地図と領土 の商品レビュー
資本主義社会の消費にまつわるポスト・モダニズムとその周辺。消費に関して、ウィリアム・モリスについて言及している箇所があり、消費のサイクルのその後にまで批評の射程があるのは鋭いなと思いました。 本文中で主人公の作品を解説している箇所については、芸術を言葉で語る空虚なのか、文章ゆえに...
資本主義社会の消費にまつわるポスト・モダニズムとその周辺。消費に関して、ウィリアム・モリスについて言及している箇所があり、消費のサイクルのその後にまで批評の射程があるのは鋭いなと思いました。 本文中で主人公の作品を解説している箇所については、芸術を言葉で語る空虚なのか、文章ゆえに作品として凄さが見えてこないため、高値で取引されたと言われてもそんな大したものじゃ無さそうだがと思いながら読むのですが、それにインスパイアされた系として具現化したのが文庫本の表紙の写真だそうです。これに関しては沈黙せざるを得えない。
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ウエルベックが2010年に発表した長編小説。本作でウエルベックはゴンクール賞を受賞している。 著者本人が作中に登場する小説は数多くあるが、猟奇殺人の被害者になっているインパクトはなかなか凄い。作中のウエルベックはやや奇矯な人物として描かれており、どちらかというと影が薄いタイプの主...
ウエルベックが2010年に発表した長編小説。本作でウエルベックはゴンクール賞を受賞している。 著者本人が作中に登場する小説は数多くあるが、猟奇殺人の被害者になっているインパクトはなかなか凄い。作中のウエルベックはやや奇矯な人物として描かれており、どちらかというと影が薄いタイプの主人公と対比している。 先頃、河出書房新社から文庫化された『プラットフォーム』の主人公との共通点でもあると思うのだが、本作の主人公も周囲の状況に流されやすいタイプで、自分の経済的な成功や、作品に対する評価、それに伴う名声……そういったものを何処か他人事のように眺めている気がする。特にこの『他人事感』は本作の方が強い。
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