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天国でまた会おう の商品レビュー

3.7

27件のお客様レビュー

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2024/09/07

ルメートルの本5冊目。第一次世界大戦で顔に傷を負い別人として・・ という紹介文を読みおもしろそう、と思い読んでみた。 いわゆる殺人事件が起こるわけではないので「その女アレックス」のようなピンポイントの残虐な描写はない。しかし舞台は第一次世界大戦、塹壕での突撃と防御の戦いは顔の無...

ルメートルの本5冊目。第一次世界大戦で顔に傷を負い別人として・・ という紹介文を読みおもしろそう、と思い読んでみた。 いわゆる殺人事件が起こるわけではないので「その女アレックス」のようなピンポイントの残虐な描写はない。しかし舞台は第一次世界大戦、塹壕での突撃と防御の戦いは顔の無い大量の残虐殺人だ、と感じた。いや、やはり殺人も起こっているのだが。戦功をあげることが第一の上官、戦死者にはやさしいが、復員兵や負傷した復員兵には特に冷たい国民、それらがルメートル流に強烈に描き出されていた。 描かれるのは第一次世界大戦終結数日前の1918年11月2日から戦争後の1920年7月14日。エピローグで登場人物のそれ以後も少し描かれるが、この2年足らずの出来事がとてつもない大河小説のように感じる出来事のうねり。 終戦が近いという噂に、戦功をあげたいプラデル中尉は、ある仕掛をして壕の向こうにいるドイツ軍と戦闘をすることに成功する。斥候に出した2名が銃声とともに斃れ、若きアルベールとエドヴァールも突撃するが、アルベールはプラデル中尉の企みを見抜いたところをプラデル中尉と目が合い、壕に生き埋めになってしまう。そこに後からやってきたエドヴァールはアルベールの剣が土から出ているのに気づきアルベールを救い出すが、顔に爆弾の破片を受け顎が無くなってしまう。 責任を感じたアルベールはエドヴァールにつきっきりで看病するが、裕福な家に生まれたのにエドヴァールは帰りたくないという。そこで別な兵士の軍隊手帖を細工しエドヴァールを別人にしたて、パリに帰還後も一つ部屋で暮らす。痛み止めのモルヒネ中毒になっていくエドヴァールだが、政府が戦死者墓地を作るのに合わせある企みを企てる。 律儀だが貧しいアルベール、裕福な生まれだが仕事にかまける父に反発を覚えていた画才のある芸術家のエドヴァール、プラデル中尉、エドヴァールの姉、父、うだつは挙がらないがひとかけらの正義のあった政府の役人、これらが絶妙にからまり、最後の7月14日を迎える。 この14日の場面はとても象徴的で、映像映えするだろうと思ったら、2017年にフランスで映画化されていた。 これは『災厄の子供たち』三部作の1作目で、2作目の『炎の色』はエドヴァールの姉、3作目の『われらが痛みの鏡』は戦後アルベールたちの住んだ大家の娘が主人公ということで、こちらも読んでみたい。 2013発表 2015.10.15初版 図書館 (単行本と同時に文庫本上下が同時刊行)

Posted byブクログ

2023/06/07

これは面白い 人間の優しさ、憎さ、愚かさ、純粋さ、慈悲深さ、強さ、賢さ いろんな側面が描かれている それでいて終始ハラハラさせてくれる 戦争がベースにあるから死生観を考えさせられる エドゥアールの気持ちを思うたびに苦しくもなる それでも結末を知りたいと思わせてくれる物語だった

Posted byブクログ

2023/05/01

 第一次世界大戦で上巻の不条理な行動により重い後遺症を背負わされてしまった青年たちが、戦後の世界で苦労をしながら、這い上がるために様々な努力を行ってゆく物語。非常に評価された作品のようだが、私にはすこし読みづらくて、それほど評価される理由があまりよくわからなかった。

Posted byブクログ

2023/04/03

人生、世界に散りばめられている様々な出来事や、その中で生きている人々の全てを、悲観的になりそうな困難の数々も滑稽さを混えて作られた物語。未だ終わりの見えない紛争や差別。社会への挑戦状とも思える作者の思索が見える。暗くなるかと思われた終わりも爽快さすら感じる締め方に脱帽。

Posted byブクログ

2023/04/05

第一次大戦終結間近、最前線で戦っていた元銀行員のアルベールは、上官プラデルの悪略に巻き込まれ、爆弾の粉塵で生き埋めにされてしまう。アルベールの受難に気がついたエドゥアールは、彼をどうにか救い出すが、その瞬間、砲弾の破片により顔の下半分を吹き飛ばされる。 戦後、共同生活を始める2人...

第一次大戦終結間近、最前線で戦っていた元銀行員のアルベールは、上官プラデルの悪略に巻き込まれ、爆弾の粉塵で生き埋めにされてしまう。アルベールの受難に気がついたエドゥアールは、彼をどうにか救い出すが、その瞬間、砲弾の破片により顔の下半分を吹き飛ばされる。 戦後、共同生活を始める2人は、働き口もなく、苦しい生活を余儀なくされる。そして、戦没者のモニュメント建設に絡んだ大規模な詐欺を計画し始める…。 主人公の2人は強い人間ではない。アルベールは、どちらかというと愚鈍で、気の小さい男である。機知に富んだ若者だったエドゥアールもまた、部屋に籠り、薬に溺れる生活を送る。死を偽装して、実家との関係は断ってしまう。顔の半分を失い、口がきけない彼の内面が語られることはほとんどない。2人は互いに依存しつつ、心を通わせることができないでいるのだ。 折り重なる関係性が物語に深みを与える。エドゥアールの姉は、2人を過酷な運命へと誘ったプレデルと、そうとは知らずに結婚する。2人が詐欺を計画するモニュメント建設には、そのプラデルと、大富豪であるエドゥアールの父が関係している。そして最後に悲劇が訪れる。 形成外科手術を拒んだエドゥアールは、下宿先の女の子と一緒に作った仮面を被り、作っては替えを繰り返す。旅立ちにあたり、彼が作った仮面は負傷前の己の顔であった。 主人公が軍人ではなく市民であること、これが重要だと思う。近代戦争は、傭兵や職業軍人だけでなく、国民全員の参加を求める。そこに過酷な運命が待ち受ける。ウクライナ戦争を思いつつ読了。

