その雪と血を の商品レビュー
殺し屋のかっこつけた話なのだが、舞台が1970年代のノルウェーってのが珍しい。ワケありの女とマフィアと不幸な生い立ちをクドクドと説明せずさらっと、でも印象に残る書き方で読みやすい。 いいエンディングだったと思う。
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ボスに依頼された人物を始末する殺し屋、オーラヴ。次の依頼は、ボスの妻を殺すこと。任務を遂行するためボスの家に赴いたオーラヴは、妻に一目惚れしてしまう…。
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北欧ノアールでオモロ作品とどこかで紹介されていたので手に取ってみた。 想像してたのと全然ちゃう。まずそのボリューム、中編1作くらいしかないんじゃないかな?それくらい薄い本である。しかもポケミスなのに2段組みじゃなく1段組み。 解説まで読んで納得。なるほど70年代のパルプノアールを意識して描いたならこの分量でも雰囲気出るわな。活字量は少なくても、非常に徹しきれない三流殺し屋のぎこちない生き様が見事に描かれている。これは小説の体を装った詩やな。エルロイや馳星周やウィンズロウが描こうとした世界と同じ冷たくて痛くて美しい世界。 ミステリー要素もドンデン返しもあるんだが、この作品はそこを云々しても野暮だろう。主人公の不器用でやるせない生き方を読む。冷たさ痛さは汚濁を隠して清廉である。
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ジョー・ネスボは実にハートフルな作家である。 ところで、数日前に初めて知ったのだが、「ハートフル」とは和製カタカナ語なのだそうだ。 「お世話になったあの方へ、ハートフルな贈り物」 「心のこもった」「思いやりに満ちた」というような場合、「ハートフェルトheartfelt...
ジョー・ネスボは実にハートフルな作家である。 ところで、数日前に初めて知ったのだが、「ハートフル」とは和製カタカナ語なのだそうだ。 「お世話になったあの方へ、ハートフルな贈り物」 「心のこもった」「思いやりに満ちた」というような場合、「ハートフェルトheartfelt」「ハートウォーミング(heartwarming)心温まる」というほうがふさわしいらしい。 では「ハートフル」とはどういう意味になるのか。 hurtful 苦痛を与える 痛ましい 閑話休題。 ジョー・ネスボは実にハートフルな作家である。 とにかく、読者の痛覚に訴える。 加えて、笑いを呼び起こすのがうまい。 ドライな笑い。北欧の雪のように湿気のない、かろやかな、そんな笑い声をあげる間に、きわめてハートフルな話がみるみる展開していく。 キリスト教圏において、クリスマスというのは、とても重要なものらしい。 クリスマスをテーマにした作品、作品集の中に、後味の悪いものを見たことがない。書く側も、読む側も、なにかしらハートウォーミングなものを描きたい、読みたいものと見える。 この話も、実はクリスマス時期のものである。 「ジョー・ネスボからあなたに、ハートフルな贈り物」 それがウォーミングかフリージングかは、ご自分の目で確かめられたし。
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このミス11位、文春ミステリ-10位 ハリー・ホーレー刑事シリーズが人気の ノルウェーの作家ジョー・ネスボさん初読み 早川ポケミス 一段組の180ページなので短編? さすがに短い、物足りない。 登場人物 おれ オーラヴ・ヨハンセン 殺し屋 ダニエル・ホフマン 麻薬業者、オ...
このミス11位、文春ミステリ-10位 ハリー・ホーレー刑事シリーズが人気の ノルウェーの作家ジョー・ネスボさん初読み 早川ポケミス 一段組の180ページなので短編? さすがに短い、物足りない。 登場人物 おれ オーラヴ・ヨハンセン 殺し屋 ダニエル・ホフマン 麻薬業者、オーラヴの雇主 マリア オーラヴが助けた女 コリナ・ホフマン ダニエル・ホフマンの妻 2017年04月 トビー・マグワイアのMaterialとローレンス・グレイのGrey Matter Productionsはジョー・ネスボの小説「その雪と血を」の権利を取得、マグワイアが監督で映画化予定。 作者のネスボ自身が脚色、マグワイア、グレイ、マシュー・プルーフが制作、Ben Everard、ネスボ、Niclas Salomonssonが制作総指揮。
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ノルェー作家 もう、最初暗くて暗くて何度投げそうになったか でも177pと薄いので、意地でも読み終えてやると思ったら、あらら…最後の最後にあぁこうきたか ん〜上手いな とてつもなく悲しく、美しいラスト 胸に沁み入りました この作家は日本人好みだと思う
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この主人公をレオ様がやるのか…なんかイメージが違うなぁ。 ほんと、健さんだったわ「自分不器用ですから」って感じが。
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いろんな方がレビューで文章の美しさを指摘しててどんなだろうとワクワクしていた。冒頭から、おぉって思わせる私好みの文体!この人の書く文章はどれもこんな感じなのか?! だとしたら読まねば! ★五個にしようか迷ったが、最後の方のくだりがどこまで現実なのか難解で…そこがまたいいのかもしれないですが。 ノワールってイイなあと思わせる。 哀しい…けどだからこそ美しさが際立つ。 レオ様で映画化されるんですか?
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俺にはできないことが3つあると言って消去法的に殺し屋となった男が、殺さないという道を選んだことで得られた悲しい結末、あるいはハッピーエンドの物語。人にはそれぞれテーマがあってそのテーマに沿って人生は物語として再構成される。同じ事象を目の前にしても、個々人によっては見えているものも...
俺にはできないことが3つあると言って消去法的に殺し屋となった男が、殺さないという道を選んだことで得られた悲しい結末、あるいはハッピーエンドの物語。人にはそれぞれテーマがあってそのテーマに沿って人生は物語として再構成される。同じ事象を目の前にしても、個々人によっては見えているものも違えばその解釈も大きく異なる。そういう意味で一人称で語られる物語は読むたびに解釈が変わるほど入念な小説だった。エピローグでは語り手が変わるがそれが意味することは何だろうと考えあぐねる。カートヴォネガットの『タイタンの妖女』で死にゆく男が見た夢の光景の話があるが、この物語では何がどこまで夢だったのだろうと考え始めるとキリがないけれど、そのキリのなさゆえに小説というものは深化し、読み手によって命を与えられるのだろう。雪という肉体と血を身に纏って。
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結晶で降る雪を見たことがある。知床ウトロにある小学校の校庭にテントを張っていた時、青いフライシートに降りる雪は結晶の形そのままだった。本書の冒頭の風景に降る雪も結晶だ。しかし、白く美しい雪に血の色が混じる。ドライな文体で、とてつもなくハードボイルドな文章だが、詩的で美しい描写だ。主人公の始末屋(殺し屋)の胸の内に流れる熱いものがそうさせるに違いない。 一人称で語られる主人公オーラヴの経歴は謙遜気味だが、物語が進むにつれ、思慮、行動とも一流のそれだと理解できる。ノワール小説の形式はとっているが、描かれているのは主人公の恋心なので、文章全体が純粋かつ、美しい。小説の終えんに合わせて、読者である自分の心も穏やかに閉じていく、独特な読後感を持つ一冊だ。
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