しんがり 山一證券最後の12人 の商品レビュー
1997年に自主廃業した山一証券において、廃業に至るまでの真相を解明した社員たちのお話。 バブル崩壊後の証券業界では、四大証券会社による総会屋への利益供与問題など、逮捕者が出るほどの不祥事が続いていた。山一證券では利益供与問題の他に、顧客の負債を自社の関連会社に付け替える「飛ば...
1997年に自主廃業した山一証券において、廃業に至るまでの真相を解明した社員たちのお話。 バブル崩壊後の証券業界では、四大証券会社による総会屋への利益供与問題など、逮捕者が出るほどの不祥事が続いていた。山一證券では利益供与問題の他に、顧客の負債を自社の関連会社に付け替える「飛ばし」という違法な行為と、それらを隠すための「粉飾決算」を行っていたため、大蔵省より自主廃業を迫られたのである。 廃業後の残務整理と真相調査については、業務管理本部という部署が中心に行ったのだが、自主廃業が決定した直後から、殺到する顧客の問い合わせに対応し、また転職先へと去ってゆく同僚を横目に見ながら、取材のプロであるマスコミ達を唸らせるほどの報告書をまとめた仕事ぶりは実に見事だった。本作を読む限り、しんがりのメンバーや一般社員の方々には気の毒だが、山一は潰れるべくして潰れた会社だったのかもしれない。 社内の不祥事を暴くための調査だったが、報告書には大蔵官僚の不適切な言動も記載されていて、当時の大蔵省は相当焦った事だろう。業界だけではなく監督官庁も加担した不祥事の連鎖の中で、まさに掃き溜めに鶴のような人々がいた事を、決して忘れてはいけないと思う。
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2017/02/10読了。 山一証券自主廃業後、事実関係を明らかにした業務監理本部のメンバーのドキュメンタリーである。 山一証券の自主廃業を行った際には、社員にはなにも知らされておらず、日経新聞で話を知ることになる。 その後、会社という母体が解体されるなか、事実関係を整理...
2017/02/10読了。 山一証券自主廃業後、事実関係を明らかにした業務監理本部のメンバーのドキュメンタリーである。 山一証券の自主廃業を行った際には、社員にはなにも知らされておらず、日経新聞で話を知ることになる。 その後、会社という母体が解体されるなか、事実関係を整理した12人を中心に語られている。 証券会社特有のフロント以外を軽んじる文化などが端々に描かれており、リアリティーがあった。 重いテーマなのだが、サラリーマンとしての覚悟も感じられ、前向きになれる書き方なのが印象的だった。
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山一破綻は、確かにバブルがはじけた象徴的な事件だった。そして、それから今に至るも日本の経済はおかしくなったまま。まだ、この時は古き良き日本のサラリーマンがいた時代だったのか、自主廃業に向けて最後まで踏みとどまった彼らの物語は、今に読んでも心に刺さるものがある。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
山一証券の最後を綴った小説だが、リアルに情景が浮かぶ読み応えのある内容。情報収集に相当な時間を要したのは想像に難くない。いつの時代も義理を果たして最後までやり遂げる人間、自分の事しか考えずにそそくさと逃げる人間はいる。自分は前者の人間でありたい。
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うーんなんとも身につまされる話。規模は山一とはかなり違うが、当方もサラリーマン。最近、監督官庁からお叱りを受け、世間も多少騒がした。非常時の対応、経営陣の不甲斐なさ、かなりオーバラップするところがあって、他人事とは思えなかった。 山一も多くの社員は筋の通った、人間であったのだろ...
うーんなんとも身につまされる話。規模は山一とはかなり違うが、当方もサラリーマン。最近、監督官庁からお叱りを受け、世間も多少騒がした。非常時の対応、経営陣の不甲斐なさ、かなりオーバラップするところがあって、他人事とは思えなかった。 山一も多くの社員は筋の通った、人間であったのだろうが、利益追求の名の下誤った道を歩んでしまった。その後始末に奮闘した、12人の戦いは、本人が望むと望まないに関わらず賞賛に値する。 自分が同じような行動をとれたかというと、全く自信がない。真っ先に逃げ出していたかもしれない。とても、嘉本さんのように、毅然とは立ち向かえなかっただろう。 本書で、一つだけ残念なのは、大蔵省側の不正?(見て見ぬ振り)について、深く踏み込めなかった点だけである。 今の所、今年一番の本である。
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悪さをする人間は逃げ足が速いとか、偉い人ほど都合の悪いことには目を向けないとか、結局役に立つのはエリート扱いされない現場の人間とか、最近の企業事件にも充分当てはまりそうな話。 バブル期のいけいけごーごーな証券会社もつぶれるときは簡単につぶれますね。 資産に株がたくさん含まれている...
悪さをする人間は逃げ足が速いとか、偉い人ほど都合の悪いことには目を向けないとか、結局役に立つのはエリート扱いされない現場の人間とか、最近の企業事件にも充分当てはまりそうな話。 バブル期のいけいけごーごーな証券会社もつぶれるときは簡単につぶれますね。 資産に株がたくさん含まれている人は 20 万株が 20 万円になる可能性ってのを考えておくべきかも。 持ち株会とかストックオプションとか、考え物なんじゃないかな?
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山一證券が破綻したのは大学学部3年生の時。ニュースを見た時は「まさか山一が」と衝撃を受けた。 しかしその後の報道および本書から、山一は相当前から破綻に近い状態だったことが伺える。 著者は巨人でいろいろあった人だが、ジャーナリストとしては非常に優秀であることが本書から見て取れる...
山一證券が破綻したのは大学学部3年生の時。ニュースを見た時は「まさか山一が」と衝撃を受けた。 しかしその後の報道および本書から、山一は相当前から破綻に近い状態だったことが伺える。 著者は巨人でいろいろあった人だが、ジャーナリストとしては非常に優秀であることが本書から見て取れる。
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山一證券が破たんに至る経緯がよくわかる。その中で原因を究明しようとした、男たちの奮闘が描かれている。証券会社の人間のメンタリティや業界の慣習もうまく説明されている。
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山一にこんな信念のしっかりした方々が居て、ようやく真相に辿り着いた。もっと早くに対処出来たなら変わっていたのかな。
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金融関係のビジネス書では異色の内容。失敗談と美談との組み合わせ。山一證券の破綻を、記者会見で号泣した社長の姿とともに記憶している方も多いことでしょう。「社員は悪くありませんから!」という絶叫でした。 社長までが泣く、その大混乱にあって、「しんがり」の彼らはなぜ筋を通そうとしたので...
金融関係のビジネス書では異色の内容。失敗談と美談との組み合わせ。山一證券の破綻を、記者会見で号泣した社長の姿とともに記憶している方も多いことでしょう。「社員は悪くありませんから!」という絶叫でした。 社長までが泣く、その大混乱にあって、「しんがり」の彼らはなぜ筋を通そうとしたのでしょうか。
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