1,800円以上の注文で送料無料

四月は少しつめたくて の商品レビュー

4

26件のお客様レビュー

  1. 5つ

    7

  2. 4つ

    10

  3. 3つ

    6

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2023/01/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

数年前に知人に紹介された気になっていた本。文庫化されていないので、単行本で。 話は詩人・藤堂孝雄を編集者の立場として向きあう女性・今泉桜子から見たものと、藤堂の詩の教室に通う50代の主婦・清水まひろの2つの視点から語られていく。 編集者の今泉に見せる藤堂は、昔は名の知れた詩人だったが、もう13年も詩を書いていない、いや、もう書けないのか?というダメなおじさん。そこでは競馬をしたり、キャバクラに行ったり、いったいこの人は何を考えてるんだろう? そして、しばらく年齢不詳な今泉桜子も、何やら抱えている様子。そんな二人がいつか心を通わせる(男女の恋愛という意味ではなく)ときが来るのかなぁ~と予想しながら読んでいた。 一方で、藤堂の詩の教室に通う50代の清水まひろ。青春時代をバブル期に過ごし、ブランドものを身につけ、専業主婦として暮らしている。一見、のほほん主婦かと思いきや、まひろの高校生の娘が、学校で起こったある出来事をきっかけに家の中でしゃべらなくなった。そんな娘の部屋にあったのが、藤堂孝雄の詩集だった。藤堂の 詩を学べば、娘の抱えている気持ちが分かるのではないか? 娘に寄り添おうとする母親の姿、これが全然うっとうしくないというか、熱いというか、娘の汚名を晴らすために思い切った行動に出たり、抱きしめたいのに娘を見守ったり、最後はちゃんと娘の力で立ち上がれるように、そこに藤堂から教わった「言葉」のチカラを使うのだ。 言葉の哲学ともいうのだろうか、あまりに当たり前に使いすぎて、その言葉の核心?まで考えたことがなかったけど、「藤堂の詩の教室」で語らえた「言葉」。時代とともに言葉の重みは変わるし、日本人の調和を重視するが故のワンパターンに発するために生まれた言葉など、面白いな~と感じる視点がたくさんあった。 1度読んだだけでは、すべてを咀嚼できていないので、もう一度夜みたい。いや、時々読み返したい。(ストーリーというより、言葉の解釈?や考え方について) この本、原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」を読んだ人にもおすすめかも。全然違うけど、「言葉」を取り扱うという視点で考えるのが好きな人にはお勧めかな。話全体としては難しい話ではないので、読みやすいと思う。 それにしても、ガツーンときたのは、藤堂の『朝の祈り』という詩に出てくるこのフレーズ。 「謝罪は権力を生む  だからあやまってほしくないんだ」 謝ってしまったらすべてが終わり、解決した、という訳ではない。 謝られた方は、もやもやを抱えたまま、それ以上何も口にできなくなる。 とりあえず謝ってしまおうと考えがちな私は、思いっきりバッコーンとぶっ飛ばされた気分だった。 谷川直子さん。出版している本は少ないけど、高橋直子名義でエッセイも発行しているとのこと。他の本を読んでみたい。 そして、2023年最初の本。今年も「言葉」を大切にしよう。そうだ、今年は「詩」を読んでみよう。短い言葉にこそ、本当に大切なことだけが詰まってると思うから。 追記:もしかしたら、作家が描きたかったのは、母として生きるまひろの話をメインに書きたかったのかな。それを引きだたせるため、いや、もちろん「死」も扱いたかったのかもしれないけど(藤堂と今泉の話)、母親の偉大さというか、覚悟というのか、ただのおばさんじゃないで!という、肝っ玉の据わった「母親」の姿を描きたかったのかも、と思ってしまった。

Posted byブクログ

2022/11/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

クルミの気持ちわかるなあ‥一度心を閉ざしてしまうと開き方がわからなくなってしまう。 クルミのお母さんの視点も苦しかった。家事をすることは当たり前とされ感謝されず、娘にも夫にも冷たくされてしまう。詩という趣味があって良かった。

Posted byブクログ

2021/09/06

簡単に消費されていく時代 音楽も絵画も写真も文学も そんな小手先で操る日常のなかで 消費されているのは自分たちじゃないかって このお話を通してそんなことに気付かされた この大消費時代、忙しすぎて 自分の核の部分を見つめて言葉として掘り出すのは大変だけど、怠ってはいけないなと思った...

簡単に消費されていく時代 音楽も絵画も写真も文学も そんな小手先で操る日常のなかで 消費されているのは自分たちじゃないかって このお話を通してそんなことに気付かされた この大消費時代、忙しすぎて 自分の核の部分を見つめて言葉として掘り出すのは大変だけど、怠ってはいけないなと思った もっと本当は大切に生きるべきかもしれない

Posted byブクログ

2021/04/18

それぞれ問題を抱える2人の中年女性の視点から、1人の詩作家を軸にして、自らに向き合っていく物語。作品の時間軸としては、2014年ごろの物語であり、その当時の流行や、実際に存在する詩も登場する。物語の中心として詩の存在があるが、登場人物の心情とリンクさせた詩は、物語の流れとともに、...

