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芸術と科学のあいだ の商品レビュー

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32件のお客様レビュー

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2016/03/19

分子生物学者にして、ベストセラー『生物と無生物のあいだ』等の多数の科学エッセイの書き手、更に芸術への造詣も深くフェルメールに関する著書も持つ福岡伸一氏が、日経新聞の日曜版に連載(2014年2月~2015年6月)した72のコラムをまとめたもの。 本書で福岡ハカセは、絵画、建築物、イ...

分子生物学者にして、ベストセラー『生物と無生物のあいだ』等の多数の科学エッセイの書き手、更に芸術への造詣も深くフェルメールに関する著書も持つ福岡伸一氏が、日経新聞の日曜版に連載(2014年2月~2015年6月)した72のコラムをまとめたもの。 本書で福岡ハカセは、絵画、建築物、インテリア、歴史的な発掘品などの “芸術”(昆虫や動植物の姿のようなものも含まれているが)を取り上げ、それらと“科学”のあいだに見出した不思議な共通性・関係性について、徒然に語っている。 日系人ミノル・ヤマサキによる、尖がった高層ビルだらけのマンハッタンの突端に全く同じ形の二つの無機質な直方体を並べた、今はなき「世界貿易センタービル」ほか、フランク・ロイド・ライト、イサム・ノグチ、中世フランドルのタペストリー「ユニコーン狩り」、ロゼッタストーン、レオナルド・ダ・ビンチの手稿、金印「漢委奴國王」、レーウェンフックの顕微鏡、フェルメール、サルバドール・ダリ、ブリューゲル「バベルの塔」、アンモナイト、葛飾北斎「男波・女波」、丹下健三「国連大学」、ヴィレンドルフのヴィーナス、伊藤若冲、ランドルト環、カバのウィリアム等の古今東西の“芸術”が取り上げられている。 そして福岡ハカセは、現代では、文系と理系あるいは芸術と科学を分けることが当たり前のように考えられているが、今から3~4百年前はそれらを分離する発想などなく、フェルメールもガリレオもレーウェンフックもスピノザもニュートンもライプニッツも、世界の在り方・在り様を捉え、書き留めたいと望み、其々が其々の方法でそれを成し遂げたのであり、その根本にあるものは、現代でも通用する「この世界の繊細さとその均衡の妙に驚くこと、そしてそこにうつくしさを感じるセンスである」と語っている。 凝り固まった世界の捉え方を解きほぐし、“Sense of wonder”を刺激してくれる、福岡ハカセにして書き得るコラム集である。 (2015年12月了)

Posted byブクログ

2015/12/18
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※このレビューにはネタバレを含みます

ほぼ1:1のアスペクト比が良い。ただ白いだけの装丁が良い。表題が活字でなくデザインされたフォントで書かれているのが良い。ちゃんとした活字だと日本語の場合、意味が目に飛び込んできてしまうので、記号化されているとデザインのひとつとして見れるから良い。こういう飾っても絵になる本は意外と好きだなぁ~。トイレの常備本として決定! 隠(ちん)思黙考のお供に。 ということで、久しぶりに買って読んだ本。日経新聞の連載をまとめたもの。約1000文字のコラムが74話。それぞれの話にひとつは役立つ話、目からウロコ的な情報が含まれていて、グイグイと読み進んでしまった。これはサラっと1度の素通りで読み終わるのはもったいない。時々手にして興味のあるところを読み返し、1話ごとに添えられたARTな画像を眺めながら思索に耽りたくなる(のでトイレ常備本に・笑)。  ミケランジェロ、フランク・ロイド・ライト、ロゼッタストーンに漢倭奴国の金印、赤外線写真から近頃日本で流行りのエアリーフォトまで、取り上げるジャンルが実に広範。  特に、自身が大ファンだというフェルメールを扱ったパートは質、量ともに重厚だ。ただフェルメールを取り上げていても、その切り口や付随情報は多様で斬新、個々の話それぞれ独立して楽しめる(新聞のコラム故、そういう作りになっているとはいえ、見事だ)。  かと思えば、1章でMOMAに飾られたイサム・ノグチの「エナジー・ヴォイド」という中空の作品を見て、自分自身がヴォイド(≒空虚)であることを思い出すという理由は、終盤の免疫システムを語るところで明かされたりする。曰く、免疫システム上、自分自身と反応する、まさに自己とも言える細胞は、将来の外的との戦いには用を為さないとして生育の途中で淘汰され、残るのは非自己な細胞というパラドックスから来るというのだ。  著者自身が、見事に芸術と科学の間に存在しているんだなぁ。いや、芸術だけでなく、森羅万象、様々な事柄に対して絶妙のバランスで立ち位置を確保している。本書で紹介される”ボロノイ分割”という幾何学の概念のように。  著者は生物学者だそうな。動的平衡という方丈記の”ゆく川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず”な理論の著作も有名だとか。本書の中にも幾度となくその理論に基づく解説があるが、理屈っぽくなく明快に簡便適切に説明してくれているので感覚的にとても分かりやすい。  この”感覚”というのが大事で、突き詰めればArtもScienceも感覚、感性、ひらめきの産物なんだな、という気がする。つまり、その間には、実は境界線はないのかもしれない(そこにもヴォイドが?!)

Posted byブクログ