習得への情熱 チェスから武術へ の商品レビュー
チェスの神童と呼ばれ、太極推手の世界選手権覇者で黒帯の柔術家という変態的に習熟の達人である本書はあらゆる学習書を上回る力を持っている 筆者は飛躍の為には基礎を注意深く積み重ねる事の大切さを解いている。勝つ事や正確に動くことに囚われていては成長は出来ない。まず最初に心がける事は「...
チェスの神童と呼ばれ、太極推手の世界選手権覇者で黒帯の柔術家という変態的に習熟の達人である本書はあらゆる学習書を上回る力を持っている 筆者は飛躍の為には基礎を注意深く積み重ねる事の大切さを解いている。勝つ事や正確に動くことに囚われていては成長は出来ない。まず最初に心がける事は「コンスタントに起こる心理的・技術的課題やミスを探す事だ(ビギナーズマインド)。時として相手のミスからも学べる。またピーク状態でパフォーマンス出来ない期間を許容する事は学習の過程で重要(負の投資)。 基礎を積み重ね、無意識化した後それで終わりかというとそうではない。彼曰く凝縮させるプロセスが発生する。エッセンスの真髄を保ちながら小さくしていく。どんな分野でも深さは広さに勝り、ミクロからマクロを学ぶことしか出来ない(より小さく円を描くメソッド)。一つの技法について洞察を深めると往々にして別の事物への深い考察に結びつく。 基礎を深く身につける事により創造性の閃きが生まれ、それを基礎とする事により進化させる事が出来る。 時間を緩めるには無意識の力を使う。 逆境を利用する→逆境はインスピレーションの源泉ともなりうる。今という場所に心をおく事の大切さを思いおこさせてくれる。怪我により今までおざなりがちになってる内的、抽象的、直感的トレーニングに目を向けるキッカケとなる。 ストレス&リカバリー→リカバリーにかかる時間を意識的に調べる(そしてそれを凝縮する) ゾーンに入る為の「引き金を構築する」→意図的に準備する(イチローの朝カレーや準備に対する姿勢) 「サンダルを履く」→ダーティープレーヤーに対する対処法。激情に流されず、逃げ出さずに自分の内面を観測する事によりインスピレーションの追求、鋭い集中力を生み出す(例 マイケルジョーダンやレジーミラーは野次や相手の選手の毒舌を集中の刺激に変えてしまう) 発達心理学キャロル・ドゥエック博士は知能に対する解釈の違いで「実体理論者」と「増大理論者」に分かれるとしている。長い目でみて強いのは後者。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
チェス、太極拳、その両方で得られた経験の統一、という3つのパートからなる。 この本が面白いのは、太極拳にて、相手の状況(まばたき、両足のどちらに体重がかかっているか等)、自分の精神状況、等試合中とは思えない程細かい所の情報までもが試合運びに利用されているということ。その細かい情報を思考するのでなく、無意識下で認識して、反射的に正しい打ち手を出す状態にまでしている。 チェスでも太極拳でも、刻刻変化する状況の中で、短時間で状況を認識し、正しい打ち手を用いて、相手より有利になるかが、細かく描写されている。 それは、チェスや太極拳だけでなく、コミュニケーションや事務処理、リーダーシップや勉強にまで応用できるであろう。趣味やビジネス等、どんな取組の上達に必要なことであろうと考える。 ・自分の感情を拒否しない、流されない。活用する。 ・小さく円を描く。一連の作業を、無意識に、素早く、無駄なく、行えるようにする。その為には反復練習。 数を忘れるための数、意識的に出来る事を無意識に出来るレベルにまで昇華する。 ・無意識に認識・処理出来る事を増やす。それにより、差別化出来る事に意識・集中出来る状況を作る。 その瞬間に、集中する領域が狭くなることで、その領域だけに集中できる。これにより、その領域がまるでスローモーションのように感じる事が出来る。 ・ゾーンに入ること。ゾーンに入る為の条件を外に求めるハードゾーンでなく、自分の精神・肉体からゾーンに入るソフトゾーンで、自分を滅却する。 ・その為に、インターバルトレーニング。ガッと集中、極限まで追いつめて、リラックス、を繰り返す。これにより、集中とリラックスに必要な時間がどんどん短くなる。 ・ゾーンに入るためのルーティンを構成する。
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チェスも柔術も学び方には共通点がある。映画「ボビー・フィッシャーを探して」の後日談の自伝としても読める。
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実態理論←→増大理論 結果をほめるのではなく、過程をほめること 負の短期的な投資が可能になる増大理論で物事を学んでいくスタイルをつくる。
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原題Art of Learningの方が適切。チェスのジュニアチャンピオンが太極拳の大会で優勝するまでの著者自身の経緯の中で、どのように学んでいったかを詳細に述べる。 数を忘れるための数、基礎的な原理のトレーニングを一つづつ重ね、体と頭にしみこませるこれをいくつもの原理に対して集...
