仕事と家族 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
20151025?~1113 少子高齢化の原因を探る、とかいうテーマだと、どうしても自分の主観が入ってしまう。この本は、自分の業務に関わりがあることだし、という思いで半ば義務的(教科書的?)に読んでいる。国際比較や各国事情は興味深いし、読みやすいのだけど、「女性の社会進出が少子化を招いている」とか、「できれば専業主婦志向の女性が生活レベルを維持するため(仕方なく?)共働きをしている」みたいなアプローチは正直不愉快。台湾の結婚事情はもっと知りたくなった。
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計量社会学のお手本のようなテキスト。大変読みやすい語り口と、国際比較データに基づく明快な分析、考察。 終章のまとめや筆者の考えは、私の感覚ともピタリと一致し。だから全体的に読みやすかったのかな?と思います。 学生にも勧めたい良書。
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高齢化社会、少子化、そして、労働人口の減少といった大きな課題を抱えている日本。 日本がこれからどのような「共働き社会」(など)といった労働環境を目指していくのかを考えさせられた。 小さな政府の代表例のアメリカ。 大きな政府の代表のスウェーデン。 ともに、女性の労働人口が増えてい...
高齢化社会、少子化、そして、労働人口の減少といった大きな課題を抱えている日本。 日本がこれからどのような「共働き社会」(など)といった労働環境を目指していくのかを考えさせられた。 小さな政府の代表例のアメリカ。 大きな政府の代表のスウェーデン。 ともに、女性の労働人口が増えているが、おなじように出生率も増えている。 つまり、単に、女性の社会進出が少子化を招いているということではないのがわかる。 それぞれの国において、女性が出産し、働きやすい労働環境が整っているのだ。 (日本とドイツは、女性の労働人口は増加すれども、少子化が進んでいる…) 日本の労働のありかたに、「(男性社会の)労働のあり方、職務内容の無限定性、勤務地の無限定性、労働時間の無限定性にある」という指摘に納得。 日本の労働環境を大胆に(同一労働堂賃金など)改革する必要があると思った。 筆者の説明がわかりやすく、今後の労働と家族のあり方を考えるためにも役に立つ良書だと思う。
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新しい見方ができるようなデータが豊富で理解し易い。より良い社会を作るためには、とにかく働く、ということが大切。だから、どんな仕事にも意義を見出せる。
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タイトル通りのテーマを豊富な統計データをもとに、丁寧に解きほぐす。答えのないものだから、それこそ他のパターンと比較したりしながら考えるのは有効な手法、というのは当たり前っちゃ当たり前なんですが、そうそう冷静に見れないテーマなだけに、面白い。五章は特に読み応えあり。
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仕事と家族。 働きづらく、産みづらい。 テーマとして、どちらも大きく人の人生に関わるものでもあり、そのどちらも「しづらい」状況にある今は、とても生きづらいのだろうか。 少子化の要因は、これまでの研究のなかでもいくつか分析されていて、主に以下の3つに分けられる。 ・機会費用 ...
仕事と家族。 働きづらく、産みづらい。 テーマとして、どちらも大きく人の人生に関わるものでもあり、そのどちらも「しづらい」状況にある今は、とても生きづらいのだろうか。 少子化の要因は、これまでの研究のなかでもいくつか分析されていて、主に以下の3つに分けられる。 ・機会費用 ・両立困難 ・希望水準 女性が出産育児にかかる際に、一時的なキャリア中断が起こることにより、所得が減少するなどの機会コストがかかるため、出産を躊躇する、という説。 共働きフルタイムでの出産育児において、女性が育児休業から復職するにあたって、育児と仕事との両立が困難である、あるいは困難であると予見できるから躊躇する、という説。 女性の高学歴化・総合職キャリアの獲得により、結婚時に男性に求める仕事のレベル・また生活能力(家事スキル)の水準が高まり、結果的に晩婚化が起きている、という説。 どれも、要因としてそれぞれの力は働いていると思われるが、著者はそのなかでも希望水準説が、特に強い要因であるとしている。 また、著者は男女雇用機会均等法と日本の無限定的な総合職的働き方のパラドックスを指摘する。 総合職キャリアの無限定性とは、時間・勤務地・職務内容のそれぞれにおいて限定しないことを総合職の暗黙の前提としており、この前提が女性や外国人等を基幹労働力から排除している、というものである。 一方で、男女雇用機会均等法のたてまえ上、女性の社会進出・総合職への転換が行われており、こうした状況の中でパートナーのうち、どちらかが(ほとんどの場合、女性が)そのキャリアプランを諦めざるをえない状況になっていると指摘している。 また、家事負担の軽減として、育児・家事の外部化(アウトソーシング)の可能性が考えられるが、外部化した先のケアワークの担い手のほとんどは女性であり、女性は自分のハウスワークをしない代わりに、他人のハウスワークを行う、という労働力の横流し、あるいは経済格差を利用した(移民の活用を含め)外部化にすぎない、という問題も提起している。 なんだか、結局、八方塞がりな現状を示してくれているが、何か救いは無いものか。 セカンドキャリアの活用、また総合職の無限定的な前提の見直し、などが考えられるが、どちらも民間企業の委ねられるものではある。 育児支援においては、保育サービスの充実は一定の効果がある、と統計的にも示されている、という。 ケアワークについては、課題が残る部分はあるが、雇用機会や所得をより増やすことのできる分野である、と感じる。 個人的に、本書を読んで気になったのは「通勤」して「オフィス」や「工場」で働く、という工業化・商業化後に一般化した働き方だ。 かつて、仕事は家あるいはその周辺で行うもので、男女問わず、家事の延長上にあるものとして、農業や手工業を行ってきた。 平川克美さんなども提唱している「小商い」という働き方は、最近注目されてきている。 自分が住んでいる「地域」を離れて、遠方の都心に通勤する働き盛りの世代は、子どもの教育に保護者として(PTA等の活動を通して)かかわる中で「地域」のシステムの旧態依然な部分や互助・善意によって成り立つ組織のあり方に驚く。 しかし、そもそも、都心に通勤する多くの会社員は、そうした地域自治を高齢者や一部の主婦に任せ、その地域に何の見返りもなく安全に住むことができている「フリーライダー」でもあるのだ、と思う。 長時間労働による弊害ばかりが、男性の育児参加・少子化・女性の社会進出の壁といった問題の中で、取り沙汰されるが、「通勤」して家・地域と職場が離れてしまっていることもまた、家の内と外の仕事を大きく隔ててしまっているようにも思う。 家の周縁としての地域・地域の中での仕事、そうしたところに若年者の雇用や育児世代のセカンドキャリアの活用のヒントが見出せないだろうか。
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