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中央銀行が終わる日 の商品レビュー

4.2

16件のお客様レビュー

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2025/07/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 本書の根幹にあるのは、「流動性の罠」というケインズ経済学の古典的命題である。金利をいくら引き下げても、人々は資金を使わず、銀行は貸し出さない――その結果、中央銀行がどれだけ通貨供給を増やしても、実体経済には届かず、投資も消費も動かない。まさに日本が長年経験してきたデフレ経済は、この「罠」の実証例である。著者の岩村充氏は、従来の金融政策はもはや「効かない局面」に突入していると警告し、現在の中央銀行は「将来の成長を前借りする」政策を繰り返すことで、制度としての正統性を徐々に失いつつあると指摘する。  この制度疲労に対し、著者が注目するのがビットコインやブロックチェーンに代表される分散型通貨の可能性である。ここで重要なのは、岩村氏がそれを「中央銀行に取って代わる通貨」としてではなく、「中央銀行の制度的革新を促すテクノロジー」として捉えている点だ。例えば、利子付きデジタル通貨や「減価する貨幣」といった発想は、すでに近代経済学の中で提案されてきたが、技術的な実現手段がなかった。岩村氏は、ブロックチェーン技術によってそれらが現実味を帯びてきたと論じる。  ただし、この議論には慎重さも必要だ。貨幣とは単なる交換手段ではなく、「信認の装置」である。国家や中央銀行が通貨を支えてきたのは、単に紙幣を印刷してきたからではなく、「最後の貸し手」として市場に介入し、経済危機時に人々の不安を緩和する役割を果たしてきたからだ。ビットコインがこの「制度的安心」の代替となり得るのかは、現段階では明確ではない。さらに、仮想通貨は価格変動の激しさやエネルギー消費、法規制との相克など、実用化にはいまだ多くの課題を抱えている。それでも本書が優れているのは、仮想通貨をきっかけに、中央銀行制度そのものを「与件」とせず、不断に問い直そうとする姿勢にある。通貨の本質とは何か。中央銀行は誰のために存在するのか。そして制度が機能しなくなったとき、私たちはどのような仕組みを望むのか。岩村氏の議論は、技術論を超えて、「貨幣とは制度である」とする政治経済学的な視座にまで踏み込んでいる。  『中央銀行が終わる日』というタイトルは、破局の予言ではない。それはむしろ、「中央銀行が終わらないためには何を変えるべきか」という警告である。流動性の罠に囚われ、通貨供給のパイプが詰まった現代において、中央銀行は自らの存在意義を問い直さねばならない。そのとき、制度改革のヒントは過去ではなく、むしろビットコインのような「異物」に宿るのかもしれない。本書は、そうした異物に真剣に耳を傾けるための思考の出発点として、大いに読む価値がある。

Posted byブクログ

2024/10/18

秀逸な一冊!難しすぎる所があるので☆1つ落とし。 経済学部出身者は特に面白いのでは・・・と。 怪しい感じしか無かったビットコイン。そこに仕込まれた設計者の思いに少し触れられた気がします。設計者、天才過ぎる人かも。「中央権力に対する天才の反逆」って感じもしました(笑) 印象に...

秀逸な一冊!難しすぎる所があるので☆1つ落とし。 経済学部出身者は特に面白いのでは・・・と。 怪しい感じしか無かったビットコイン。そこに仕込まれた設計者の思いに少し触れられた気がします。設計者、天才過ぎる人かも。「中央権力に対する天才の反逆」って感じもしました(笑) 印象に残った言葉たち。 「ビットコインが成功したのは、現金をネットワーク上で作り出したい、しかも中央銀行のような管理者無しに実現したいという目標を、技術の高度化という観点から追い求めないで、人々の利己心を利用してやろう、あるいは競争原理を利用してやろう、という方向から達成しようと発想を転換したところにある」 「ブロックチェーンで権利の帰属者を特定し、そのチェーンの正当性を競争的なマイニングで保証する」 「(マイニングという)プルーフ・オブ・ワーク(POW)自体が貨幣としてのビットコインの価値源泉になっている」 「ビットコインは、マイニングという作業に膨大な電気代がかかる、そのことによって貴重なものになり結果として価値が生じている、要するにPOWが価値を生む」

