ミナトホテルの裏庭には の商品レビュー
祖父の友人・陽子が経営していて今は陽子の息子・湊が引き継いでいる通称ミナトホテル。看板を出していないのは訳アリのお客様を泊めるため。 そのミナトホテルに祖父からあることを頼まれてやってきた芯(しん)は、足を骨折した湊に飼い猫捜しとフロント業務の手伝いまで頼まれ、会社勤めと合わせ忙...
祖父の友人・陽子が経営していて今は陽子の息子・湊が引き継いでいる通称ミナトホテル。看板を出していないのは訳アリのお客様を泊めるため。 そのミナトホテルに祖父からあることを頼まれてやってきた芯(しん)は、足を骨折した湊に飼い猫捜しとフロント業務の手伝いまで頼まれ、会社勤めと合わせ忙しい日々を過ごすことになる。 芯がミナトホテルと関わるいきさつや、芯の祖父と陽子との関わり、湊と陽子との関係など結構複雑な上、芯や同僚・花岡の過去の恋愛がなかなかキツかったり、芯の上司が面倒な奴だったり、芯は心の中では結構キツいことを言っているのだが表面上は静かだったり、ミナトホテルの客で湊が想いを寄せる桐子がキツい状況にあったりと、なかなかシビアな話。 それなのに読んでいると不思議と穏やかな空気になってきて、時にクスッとすることもあって楽しい。 だが一方で湊の『他人のつらさの度合いを他人が決めつけることこそおかしい、何の権利があって他人のつらさを判定しているのだ』とか、祖父の『気に食わないことがあるからと言っていちいち辞表を出しとったら、世界中どこにもお前さんの居場所はなくなるよ。しかし死ぬほど辛い場所で青筋立てて頑張る必要もない。がんばりどころと、そうでないところを間違えてはいけないよ』など、ドキッとする言葉も出てくる。 亡くなった陽子もまたなかなかキツい人生だったようで、それだけに彼女を支える芯の祖父はじめ仲間たちが始めた我儘互助会が楽しげで良い。 そんなシリアスとユーモアと優しさと切なさとが混じり合い物語が進んでいく。 芯の良くも悪くも『冷淡』だった部分が、登場人物たちの苦しさや切なさが少しずつ溶け出して柔らかくなっていく感じ。傷付いた人たちが傷を舐め合うのではなく共に前に進んでいく感じが良い。 『誰にでも必要だと思う。家でも、職場でも学校でも、友だちのところでもない、逃げ場。(中略)疲れたら休めばいいと思う』 陽子が行き着いたミナトホテルの存在意義を湊はきちんと受け継いでいた。裏庭での陽子の一周忌はほのぼのしていて良い。こんな一周忌、素敵。
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働くのは、食うためだ。食うのは、生きるためだ。生きるための仕事で、死ぬな。 誰もが何かを抱えている。何かを理解できなくても、何かあることを想像できるひとでありたい。 我儘互助会、楽しそう。
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サラリーマンの芯は、祖父に頼まれて祖父の学生時代の友人の一周忌のために、その友人のミナトホテルの裏庭の鍵を探してほしいと頼まれる。祖父とその友人は男女4人で互助会と称してよく会っていたのだ。そしてミナトホテルの陽子さんは、葬式は裏庭でやってほしいと言っていたのだ。ミナトホテルの息...
サラリーマンの芯は、祖父に頼まれて祖父の学生時代の友人の一周忌のために、その友人のミナトホテルの裏庭の鍵を探してほしいと頼まれる。祖父とその友人は男女4人で互助会と称してよく会っていたのだ。そしてミナトホテルの陽子さんは、葬式は裏庭でやってほしいと言っていたのだ。ミナトホテルの息子・篤彦とも知り合いなのだが、鍵探しに行った日に篤彦が足を折ってしまい、ホテルの受け付けも手伝うことになる。食事もでない小さなミナトホテルに泊まりにくるのは、ちょっと訳ありの人たちだった。 なんだか不思議な設定で始まり、もっとてんやわんやな話なのかと思っていたら、人を愛すること、思いやることを真摯に描いた話だった。じんわり良かった。
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寺地さん3冊目♪可愛い表紙(*^^*)なのに話は今回もしんどい…(--;)でも、そんな人達が集まるミナトホテルは温かい(^^)b最後の「手の中にある」でいろいろな疑問が解けるのも嬉しい♪互助会楽しそうだな~(^^)
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読んだ後、ものすごく温かい気持ちになる本だった。 図書館で見かけて、何となく面白そうな本だな、と思って借りてみたけど、読んでよかった。
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まず、カバーが素敵! イラストと用紙の組合せに惚れました(*´-`) 祖父に頼まれ、亡くなった互助会メンバー陽子さんの鍵を探すなかで起こる幾つかの問題。 主人公で20代の芯くん、ミナトホテルを経営している30代の湊くん、その同級生で想いびとの桐子さん、息子の葵くん。 陽子さんは...
