地図と領土 の商品レビュー
人は、自らの美学を体現する領土を立ち上げながら生きる。それは、家庭であったり、アート、小説であったり、思想であったり、建築物であったり。そして、納得如何に関わらず、領土はいつのまにか画定されていて、そのうちに死が訪れる。 美を追うことは、しばしば政治やマーケット、いわゆる「社...
人は、自らの美学を体現する領土を立ち上げながら生きる。それは、家庭であったり、アート、小説であったり、思想であったり、建築物であったり。そして、納得如何に関わらず、領土はいつのまにか画定されていて、そのうちに死が訪れる。 美を追うことは、しばしば政治やマーケット、いわゆる「社会」的な障壁によって阻まれる。領土がつねに道に面しているように、私たちは社会から逃げることはできない。 ただ、そこにいて、何もせず、不安に駆られながら、プロセスがひとりでに動き出すのを待つ。 また、人は、移動を繰り返しながら生きる。多くの土地に出向いて、多くの他人と出会い、そのたびに草が踏み分けられ、足跡が増え、道ができた。 地図は全てを説明する。地図には、いくつかの行き止まりがあり、いくつかの合流が描かれている。あるいは、領土の分割があり、統合がある。どうしようもない不安も、どうしようもない断絶も、全てが地図に描かれる。 地図は何度となく改訂され、私たちはそれを見ながら、再び移動を繰り返す。 死ぬとき、私たちは一人で自分の領土に戻らざるをえない。画定してしまった領土、完成された領土に戻って、何枚かの地図のバックナンバーを畳んで、死を待つほかない。ただ、その孤独は、美に長く忠実にいた人ほど、不可欠で豊かなものになると思う。そして実際、そのような人々にとって、死はもはや恐怖ではないのだ。
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世の中の片隅で働きながらお金をもらって生きていくうちに、10代くらいの頃の自分、無知ではあれ、今よりも希望にあふれていた頃の自分を懐かしく思うようになった。私自身の価値は、私自身の善意や決意にかかっていると信じていた頃の自分。ふと、あの頃の自分の期待に敵うような人生を生きていない...
世の中の片隅で働きながらお金をもらって生きていくうちに、10代くらいの頃の自分、無知ではあれ、今よりも希望にあふれていた頃の自分を懐かしく思うようになった。私自身の価値は、私自身の善意や決意にかかっていると信じていた頃の自分。ふと、あの頃の自分の期待に敵うような人生を生きていないという思いが胸をよぎり切なくなる時がある。 「世界を説明したい」というのは、いかにも小説家的な欲望のように思える。だからジェドと作家は気が合ったのかな。鏡写のようで、そうではないふたり。志を抱かなければ幻滅せずに生きていけるのかも知れないけれど、そんなの寂しすぎる。
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作者が作中に登場するにしては「重要とはいえ脇役」って珍しいような、コレやったら本人役やなくても良くね?とも思ったり。あと、何となく雰囲気が春樹っぽいような、春樹のそういうとこあまり好きやないような。いや、最近の春樹読んでへんけども。
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時々読み返したくなりそう。ウエルベックの好きなところてんこ盛りな作品で、設定とあらすじから判断した予想通りウエルベックの私的ベストだった。「素粒子」のインパクトは未だに強烈に残ってるが、これは強烈というより主人公ジェドさながらに穏やかな作品だった。芸術に対する客観的な解釈を芸術家...
時々読み返したくなりそう。ウエルベックの好きなところてんこ盛りな作品で、設定とあらすじから判断した予想通りウエルベックの私的ベストだった。「素粒子」のインパクトは未だに強烈に残ってるが、これは強烈というより主人公ジェドさながらに穏やかな作品だった。芸術に対する客観的な解釈を芸術家の孤独な半生と共に描き出すドラマ展開がいい。じんわりくる。芸術性と合理性とか芸術と金(資本主義)とかも興味深い。芸術作品を文章で表現する面白さもあった。特にジェドの遺作とか。どんな感じなのかなと想像して楽しい。 ウエルベック3冊読んで、どれも前半はじっくりと読まされ後半へ行くに連れ読む手を止められなくなるくらい吸引力が増していく。実在の人物を出してフィクションと繋げながら時代毎の空気や社会を語る面白さは実在部分の背景知識があればこそなんだけど、全くわからないなりにも面白いから凄い。装飾レベルなときもあるが、核心部分は引用の場合も含め文章にされてるしフィクションのキャラクターが動いて語ってくれるからかな。 知らない土地の話でも丁寧に描写する。固有名詞をバンバン出しながら丁寧に描写する文体も、見知った場所でありながらキャラクターの目を通した世界は読者にとって初めての新鮮なものであろうみたいな姿勢なのだろうか。 ウエルベックは「素粒子」→「ある島の可能性」→「地図と領土」と読んできた。あとは「セロトニン」に興味が湧く。他は苦手なセクシャル描写が多そうだったりあまり惹かれない題材だったりで今の所読む気はない。
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ウェルベックはスキャンダラスなイメージだけが先行していて買わず嫌いだったけど、名声に負けない傑作!読んで良かった。
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「素粒子」に比べて政治的主張の色彩が薄い点で、より純粋かつ大衆に受け入れやすい小説。現代の商業的芸術に異議を唱えるべく、作家自ら死体となって現れるあたりは衝撃的でもある一方、心から美術を愛する人たちにとってはある種の救いになる作品でもあると思いました。
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22.9.14〜29 ウエルベックの作品を読むと、毎回中盤でほだされるのはどうしてだろう。主人公が語る建前の中からその奥にある感情を読み取れるようになるからなのかな。特に、この作品だと父との会話でうおーと感動して、そのままぐいぐいと読んだ。書き出しからある種のこっち側への宣言み...
