1,800円以上の注文で送料無料

国家はなぜ衰退するのか(上) の商品レビュー

3.9

18件のお客様レビュー

  1. 5つ

    5

  2. 4つ

    5

  3. 3つ

    3

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    1

レビューを投稿

一つの視点

経済発展は政治的制度と密接な関係がある。 地理説。中緯度地域の土地の生産性が高いから欧米は発展した。 文化説。文化や宗教が社会の制約となり経済発展を阻害した。 地理説、文化説を見事に論破している。カトリック諸国が経済性に欠けるなら、南ドイツの産業発達を説明できない。中緯度地...

経済発展は政治的制度と密接な関係がある。 地理説。中緯度地域の土地の生産性が高いから欧米は発展した。 文化説。文化や宗教が社会の制約となり経済発展を阻害した。 地理説、文化説を見事に論破している。カトリック諸国が経済性に欠けるなら、南ドイツの産業発達を説明できない。中緯度地域ならアルゼンチンは好条件のはず。 この辺り、私の持論と一致 社会エリートが経済発達により、自らの権益を削がれることを恐れて、経済発展しない仕組みを作り出す。収奪的経済が根本的な問題。包括的政治制度が包括的経済制度を産む。生産、発達へのインセンティブが生まれ経済発展する。 包括的と何度も出てくるが、英語のインクルーシブの方が分かりやすい気がする。 この本に★ゼロが多いが。読めなかった人の評価なので気にせず買うべし。

ユスト

2024/07/19

グローバルサウスという言葉を至近時、頻繁に目にするようになった。地球規模での権力構造、それによる搾取の構造的問題として語られる。また、もっと幼稚化した視点で言えば、熱帯気候の国は労働意欲が低いなんていう論調も昭和の時代にはあった。そうした単純化した貧困の理由ではなく、本著が根本原...

グローバルサウスという言葉を至近時、頻繁に目にするようになった。地球規模での権力構造、それによる搾取の構造的問題として語られる。また、もっと幼稚化した視点で言えば、熱帯気候の国は労働意欲が低いなんていう論調も昭和の時代にはあった。そうした単純化した貧困の理由ではなく、本著が根本原因を解き明かそうとする。 例えば、平均的なエジプト人の収入レベルは、アメリカの1割程度で、予想される寿命も10年短い。エジプトが貧しいのは、その国が限られたエリートによって支配されてきたからだという。また、北朝鮮、シエラレオネ、ジンバブエが貧しい理由も、エジプトが貧しい理由と同じ。逆に、アメリカやイギリスが裕福になったのは、政治的権利がはるかに広く分散され、政府が国民に説明、責任を負って敏感に反応し、国民の大部分が経済的機会を利用できる社会である。「政治構造」が理由である、というのが一つの切り口だ。 エジプトの記載について続ける。オスマン帝国のエジプト支配はナポレオン・ボナパルトによって崩壊させられたが、エジプトは次にイギリスの植民地支配を受けることになる。しかし、イギリスはオスマン帝国同様、エジプトの繁栄に興味がなかった。後にエジプトは両帝国を追い払い、1952年には君主制をも打倒したが、結局、それらの後に、別のエリートに権利を渡してしまった。そして、このエリートたちはエジプト人が繁栄を遂げることには無関心だった。どのようになっても、社会の基本構造が変わらずに、エジプトは貧しいままだった。 こうした視点は、韓国と北朝鮮、アメリカとメキシコにまたがる2つの「ノガレス」の異なる制度によっても証明ができる。国境の両側で経済的繁栄に違いがあるのは、政治制度の構造に違いない。東ドイツと西ドイツにしてもそうだろう。 限られたエリートの利益のために多くの人々を抑圧するきわめて収奪的な制度は、腐敗を生み、創造的破壊が引き起こされることはなく、限られた技術的進歩しか生まない。例えば、奴隷制度がイノベーションを起こすモチベーションを下げていた。奴隷として搾取される国の話では無く、搾取する側の話だ。 近年まで搾取され続けた側が貧困であるというのは、これらとは別次元の話であるようには思う。この事を無視しているわけではないが、上巻ではとにかく、この政治構造について紙幅が割かれた。下巻に続く。

Posted byブクログ

2024/02/25

なぜ世界には繁栄する国とそうでない国があるのか。繁栄が続かないのはなぜか。立場の逆転は何が原因か。 本書では、それらは制度によるものだとして考察している。 ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』が面白かった人には一読の価値がある内容かと思う。 ラテンアメリカは現在も貧しい国が多く...

