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地図と領土 の商品レビュー

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22件のお客様レビュー

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2024/02/09

時々読み返したくなりそう。ウエルベックの好きなところてんこ盛りな作品で、設定とあらすじから判断した予想通りウエルベックの私的ベストだった。「素粒子」のインパクトは未だに強烈に残ってるが、これは強烈というより主人公ジェドさながらに穏やかな作品だった。芸術に対する客観的な解釈を芸術家...

時々読み返したくなりそう。ウエルベックの好きなところてんこ盛りな作品で、設定とあらすじから判断した予想通りウエルベックの私的ベストだった。「素粒子」のインパクトは未だに強烈に残ってるが、これは強烈というより主人公ジェドさながらに穏やかな作品だった。芸術に対する客観的な解釈を芸術家の孤独な半生と共に描き出すドラマ展開がいい。じんわりくる。芸術性と合理性とか芸術と金(資本主義)とかも興味深い。芸術作品を文章で表現する面白さもあった。特にジェドの遺作とか。どんな感じなのかなと想像して楽しい。 ウエルベック3冊読んで、どれも前半はじっくりと読まされ後半へ行くに連れ読む手を止められなくなるくらい吸引力が増していく。実在の人物を出してフィクションと繋げながら時代毎の空気や社会を語る面白さは実在部分の背景知識があればこそなんだけど、全くわからないなりにも面白いから凄い。装飾レベルなときもあるが、核心部分は引用の場合も含め文章にされてるしフィクションのキャラクターが動いて語ってくれるからかな。 知らない土地の話でも丁寧に描写する。固有名詞をバンバン出しながら丁寧に描写する文体も、見知った場所でありながらキャラクターの目を通した世界は読者にとって初めての新鮮なものであろうみたいな姿勢なのだろうか。 ウエルベックは「素粒子」→「ある島の可能性」→「地図と領土」と読んできた。あとは「セロトニン」に興味が湧く。他は苦手なセクシャル描写が多そうだったりあまり惹かれない題材だったりで今の所読む気はない。

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2023/10/17

ウェルベックはスキャンダラスなイメージだけが先行していて買わず嫌いだったけど、名声に負けない傑作!読んで良かった。

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2023/08/23

「素粒子」に比べて政治的主張の色彩が薄い点で、より純粋かつ大衆に受け入れやすい小説。現代の商業的芸術に異議を唱えるべく、作家自ら死体となって現れるあたりは衝撃的でもある一方、心から美術を愛する人たちにとってはある種の救いになる作品でもあると思いました。

Posted byブクログ

2023/04/27

22.9.14〜29 ウエルベックの作品を読むと、毎回中盤でほだされるのはどうしてだろう。主人公が語る建前の中からその奥にある感情を読み取れるようになるからなのかな。特に、この作品だと父との会話でうおーと感動して、そのままぐいぐいと読んだ。書き出しからある種のこっち側への宣言み...

22.9.14〜29 ウエルベックの作品を読むと、毎回中盤でほだされるのはどうしてだろう。主人公が語る建前の中からその奥にある感情を読み取れるようになるからなのかな。特に、この作品だと父との会話でうおーと感動して、そのままぐいぐいと読んだ。書き出しからある種のこっち側への宣言みたいに見て取れる/作家ウエルベック自身がこちらに見せかけている言葉たちも好き。カラックスのポーラXみたいだと思った。ウエルベックのなかだと一番好きかも。

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2022/10/29

①文体★★★☆☆ ②読後余韻★★★★★  この小説の主人公は現代アーティストです。この主人公が物語のなかで作り出す芸術作品の表現描写がすばらしく、とても感銘を受けました。この作品群は視覚を主にしたものがほとんどといっていいのですが、文章でこれほど表現されているものを私は読んだこ...

①文体★★★☆☆ ②読後余韻★★★★★  この小説の主人公は現代アーティストです。この主人公が物語のなかで作り出す芸術作品の表現描写がすばらしく、とても感銘を受けました。この作品群は視覚を主にしたものがほとんどといっていいのですが、文章でこれほど表現されているものを私は読んだことがありません。実際この作品を見てみたいと思いました。  そしてそのお父さんが建築家、というか大手の設計会社の経営者というほうが近い人物なのですが、そのお父さんが彼の創作活動のひとつのキーパーソンにもなります。主人公の彼のお父さんとの会話からは、若い頃はデザイナーであるウィリアム・モリスにあこがれたはなしであったり、反対に近代建築の巨匠であるル・コルビュジェの考え方を批判などが触れられています。でもそれは自分が成し遂げれなかったことに対する嫉妬そいうか羨望も思わせます。建築好きとしては、この場面は話のなかで印象的なところのひとつでもあり、登場人物を通して繰り広げられる作者の考察や偏愛が多くをしめ、それはこの小説の中で様々な分野の視点で語られ、それがこの小説の魅力にもなっています。それらがストーリーの中でうまく整理されて語られているところに、この作家の力量の大きさを感じます。