Posted byブクログ

2018/12/31

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Posted byブクログ

2018/09/16

ビットコインと中央銀行の未来について論じた本。 岩村さんの他の著書と同じように、さらっと読むには面白いんだけど、ちゃんと理解しようと思うと難しい、でも多くの示唆があるんだろうと感じさせる内容。 金融政策の担い手としての中央銀行が昨日不全に陥ったとき、中央銀行は終わるのか。新しい...

ビットコインと中央銀行の未来について論じた本。 岩村さんの他の著書と同じように、さらっと読むには面白いんだけど、ちゃんと理解しようと思うと難しい、でも多くの示唆があるんだろうと感じさせる内容。 金融政策の担い手としての中央銀行が昨日不全に陥ったとき、中央銀行は終わるのか。新しい生き方があるのかもしれない。巻末のこうした議論は、中央銀行以外の組織にも示唆的だろう。

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2017/12/22

・貨幣に金利をつけるという仮説 現実の貨幣に金利が付いたらどうなるのか。そんなお金は嫌だ。しかし、確実にお金は動くようになるだろう。マイナス金利をつけられたら、減るくらいなら使おうと考えるだろう。 いくら、メディアで「金融緩和」と言われていても、「デフレから抜け出すには、お金を使...

・貨幣に金利をつけるという仮説 現実の貨幣に金利が付いたらどうなるのか。そんなお金は嫌だ。しかし、確実にお金は動くようになるだろう。マイナス金利をつけられたら、減るくらいなら使おうと考えるだろう。 いくら、メディアで「金融緩和」と言われていても、「デフレから抜け出すには、お金を使わないといけない」と分かっていても、みんな結局は自分が一番可愛いんです。明るい未来が見えているからこそ、人はお金を使おうとする。 ・お金の不思議 日本人は貯金が大好きな人種と言いますが、改めて考えてみるとお金というのは不思議。 ただの紙切れである。みんなが価値があると思い込んでいるから成り立っている。 この理論から言えば、仮想通貨もみんなが価値があると言えば、お金になる可能性は大いにありえる。 ・仮想通貨の可能性 まだまだ、ビットコイン・仮想通貨と聞いて胡散臭いという印象を受ける人が多いのではないだろうか。しかし、考えれば考えるほど、仮想通貨は段々日常になっていくように感じる。 運送会社が荷物の届けを見直すほどネットを使って物を買うということが当たり前になっている今日。 送金の簡単さ、手数料の安さという面で仮想通貨という概念はネット社会の現代において、理に叶っているのではないか。 管理者がいないという点もおもしろい。どこの国の支配下でもないお金。 少々専門的で難しいと思うところもありますが、お金に対する考え方を変えてくれる本。 仮装通貨というものを、ただの「仮装」ではなく、リアルに考えることのできる内容で良い意味で期待を裏切られた。

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2017/07/01

ビットコインの基本を、公開鍵暗号から説明してくれる。その上で、ビットコインのプロトコルにある限界、それを回避する代替通貨アルトコインがあり得ること、従来通貨もビットコイン達と同様裏付けがないことを説明する。 ところで、楕円曲線暗号の説明を今まで何度も聞かされたが、この本で初めて入...

ビットコインの基本を、公開鍵暗号から説明してくれる。その上で、ビットコインのプロトコルにある限界、それを回避する代替通貨アルトコインがあり得ること、従来通貨もビットコイン達と同様裏付けがないことを説明する。 ところで、楕円曲線暗号の説明を今まで何度も聞かされたが、この本で初めて入口がわかった (~_~;)

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2017/06/07

ブロックチェーンとかビットコインを学ぶにはとても良い本です。大変勉強になりました。日々勉強ですね。 銀行も今の業務形態からどんどん変わっていくのでしょうね。日々の技術の進歩で業務が変わっていき、それについていくためにどうするか考えたりするのでしょう。そもそも自分たちが業務を変えて...

