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女のいない男たち の商品レビュー

3.7

486件のお客様レビュー

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  2. 4つ

    202

  3. 3つ

    157

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2024/08/22

「女のいない男たち」 様々な形で女に「置いていかれた」男たちの悲哀と諦念が文章に漂っていた。それ(女)に対する具体的なエピソードは殆ど添えられず、極めて抽象的な次元で悩みを拗らせる男たちが描かれていたため、村上春樹に対する苦手意識がこの小説においては払拭された。 また章を進める...

「女のいない男たち」 様々な形で女に「置いていかれた」男たちの悲哀と諦念が文章に漂っていた。それ(女)に対する具体的なエピソードは殆ど添えられず、極めて抽象的な次元で悩みを拗らせる男たちが描かれていたため、村上春樹に対する苦手意識がこの小説においては払拭された。 また章を進めるごとに前章の文脈を用いて解釈できる、章を追うごとにアップデートされている感覚があり、最後の物語である「木野」の最後のメッセージに辿り着いた時は凄くかんどうした。 ドライブマイカー お互い愛し合って長年の友人の様な関係になっても踏み込めない絶対的な距離が自己と他者には存在する。なぜ妻が中身のない男とセックスしていたのか、それはいつまでも理解できないし、妻が死んだ事で完結してしまった。 何かを演じて、それとは別に本心があって、でもその境界線はずっと曖昧で、演じ終わり本当の自分に戻った時、揺るぎない本心でさえ、どこか少し違って感じる。 イエスタデイ ファンでない自分からすると、少し鼻につく感じはするが、文章から醸成された空気感を楽しむ様な物語だった。なんか、悩んでいる目の前のことは実は凄く単純で無粋で面白みのないことだけど、それを思いっきり抽象化して悩みに浸かっていたいって気持ち分かる。高校が終わって、就職や大学進学など、高校の時より周りの子達が自由に恋愛したり、新しいコミュニティができたりといった、楽しいけど、どこか寂しくて絶望を抱く20歳前後の気持ちを書いた小説って意外となかったなー。 独立器官 男と女だったりの恋愛の、その人がその人じゃなくなる(他律的な独立器官によって突き動かされる)感覚は、人の恋愛を聞いてても、自身に関しても納得がいってしまう。到底羨ましいとは思えないし、全くもって不健康だと思う。 どんなに人間として面白みがあったり、知的さがあったとしても、何かに恋焦がれると結局古今東西同じ様な陳腐な悩みを抱える。それを如何に文学的レトリックを用いて表象できるのか。 シェエラザード ウォンカーウァイの映画「恋する惑星」を思い出した。一つ一つのエピソードはエキセントリックなものが多くて、その具体的エピソードそのものの共感を狙った短編でないことは、十分承知の上だが、それでも凄く共感しちゃった。 木野 村上春樹作品におけるファンタジーとは、喪失感を抱いたり悩んだりしている主人公(もしくはそれ自体にさえ気づけていない)に気づきを与える役割を果たしていると、どこかの評論で読んだ記憶がある。 泣いたり落ち込んだりすることは、物事の結果であるというより、むしろ元の状態に戻るための過程(もちろん言葉遊びではあるが)の様に感じてしまい、そのツール性を発見し蔑ろにしている節が自分の経験にもあった。傷付く事が起きた時、あらゆるレトリックを用いて落ち込む事から避けてきた、或いはそこまで主観的になれなかった。そうやって笑い話にしておどけて、でもふとした時に自分が凄く傷付いている事に気付いた経験が最近あったので凄く痛々しかった。 「女のいない男たち」 本作のための唯一の書き下ろし作品。 作品を完結させるという意味においては作品全体にとって意味のある章だったのだと思うが、個人的には蛇足に感じた。以前から抱いていた村上春樹に対する違和感や苦手意識が詰まった様な文章だった。「木野」までで作家の抱える痛みだったりに触れられた様な気がしたが、最後にこんなに気取られるとは思わなかった。

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2024/08/19

映画の原作でもあった「ドライブマイカー」が 収録されている短編集です。 短編集とはいえ、全体を貫くテーマが、女性に 去られた男性であり、そのシチュエーションを 静かに受け入れている点に統一されていると感 じます。 村上ワールドといえば、リアルなファンタジー であると思いますが...

映画の原作でもあった「ドライブマイカー」が 収録されている短編集です。 短編集とはいえ、全体を貫くテーマが、女性に 去られた男性であり、そのシチュエーションを 静かに受け入れている点に統一されていると感 じます。 村上ワールドといえば、リアルなファンタジー であると思いますが、男女関係についても、こ こまでリアルに、でも夢物語みたいなストーリ ーを書ける人はいないだろうな、とも思います。 そして、それを映像化できれば秀逸な映画にな ることは間違いないのでしょう。 かなり難しい作業であるとは思いますが。 大人向けのファンタジー恋愛映画を観たくなる 一冊です。

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2024/08/14

本作はかなり珍しい、作者からの“まえがき”がある。収録作の工程が読む前に分かり、面白い。 表題を正にテーマとしたコンセプチュアルな短編集で、映画化され話題を呼んだ『ドライブ・マイ・カー』含め少し纏まり気味に感じた。 ただ作者がまえがきで、非常に難産と語った『木野』は、素晴らしい...

