氷の轍 の商品レビュー
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殺人事件を追う刑事も、その被害者である独居老人も、後に容疑者となる人も、寄る辺ない身の上で、寂しさを抱えていて、加害者も被害者も所謂悪人ではないというのが切ないところ。善意の押しつけ、自分の善意に疑いを持っていないことによるすれ違いがあり、また善意を向けられる相手が生きることに精一杯で善意に対して鈍感というのがやるせない。 真実ひとりは堪えがたし――という、北原白秋の詩が効果的に使われていて、最後グッとくるものがありました。 桜木さん独特の重たい雲がたちこめているような筆致は叙情的でミステリーにも合うと思った。 『凍原』のヒロイン松崎比呂も随所に登場していますが、『凍原』は読んでいなくてもこの作品単独でも楽しめると思います。
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釧路の海岸で、高齢男性の死体が発見される。父親も警察官だった大門真由は、片桐警部補と共に捜査に当たる。被害者は札幌市に住んでいたが、交友関係などがつかめず、釧路に来た理由さえ不明。 彼は誰に、何故殺されたのか。 ミステリー仕立てではあるが、被害者、そして関わった人たちがどのように...
釧路の海岸で、高齢男性の死体が発見される。父親も警察官だった大門真由は、片桐警部補と共に捜査に当たる。被害者は札幌市に住んでいたが、交友関係などがつかめず、釧路に来た理由さえ不明。 彼は誰に、何故殺されたのか。 ミステリー仕立てではあるが、被害者、そして関わった人たちがどのように生きてきたのかを語る人間模様物語といった感じ。言葉の使い方がうまいというか、美しいというか、素晴らしかった。家族とは何か、絆とは何かを考えさせられる作品。 真由、片桐、松崎とキャラがたっていてよかった。
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二人デ居タレドマダ淋シ、 一人ニナツタラナホ淋シ、 シンジツ二人ハ遣瀬ナシ、 シンジツ 一人ハ堪ヘガタシ。 北海道釧路の海岸で発見された男性、80才。 被害者のアパートを捜索した北海道警の刑事大門真由は、綺麗に片付けられた独り暮らしの住まいで、北原白秋の詩集「白金之獨樂」を見つける。 生涯独身、身寄りもなかった被害者はなぜ殺されなければならなかったのか… 少ない手がかりのなか、自分も身の内に孤独を抱えた真由が、札幌~青森~八戸と被害者の堪えがたい孤独の人生を古本1冊から紐解いていく… あ~もう、どっぷり桜木さんの世界。釧路の町を覆う霧の中にいる感じ。 刑事物なんだけどそれだけじゃない。 被害者も、加害者も、追う刑事も、その父も、その母も…皆それぞれの哀しみを抱えて生きている。 生きるということの哀しさ、人は皆ひとりであるということ、だけど、堪えがたいひとりを生きている者にも明日が来るという希望… 白秋の詩と共に、かすかな光の余韻を残す終わり方が良かった。
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北海道を舞台にしたミステリ。起こった一つの殺人事件。被害者の老人にいったい何があったのかを警察が追い求める物語だけれど。誰が犯人か、ではなく、被害者がどういう人生を歩んできたのか、がメインの物語でした。 舞台設定のせいか、読んでいる間の印象はとにかく薄暗くて寒い感じです(夏の話な...
北海道を舞台にしたミステリ。起こった一つの殺人事件。被害者の老人にいったい何があったのかを警察が追い求める物語だけれど。誰が犯人か、ではなく、被害者がどういう人生を歩んできたのか、がメインの物語でした。 舞台設定のせいか、読んでいる間の印象はとにかく薄暗くて寒い感じです(夏の話なのに!)。作中に登場する白秋の詩もまた、その印象をさらに強めて。登場人物たちのさまざまな形の「孤独」がひしひしと感じられる心地でした。でも突き詰めて考えれば、人間は結局みんな孤独なものなのかもしれません。
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道東の寂寥感が丁寧につづられていて、すっと温度が下がる気がする。 警察モノとしては、話の展開や人物の心情はもう少し…な気がするけれど、ひとつひとつ丁寧に書かれていて、ゆっくり読み進めました。
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また舞台は北海道。そして場末で生きた悲しい女たちの物語で、いつも背筋が凍るような寂しさに襲われるのに、つい夢中で読んでしまいます。想像もつかないような辛い境遇に育つ中で鈍感力を身に着けてしまうことも、どんな辛さにも揺るがないぶっとい芯を背負ったまま凛々しく老いていくことも、等しく...
また舞台は北海道。そして場末で生きた悲しい女たちの物語で、いつも背筋が凍るような寂しさに襲われるのに、つい夢中で読んでしまいます。想像もつかないような辛い境遇に育つ中で鈍感力を身に着けてしまうことも、どんな辛さにも揺るがないぶっとい芯を背負ったまま凛々しく老いていくことも、等しく切なく身につまされます。でも女刑事である主人公が思うほど、彼女たちの人生が侘しさの連続だったとは思いたくありません。その都度なんらかの心の拠所があったと信じたい。それが人に理解されない拠所であったとしても。
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警察もの。大門真由が被害者の足跡を辿って、過去の出来事を掘り起こしていく。偶然が多いような感じも受けたが、自身の出生の秘密もあり親と子の在り方や想いの行き違いで切なさも感じる展開だった。
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ミステリーを読んでいるのに、細い糸が繋がっていく人間模様に、思わずため息が出る。 都合よく繋がり過ぎの声もあるかも知りないが、丁寧に描かれたストーリーだと思う。 物語の中心舞台である、釧路の空気感や湿度・温度が伝わってくる。 物語は『津軽海峡が分かつ情』や血の繋がりに支配されて...
ミステリーを読んでいるのに、細い糸が繋がっていく人間模様に、思わずため息が出る。 都合よく繋がり過ぎの声もあるかも知りないが、丁寧に描かれたストーリーだと思う。 物語の中心舞台である、釧路の空気感や湿度・温度が伝わってくる。 物語は『津軽海峡が分かつ情』や血の繋がりに支配されている。 派手さはない、しっとりとドップリと読ませるミステリーです。久し振りに、いい読後感を味わっています。 ただ、犯人の動機が弱い所だけが気になった。
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ドラマは設定が違うようです。観てないですが、ご親切にしおりにあれこれ。 桜木さん、以前のキレが無いようで残念な本。帯のあおり文句に釣られて読んでみたけれど白秋の詩の切なさがあまり感じられない。読み込み不足? 主人公のキャラ立てはいいのに、全体的にイマイチ。
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ドラマ化という事だったので読んでみた。読み始めたら止まらなくなった。凍原より分かりやすかった。大門真由、松崎比呂、片桐警部補3人の続編を期待します。
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