それぞれ問題を抱える2人の中年女性の視点から、1人の詩作家を軸にして、自らに向き合っていく物語。作品の時間軸としては、2014年ごろの物語であり、その当時の流行や、実際に存在する詩も登場する。物語の中心として詩の存在があるが、登場人物の心情とリンクさせた詩は、物語の流れとともに、より深く味わえるようになる。

Posted byブクログ

2019/12/19

言葉をめぐる物語。 →https://ameblo.jp/sunnyday-tomorrow/entry-12030912576.html

Posted byブクログ

2017/06/26

しみじみ素敵な本だった。 ストーリーとか展開とかなんかそんなのはもうどうでもよくって。 よくはないんだけど。 お話があってこその言葉なんだけど。 言葉がぎゅーっと胸にしみる。 ー愛していると口にしようとしたら、その言葉がからっぽなのを発見した。 クルミの「つらかった」の一言が...

しみじみ素敵な本だった。 ストーリーとか展開とかなんかそんなのはもうどうでもよくって。 よくはないんだけど。 お話があってこその言葉なんだけど。 言葉がぎゅーっと胸にしみる。 ー愛していると口にしようとしたら、その言葉がからっぽなのを発見した。 クルミの「つらかった」の一言が ほんとうに胸にすーっと沁みてきて 救われるってこういうことなのかなって。 「霧が晴れたら」  そぼ降る雨の中を きみは濡れてやってきた   ふくらんだポケットからそっと取り出したのは  生まれたての言葉  歩けるようになるまでわたしが育てるわ  湿った髪を右手でかき上げ きみはきまじめに言った  息をしているのかいと僕が聞くと  大丈夫 呼吸という言葉を与えたからと答える  栄養も知能も発達もちゃんと食べさせた  みんな漢字二文字なんだと僕はつぶやいて  悪夢も腐敗も絶望も二文字だと思い出す  不吉な予感を押し殺し きみの手の中をのぞいたら  生まれたての言葉は かすかに震えながら僕を見上げた  なんて呼べばいいのかな  まぬけな質問をする僕に きみはゆっくり瞬きし  それはあなた次第じゃないと苦笑する  いつのまにか雨はやんで 細かい霧が立ちこめている  この子のいつか 意味に出会って恋をするのね  君の声が途中からすべるようになめらかで  僕はその先にあるものを 盗むようにそっと見つめる  おとなになった言葉太刀が ひっそりと寄り添えば  やがて声になり そして詩になる  そのときまで僕らは待てるだろうか  それが二人で生きているということなのか  そう自分に問いかけながら 僕は静かにきみの手に触れる  霧が晴れたら きみを送っていこう  生まれたての言葉をこわがらせないよう  おだやかな道を遠回りして 「失うという事は なくなるという事実ではない  そこにはもはやそれがないと知る その体験なのだ  失われていくものが命をかけて  きみに教える  これで終わりではないと」 河出書房新社

Posted byブクログ

2016/12/24

妻に先立たれ「詩」が書けなくなった詩人と、担当編集者の話。「詩」というものが、なかなか難しくて理解困難。「人がじゃんじゃん同じ言葉をあちこちで使うと、その言葉の意味がどんどんすり減っていく。」この感覚はわかる気がする。

Posted byブクログ

2016/04/17

詩を書けなくなった詩人、寄り添う担当編集者、傷つく娘に本当の言葉を掛けられなくなった母。 それぞれの苦悩を、妥協せず、言葉に真の意味を持たせることで開放する。 言葉、そしてそれを綴る詩、その意味を味わった気がする。

Posted byブクログ

2016/04/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

言葉の意味がからっぽになっている、消費され尽くしている、など言葉に関する言及、わかる気がした。 言葉の扱い方が、とてもいいなと思った作品。

Posted byブクログ

2016/01/05

詩が書けない藤堂とその周囲の人をめぐるお話。 詩とは「心の内側に降りていく階段」であって, 世間にあふれている言葉ではダメなんだ。 そのことが強く伝わってきました。 普段,気にせず使っている言葉。 だけども,本当は,言葉は大切に扱わなくちゃならないんだ。 そう感じました。 ...

詩が書けない藤堂とその周囲の人をめぐるお話。 詩とは「心の内側に降りていく階段」であって, 世間にあふれている言葉ではダメなんだ。 そのことが強く伝わってきました。 普段,気にせず使っている言葉。 だけども,本当は,言葉は大切に扱わなくちゃならないんだ。 そう感じました。 言葉を使うっていうことは難しいですね。

Posted byブクログ