佐治敬三と開高健 最強のふたり の商品レビュー
●本の概要・感想 サントリーのウイスキーを世界に知らしめた男、佐治敬三。サントリーの勤務中、芥川賞を受賞した作家、開高健。二人の一生とその交友についてまとめた作品。偉人の二人の生涯は読み物として大変おもしろい。話の構成もも工夫されている。本の序盤は敬三がビール事業に挑戦するとこ...
●本の概要・感想 サントリーのウイスキーを世界に知らしめた男、佐治敬三。サントリーの勤務中、芥川賞を受賞した作家、開高健。二人の一生とその交友についてまとめた作品。偉人の二人の生涯は読み物として大変おもしろい。話の構成もも工夫されている。本の序盤は敬三がビール事業に挑戦するところから始まる。一度は会社として大敗した戦に再び挑む、激動の時期である。そのように、時系列の構築の仕方が巧みであり、作家の手腕が伺える。二人のおもろくて最強の大阪のおっさんを知ることができてよかった。 ●本の面白かった点、学びになった点 *今や飲料メーカー最大の企業となっているサントリーが、もとはキリンやアサヒよりも小さい企業であったこと ・2020年現在、飲料水の国内売上ナンバーワンのメーカーはサントリーである。そこにアサヒ、キリンと続く。昔はサントリーがアサヒとキリンを追いかける形だった ・戦後で全てがリセットされた影響もあるだろうが、チャレンジ精神で元々の巨匠を追い越しているのはすごい *日本ウイスキーをマッサンとサントリー創業者が作った。そのウイスキーを世界レベルまで広めたのが佐治敬三 *開高健という人の生き方 ・学生結婚。もがきながら妻のアテを頼ってサントリーに入社。自分で考えたおもろいことを続々とやる ・会社員として働きながら執筆活動を続けて、芥川賞を受賞するまでに ・生きるとはどういうことか、人とはどういう存在か、その問いを追い続けた。ベトナム戦争に取材に行き、その後も世界各地を回った ・常におもしろおかしくしゃべる *佐治敬三「やってみなはれ」の精神 *北康利氏が佐治敬三について本を書こうとしている過程で、自然と開高健と合わせた本にしたくなったこと ・元から、変わったプロットの本だと思っていた。偉人の生い立ちや人生をまとめた本は少なくないが、コンビで書かれている本は少ないはずだ ・あとがきによると、まず作者は「佐治敬三」について書こうと思ったのだという。佐治敬三について語るには、自然と開高健について語る必要ができてきた *ただ売るということではなく、文化の水準を上げるという志の高さ ・サントリーの広告やウイスキーはただの嗜好品ではなく、日本人の志向性や行動習慣を変えるちょっとした礎のようにもなった ・個人的にはお酒は飲まないが「文化を変える」という志は、BtoC事業を行う企業には必要だろうな ●読んだきっかけ オーディオブックのセール
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サントリー二代目社長・佐治敬三氏と、同社社員であり芥川賞作家である開高健氏との物語。 戦後から高度経済成長期の熱気が、「浪速商人」たる二人の活き活きとした姿から、浮かび上がるかのような描写で、非常に勢いよくどんどん読み進めることが出来ました。 史実を単純にトレースするだけでなく、要所要所に筆者の思いや考えも吐露されるのですが、私にはよく的を射ているように思え、それもまた本書を魅力的にしているように思えます。 同様に、他文献からの引用も要所要所で素晴らしく思えました。 他文献からの引用ですが(つまり北氏ご本人の言ではないですが)、如何にも印象的だった一節が以下。 「佐治や開高は広告の技術で酒を売っていたのでなく、客を壁際に押し付けても金をふんだくってやるという気迫で、ウイスキーを日本全国に普及させて射たのではないか。」 「みんなが『狂』の時代でした。何かに取り憑かれるように仕事をしていた。だが、誰かに怒られるから仕事をしようというのでなく、さりとてやれねばならないと目を釣り上げたわけでもない。周りの『狂』の気分に同化してしまっていていつの間にか働いていたんだ」 また機を見て読み返すことになりそうです。
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北康利氏に触れ、氏の作品に開高健についての作品がある事を知る。 開高健と大阪に思い入れの強い身としては、開高健の著作にまつわる謎が、克明に解明されており、興奮する内容であった。 また、佐治敬三氏やサントリーが大阪に貢献してきた姿に大変感銘を受けた。自分が少年時代に感じていた昭和後...
