まるで天使のような の商品レビュー
クィンの会話の皮肉を交えた切り返し方が面白かった。ミステリとしては当時は斬新だったのかも。ただ中盤、必要以上に説明が長かったように思った。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
昔書かれたとは思えない完成度。どんでん返しに次ぐどんでん返しで、細部もかなり詰められており、久しぶりに出会う精度の物語に唸った。 正直、ラストの衝撃のあとはじわじわと遡って、あの時こうだったの?それってこういうこと?と読者自身に推理させて物語を補完させようとする作用があった。 改めてそうして推論してみると、いろいろ力技に感じるところもあるけれど、現実の人間とはそういう辻褄の合わないものかも...と思わせる人物表現の力がある。 猛暑のカリフォルニアを、街全体が綿毛に包まれたようという表現や P.81 わざと音程を外して面白がるような女..という描写は冴えてるなあ。 こういう情景描写や人物描写の表現や比喩がいちいち面白くて印象に残る。 思いも意味よらない言葉で表現してくる人って魅力的だよねー。 カリフォルニアという、開放的そうな場所を選んでいながら、それを逆説的にとても窮屈に描いているアイディアにも目を見張った。裏テーマは、「自分の病んだ手足を切り落としながら、なぜ気分が悪いのかと思っている社会の心性に胸が悪くなった」という部分がよく物語っている。 新興宗教施設、凡庸で社会でのこれといった希望がない絶望... 新興宗教の描き方も通り一遍でないのがうまい。こういう施設が登場すると出オチになることや興味本位の野次馬のような牡蠣口になることも多い中、基本的には抑制されていて慎重ではあるが、そこで居場所を見つけた人の心も否定していない。ここでも、ピンクのスリッパという比喩が視覚的にも象徴的にも効いている。 言葉の表現同様、こういうシンボリズムも上手い作者。ウェーブの髪とか、小鳥とか..そして、人の人格への観察が鋭いがくどくど書かないのもいい。そこは細部にこだわりすぎず、物語全体の中での調和を優先しているというか。なんとなくオリーブ・キタリッジの叙述を思い出させる。両者とも語りや人物造形がすごく好きな作品。的確でシンプル、だがひと匙のユーモア。 そういえば、そういう人物造形のよさ...特に女性人物...で作者は女性かなと思った。逆に主人公・クィンは、なんというか...女性の描いた男という感じ。エゴが少ない、というのか。実際に、この作品の登場人物の中で最もどういう人間かわからないのがクィンな訳だけど、ラストなんか特にいきなり彼自身が裏切られて、その裏切りも一瞬の幕切れで、ここまでの主人公がそこへ来て一気に後傾化してジャンッ‼︎と終わる。 そして女をソフトに理解する。いいよね。これはアトキンソンの描いたJackson Brodie を思い出した。あちらは、物語の性質上ももっとヒロイックだけど.. パトリックが生きているのはなんとなく察しがついたけど、まさかの形.. パトリックとジョージの妹の関係とは? ジョージと妹の関係とは? パトリックはいつから記憶がないの? パトリックってどんな人だったの??
Posted by
賭博で無一文になり、知人の車に乗せてもらっていたが、途中で降ろされ近くの宗教施設に助けを求めたクイン。 そこで修道女から人探しを頼まれ…。 普通なら適当に探して、わからなければ終わりとなるはずが、妙に気になる。 それは、謎の死を遂げていたからなのか、何故だか誰も追求せずにいたせ...
賭博で無一文になり、知人の車に乗せてもらっていたが、途中で降ろされ近くの宗教施設に助けを求めたクイン。 そこで修道女から人探しを頼まれ…。 普通なら適当に探して、わからなければ終わりとなるはずが、妙に気になる。 それは、謎の死を遂げていたからなのか、何故だか誰も追求せずにいたせいか…。 気になる人が次々と…。 読んでいる方もどうなるのか気になって仕方がない。 宗教施設に取り込まれると複雑さが増すと感じるのは私だけなのかもしれないが…。 …でラストが強烈なのである。 大声で叫びたくなる。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
どんでん返しがすごい!と前評判があったので心して読んだ。犯人が分かってからは、確かに意外な犯人であったけれど、そこまで絶賛されるほどかなと思っていたのだが、ほんとの最後(ラスト3行)で見事などんでん返しを喰らった。全く予想しなかった展開かといえば嘘になるが、ラスト3行を読んだ直後は混乱して、どういうこと!?となった。しかし読み直してみると筋がきれいに通っていることに気づく。 ハードボイルド調だが、一見ドライなクインの、祝福の修道女への思慕や、集団に対して理解しようとする姿勢が好ましく、主人公に感情が感じられ、読んでいて苦ではなかった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
著者最高傑作!!ってなアオリがあって、借りてみたんです。 普通にサクサク読めるし、面白いけど、これが最高??って疑問に思いながら。 乱暴にくくると、人探しミステリーなんですが、見つからなくてなんか、もうよくね??ってな雰囲気になって、探偵役が容疑者っぽい女とイイ感じになってしまい、ある意味ハッピーエンドか??と思いきや、ですよ。 イヤ、最高傑作の名に恥じない作品でした。オーマイガッ!!ですよ。 このジャンルの代表作というか嚆矢となるような作品だったらしく、知らずに読んで幸運でした。
Posted by
誰のことなんだろう・・・ タイトルの人は ずい分昔の話なのに ちっともそれを感じない ギャンブラーの話だと思っていたから どんどん面白くなって 良かったわ~~
Posted by
ギャンブルですべてを失くし、ある経緯から山中で置き去りにされることになったクイン。近くの〈塔〉と呼ばれる新興宗教の施設に助けを求め、そこで人探しを頼まれる。口だけでいい加減な男のはずのクインが何故か読むにつれ人のいい男になっていく。人探しの結果は…依頼主はなぜ…塔の人々は…。読み...
