オーブランの少女 の商品レビュー
少女は、秘密を抱いて微笑む。 表題作だけでなく、どの作品も、何かしらの偽りや秘密を持った少女が登場する。明かされた真実は残酷だったり、やるせなかったり、切なかったり。後味は、それほど悪くない。さっぱりした文章だと思う。特に舞台が外国のものは、翻訳小説のように感じた。 「オーブ...
少女は、秘密を抱いて微笑む。 表題作だけでなく、どの作品も、何かしらの偽りや秘密を持った少女が登場する。明かされた真実は残酷だったり、やるせなかったり、切なかったり。後味は、それほど悪くない。さっぱりした文章だと思う。特に舞台が外国のものは、翻訳小説のように感じた。 「オーブランの少女」管理人の姉妹、老女の死体、それらの正体は誰なのか? 重要なのは、真相としてここで述べられている手記も、語り手の脚色を含むということ。閉ざされた庭といえば、「秘密の花園」だが、もっと怪しげである。 「片思い」これだけは舞台が日本、おそらく少し前の。女学校の生徒たちの友情と秘密。吉屋信子のような世界。女子校、女子の世界、女子の友情(優しいver.)、というものを楽しみながら読めた。
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傑作『戦場のコックたち』の著者である深緑さんの処女作となる短編集です。作品の舞台は架空の国家、19世紀のイギリス、現代の日本など様々ですが、いずれの作品も少女が主人公もしくは物語の鍵を握る役割として登場するところが共通しています。 表題作「オーブランの少女」をはじめ、海外の翻訳小...
傑作『戦場のコックたち』の著者である深緑さんの処女作となる短編集です。作品の舞台は架空の国家、19世紀のイギリス、現代の日本など様々ですが、いずれの作品も少女が主人公もしくは物語の鍵を握る役割として登場するところが共通しています。 表題作「オーブランの少女」をはじめ、海外の翻訳小説を読んでいるような独特の雰囲気と舞台設定の妙が印象に残りました。作者の筆力によるところが大きいと思うのですが、海外を舞台にした作品でありがちな「つっかかる」ところがほとんどなかったので、読み心地は非常に良かったです。 難点をいえばミステリとしてはちょっと弱いところがあったことと、「大雨とトマト」は設定が現代の日本ということで本作品集の中ではちょっと浮いた感じがしました(展開自体は割と好きではあるのですが)。とはいえ本作はデビュー作。『コックたち』を経て、次回作でいったいどこまで飛躍してくれるのか非常に楽しみであります。
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ファンになってしまった……『氷の皇国』は手がかりの配置や事件後の途切れることのない緊張感、意外な人物の推理によるクライマックスの盛り上げなど1番好み。ケーキリア皇女がな、本当に良くてな……。
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美しき庭園に隠されたもうひとつの庭の物語、醜い姉と美貌の妹を巡るヴィクトリア朝ロンドンの犯罪譚、寂れた食堂の亭主を翻弄する過去の思い出…。 異なる場所、異なる時代を舞台に描く、少女たちをモチーフとしたミステリ短編集。 表題作の「オーブランの少女」に、まず驚かされました。 最初に色とりどりの花が咲く美しい庭園が活写され、その後不穏な殺人劇が繰り広げられるのですが、その対比が鮮烈な印象を残してくれるのです。 情景が目に浮かんでくるような物語世界の構築力・リーダビリティは新人離れしていて、瞠目しました。 割と好きなのは「片想い」。 これは日本の戦前の女学校が舞台になっていて、いわゆる「エス」が出てくるのでわたし好みでした~。 制限の多い時代の女性の細やかな心の動きが活写されていて、頬がゆるみました。 前向きなラストの読後感が良かったです。 どの短編にも現れる、強靭さと脆さが危ういバランスで同居している、そんな季節を過ごしている「少女」たち。 平気で残酷なことをする同じ心で、愛するものに惜しみない愛情を与えることのできる彼女たちは、いつか自身が変容し、大人になった時に初めて通り過ぎた季節を思い返すのでしょう。 彼女たちの息づかいを間近で聞いているかのように、もどかしさや切なさが伝わってきて、素敵な緊張感を味わうことができました。
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「オーブランの少女」ナチスドイツ。 「仮面」霧深きロンドン。 「大雨とトマト」現代日本。 「片想い」エスの文化の日本。 「氷の皇国」架空の北欧の王国。 舞台も文体もフレイバーも全然異なる、幅の広い短編集。 表題作の陰惨さ、「片想い」のゆりゆりしさ、「氷の皇国」の魔性。 豊潤な翻...
「オーブランの少女」ナチスドイツ。 「仮面」霧深きロンドン。 「大雨とトマト」現代日本。 「片想い」エスの文化の日本。 「氷の皇国」架空の北欧の王国。 舞台も文体もフレイバーも全然異なる、幅の広い短編集。 表題作の陰惨さ、「片想い」のゆりゆりしさ、「氷の皇国」の魔性。 豊潤な翻訳小説のよう。まさに。
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強か。少女といえども女性ということなのだろうか。ほんのり怖く、逞しく生き抜く少女たちの物語。 あらすじ(背表紙より) 美しい庭園オーブランの管理人姉妹が相次いで死んだ。姉は謎の老婆に殺され、妹は首を吊ってその後を追った。妹の遺した日記に綴られていたのは、オーブランが秘める恐るべき...
