アニバーサリー の商品レビュー
この本といい、前の「晴天の迷いクジラ」といい、表紙がイマイチだなぁ。 のっけから東日本大震災で、それに続くのが第二次世界大戦という話の展開に、これ本当に窪美澄かと思ってしまうが、読み進んでいけば、確かに窪美澄ぽくもなってきた。 戦争を経験して晶子がああいう風になっていくのは理解...
この本といい、前の「晴天の迷いクジラ」といい、表紙がイマイチだなぁ。 のっけから東日本大震災で、それに続くのが第二次世界大戦という話の展開に、これ本当に窪美澄かと思ってしまうが、読み進んでいけば、確かに窪美澄ぽくもなってきた。 戦争を経験して晶子がああいう風になっていくのは理解できる。 平原真希が最初は純粋に始めたことに途中から絡め取られていくのもこれも分かる。 そういう母親だったら真菜がああなっていくのかが、丁寧に書かれている割に、男の私には些か腑に落ちなかった。 以下は蛇足ながら…、、、 自分で上のようなことを書きながら浮かんでしまったのだが、それぞれがその世代を代表した生き方のように思わされたのが今ひとつ。 真菜の言葉に『先生たちの世代が、いい暮らしを望まなかったら、こんなこと起こらなかったんじゃないですか……』とあって、本人はそうではないと分かって言っていたからまあいいんだけど、時代とか世代のせいにしちゃいけないぞとは思うのだな。 この小説が書かれた頃の世相と今のコロナ禍の世の中と、そこにある厭世観や絶望感は必ずしも同じものではないと思うが、我慢を強いられ仕方がないとの諦めが蔓延るところでは似たような環境のもと、起きたことは他責であっても、それでも今を生きるに必要なのは、例えば節電やマスク・手指消毒・ソーシャルディスタンスを励行するなど自分が出来ることをしっかりとやり切ることに尽きる。 それぞれがやるべきことを為政者がきちんと伝えてくれることが大前提だが、その為政者を選んでいるのもまた投票という自分の行動に戻る。 確かに昔の長閑な頃と比べると今は生き辛い世の中だと思うのだけど、大人がとか若者がとか言っている場合ではないぞっと、話がかなりそれちゃったけど、そんなことを考えたのでした。変なの。
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2020.11.21.読了 窪氏の作品は好きだ ものすごくよい印象しかない。 しかも装丁の赤ちゃんのうなじから今にもミルクの匂いがしそうなほどかわいかったので手にとった。 感想はイマイチ。どこに焦点があるのか?が定まらず何を主張したいのか?わからない。ダラダラと話は続く。 主人...
2020.11.21.読了 窪氏の作品は好きだ ものすごくよい印象しかない。 しかも装丁の赤ちゃんのうなじから今にもミルクの匂いがしそうなほどかわいかったので手にとった。 感想はイマイチ。どこに焦点があるのか?が定まらず何を主張したいのか?わからない。ダラダラと話は続く。 主人公はマタニティスイミングの指導者、晶子と妊婦の真菜。 時は2011.3.11が軸。 兎にも角にも、晶子は私が嫌いなタイプのおばさんだ! そもそも心底お節介な人というのは自分がまさかお節介だとは思っていない。まさに善行としてやっているので他人にどう思われようと構わない。潔がよい。 手に負えないのは晶子のようなタイプ。 「私ってお節介だから…」とか言いながら、その実お節介とは思っていない。人の役に立ってる。正しいことをしている。善人だ!と思っている。自己満足に言い訳をして自分のやりたいようにやってるだけだ!お節介と思えるならやめればいい。 おお、ツイツイちからがはいってしまった汗 真菜には同情の余地がある。料理研究家なんてあんなもんだろう。美魔女の巻き毛のおばさんが思い浮かぶ。だからって援交するのはどうか?!大嫌いな母親なんて利用すればいい。 結果、ばあさん2人のおもちゃにされる人生なんて真菜らしくないし、人間そう簡単に変われるものじゃない。私だったらまっぴらごめんだ。 …と、酷評してしまったが、原発に関しては私も不安を覚える。あれからどうなってしまったのか本当のところは国民には謎のままである。FUKUSHIMAという映画も観たが、あの時の状態から何一つ解決したわけではないのだ!そして今、汚染水を海に流すとか言われるとどういう事?!と無知な私はただただ不安に襲われる。