本作はかなり珍しい、作者からの“まえがき”がある。収録作の工程が読む前に分かり、面白い。 表題を正にテーマとしたコンセプチュアルな短編集で、映画化され話題を呼んだ『ドライブ・マイ・カー』含め少し纏まり気味に感じた。 ただ作者がまえがきで、非常に難産と語った『木野』は、素晴らしい出来。人智を超えた全体意思、静から動のガラスを破るような緊迫感の表現が作者は本当に巧い。

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2024/08/08

イェスタデイ 二十歳の頃の話。たぶん村上春樹本人の話なのかな? 二十歳の頃の記憶って特別だよなあ。 わたしだけじゃないんだな。 わたしも二十歳の時、孤独で厳しい冬を迎えてたから、共感できた。 結果的にあの時間は必要だったし成長できたから、よかったと思うけど。 村上春樹やっ...

イェスタデイ 二十歳の頃の話。たぶん村上春樹本人の話なのかな? 二十歳の頃の記憶って特別だよなあ。 わたしだけじゃないんだな。 わたしも二十歳の時、孤独で厳しい冬を迎えてたから、共感できた。 結果的にあの時間は必要だったし成長できたから、よかったと思うけど。 村上春樹やっぱいいなあ。 映画もだけど、日常の世界観が好き。

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2024/07/16

おもしろくなくてなかなか進まない 私がまだ未熟なだけかもしれないし 永遠にそそられないかもわからないが。 恋愛は大好きだけど 男と女のいざこざ 自分のことでないと関心がないのかも…

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2024/07/11

男の女の物語。 不倫したり嘘をついたり傷つけあったりするのだけど、結局どうしてかってところに行き着くと、病気だからとか癖だからとかどうしようもなかったからとか。ひどく人間じみていて、それだからこそ生き物であり、人間らしいとも言えるのだけど…

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2024/07/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

同著者、「一人称単数」の数倍面白かったが、後一歩私には足りない。ミステリの読み過ぎかもしれないが、どうしても物語にオチを求めてしまう。短編集のほとんどの作品に対して、そこからどうなったの?と思ってしまった。 「ドライブ・マイ・カー」 舞台俳優、家福を苛み続ける亡き妻の記憶。彼女はなぜあの男と関係したのかを追う。 「イエスタデイ」 「独立器官」 渡会は、整形外科医であり、金、地位、あらゆるものを手にしており、常に複数人と関係を持っているほど女にもモテる。彼は、女性は誰しも私たちが感知できない言わば独立器官のようなものを持っており、そこから平気で顔色一つ変えず嘘をつくと言う。そんな中、ある一人の女性に出会ってしまったことで、彼の人生は一変してしまう。 「シェエラザード」 羽原の世話をするため、定期的にハウスにはある女が来る。彼女は、セックスをした後、ベッドの中で毎回面白い話を聞かせてくれるため、羽原は彼女のことをシェエラザードと勝手に呼んでいる。 彼女は、高校生の頃、ある男の子に恋をしており、彼への実らない好意のあまり、彼の物を盗もうと空き巣を繰り返す。 「木野」 妻に去られた木野は、会社を辞めバーを始める。こじんまりとしたバーだったが、やがていくつか定客がつくようになる。神田(カミタ)と名乗った無口な客は、ある日木野に向かって、「すぐにここを離れなさい」と提言する。 「女のいない男たち」 ちゃんと読んでない。微妙。

Posted byブクログ

2024/06/29

短編集で一つの物語がスパって終わるので集中して読みやすかった。 村上春樹の言葉選びは品を感じる。読んでて気持ちが良かった。 特に面白かったのは独立器官。恋は盲目、人を狂わすと感じた。自分を見失わない、恋愛がしたいと思う笑 男目線の恋愛を知ることができたし、女はなんだかんだ怖いんだ...

短編集で一つの物語がスパって終わるので集中して読みやすかった。 村上春樹の言葉選びは品を感じる。読んでて気持ちが良かった。 特に面白かったのは独立器官。恋は盲目、人を狂わすと感じた。自分を見失わない、恋愛がしたいと思う笑 男目線の恋愛を知ることができたし、女はなんだかんだ怖いんだなって思った笑

Posted byブクログ

2024/06/25

割と濃い話が多くてちょっと胃もたれしそうになったけど、それぞれの話の世界に浸っているとなかなか気持ちよかった。 『シェエラザード』は最も気持ち悪くもあり、最も引き込まれる話だった。

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2024/06/15

村上春樹さんの小説は、すごく大きな展開があるわけでもなく、とにかく男と女が〜などの日常でありそうな会話ばかりなのに妙に惹きつけられ読んでしまう。この文庫もその良さが詰まったものでした。 木野だけ、ちょっとテイストが違う?感じのお話で少しドキッとしました。なぜか伊藤潤二さんの漫画が...

村上春樹さんの小説は、すごく大きな展開があるわけでもなく、とにかく男と女が〜などの日常でありそうな会話ばかりなのに妙に惹きつけられ読んでしまう。この文庫もその良さが詰まったものでした。 木野だけ、ちょっとテイストが違う?感じのお話で少しドキッとしました。なぜか伊藤潤二さんの漫画が脳裏に浮かびながら読んだ話でした。

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