私の恋人 の商品レビュー
「私の恋人」 #kinoppy 世界史を小説にしたような感じ。 歴史観はポメランツのようで、第1期が原始人が世界中に広がる過程、第2期はスペインの世界支配から原爆投下まで、第3期は今の経済的支配。なかなか面白い小説。
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三島賞受賞作というが、本書がさほどの傑作なのかはよくわからない。 作者が本書で高橋陽平に語らせているのは、現代は「人類の旅」の3周目であるという文明論だ。 1周目は古代の人類伝播、2周目は2発の原爆投下で終わった西洋文明の伝播、3周目は現在進行中であるバーチャル空間の制覇というか、人工知能による人類文明の継承だ。 主人公の3度の生の時期がこれと重なるのは偶然ではない。 「人類の旅」をなぞる高橋の旅に同行するのは、主人公が第一の生から空想する理想の恋人か現出したとも思える女性だ。 主人公は第一の生において高橋理論を含包、凌駕する考察をしたと主張するが、現世での「理く想の恋人」との関係において、既にこの世を去った高橋に追い付くことができない。 なしくずしに、だが定期的に主人公の部屋を訪れる恋人。 主人公は恋人に対する自らの愛情に気づく。 定刻をゆうに過ぎても姿を見せない恋人。 主人公がその関係を諦めかけたその時、ドアノブが乱暴に音を立てる。 作者の文明論において、恋人は何を象徴するのか。ドアノブの音は何を示唆するか。 単に主人公と恋人との関係だけに留まらない何かがあるはずなのだが。
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不思議な味わいのある小説.10万年前のクロマニヨン人の私に立ち返りながら現れる人格と私の恋人.人類の歴史をいくつかのターニングポイントで4つの流れに捉えている.実験的な意味では面白かったが,非常に読みづらかった.
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三島由紀夫賞受賞作品です。 出だしが分かりにくく挫折しそうでしたが、慣れたら無味乾燥な文体がストーリーに似合ってて、意外と楽しく読むことが出来ました。 凝ったストーリーが斬新だし、人類の歴史の捉え方も面白く感動したのでちょっとあらすじ書いちゃいます。。 アフリカの地で人類が誕生し、世界中に人類が行きわたり有色人種が先住民となって定住するまでが人類一周目の旅。 大航海時代が始まり、より高い文明を持つ白人が先住民を迫害し、権力を握る。白人同士も支配される側にならないために闘う。画一化を計り自分に有利な価値観を広めた欧米が勝利するまでが人類二周目の旅。 第二次世界大戦後、インターネットが普及して国境が意味をなさなくなり、科学技術が飛躍的に発展したことで人類は「彼ら」を生み出す・・・現代は人類三周目の旅に入ったところ。 「彼ら」が出現したら・・・ これが、10万年前にクロマニヨン人だった異常に知性が高い主人公が予想した人類の未来の歴史です。 実際人類はその通りに発展し、その時主人公は2度目の転生をする。ナチスドイツに捉われ餓死させられたユダヤ人として。 そして3度目の転生は現代の日本人。 1度目の人生を生きたクロマニヨン人が理想の恋人も想定していたのですが出逢うことが出来ず、2度目のユダヤ人も出会う前に死に、3度目の日本人が初めて10万年越しにそれらしき女性と知り合います。 まあこんな話なんですけど、現代の日本にいながらクロマニヨン人やユダヤ人だったころの記憶に飛んだり戻ったり、複雑だけどその浮遊感が気持ちよかったし、人類そのものを俯瞰する視点なんかは興奮しました。まさに時間旅行。 また、人類の歴史、特に経済的価値観について資本主義という世界共通のルールを定着させて勝者になった欧米が主役の2周目の旅は終わり、現代は人類が行き詰っている様はよく言い当てているなあと感心しました。3周目の旅に出現するであろう「彼ら」のことははっきり示されてないけれど、このままいくと人類は「彼ら」に支配されるのか!と少し怖くなりました。 タイトルからは想像できない意外な作品でしたが、面白かった!
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旧石器時代から一心に想い続けていた「私の恋人」を求める話。 1回目の生は旧石器時代の洞窟でひきこもり、思念と思考の限りをつくす。 2回目の生はナチスの強制収容所で閉じる。 3回目の生は日本で「私の恋人」と出会ったかもしれない今生。 すごい設定。 1回目の生で「私の恋人」を設定し、3回目の生でめぐり合ったかもしれないっぽいという。 純度の高い純粋さを感じつつも、とてつもなく高度なストーカーっぽくもある。すごい。実際、自分がこんなので「私の恋人」候補になってしまったのなら、全力で逃げる。
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珍しく日本人の文章で入りがぐっとくる記述だなと思って読んだ。しかしなぜ日本人の描く恋愛はいつもこう重苦しく悲劇的で読んでいて気分が悪くなるのだろうか。小説の中ぐらいでさえ力強い理想が見たいものである。現実にはそんなドロドロ系は掃いて捨てるほど転がっているんだから。軽快さとか明るさ...
珍しく日本人の文章で入りがぐっとくる記述だなと思って読んだ。しかしなぜ日本人の描く恋愛はいつもこう重苦しく悲劇的で読んでいて気分が悪くなるのだろうか。小説の中ぐらいでさえ力強い理想が見たいものである。現実にはそんなドロドロ系は掃いて捨てるほど転がっているんだから。軽快さとか明るさをきたいしたいのだ、フィクションには。ラテンアメリカっぽいネガティブさを感じる。
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又吉に競り勝っての三島由紀夫賞。 でもよくわかりませんでした。 古井由吉の『仮往生伝試文』が出てきた。
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最初の「私」から見た3代にわたる「私」とその恋人。遠く離れた「私」だからこそ、突き放したようなすっきりした文体で書ける。本と読み手が薄い膜で隔てられるようになるので、人によっては読みづらいかも。
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三人目の私である井上由祐は、一人目の私と二人目の私ハインリヒ・ケプラーの記憶を持っている。一人目も二人目も成し遂げなかった恋人を得ようと、高橋和也の紹介でキャロライン・ホプキンスと出会う。 そして、彼女の口から語られる数奇な人生と高橋陽平との旅。 この作品に出てくる人物は、みな変わった経歴を持っているが、由祐もキャロラインも陽平も計算をして動いていてパキパキした印象を持った。 読了後、輪廻転生という言葉が脳裏をかすめた。
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人類の遥かなる旅。 語り手は、輪廻転生(?)を繰り返しながら人類の歴史を俯瞰する。 色んな読み方ができそうだけど、DNAの物語みたいな感じ。「生き物は乗物」っていう感じ。
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