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2020/05/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ウエルベック2冊目は、芸術家(美術家)を主人公としたこの『地図と領土』。 最初写真家として個展デビューし名声を博した後しばらく沈黙し、今度は古典的な油彩に戻って有名な職業家の肖像を手がける。すると2度目の個展で大ブレークする。 やはり、芸術家小説というものは、このように成功談がいい。努力をしても最初から最後まで誰にも認められずに淋しく死んでいく芸術家のストーリーは、リアル(世界中で大多数)ではあるが、話としては退屈だし悲しすぎるのだろう。 肖像画もまた止めて、主人公は晩年は動画作品を作るようになる。 急激に変転する技法を通して、芸術家の世界観が徐々に成長していくことは読み取れるから、全編が芸術家物語として、成功していると言って良いだろう。 この美術家ジェドが出会い、徐々に親しくなっていくのが、何と実名で登場する作家ミシェル・ウエルベック本人だ。そして、この小説の最大のスキャンダルは、そのウエルベックが何者かによって突如惨殺されるという小説内-出来事である。 しかも、その殺害現場が凄まじく、スプラッタ・ホラー顔負けのおどろおどろしさなのである。 芸術家小説としてのプロットはいきなりここで切断されるわけで、その効果は凄まじい。 なかなか興味深い構成であり、最後は再び芸術家ジェドの視点に戻って長いエピローグに至るから、突然襲撃してきたノイズがやがて静まって、人生の続きが再び再開されたかのような印象がある。 とにかく面白い小説で、やはりウエルベックはかなり実力の高い小説家なのだろう。 次は彼の作品から何を読むか、楽しみになってきている。

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2020/05/04

☆3.5。 どんな話なのだろうと思ってたらアートの話だった。 文庫本あとがきに「服従」について記載があった。 つぎは「服従」を読もう。 映画化するとして勝手にキャスティング考えてみた。考え中 ジェド…マチューアマルリック オルガ...イリーナシェイク ウエルベック 父 ギャラリ...

☆3.5。 どんな話なのだろうと思ってたらアートの話だった。 文庫本あとがきに「服従」について記載があった。 つぎは「服従」を読もう。 映画化するとして勝手にキャスティング考えてみた。考え中 ジェド…マチューアマルリック オルガ...イリーナシェイク ウエルベック 父 ギャラリスト マリリン ジャスラン...ヴァンサンランドン エレーヌ クリスチャン...ラファエルペルソナ 単行本の表紙はフェルメールっだったけれど文庫のはそういうことだったのね。

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2020/05/04

著者本人が登場して惨殺されるという突拍子もない設定だが物語は破綻することなく粛々と進んでいく。ユーモアと批評を散りばめた文体がクセになる。現代におけるアートのあり方をテーマに選んだこの作品がフランスで非常に高い評価を得たのは、そもそもアートに対する関心や批評性が高いからとも言える...

著者本人が登場して惨殺されるという突拍子もない設定だが物語は破綻することなく粛々と進んでいく。ユーモアと批評を散りばめた文体がクセになる。現代におけるアートのあり方をテーマに選んだこの作品がフランスで非常に高い評価を得たのは、そもそもアートに対する関心や批評性が高いからとも言えるだろう。肖像画を描く画家の心情は想像するしかないのだが、村上春樹による「騎士団長殺し」にも描かれていたように対象の姿からなにかを掘り起こすような内面的な闘争がそこにあるのだろうか。興味深い。

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2019/07/27

工業製品をカメラで撮り、職業人を油絵で描き、植物を動画で撮るという芸術家の変遷と国家の変遷を重ねて描くというのはやはり超人的な筆力でしかなされえない。『服従』で一種予言的な性格を強くした筆者だが本作品の「植物の勝利」もまたこの性格のあらわれといえるのでは無いだろうか。安直というか...

工業製品をカメラで撮り、職業人を油絵で描き、植物を動画で撮るという芸術家の変遷と国家の変遷を重ねて描くというのはやはり超人的な筆力でしかなされえない。『服従』で一種予言的な性格を強くした筆者だが本作品の「植物の勝利」もまたこの性格のあらわれといえるのでは無いだろうか。安直というか、なにも言っていないに等しいような気はするが、本作品では「終わってしまったフランス」を描くよりも「終わりつつあるフランス」を描くのが目的だったように思うのでこれは瑕疵とはいえないだろう。 挿入される生殖を放棄し安定したカップルのモチーフは『闘争領域の拡大』から続く主題を継承している。 ウエルベックの死因を作ったのは画家ということになるのだがここに働いている原理はマーケットの原理ではなく単なる異常者の心理である(小説家を殺してまで強奪された絵画は売りに出されることがない)。考えてみれば画家の父親も市場の原理に負けはしたが富を得て、それは息子も同様であり、本作品において資本主義は誰ひとりとして傷つけているわけではないのである。この細心の注意が本作品が単なる資本主義批判に堕することを防いでいる。たしかに画家はマーケットを主導する他のアーティストを描いた絵に失敗してしまうし、こうした状況に対する批判の目は作品を通して流れているが前面に出すことをあくまで防ぐ自制心がこの作品の軽妙さの一助となっているのではないだろうか。そんなことを言う権利は誰にもない、という自省の態度は憔悴しながら豚肉を食べることを再開した作家の姿にも表れており、どうして描くのだかはわからないがただ描いてしまう、ということを連発する画家の言動にも表れている。そこにあるのは大上段から人々を裁定する視線ではなく、ただ人の営みを観察し、記述するというアーティストの始原ともいえる態度なのである。

Posted byブクログ

2019/06/02

どこかの書評で見かけて読んでみた。個人的には、残念ながら的に入らず。 文学的な描写なのか、細かい説明が多くて話の筋が通ってないからか、どうも苦手な感じ。 現代のフランスが舞台、主人公はアーティストで、最初は写真で評価され、続いては絵画に挑戦する。写真展の名前がタイトルに。

Posted byブクログ