、「むしろ、秩序を維持するために治安への懸念を人々に感じさせ、軍備などの支出を増やす。」、そういう国家である。 北朝鮮問題に絡み、米中に挟まれたいまの日本が、安全保障が極めて重要であることは疑いの余地がない。しかし、低成長時代への突入、資本主義の終わりという経済、そして社会体制の大きな転換点を迎えていることも確かである。 政府が国民の目を外に向けることで根本的な問題を先送りにしないよう、注視していく必要がある。
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