強か。少女といえども女性ということなのだろうか。ほんのり怖く、逞しく生き抜く少女たちの物語。 あらすじ(背表紙より) 美しい庭園オーブランの管理人姉妹が相次いで死んだ。姉は謎の老婆に殺され、妹は首を吊ってその後を追った。妹の遺した日記に綴られていたのは、オーブランが秘める恐るべき過去だった―楽園崩壊にまつわる驚愕の真相を描いた第七回ミステリーズ!新人賞佳作入選作ほか、異なる時代、異なる場所を舞台に生きる少女を巡る五つの謎を収めた、全読書人を驚嘆させるデビュー短編集。
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5編の作品を収録した短編集。 各短編に共通しているキーワードは”少女” 元気な少女、儚げな少女、したたかな少女、と単に少女といっても、色々なイメージが浮かんでくるのですが、この短編に出てくる少女たちは、そうしたいずれのイメージのどれかには当てはまる、そんな気がします。 ...
5編の作品を収録した短編集。 各短編に共通しているキーワードは”少女” 元気な少女、儚げな少女、したたかな少女、と単に少女といっても、色々なイメージが浮かんでくるのですが、この短編に出てくる少女たちは、そうしたいずれのイメージのどれかには当てはまる、そんな気がします。 表題作の「オーブランの少女」は儚げで美しい、しかし残酷な短編。 老婦人の姉妹の殺人事件。その真相は二人の子ども時代にある、という話です。 箱庭のような美しい土地”オーブラン”で共同生活を過ごす少女たち。安心、安全な生活を過ごしながらも、彼女たちを監督する先生たちの言動や、集められた少女たちの境遇など、その生活はどこか不穏で、危うげな雰囲気が漂っています。そうした美しさと危うさのバランスが絶妙! そして、その危うさの真実が明らかになる後半も、思わぬ展開でビックリ! ミステリですが、単にミステリの枠に当てはまらない不思議な短編でした。 もう一つ印象的だった短編は、最後に収録されている「氷の皇国」 舞台となるのは、皇帝の独裁によって支配される古代の王国。そこで皇太子殺害の疑いをかけられ、死刑に処せられようとする少女が主人公の短編です。 それまでの短編が仕掛けや構成で魅せるタイプのミステリだったのですが、そこから一転してのロジックを使った本格ミステリが展開されます。 舞台設定も珍しく、また主人公たちが死刑から救われるのか、というハラハラ感も加わり、非常に楽しかった短編です。 各短編本当にバラエティー豊か! 少し先が読めるものもあったものの、手を変え品を変え、様々なタイプのミステリを仕掛けてくる、著者の深緑さんの筆力はかなりのものだと思います。 そして、それぞれの短編に共通する一種の残酷さや、したたかさも物語に、いい刺激を加えてくれているように思います。 デビュー二作目の『戦場のコックたち』でものすごく話題になった深緑さんのデビュー作だけあって、その実力の片鱗を感じさせられる短編集でした。 第7回ミステリーズ!新人賞佳作「オーブランの少女」
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舞台となる国、時代は様々ですが、どれも見事な筆致で描かれています。キャラクタの設定も良くできています。少しブラックなところがあるストーリーも魅力的です。
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先日読んだ「戦場のコックたち」がなかなかに面白かったので作者のデビュー作も読んでみました。 で・・・まあなんというか「創元」っぽい感じの話だな、と。割と軽めの短編集なんですが「少女」をモチーフにというテーマがあるようで。 それなりに面白く読みましたが、女性作家に多い「なんとなくイヤミスっぽい」感じが多かったように思いました。「少女」で「創元」だもんなあ。まあそうなるかなあ。 とりあえずタイトル作の「オーブランの少女」についての感想なんですが・・・まあデビュー作だから荒削りなんでしょうけどもちょっと無理やり感が。たとえば、実はユダヤ人狩りをのがれさせるために少女たちを・・・ってわざわざ重篤な病魔に侵されてる少女を無理して隔離しておく必要があるのだろうか?家族の心情として。ユダヤ人狩りをのがれても病気で普通に命を落とす可能性も相当高そうな。だったら生き残ることができる可能性の高い健常な姉妹を名前を偽って送り込んだほうがいいんじゃないのかな?そもそもなんで少女だけで少年は入れないのか?とか。。。書いてはあったけど自分が読み逃したのかな。 まあ細かいこと気にしないでこの何とも言えない雰囲気を楽しめってことなのかもしれませんけどね。
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表題作の『オーブランの少女』の他、『仮面』、『大雨とトマト』、『片想い』、『氷の皇国』が収められています。 どれも、とても丁寧なミステリなのですが、それ以外に、一貫して「少女」がテーマになっているのも、読んでいてとても面白いです。 少し、夢野久作の『少女地獄』のような雰囲気も。 国も時代も違う、5作品のどれもが、情景がするすると浮かんでくるのは、本当に凄い。 『オーブランの少女』は、シャーリィ・ジャクスン好きの人なら、きっと大好きな作品。
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