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産む女、育てる女、働く女、母親だけど1人の女、その娘。時代とともに家族の在り方、女性の在り方は変わってきたけど、女性の生きづらさは変わらないと訴えてくる。 知らない者同士が女という括りで同志になれたらいいのに。わたし達はお互いの境界線を越えるための勇気を持たなくてはいけない。
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面白かった。というか、とても心に響く考えさせられるような本だった。 愛情に飢えた家族に育てられ、感情を表に出さない女性が3.11大震災直後に生まれた子供を女一人で出産し、子育てをする。あるマタニティクラブの先生に助けられ、自分も少しずつ心を開いていく。 3.11大震災の多くの悲惨な状況に心が痛くなり、その中で出産し新しい命が生まれるということに感動した。また、赤ちゃんのあどけない姿にほっこりし、お母さんの成長にとても心が温かくなった。 窪美澄さんの本は2冊目読了だが、すごく読みやすく情景がすぐ想像できるから好きです。
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切ない。 うまくいきそうでいかなくて、 自分がうまくいかないと他人を傷つけてしまうよね。 みんなそれぞれ冷たいのに温かい。 窪さんらしさ+ほっこり
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三世代の女性を通して描かれる、女性・母親の立ち位置の変遷、そして時代に翻弄される彼女たちとその子供たちへの温かい眼差しに救われる思いがします。 窪さんの作品を読んで毎回思うのは、母親、特にこの小説でいうところの晶子の強さ。ふが僕の主人公の母然り、さよならニルヴァーナの母然り、彼女たちは大きな愛をもって私たちを包み込みます。宗教のことはよくわからないけど、ブッダとかキリストとかそうゆう類の人類に対する大きな大きな愛を感じます。母親にそういった神にも似た母性を持たせてもなお、私たちがこの小説に後ろめたさを持たずに共感できるのは、彼女たちにも様々な葛藤、弱さがあること、自分と同じような過程を通して母になっていってこと、そして自分もいつかは他者を許し慈しめるのではないかと希望を持たせてくれるからだと思います。 誰かが帯に書いていたけど、窪さんは小説で誰かを本気で救おうとしている、類稀なる小説家なのだと思います。
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女性の抱えるストレスや苦悩を二つの世代から書き上げた小説。 戦災と震災を背景に、それでも生活は続いている。 そんな中で育つ子供たちのことを、大人は心配してしまうけれど、たしかに、あの戦争ですらも乗り越えて、私たちの祖父母は大人になった。 だからこそ、いま、あの大震災だけではなく、...
女性の抱えるストレスや苦悩を二つの世代から書き上げた小説。 戦災と震災を背景に、それでも生活は続いている。 そんな中で育つ子供たちのことを、大人は心配してしまうけれど、たしかに、あの戦争ですらも乗り越えて、私たちの祖父母は大人になった。 だからこそ、いま、あの大震災だけではなく、たくさんの災害が降りかかっているこの世界でも、子供たちはなんとか、育っていくのだと思わせられた。 登場人物の真菜に起こった出来事に理由をつけずに置いたことが印象的だった。 寂しいから、なんて言葉にできる理由があるほうが、実は少ないのかもしれない。言葉にできないからこそ、人は人から愚かだと思われる行動をとる。 今の世の中で、男が、女が、そう括ることは時代から外れているけれど、窪さんの描き方はジェンダーとしての男女のあり方というよりも、性を見据えた身体的な部分で男女を描いている感覚。 家族の不和の描き方、子育てで心身を削られる女性の描き方、腹にくるような描写から、ラストの世代を越えた女性の繋がりの描き方が鮮やか。
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「女」を主人公にした物語は、寂しくて、ヒステリックで、戦いの連続だ。 戦後の混乱の中女性の社会進出を当事者として目指した晶子、美人料理研究家として確固たる地位を築こうと奔走する真希、真希の娘で父のいない子どもを東日本大地震直後に出産した真菜。この話は三世代の女性たちが抗いようの...