ブロックチェーンとかビットコインを学ぶにはとても良い本です。大変勉強になりました。日々勉強ですね。 銀行も今の業務形態からどんどん変わっていくのでしょうね。日々の技術の進歩で業務が変わっていき、それについていくためにどうするか考えたりするのでしょう。そもそも自分たちが業務を変えてしまうような技術の進歩に携わっていきたいものですね。日々チャレンジ!

Posted byブクログ

2017/02/19

単なる投資家目線でビットコインを知りたかったのだけど、そういう人には難儀でした。 あるいは中央銀行がどうなっていくか気になったのですが、一投資家がコントロールできることでもない。 学者さんや銀行家の方が読むのがいいんではないでしょうか。

Posted byブクログ

2016/12/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

各章が50ページごとに振り分けてあって、私的に読みやすい。1日につき50ページで、5日で読めそう。 第一章 協調の風景――良いが悪いに 悪いが良いに  スタグフレーションという言葉を4年ぶりぐらいに聞いたよ。もう4年たつのかと、個人的に感慨にふける。 過去の政策を振り返り、手法が変化していくのを示した。一部難しいところもあったが、要点を捉えていて解りやすかった。 第三章  ビットコインの問題性について、「トランザクション展性」(ビットコインに関する取引データの全体にデジタル署名が施されているわけではない、これは実装上の問題でもある)や「スケーラビリティ」(現代のビットコインのブロックの大きさが大量の取引を支えるのに必ずしも十分なものでない)が挙げられている。前者はともかく、後者は今後解決されるのではないかと思う。  読了後、解説のなかにあった呪文に笑ってしまった(引用301)経済関係の本を読むときは、出版年数をきにしている。この本は2016年2月の本。今日の新聞でビットコインが急激に価値が増しており、中国からの資産逃避がおおいとの記事があった。著者はどう考えているのだろうか?聞いてみたい。  ビットコインの登場は、金融界にとってじわじわと寝食する良性腫瘍のように思えてきた。増殖のきっかけは、著者のいう枯れた技術の掘り起しから起こっており、コロンブスの卵化することで始まっている。考えると、エキサイティングだ。あとからじわじわ感じる(引用237)。  正直、読むのに難しい本だった。経済学の専門的な内容についてはほとんどわからなかったと言ってよい気がする(じゃぁ全く分からなかったのかよ!)。もう少し金融の勉強をしてから読み直したい一冊。 紹介してくださったLさんに感謝。

Posted byブクログ

2016/12/09

ビットコインと呼ばれるものが「仮想通貨」であることを知っている人は少なくないと思うが、実際に誰が作り出して、どういう仕組みで管理されているのかを知っている人はまだ多くないだろう。 本書は、新しい通貨としてのビットコインの可能性と役割、課題として残る点などが指摘されており、ビットコ...

ビットコインと呼ばれるものが「仮想通貨」であることを知っている人は少なくないと思うが、実際に誰が作り出して、どういう仕組みで管理されているのかを知っている人はまだ多くないだろう。 本書は、新しい通貨としてのビットコインの可能性と役割、課題として残る点などが指摘されており、ビットコインと一国のマクロ経済政策、特に金融政策との関係を説明している。 ビットコインは、マイナーと呼ばれる人たちによって作り出されており、ビットコイン自体の価値が変動するため、投資の対象ともなっているようだ。仮想空間の技術的な部分や、どうやって上限が決まるのかなど、専門的で難しい。 平易な言葉で書かれているとはいえ、経済学の素養がない人には、本書はマニアックすぎると思われる。筆者の議論はきわめて論理的であり、「すごいな~」と思いながら読んだ。

Posted byブクログ