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2021/06/26

読みにくいと言うほどではありませんが、話の展開がおそくて、結構手こずります シリアスな話ならば、なかなかキツイ内容です、だからこそのコメディ仕立てなのかもしれません 男女関係の描写は、おフランスの匂いがしました 映画化されていますが、かなりラストが違っていて、映画の方が良い...

読みにくいと言うほどではありませんが、話の展開がおそくて、結構手こずります シリアスな話ならば、なかなかキツイ内容です、だからこそのコメディ仕立てなのかもしれません 男女関係の描写は、おフランスの匂いがしました 映画化されていますが、かなりラストが違っていて、映画の方が良い印象を持ちました

Posted byブクログ

2021/02/22

原題もこうなの? どうにももやもやします 百年も前の話なのに ちっとも時代を感じさせない 思いっきり悪いやつ もどかしいほど下手な彼 なんて話なんでしょ!!

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2019/09/08

強大な父親がひとりだけでその息子の座に二人の男が入れ違いに参加する。ひとりは実の息子であるが、父親は彼の芸術家気質と同性愛傾向を受け入れられない。二人目は娘婿で、同様にこの男の粗野で貴族じみた鼻持ちならないところを彼は拒絶する。一人目の息子が顔を失い破滅していくのに対して、二人目...

強大な父親がひとりだけでその息子の座に二人の男が入れ違いに参加する。ひとりは実の息子であるが、父親は彼の芸術家気質と同性愛傾向を受け入れられない。二人目は娘婿で、同様にこの男の粗野で貴族じみた鼻持ちならないところを彼は拒絶する。一人目の息子が顔を失い破滅していくのに対して、二人目の息子は「ハンサムだから」という理由で一時的な成功の鍵を掴むという対比がなされている。(考えてみれば本作には容姿の描写が満ちている) 顔を失った男は父親なるもの、つまり国家や愛国心やそれらが抱かせた漠然とした物語に復讐をしかけるわけだが、それが彼の父親と彼の不幸の直接的原因となった彼の義兄とのつながりを取り持つことになるというのも皮肉が効いている。義兄であり本作の悪役といったところを演じる男はこれもまた家の名や屋敷に固執しており、家父長制にべったりといった価値観である。彼にとって父親ははっきりと倒すべき存在でしかなく、だからこそ途中までは目もくらむような成功を収めるのだしアルベールのような父をあらかじめ失った男性やエドゥアールのような父からの承認にいまだ飢えている男性とことさら敵対するようにつくられているのだ。 それぞれがそれぞれの物語にとらわれていて、結局対話が成立していないという点においてこの作品は一貫しているようにおもう。声帯を失ったエドゥアールはもとより、絶えず怯えて口下手なアルベールは己のウソから誰ともマトモに会話することができない。強固な絆で結ばれた二人だがしかしお互いはそれぞれに抱いているわだかまりのようなものも確実に存在している。義兄はお家復興というひそかな野望をひとり胸にいだき続けているし、姉はまだ見ぬ赤ん坊と声にならぬ言葉を交わしている。父親の「ひきこもり」ぶりも顕著で、息子を喪った悲しみを誰にも告白することなく金で記念碑を買うことで日常を補完しようとしている。息子との日付も思い出せないような在りし日の思い出に耽溺する様もそうだが、そうとは知らず息子の描いた記念碑のスケッチとだけ会話する様も彼の都合の良い内向さを表している。未完成のまま終わったスケッチの題名「感謝」を息子の最期の言葉と解釈するところはこの殻の分厚さを示しており、それぞれが自分に心地よい物語にこもって出てこようとしない人々のグロテスクさがでているといえるのではないか。

Posted byブクログ

2019/01/13

「その女アレックス」辺りから読み続けているピエール・ルメートルの第1時世界大戦での傷病兵とその周囲の人達の物語。 バラバラな関係性になっていた人達が絡み合ってるストーリーの終盤は、やはり引き込まれる。 初めてピエール・ルメートルを読む人は、途中で放り投げ出したくなるかもしれないけ...

「その女アレックス」辺りから読み続けているピエール・ルメートルの第1時世界大戦での傷病兵とその周囲の人達の物語。 バラバラな関係性になっていた人達が絡み合ってるストーリーの終盤は、やはり引き込まれる。 初めてピエール・ルメートルを読む人は、途中で放り投げ出したくなるかもしれないけど、我慢して読み進めてほしい。 エドゥアールの描写がなんかすごく印象的で、映像化してほしい。

Posted byブクログ

2018/06/25

戦争で顔の半分を失ったエドゥアールそして彼に命を救われ国を揺るがす詐欺事件のかたぼうを担がされることになるアルベール。ミステリではないが最後までハラハラさせられ、読了感ハンパない!エドゥアールは天国でアルベールを待っているのだろうか?

Posted byブクログ