「女」を主人公にした物語は、寂しくて、ヒステリックで、戦いの連続だ。 戦後の混乱の中女性の社会進出を当事者として目指した晶子、美人料理研究家として確固たる地位を築こうと奔走する真希、真希の娘で父のいない子どもを東日本大地震直後に出産した真菜。この話は三世代の女性たちが抗いようのない世界の大波に揉まれ、懸命に息をし、明日へ手を伸ばす様を描いている。 晶子はテレビの仕事に忙しい夫との間に二人の子を持ち、子育てがひと段落した後に自分の役割を社会に求めるようになる。得意な料理と天性のおせっさい焼きを武器に妊婦や新米ママを支えるマタニティプール講師という天職を得る。定年を超えてもなお続けるクラスで出会った「気になるママ」こそ、クラス終わりに生徒たちに振る舞う栄養満点の手づくり惣菜のタッパに一切手を伸ばさない、真菜だった。 有名人の真希を母に持ち、テレビに映る家庭的なイメージとはちぐはぐの「バリキャリ」な母親に違和感を感じる日々を過ごした真菜。複数の男と寝たお金で唯一興味を持ったカメラを買い、修行中に師匠の男との間に子ができた。人間としては最低の子の父親とは決別し1人で育てることを決意したものの、震災後の「滅びゆく」日本でシングルマザーとしてやっていくことに言葉にできない不安を感じていた。 晶子は真菜に特別のお節介を焼く。女性である自分が家庭の外にも役割を持とうと戦ったことが、母親が家にいない「当たり前」を作り出し、冷たい食事を余儀なくされる真菜のような「被害者」を生んだのかもしれない。そのことにどこかで罪悪感を感じながら、真菜を見守る。献身的に。 真菜は晶子のケアに対して鬱陶しさを感じたり「あるべき家庭」の温かさに目を背けたくなる。だけど、娘を気にかける存在が自分だけではないことに安堵し、この世界で生きていくことに前向きな心持ちになる。この先どこかで真希の生き方を、1人の女性の人生として客観的に理解することになるかもしれない。そんな希望を見るのは私だけか。
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3.11を受けて幼少の戦時中を回想していく晶子と、3.11時に私生児を妊娠していた真菜との交流をを描いている。 非常におもしろかった。 10歳で空腹の辛さを経験した私たちが、人に食べ物を勧める性分は多分死ぬまで一生なおらない。というような文面に始まり、大変印象的な文が多かった。
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夫婦の形、親子の形。どうしてこんなにも分かり合えなくて、いびつで、不安定なんだろう。ましてや、戦争や震災といった災厄が起これば人の心はもっと不安定。こんな不安定な時代に子を産み育てることっていいのだろうか?生んでしまったこと自体が、その子を不幸にさせてやしないだろうか? 3...
夫婦の形、親子の形。どうしてこんなにも分かり合えなくて、いびつで、不安定なんだろう。ましてや、戦争や震災といった災厄が起これば人の心はもっと不安定。こんな不安定な時代に子を産み育てることっていいのだろうか?生んでしまったこと自体が、その子を不幸にさせてやしないだろうか? 3.11の震災が大きく価値観を変えたことがこの本を読んでも感じられた。それだけに、我々は不安定な日を生きていて、生きていかなければならないということも思った。悲しいくらい生きてくことは難しいけど、生きていかないとね。
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