なぜ世界には繁栄する国とそうでない国があるのか。繁栄が続かないのはなぜか。立場の逆転は何が原因か。 本書では、それらは制度によるものだとして考察している。 ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』が面白かった人には一読の価値がある内容かと思う。 ラテンアメリカは現在も貧しい国が多く、それらはスペインの収奪的制度の影響によるとしている。その中でも先住民がほとんどおらず、鉱物資源の乏しいアルゼンチン、チリは他の大半の国よりうまくやってきた。一方でアステカ、マヤ、インカの各文明に領有されていた土地には金を持つ王がおり、スペイン人の支配が及んだ。 また、アフリカの多くの地域では奴隷売買から相当な利益が得られ、その為アフリカの王やエリート層により奴隷の輸出が一層盛んになった。 日本もかつては金銀が豊富に取れた。石見銀山は最盛期には世界の三分の一の銀を産出していたともされる。ほぼ同時期にスペインが支配したボリビアのポトシ銀山と共に二大銀山と呼ばれていた。 またアフリカ諸国と同様、戦国時代にスペインとポルトガルの宣教師が布教にくると共に、それらの国の商船が日本人を奴隷として海外に売り飛ばしていたことがある。 つまり当時の日本はアフリカやラテンアメリカの国々と非常に近い状況にあったといえる。これらの国々と日本の違いはどこだろうか。 本書で取り上げられているコンゴを例にみると、 コンゴの王が自分の利益のため積極的に奴隷貿易を行ったのに対し、日本では豊臣秀吉がキリスト教の布教と日本人の奴隷の売買を厳しく取り締まっている。 またコンゴも日本も銃を買い入れたが、この使い道が両国では異なる。コンゴでは絶対的な権力をもつ王によって、奴隷を捕らえて輸出し、また反乱を抑えるために使われた。一方日本では戦国の国どうしの戦のために取り入れられた。一時は世界最大の銃保有国となり改良も急速に行われ、これがスペインやポルトガルの脅威ともなった。 こうしてみると、日本植民地化の危機は幕末より先に戦国にあったともいえる。また、戦国時代という一見不安定で不利にみえる時代も、海外からの侵略を討ち払うのにうまくハマった側面があるかも知れない。 スペインはラテンアメリカの支配において、中央集権的な強い政治権力を持たない先住民の抵抗に遭い、より支配しやすい地を求めて撤退している。 仮に日本が中央集権のもとキリスト教を受容し、一部の権力者だけが利益を得られるような日本人奴隷の輸出や銀と武器の取引が定着していた場合、今日のアフリカやラテンアメリカのような収奪的な政治や経済のスパイラルにとらわれていた可能性は充分にある。 また中国は急成長している国であるが、収奪的政治制度をとる国であり、かつてソ連も収奪的制度のもと冷戦時代に成長しそして崩壊したように、中国も同じ道筋を辿ることを危惧している。 なかなか興味深い。

Posted byブクログ

2024/02/24

包括的な政治制度が経済成長を産む。産業革命を産んだイギリスとフランスは何が違うのか、歴史的な背景含めて面白かった。下巻も楽しみ

Posted byブクログ

2023/06/29

集団や組織が繁栄していく法則は、制度にある。 それは本書が示している包括的制度である。 包括的制度とは、中央集権的でありながらあらゆる連合によって政治が保たれているものである。包括的制度の逆にあたる、収奪的制度は、一党独裁である。また政治は1つの手段によって組織されている。 それ...

集団や組織が繁栄していく法則は、制度にある。 それは本書が示している包括的制度である。 包括的制度とは、中央集権的でありながらあらゆる連合によって政治が保たれているものである。包括的制度の逆にあたる、収奪的制度は、一党独裁である。また政治は1つの手段によって組織されている。 それにより1部のエリートは利益を得るようになっている。こう考えると、今なぜ日本が不況に陥っているかがよくわかる。政治はほぼ一党独占状態にあり、税金によって国民から利益を巻き上げる仕組みになっている。日本が不況から出るためには、包括的制度に移行しなければない。

Posted byブクログ

2022/12/30

感想 世界史学習者が一度は抱く疑問。なぜ隆盛を極めた国が現在発展途上国として認識されているのか。発展の速度と大きさの間に逆相関があるのだろう。

Posted byブクログ

2023/12/26

国家は経済制度が収奪的である場合は衰退し、包括的である場合は発展する 文化、地理環境、人種よりも経済制度が重要である

Posted byブクログ

2022/03/12

Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/112578.html

Posted byブクログ

2021/09/16

様々な国の歴史を通して国家はなぜ発展し繁栄するのか、もしくは衰退するのかの原因を歴史を通して克明に詳細に考察し描いている。いろいろな書籍の中で国の経済が発展する理由と政治との関連性などが詳細に克明に描かれていてなかなか面白い本です。 どのような組織体系、国の成り立ちや在り方が繁...

様々な国の歴史を通して国家はなぜ発展し繁栄するのか、もしくは衰退するのかの原因を歴史を通して克明に詳細に考察し描いている。いろいろな書籍の中で国の経済が発展する理由と政治との関連性などが詳細に克明に描かれていてなかなか面白い本です。 どのような組織体系、国の成り立ちや在り方が繁栄へと導かれていくのか大変勉強になり事業経営者など組織のリーダーにとっては現実の複雑な社会の中で応用できるものと思う。

Posted byブクログ

2020/09/15

アリゾナ州ノガレスとソノラ州ノガレス、北朝鮮と韓国を比較することから始め、国家の衰退が政治的制度と経済的制度の相互作用によるものだということを見ていく。 例えば、ジャレド・ダイヤモンドのような地理説は現代世界の不平等を説明するのに敷衍できないし、マックス・ウェーバーに端を発する...

アリゾナ州ノガレスとソノラ州ノガレス、北朝鮮と韓国を比較することから始め、国家の衰退が政治的制度と経済的制度の相互作用によるものだということを見ていく。 例えば、ジャレド・ダイヤモンドのような地理説は現代世界の不平等を説明するのに敷衍できないし、マックス・ウェーバーに端を発するプロテスタントの倫理が近代的工業社会の隆盛を促す重要な役割を演じているとした文化説も、結局は制度による帰結が文化や心性となるあたり等、他の説との考え方の違いなどを見ていくのも勉強になる。 また、より良い経済政策を知らなかったという無知説について、この間違いを犯す理由は、無知によるものではなく、貧困を生み出す選択をしている、つまり故意であるという話も面白い。 繁栄を達成するためには、いくつかの基本的な政治問題を解決する必要があり、それは安全な私有財産、公平な法体系、公共サービスの提供(物品を運ぶための道路と輸送ネットワーク)、契約と取引の自由等といったものになるが、マックス・ウェーバーが示した国家の本質「合法的な暴力の独占」に対して、包括的な経済制度を取れるか収奪的な経済制度となるか、その違いが決定的な差となる。

Posted byブクログ