原題Art of Learningの方が適切。チェスのジュニアチャンピオンが太極拳の大会で優勝するまでの著者自身の経緯の中で、どのように学んでいったかを詳細に述べる。 数を忘れるための数、基礎的な原理のトレーニングを一つづつ重ね、体と頭にしみこませるこれをいくつもの原理に対して集中し無数に行うことで、その原理同士が繋がって競技のレベルを一段階以上上げていく。そのためには虚栄心を捨て、初心に帰り、失敗を繰り返す、負の投資を行わなければならない。原理を理解すれば、それを徐々に省略し本質のみに絞り込むことができる。これは外部から見ると派手さは全くなく、よくわからない技術的な差異となる。訓練を積めば重要なことがわかり、そこに焦点を当てることで制度が高まる。 また、集中するためには外部の雑音をシャットアウトするのには限界があり、むしろ外部の雑音を受け入れてその上でさらに集中できるようにした方が良い。 チェスや太極拳など一対一の大会なので、特に相手の出方をこちらの微動で引き出し、それを利用するテクニックがある。そのためには自己の挙動を客観的に見てコントロールしなければならない。 教育の方法としては、ある確かだと思われる方法を押し進めるのとその人の状況を診て合っていると思われるのを考慮する方法があり、著者は後者を取る。
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友人の紹介で読む。 例えるなら「羽生善治がムエタイのチャンピオンになるまで」的な自伝。つまりノンフィクション。 僕はワークライフバランスという言葉が好きではなくて、やっぱりどれだけのめりこめるか、だし、面白いことに集中できればそれはもう充実のライフだし成果があがらないわけが思う...
友人の紹介で読む。 例えるなら「羽生善治がムエタイのチャンピオンになるまで」的な自伝。つまりノンフィクション。 僕はワークライフバランスという言葉が好きではなくて、やっぱりどれだけのめりこめるか、だし、面白いことに集中できればそれはもう充実のライフだし成果があがらないわけが思うんですよね。集中力を切らさない環境づくりをもっと意識しないと。 この人はそれが極端で(だからチェスと太極拳推手の両方で世界チャンピオンになるんだけど)、「1万時間」どころの騒ぎじゃない。やりすぎです。 集中と弛緩(全くのリラックス)のコントラストも鮮やか。日本のサラリーマンも、海外のように1ヶ月や1年っていう長期休暇をとれば何かが変わるかも。
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集中すると何も耳に入らない友人が1人いる。 そんな彼から分析的な話を聞いたことはないが、本書の著者は、それを具体例を交えながらわかりやすく教えてくれる。 習得の出発点になる自己分析の徹底ぶり、身につけるべき知識、動作の分析など、これまでの自分の取り組みの深さとの違いに愕然とさせ...
集中すると何も耳に入らない友人が1人いる。 そんな彼から分析的な話を聞いたことはないが、本書の著者は、それを具体例を交えながらわかりやすく教えてくれる。 習得の出発点になる自己分析の徹底ぶり、身につけるべき知識、動作の分析など、これまでの自分の取り組みの深さとの違いに愕然とさせられた。 どうでもいいけど、チェスと太極拳をやってみたくなった。
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チェス神童が、チェスや太極拳の学びを通じて、Learningについて語る本。 読み物としては面白い。実用書としては、本人の能力が高いからか、なかなか一般人には参考にならないように感じた。
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私はチェスを体系的に学んでいるわけでもないし、太極拳の稽古経験もないが、それでもこの本の実用性に圧倒された。 凡百の自己啓発本を百冊読むよりもこの本を繰り返し読む方がずっとためになると思った。 まさしく学びのアート。
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ノンフィクション的にも面白く読めるが、 やはりメインは「上達論」。 過度に精神的でもなく、極めて普遍的な内容。
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