ギャンブルですべてを失くし、ある経緯から山中で置き去りにされることになったクイン。近くの〈塔〉と呼ばれる新興宗教の施設に助けを求め、そこで人探しを頼まれる。口だけでいい加減な男のはずのクインが何故か読むにつれ人のいい男になっていく。人探しの結果は…依頼主はなぜ…塔の人々は…。読みやすくて一気に読めて、しっかり楽しんだ。著者の最高傑作と称される部分は、多くのミステリに接しているとわかりやすいかもしれないが、50年前に書かれたと思うと感慨深い。これから手に取る方はなるべく事前情報を入れずにどうぞ。
Posted by
訊かれたことに答えなかったわね、ミスター。わたしたちはなぜここにいるの 解説で我孫子武丸本人が書いているとおり、我孫子氏のある作品に強い影響を与えており、先にそちらを読んでいると特に終盤のサスペンスには既視感を覚えます。古典の宿命です。 主人公のへらず口は気が利いていて退屈し...
訊かれたことに答えなかったわね、ミスター。わたしたちはなぜここにいるの 解説で我孫子武丸本人が書いているとおり、我孫子氏のある作品に強い影響を与えており、先にそちらを読んでいると特に終盤のサスペンスには既視感を覚えます。古典の宿命です。 主人公のへらず口は気が利いていて退屈しませんが、女性キャラとのやり取りなどにやはり時代を感じます。もっと前に読みたかった作品です。
Posted by
携帯電話が登場する前の近代アメリカを舞台に、無一文になった主人公がカルト教団施設に訪れるところから、殺人事件の調査をする話。 中盤までは不誠実な主人公がいつ投げ出すのかな? と思ったいたんですが、中盤以降ヒューマンドラマの色が濃くなるとぐっと面白くなりました。 登場人物が多いので...
携帯電話が登場する前の近代アメリカを舞台に、無一文になった主人公がカルト教団施設に訪れるところから、殺人事件の調査をする話。 中盤までは不誠実な主人公がいつ投げ出すのかな? と思ったいたんですが、中盤以降ヒューマンドラマの色が濃くなるとぐっと面白くなりました。 登場人物が多いので読者の自分が事件を追いかけきれるか不安ではありましたが、何とか人物表を見返しながら完走。 ミステリーなので事件が主ですが、土埃のする描写が没入感を高めてくれる一作でした。
Posted by
マーガレット・ミラーは「ミランダ殺し」に続いて二冊目。 「半身」を探したが見つからなかったので、これを読んでみた。 予想に反して最初は随分淡々とした流れで、静かなミステリという印象だった。 暑い夏を避けて部屋に引きこもって読むのに何かぴったり来る感じがよかった。 最近読んだ特捜...
マーガレット・ミラーは「ミランダ殺し」に続いて二冊目。 「半身」を探したが見つからなかったので、これを読んでみた。 予想に反して最初は随分淡々とした流れで、静かなミステリという印象だった。 暑い夏を避けて部屋に引きこもって読むのに何かぴったり来る感じがよかった。 最近読んだ特捜部Qも これも新興宗教団体の話で、北欧もアメリカも同じように人は宗教に救いを求めている。平和であってもなくても心の波立ちを鎮めるには祈りと実践なのだろうか。 主人公は元私立探偵のジョー・クインという。ギャンブルで文無しになってヒッチハイクをして拾われ、迷い込んだ山の中の塔があり、孤立している宗教団体があった、中には30人に満たない人々が自給自足の生活をしている。一夜の宿と食事を求める。そこで元看護師の「救済の祝福の修道女」から120ドルでオゴーマンという男について調べるように頼まれる。 なぜ隔離された生活の中で、120ドルを隠し持っていたのか、なぜ男の安否が気になるのか、クインはこの謎を解いてみたいと思う。 150キロほど下りた小さな町でオゴーマンという男の足取りを調べ始める。皆が知り合いという変化のない生活を続けてきた人々は噂話に事欠かない。だが深く入り込んでみると、車の事故の後で姿を消したオゴーマンをまだ探し続ける妻、週刊誌を出している情報源のジョン。不動産会社社長のジョージ、横領を続けていて今は服役中のその妹、いわくありげな美人の共同経営者、過保護な母親と息子、登場人物の数は少ないが、それぞれ何かいわくありげで、そんな噂の中でも、オゴーマンはどこにも居ない、消えてしまっている。 そして修道女に犯人から手紙が来てオゴーマンが5年前に死んでいることが分かる。 さらに修道女が毒殺され、新入りの信者が塔の最上階から飛び降り自殺、凄惨な出来事から捜索の方向が見え始める。 そして、ついに最後の三行で明かされる真実が驚きと悲哀を残し、これこそマーガレット・ミラーらしく全ての話が繋がる。 手がかりを追ううちに、人々の裏の顔も見え、ふと立ち寄った町ではあるが、深いつながりも生まれクインの人生も変わっていく。 気楽なギャンブラーだった男が人々のふれあいとともに心境が変化していく様子や、宗教団体が崩壊する有様など、人の生き方が運命的であればあるほど、それを変えさせる出来事が、偶然に、不意に訪れることを素直に時間を追っていく方法で書いている。ありきたりでない話であるがを興味深く読んだ。 読みやすい新訳に出会えたのはラッキーだった。
Posted by