北康利氏に触れ、氏の作品に開高健についての作品がある事を知る。 開高健と大阪に思い入れの強い身としては、開高健の著作にまつわる謎が、克明に解明されており、興奮する内容であった。 また、佐治敬三氏やサントリーが大阪に貢献してきた姿に大変感銘を受けた。自分が少年時代に感じていた昭和後期の大阪の活気は、高度経済成長に後押しされた自然発生ではなく、佐治氏らの熱意と行動が創ったものだったとは。 グローバルという言葉に、日本や関西地域の活性化をなんとなく混ぜ込んで誤魔化していないか?自分とその周辺に問い直し、行動することが必要だと認識させられた。
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サントリー社史の部分と佐治敬三と開高健の関係についての記述は興味深い内容だったが、開高健の生い立ちや女性関係の部分は正直どうでもよかった。
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オーディオブックで聴いた。本書はサントリー二代目社長佐治敬三と作家開高健との友情の物語でもある。また、鳥井信治郎から始まるサントリーの歴史や日本におけるウイスキーやビールの歴史を書いたものとも言える。登場する人物も豪華で、小林一三、松下幸之助やSBI社長の北尾吉孝の父親なども登場...
オーディオブックで聴いた。本書はサントリー二代目社長佐治敬三と作家開高健との友情の物語でもある。また、鳥井信治郎から始まるサントリーの歴史や日本におけるウイスキーやビールの歴史を書いたものとも言える。登場する人物も豪華で、小林一三、松下幸之助やSBI社長の北尾吉孝の父親なども登場してくる。書いたのは、西郷隆盛や白洲二郎などのノンフィクション作品を世に送り出してきた北康利。面白くないはずがない。
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タイトルのお二人のエピソードだけでなく、鳥井信治郎が寿屋を立ち上げた頃の話から、松下幸之助、小林一三との交流、竹鶴政孝との関係など、興味深い内容でした。 丁寧な取材に基づいたエピソードで、お二人の人柄が伝わってきます。 世の中をあっと言わせたいという意気込み、自由さ、奔放さ、人...
タイトルのお二人のエピソードだけでなく、鳥井信治郎が寿屋を立ち上げた頃の話から、松下幸之助、小林一三との交流、竹鶴政孝との関係など、興味深い内容でした。 丁寧な取材に基づいたエピソードで、お二人の人柄が伝わってきます。 世の中をあっと言わせたいという意気込み、自由さ、奔放さ、人間臭さ。 おおらかな時代も感じました。
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※このレビューにはネタバレを含みます
佐治敬三と開高健を軸に戦後、高度経済成長、その後平成に至るまで昭和を描いた作品。先日読んだ『この日のために』が五輪開催を主題に、池田勇人と田畑政治に焦点を当てて昭和の前半が描かれており、池田と田畑の関連は希薄だったが、こちらの敬三と開高の交わりは深い。 敬三が開高を、 「弟じゃあない。弟といってしまうとよそよそしい。それ以上に骨肉に近い、感じです」 と評すように、両者にとってかけがいのない存在ということが全編を通して紡ぎだされている。そうだ、中島みゆきの「糸」じゃないけど、敬三というたて糸が時代を突っ切っていく中、開高がよこ糸のように縦横無尽に文学界と経済界、日本と世界を駆け回り大きな絵巻物を創りあげているようだ。 著者の本は2冊目。『白洲次郎』より、確かこちらを読みたいと思って図書館に予約を入れてたもの。人気があるのか順番が回ってくるまでけっこう時間がかかった。 『白洲~』より10年後の作品。『白洲~』がドキュメンタリーなのか小説なのか、整理がついてない印象があったけど、本書では緻密な取材による資料・証言の引用と作者の文章のバランスが非常にこなれて読みやすくなっていた。城山三郎に近づいたね(笑) 戦後復興、非上場、強力なリーダーシップ。そう聞くと百田尚樹の『海賊と呼ばれた男』も思い出される。あちらは完全にフィクションとして小説仕立てになっているが、出光佐三という自在の経営者がモデルだ。 経営者と作家。こちらの2人はどちらも実在の人物として描かれる。臨場感溢れる激動の昭和には、独特の高揚感がある。寿屋からサントリーへ、ウィスキーの覇者からビール業界への挑戦、大胆な広告戦略と、そこに集う開高をはじめとする野武士のような宣伝マンたち。