22.9.14〜29 ウエルベックの作品を読むと、毎回中盤でほだされるのはどうしてだろう。主人公が語る建前の中からその奥にある感情を読み取れるようになるからなのかな。特に、この作品だと父との会話でうおーと感動して、そのままぐいぐいと読んだ。書き出しからある種のこっち側への宣言みたいに見て取れる/作家ウエルベック自身がこちらに見せかけている言葉たちも好き。カラックスのポーラXみたいだと思った。ウエルベックのなかだと一番好きかも。
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①文体★★★☆☆ ②読後余韻★★★★★ この小説の主人公は現代アーティストです。この主人公が物語のなかで作り出す芸術作品の表現描写がすばらしく、とても感銘を受けました。この作品群は視覚を主にしたものがほとんどといっていいのですが、文章でこれほど表現されているものを私は読んだこ...
①文体★★★☆☆ ②読後余韻★★★★★ この小説の主人公は現代アーティストです。この主人公が物語のなかで作り出す芸術作品の表現描写がすばらしく、とても感銘を受けました。この作品群は視覚を主にしたものがほとんどといっていいのですが、文章でこれほど表現されているものを私は読んだことがありません。実際この作品を見てみたいと思いました。 そしてそのお父さんが建築家、というか大手の設計会社の経営者というほうが近い人物なのですが、そのお父さんが彼の創作活動のひとつのキーパーソンにもなります。主人公の彼のお父さんとの会話からは、若い頃はデザイナーであるウィリアム・モリスにあこがれたはなしであったり、反対に近代建築の巨匠であるル・コルビュジェの考え方を批判などが触れられています。でもそれは自分が成し遂げれなかったことに対する嫉妬そいうか羨望も思わせます。建築好きとしては、この場面は話のなかで印象的なところのひとつでもあり、登場人物を通して繰り広げられる作者の考察や偏愛が多くをしめ、それはこの小説の中で様々な分野の視点で語られ、それがこの小説の魅力にもなっています。それらがストーリーの中でうまく整理されて語られているところに、この作家の力量の大きさを感じます。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ウエルベック2冊目は、芸術家(美術家)を主人公としたこの『地図と領土』。 最初写真家として個展デビューし名声を博した後しばらく沈黙し、今度は古典的な油彩に戻って有名な職業家の肖像を手がける。すると2度目の個展で大ブレークする。 やはり、芸術家小説というものは、このように成功談がいい。努力をしても最初から最後まで誰にも認められずに淋しく死んでいく芸術家のストーリーは、リアル(世界中で大多数)ではあるが、話としては退屈だし悲しすぎるのだろう。 肖像画もまた止めて、主人公は晩年は動画作品を作るようになる。 急激に変転する技法を通して、芸術家の世界観が徐々に成長していくことは読み取れるから、全編が芸術家物語として、成功していると言って良いだろう。 この美術家ジェドが出会い、徐々に親しくなっていくのが、何と実名で登場する作家ミシェル・ウエルベック本人だ。そして、この小説の最大のスキャンダルは、そのウエルベックが何者かによって突如惨殺されるという小説内-出来事である。 しかも、その殺害現場が凄まじく、スプラッタ・ホラー顔負けのおどろおどろしさなのである。 芸術家小説としてのプロットはいきなりここで切断されるわけで、その効果は凄まじい。 なかなか興味深い構成であり、最後は再び芸術家ジェドの視点に戻って長いエピローグに至るから、突然襲撃してきたノイズがやがて静まって、人生の続きが再び再開されたかのような印象がある。 とにかく面白い小説で、やはりウエルベックはかなり実力の高い小説家なのだろう。 次は彼の作品から何を読むか、楽しみになってきている。
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☆3.5。 どんな話なのだろうと思ってたらアートの話だった。 文庫本あとがきに「服従」について記載があった。 つぎは「服従」を読もう。 映画化するとして勝手にキャスティング考えてみた。考え中 ジェド…マチューアマルリック オルガ...イリーナシェイク ウエルベック 父 ギャラリ...
☆3.5。 どんな話なのだろうと思ってたらアートの話だった。 文庫本あとがきに「服従」について記載があった。 つぎは「服従」を読もう。 映画化するとして勝手にキャスティング考えてみた。考え中 ジェド…マチューアマルリック オルガ...イリーナシェイク ウエルベック 父 ギャラリスト マリリン ジャスラン...ヴァンサンランドン エレーヌ クリスチャン...ラファエルペルソナ 単行本の表紙はフェルメールっだったけれど文庫のはそういうことだったのね。
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