私の消滅 の商品レビュー
精神科の医師。女性患者のつらい過去。先の医師による偽記憶の注入。電気治療により記憶を消し、新たな記憶を植え付けて復讐に使う。 結局根源は、面白半分に人の心を実験台にした前の医師、ですか。
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「私」とは何か。特定の方法下に置かれる時、それはもうわからなくなる。 「私」がコロコロ変わるので、途中までは混乱する。が、仕掛けがわかれば「そういうことかーーーー!!」と腑に落ちると同時に、恐怖が腹の底からじわじわと私を侵食する。 「私」を司っているものはなんだろう。戸籍?肉体?意識?記憶?思考?やっぱり内的な意識、記憶、思考に大きく依存している気がする。私の内部に、ノートみたいに他者によって書き加えられるならば、「私」を「私」たらしめるものは一体どこにあるのだろう。 小説そのものは創作だけれど、監獄で嘘の罪を真実と思い込ませること、X-38という実験(脳の飢餓状態を作り、なんらかの意見や考えを吹き込む)、無意識に作用するサブリミナル効果、そして薬物…。人を洗脳する手段がたくさん存在していることに恐怖を禁じ得ない。
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初 中村文則作品 彼も私と同い年の作家である。 今までに触れたことのない世界観にどんどんのめり込んでいったが、終盤、視界が開けるように全貌が見えてきてからは、自分の気持ちもクールダウンしていくのが何とも不思議な感覚だった。 作中、宮崎勤死刑囚の記述があったが、奇しくも同時に読...
初 中村文則作品 彼も私と同い年の作家である。 今までに触れたことのない世界観にどんどんのめり込んでいったが、終盤、視界が開けるように全貌が見えてきてからは、自分の気持ちもクールダウンしていくのが何とも不思議な感覚だった。 作中、宮崎勤死刑囚の記述があったが、奇しくも同時に読んでいたとある教育雑誌にも宮崎勤死刑囚の記述があり、これまた不思議なつながりをしみじみと実感させられたことを、ここに記しておく。
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初めはフムフム読んで、途中からザワザワして、あれ?って不安になって、後半にかけて吃驚して、最後の数ページでタイトルの意味を理解して鳥肌が立ちました。 殺人者は、周囲の環境が影響することもあるんだよなっていう当たり前のことを改めて思ったり。宮崎氏の、小鳥のくだりはなんだかいたたまれ...
初めはフムフム読んで、途中からザワザワして、あれ?って不安になって、後半にかけて吃驚して、最後の数ページでタイトルの意味を理解して鳥肌が立ちました。 殺人者は、周囲の環境が影響することもあるんだよなっていう当たり前のことを改めて思ったり。宮崎氏の、小鳥のくだりはなんだかいたたまれない気持ちになりました。
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余りいい話ではなかったが、人間の意識についてちょっと考えさせられた。 「私」と普通にいうとき、それは何を指しているのか? 自分という肉体。意識。蓄積された記憶。周囲の人々が認知している「私」。 記憶喪失するとどこまで自分のことを忘れてしまうのだろう? もし過去の記憶を一切消してし...
余りいい話ではなかったが、人間の意識についてちょっと考えさせられた。 「私」と普通にいうとき、それは何を指しているのか? 自分という肉体。意識。蓄積された記憶。周囲の人々が認知している「私」。 記憶喪失するとどこまで自分のことを忘れてしまうのだろう? もし過去の記憶を一切消してしまったらどうなるのか? そしてそこに偽りの過去を注入されたとしたら? それが洗脳ということだろうけど。 苦しい過去にポジティブな経験を上書きするのは自分の意志で行いたいものだと思う。 それが難しい場合があるから心療内科があるのだろうけど。 よく知らないけど、著者は子供時代に何か恐ろしいを体験してしまった人なのかな?何冊か読んでそう思った。
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中村文則さんの本は正直今まで読むのにしんどいなと思いながら読んでいました。 この本もそうかなと思いながらも表紙から気になって思わずジャケ買いしてました。 読み進めた印象としては今までのものよりかは読みやすい印象です。 しかも最初の頃はふーんという感じで、なんだろうなという感じでふ...
中村文則さんの本は正直今まで読むのにしんどいなと思いながら読んでいました。 この本もそうかなと思いながらも表紙から気になって思わずジャケ買いしてました。 読み進めた印象としては今までのものよりかは読みやすい印象です。 しかも最初の頃はふーんという感じで、なんだろうなという感じでふつうに読んでいたのが、あるところを境に「え?」という感じになり、そこからはさくさくとどんな展開になるのか楽しみながら読み進めました。 おもしろかったです。この作者の作品でもう1回読み返してみたいと思えた最初の作品になりました。
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全く意味の分からないまま読み進めることになるので 多少興味深いものの序盤は物語に入り込みにくいです。 しかし、途中の宮崎勤死刑囚の話が入ってくるところあたりから 物語の世界観に惹き込まれていきました。 宮崎勤が犯罪を犯して捕まったのが私が小学校1年生くらいの頃で 幼女(といっても当時の自分と同じくらい)を殺害した変質者という イメージくらいしかなくどんな罪を犯したのかも知らなかったですし どういった人物だったのかもほとんど知りませんでした。 どうして犯罪者になったのかという作者なりの考察が随所に盛り込まれている ということでその考察内容には読むべきものがあると感じました。 この物語の肝となるのは「私」とは何かというところだと思いますが 教団Xで出てくる認識論も踏まえつつ自分という存在を消され 新たな不安定な自己を植えつけられるという復讐には正直ぞっとしました。 この物語を読むと洗脳など簡単に出来そうな気がして 自分も誰かの意図した自分になってはいないだろうかと末恐ろしくもなりました。
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中村文則先生の作品を読んだのは初めて 全体的に読みにくいというか、読みやすさは感じなかった 200ページもなく、2時間程度で読み終えた 誰の目線で書いているのか気をつけないと意味がわからなくなりそうだったかな で、その目線もマインドコントロールされて「別人と思い込んでいる人」の目線だからややこしい まずは別人になろうとしている人物が描かれる かなり難しい人生を送ってきていて、その人生を変えると 文書とかを元に描かれていく そこにある人物が来て連れて行かれる そこで分かってくるのが、その人物の本名は別の名前 で、なろうとしていた人物も出てくる なろうとしていた人物は精神科医 患者の女性に恋心を抱くが、結局はその女性は別の男性と生活を共にする しかし、その女性の過去を知っている二人の人物が出てきて、女性は自殺する形になってしまう その後精神科医と男性がその二人の人物に復讐する その復讐が精神科医らしく、マインドコントロールやら洗脳やらといったところを駆使していく 冒頭で出てきたのはマインドコントロールされた別人だったのだ 最終的には復讐は成功し、精神科医も自分の脳にも電気をあてて終わる 全体的に暗い 暗い作風は好きだが、色々難しかったかなぁ
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やばい、本の世界に入っていけない...と思いながらも読了。思い出すことはないでしょう。気だるい雰囲気だけは好きでした。
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純文学ゆえの抽象的な意味合い…もしくはファンタジー的な要素を以ってした「私の消滅」かと思っていたが、読み進めるうちにストーリーが整いリアルな消滅が待っていた
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