まず、カバーが素敵! イラストと用紙の組合せに惚れました(*´-`) 祖父に頼まれ、亡くなった互助会メンバー陽子さんの鍵を探すなかで起こる幾つかの問題。 主人公で20代の芯くん、ミナトホテルを経営している30代の湊くん、その同級生で想いびとの桐子さん、息子の葵くん。 陽子さんは明るく優しく賢い女性。 となれば、色恋エピソードが中心になりそうなところだが。 おおっぴらに話したくない過去、彼女との距離感はまちまちで。 芯くんが抱いていた印象とも異なる。 ヒトには色んな側面があるし、生きてたら色んなことに直面する。 褒めるでもけなすでもなく、淡々と語られるところがいい。 我儘を実現しあう互助会システム、いつか真似をさせていただきたい♪ とりいそぎ、猫成分を気兼ねなく補充できる安全な機会がほしいな。笑
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
この本についてのレビューをどう書いたらいいのか分からないというのが正直なところで、これはじいさんとばあさんの話なのか桐子さんと葵くんの話なのかはて全く分かっていないような気がするのだけど、とにかくこどもは愛しくてその存在に誰もが生かされているのかななどと。桜子さんと石田みたいに、こどもを愛する気持ちを失ったひとたちはもう死ぬだけなのかなと。親としては、自分はどうなってもいいけどこどもには幸せで元気でいてほしいと思うしこどものためなら命を投げ出せる、と思う一方で、自分がこの世からいなくなったら?こどもを世界で一番大事に想っている、幸せを心から願っている自分がいなくなったら、この子はとても悲しむのでは、ひとりにしてしまうのでは、と思うと、絶対に死ねないのである。でもとても高い確率で私はこどもより先に死ぬので、その時にはこどもが多少悲しんでも、その後のこどもの人生が豊かで、毎日を笑顔で過ごしてくれればそれでいい。んだよなあ。と、そんなことをまた思っては、心が苦しくなったりする。
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寺地はるなの作品を遡りながら読んでいる。本作もテーマは他の作品と通底するものがあるが、若干読みにくかった。登場人物の「湊」と「葵」で字が似ているので、読み間違えることがある。この似た字を使ったのは、わざとなのだろうか。また、桐子と葵、陽子と湊(篤彦)という二組の親子も、境遇は異な...
寺地はるなの作品を遡りながら読んでいる。本作もテーマは他の作品と通底するものがあるが、若干読みにくかった。登場人物の「湊」と「葵」で字が似ているので、読み間違えることがある。この似た字を使ったのは、わざとなのだろうか。また、桐子と葵、陽子と湊(篤彦)という二組の親子も、境遇は異なるものの、どことなく混同させられるところがある。 主人公の木山芯輔の祖父が中々渋い。
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紹介されていて、ちょっと読んでみた 最後の章は、泣いた 電車で読んでて、何度も手を止めた かし子の気持ちや境遇がよくわかる 小説だけど、共感もするし、応援もする それは自身へ向けての気持ちもあるのだろうな
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じいちゃんの名言と花岡さんの切るタンカがよかったな。 終盤は、竹原ピストルのトムジョード という曲の歌詞を思い出しながら読んだ。 『生まれてきて良かった。とまでは思えないけど、生きてきて良かったとは思っているよ。 だって、あなたと出会えたから。とまでは思えないけど、あなたが生ま...
じいちゃんの名言と花岡さんの切るタンカがよかったな。 終盤は、竹原ピストルのトムジョード という曲の歌詞を思い出しながら読んだ。 『生まれてきて良かった。とまでは思えないけど、生きてきて良かったとは思っているよ。 だって、あなたと出会えたから。とまでは思えないけど、あなたが生まれていてくれて良かったとは思っているよ。』
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