事実は小説より奇なりを地で行くストーリーが痛快だ。 サントリーという企業が、なぜ広告分野で注目されるのか、公共広告機構設立の背景、なぜサントリーホールが存在するのか、アルコールだけでなく昨今はコーヒー(BOSS)や清涼飲料水、健康食品分野でも名を聞くようになった訳は。そこへ至る話が様々な逸話と共に、”断絶の決定”というキーワードで解き明かされていく。 そんな企業小説風な奔流の中で、開高の存在が波紋を広げ水しぶきを上げながら流れにきらめきを与えていく。在職中に芥川賞作家となり、社是の、過去からの”断絶”を自ら実践するかのようにベトナム戦争に身を投じ、懊悩を抱えて銀山湖に籠り釣りに目覚め、果てはモンゴルに愛情を注ぎ注がれる等々、波乱万丈の人生が描かれていく。 一見、敬三とは距離を置きながらに見えるが、節々や要所要所で絡み、最終章「悠々として急げ」で描かれる開高の晩年は、両者の思いが見事に昇華されて、万感の思いで読み終えることができる。 開高作品は学生の時に『輝ける闇』を読んだきりだ。オリバーストーンの映画「プラトーン」を観た前後だったと記憶する。内省的で暗くてあまり印象は良くない読後感だった。あとは「オーパ!」と大書きされた大判の写真集が実家にあったのを子どもながらに眺めていた。我々のオヤジ世代は好きな作家だったんだろうな~。作品より生き方が、かな。 本書にちりばめられた開高のダンディズム溢れる文章の数々は、「その作品に″鮮烈な一言半句”はあるか?」と芥川賞セン衡に於いて厳しい評価を加えていただけのことはある。実に詩的でリズミカル。コピーライターとして鳴らしただけあって、心のどこかに引っかかるものがある。 改めて開高の”珠玉”の一言半句を求めて作品を読んでみたいと思った。
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サントリー二代目社長佐治敬三とサントリーのコピーライター及び洋酒天国編集長として『広告のサントリー』の先鞭をつけた開高健の物語。 開高健というとコピーライターとノンフィクションライターのイメージしか無く、小説はひとつも読んだことありませんしサントリーのウイスキーも飲みませんが(麦...
サントリー二代目社長佐治敬三とサントリーのコピーライター及び洋酒天国編集長として『広告のサントリー』の先鞭をつけた開高健の物語。 開高健というとコピーライターとノンフィクションライターのイメージしか無く、小説はひとつも読んだことありませんしサントリーのウイスキーも飲みませんが(麦酒もリニューアルされてから呑まなくなった)、この二人の物語は秀逸。 昭和の高度成長物語としても、二人の立場の違う逸材の話としても、文士の苦悩の道行としても出色です。
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サントリーの2代目社長佐治敬三氏と芥川賞作家でサントリーの広報部社員でもあった開高健氏の絆とそれぞれの半生を書いた一冊。 寿屋時代からのサントリー社の酒販事業の変遷や佐治氏の養子になった経緯や開高氏の芥川賞受賞作品の『裸の王様』や代表作品である『夏の闇』の誕生の話など数々のエピ...
サントリーの2代目社長佐治敬三氏と芥川賞作家でサントリーの広報部社員でもあった開高健氏の絆とそれぞれの半生を書いた一冊。 寿屋時代からのサントリー社の酒販事業の変遷や佐治氏の養子になった経緯や開高氏の芥川賞受賞作品の『裸の王様』や代表作品である『夏の闇』の誕生の話など数々のエピソードを本書で知ることができました。 また、お二人の横顔や晩年のエピソードも知ることができ、佐治氏は母や兄や前妻の死、病気での留年を乗り越え、社長就任時から売上を数十倍にするまでの大企業に成長させ、一方開高氏はベトナムでの臨死体験を経て作家、そして同社の広告のキャッチコピーを考えるなどお互いの後世に語り継がれる歩みはどちらかが欠けたら存在しなかったものだと本書を読んで思いました。 本書で強く印象に残ったものとしてはベトナム戦争の息を呑む最前線の状況、ビールに懸けた親子2代にわたる熱き想い、作家として作品を産み出す苦悩の3つが印象に残りました。 代表取締役社長と社員であり作家というふたりの戦前から戦後という日本という国が目覚ましく変わっていく時代に熱く生きた二人の生きざまに本当に心打たれる重厚な一冊だと感じました。
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